俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第81話 ツインテール解放戦線

 鼻がひん曲がるような汚らしい臭いと如何にもと言った具合のジメっとした空気で充満している下水道内。

 俺は、総二さんと情報交換を行いつつ、先頭を歩くリールについていく。

 薄暗く道もよくわからないこの下水道内ではリールの案内だけが頼りだ。

 

「つまり、総二さんは俺らと同じで、リーンのSOSを夢の中で受け取ったからこの世界にやってきたけど、来る際に仲間とバラバラになっちまった。そういうことですね」

 

「ああ」

 

「成程。だから、ツインテールを見たときの反応が町の連中とは違う訳だぜ」

 

 互いにそれぞれ、別の世界からリーンたちの住むこの世界のツインテールを救うためにやって来たが、来る途中で何らかのトラブルが発生した為に仲間とはぐれてしまったと言う事を明かしあった。

 因みに総二さんは俺がテイルバイオレットだという事を案外すんなり信じてくれた。唯乃さんから話を少し聞いているとはいえ普通、こういう時はもう少し疑ってみてもおかしくないのにな。

 まぁ、変に疑われるよりかは話しやすいから俺としてありがたいんだが、少しは人を疑うって事を総二さんは覚えるべきだと思う。

 総ニさん、あんたいつか痛い目みるぜ?

 

「それにしても唯乃から聞いていたテイルバイオレットというのは和輝の事だったのか、通りで初めて会った時からツインテールの気配を感じたわけだ」

 

「ツインテールの気配って……ティアナみてぇな事言わないでくださいよ……」

 

 公園で話していた時もそうだが、総二さんって結構ティアナと似通っている点が多い。

 さも当然のようにツインテールの気配とかを会話に入れてくる辺りがな。

 このままじゃ頭が痛くなっちまうぜ。

 

「もしかしてですけど、俺とリールの場所がわかったのってツインテールの気配を探知したからとかじゃないですよね?」

 

「そうだけど……それがどうしたんだ?」

 

「おうマジか……」

 

 何かおかしい事で言ったのかと言わんばかりの表情を見せる総二さんを見て、俺はより一層頭を痛め、ティアナとの面影を重ねてしまう。

 きっとティアナなら総二さんの言葉が一言一句わかるんだろうな。

 俺レベルのツインテール属性じゃまだ理解しきることが出来ない。

 

「失礼かもしれないですけど総二さんって結構変人ですよね……」

 

「そ、そうか? 俺なんてツインテイルズの中じゃまだまだな方なんだけどな」

 

 マ、マジで? 総二さんが普通の部類?

 この言葉を信じるならツインテイルズってのはかなりの色物集団って事になるぞおい。

 これからこの世界で共闘するかもしれないってのに少し不安になって来る。

 

「それはそうと和輝? そう言えばさっきはどうして変身しなかったんだ? 俺が間に合ったから良かったけど、かなり危なかったぞ」

 

 不安に駆られる俺に対して今度は至極当然の疑問が飛んできた。

 そう言えば伝えてなかったな。俺が何故、変身できなかったのかを。

 

「実は俺、変身したくても今は出来ないんですよ。俺が変身できるのはティアナがいる時限定ですし」

 

 俺が変身するにはティアナのテイルブレスから召喚されるテイルドライバーとティアナの持つツインテール属性の二つが必要になる。

 ティアナはおろか変身アイテムであるテイルドライバーがない以上、俺は変身する事が出来ない。

 俺はその旨を事細かに総二さんに伝えた。

 

「成程な、ロエルとリルナたちみたいな感じか」

 

「その人たちが誰かはわかんねぇけど、まぁ多分、想像しているのであっていると思いますよ」

 

 ロエルにリルナ。

 恐らくその二人もツインテイルズの一員であるツインテール戦士なのだろう。

 総二さんの言い方から推測するにどうやらその二人は俺とティアナと同じように一人では変身出来ないようだ。

 

「まぁ……てな訳で、すいませんが俺は今、力になれそうにありません」

 

「なぁに大丈夫だ。今は俺が守ってやるさ。ツインテールは助け合う物って言うだろ?」

 

「総ニさん……」

 

 総二さんの言っている意味はあまりよくわからないが、どこかカッコよく見えるのが不思議だ。

 さぞかし元の世界では人気者だったのだろうなと容易に想像できる。

 それに比べて俺ってやつは……

 

(ティアナがいないと何も出来ない。それにもしティアナが敵に見つかっていたら……俺は……)

 

 ふとした事がきっかけとなり、マイナスな考えが頭の中をぐるぐると回り始める。

 今さらになってティアナの事が凄く心配なって来た。

 俺がティアナを守らなくちゃいけないっていうのに、俺は今や総二さんに守られる立場じゃねぇか……

 

「どうしたんだ和輝?」

 

「いや、少し心配になっちまっただけです。ティアナの奴、今頃無事ならいいんですけど……」

 

「そうか……確か、ティアナは和輝の彼女だったな」

 

「はい……」

 

 暗い下水道に立ち込める暗い雰囲気。

 何やってんだよ俺と自分自身に喝を飛ばしたくなる。

 

「おい和輝、もしかしたらアジトにそのティアナとかいう奴もいるかもしれないぞ」

 

「おいリール!! 本当かよ!!」

 

 先頭で歩くリールが不意に声をかけてきたので俺はそれに飛びついた。

 するとリール曰く、ツインテールをした者を街で見かけたのなら騒ぎが起きる前に仲間が保護している可能性が高いという事を俺に言ってくれた。

 それを聞いて俺は少しホッとする。

 

「大丈夫、きっと無事でいるさ」

 

「ありがとな総二さん、リール」

 

 ティアナが無事ならばどれほど嬉しいか。

 あいつのツインテールは絶対に守らなくちゃいけないんだ。

 ティアナと再開するという想いが俺を前へと突き動かした。

 

 

 

 

「よし、お前ら止まれ、着いたぞ」

 

 迷路のような下水道を歩き続けること数時間。ようやく念願である出口がやってきたようだ。

 リールは一つのマンホールを指を指した。

 どうやらそこから外に出たらアジトとやらに着くらしい。

 リールはマンホールの蓋を少し持ち上げて外の様子を確認、外には敵はいないという合図が送られてくる。

 俺と総二さんはリールの後に続く形で下水道から外に出た。

 

「ぷはーっ!! やっぱシャバの空気はうめぇなおい」

 

 外に広がっていたのは、さっきまでいたハイテク機械で溢れる町の中とは打って変わって自然溢れる木々の群れが並ぶ森の風景。

 淀んだ下水道内の空気と違って綺麗で美味しい空気が満ち溢れている。

 俺は外に出るや否やめい一杯の深呼吸で外の空気を堪能する。

 

「何やっているんだよ。早く行くぞ」

 

「わかったよ、うるせぇな……。行きますよ総二さん」

 

「ははは……」

 

 急かすリールにイラっとしながらも俺は総二さんと共にリールの後に続く。

 そして、生い茂る森を歩き続ける事、数分。

 森を抜けた先にボロボロになった廃墟の群れが見えて来た。

 

「なぁ? もしかしてあそこにお前たちのアジトがあるのか?」

 

「ああ……」

 

 暗く沈んだ顔で頷くリール。

 俺としてはさっきまでいた綺麗な町とはまるで違う程に荒廃した町の様子に驚きを隠せない。

 例えるならそれは戦争で破壊された町というべきもの。

 もしかしてこれ全部、エレメリアンの仕業だっていうのか?

 

「コイツは酷いな……」

 

 総二さんも俺と同じ感想を抱いたようだった。

 俺たちはリールの案内の下、町に入る。

 するとそこには、そんなボロボロになった町の中で生活を営む人々の姿。

 廃墟の中を駆けまわり遊ぶ子供たちとそれを叱る母親と思われしき女性、汗をかきながら畑を耕したり壊れた物を修理したりしている男性たち。いずれも特徴的なのはリール同様にボロボロの衣服を着ているという事。

 だが、それ以上に驚くべき特徴があった。

 それは髪型が老若男女問わず、全員がツインテールだったと言う事だ。

 

「どうなってんだよおい」

 

「ツインテールばっかりだ……」

 

 さっきまでいた綺麗な町に住む連中に見せたら卒倒するんじゃなかろうかとも思えるその奇妙過ぎる光景。

 ポニーテールならまだしもツインテールは一般的には男の髪型とは程遠い。

 なのに目に入る全ての男までもがツインテールをしている。

 これはハッキリ言って異常としか言いようがない。

 右を見ても左を見ても、誰しもがツインテールを結んでいる事に違和感を抱いた俺はリールにそっと耳打ちする。

 

「おいリール、どうしてみんなツインテールなんだよ」

 

「直にわかる」

 

 アジトに着いたらそのあたりの事を詳しく話してくれるのだろう。

 俺はそう信じてこの奇妙な町を歩く。

 それにしても、ツインテールをした者たちが廃墟に住み、ツインテールを恐れる者たちが綺麗な都市部に住むか……

 もしかしてこの世界は俺の思っている以上に深刻な状況になっているんじゃないんだろうかと思えてしまう。

 俺は次に総二さんに尋ねてみる。

 

「総二さん、あんたはどう思います?」

 

「わからない。でも、確かなのはここにいるみんな誰もツインテールを嫌々している訳じゃないって事だ」

 

「嫌々している訳じゃない? それってどういう事だよ」

 

「うーん、何故ツインテールをしているのかの理由はわからないけど、俺にはここにいるみんながツインテールを強要されているとは思えないんだ。もし、ツインテールを強要されているのならこんなにも見事なツインテールは結べない」

 

 男が結んだツインテールを見て、見事と言ってのける総二さん。

 とてもじゃないが俺は口が裂けてもそんな事言えそうにもない。流石は最強のツインテール属性を持つテイルレッドなだけはあるぜ。

 俺がそんな感想を抱いている中、俺たち一行は町の奥にある一つの古びた大きな屋敷に辿り着いた。

 他の廃墟に比べて比較的綺麗で大きなこの屋敷こそリール曰く、ツインテール解放戦線とやらのアジトらしい。

 俺はその大きな扉に手をかけ開ける。

 すると中から勢いよく一人の女性が飛び出しリールに抱きついた。

 

「リール!! あなた何処に行っていたの!! 心配したんだぞ!!」

 

「お、お姉ちゃん~!! 離してよ~!!」

 

 涙ながらにリールに抱きつくその女性はどうやらリールの姉のようだ。

 印象としてはリールをそのまま大きくしたかのような大人の女性。違いは服装がリールと違ってスカートではない事と胸が大きいことくらいで。黒髪のツインテールがリールの生意気さと違って凛々しさを感じさせる。

 見た所、歳は俺や総二さんよりも上のように見えるが、この人がリーンって人なのだろうか?

 

「なぁ総二さん? この人がリーン?」

 

「いや、違う。このツインテールはリーンのじゃない」

 

「お、おう。そ、そうですか……」

 

 総二さんはティアナ同様に夢の中でリーンと出会っているが為に俺はそう尋ねたのだが、どうやらこの女性はリーンではないらしい。

 じゃあ一体誰なんだコイツ?

 そう思いつつも姉妹水入らずといったこの雰囲気に押されて俺たちは声をかけることが出来ない。

 はてさてどうしたものかと頭を捻るそんな時、中からさらなる声が聞こえて来た。

 

「和輝!! 和輝じゃない!!」

 

「ティアナ!!」

 

 飛び出し抱きついてきたティアナを俺は優しく抱きとめる。

 ようやく再会することが嬉しいのは俺も同じだが、人前でこんなに抱きつかれてはハッキリ言って少し恥ずかしい。

 まぁでも、無事で良かったぜ。

 

「ねぇ和輝? ちょっと臭くない?」

 

「そりゃあまぁ……な」

 

 さっきまで下水道内に居ましたなんていったら何されるかわかったもんじゃないのでそのあたりの事はノーコメントで通す事にする。

 当の本人もあまり気にしていないみたいだしな。

 

「そーじ!!」

 

「愛香!!」

 

 ティアナに続く形で中から出てきたのは藍色の髪をツインテールにした女性。

 さっき都市部の方で総二さんに見せてもらった写真に写っていた胸の寂しい女性と顔が一致する事と総二さんの反応からしてあの人が仲間の一人だろう。

 名前は愛香と言うらしい。

 俺らと違って抱きしめ合う訳ではないが総二さんと愛香さんも再会を喜んでいるようだった。

 

「よかったな和輝」

 

 下水道内で俺を励ましてくれた総二さんが声をかけてくれた。

 俺はそれにサムズアップで返す。

 

「どうしたのよ?」

 

「なぁに男の友情って奴だよ。てか、それよりもよく無事だったな」

 

「まぁね。テイルブルーこと愛香さんが一緒にいてくれたから助かったわ」

 

「え!? あの人がテイルブルー!?」

 

 またまたビックリ。まさかまさかティアナはテイルブルーと一緒にいたとは。

 俺は愛香さんにティアナを守ってくれてありがとうと頭を下げる。

 すると愛香さんはお礼なんて別にいいわよと手を振ってくれた。

 俺はそれを見て愛香さんも総二さんと同じく良い人なんだなと理解する。

 テイルブルーと言えば、以前、ハーゲンティギルディの作った自主製作ビデオで酷い扱いを受けていたので、もしかしたら獣のようなヤバい奴が変身しているのかと思っていたがどうやら違うようだ。

 

「あれ? そういや華先生は?」

 

「そうだ愛香、慧理那はどうしたんだ?」

 

 互いにもう一人の仲間がいない事に気が付いた俺と総二さんはその事についてそれぞれ尋ねるが、結果は芳しくなかった。

 両方ともいざとなれば一人で変身できるので大丈夫だとは思うが、不安だぜ。

 

「それはそうと和輝、大変なのよ」

 

「なんだよ急に……ってもしかしてこの世界の事か!?」

 

「そう。見たでしょ、ここにいる人たちのツインテール」

 

 男女問わず皆がツインテールを嫌々ではなく自主的に結ぶ、ある意味異常な光景が頭の中に蘇る。

 俺はそれが何かこの世界に起きている事と関係があるのかと疑っていたがどうやら当たりのようだ。

 

「そこから先はわたしがお話します」

 

「「リーン!!」」

 

 またしても新しく聞こえてくる声。

 振り向くとそこにはリールを少しだけ成長させた少女が立っていた。

 ティアナと総二さんの反応からしてこの子がリーンみたいだな。

 

「リーヴ姉さん、リールを離してやってください。客人が来ているんですよ」

 

「ッ!? そ、それは済まない」

 

「ぷはーっ、やっと解放された……」

 

 ずっとリールを抱きしめていた女性、名はリーヴと言うらしい。

 リーヴはリーンの声を聞いてようやく我に帰ったようで抱きしめていたリールを解放した。

 

「成程、彼女たちは三姉妹だったのか……」

 

「みたいですね……」

 

 総二さんに続く形で頷く俺であった。

 

 

 

 

「では改めて紹介します。姉のリーヴと妹のリール、わたしはリーンと言います」

 

 アジトと呼ばれる屋敷の奥に招待された俺たち一行。

 先ずは私たちからとリーンが自己紹介を始めた。

 にしてもリーヴにリーンにリールか。ややこしいけど何とか覚えられそうだ。

 一番上の姉であるリーヴのツインテールは凛々しく、真ん中のリーンのは優しく、一番末っ子のリールのは元気さを感じさせる。

 

「先程はみっともない真似をした。妹を助けて頂いたようで心より感謝する」

 

「いやいやとんでもない。当然の事をしただけですよ」

 

 頭を下げるリーヴと大人な返しを見せる総二さん。

 如何にも優等生と言った具合の言葉なのに全く嫌味を感じない様は流石というべきか。

 その後、今度は俺たちがそれぞれ順番に自己紹介を済ませていく。

 わかってはいたがティアナの奴、総二さんがテイルレッドだという事に驚愕していやがった。

 一方で総二さんの方はティアナの姿に興味深そうな眼差しを送っている。

 

「総二さん、やっぱし気になります?」

 

「ああ。見れば見る程、双愛そっくりだ」

 

 本当に未来からやって来た娘なのかどうかこの際置いておくとして、ティアナの容姿は総二さんの娘である双愛とやらに本当にそっくり瓜二つだ。

 それが何を意味しているのかは俺にはさっぱり見当がつかない。

 ひょっとしてティアナも総二さんの娘だったりするのか?

 

「いや、流石にそれはないか……」

 

「和輝、どうしたのよ」

 

「いや、別に何でもねぇよ。ってかそれよりもよぉ、一体全体、この世界はどうなっちまっているんだよ。都市部ではツインテールが恐怖の対象みたいな扱い受けてる癖に、ここでは女だけなら兎も角、男までもみんながツインテールしているわで俺には全く訳がわからないぜ」

 

 俺はここに来るまでに思った疑問を全て吐き出す。

 するとリーンがスッと前に出た。

 

「実は……この世界は侵略を受けているというより、すでに侵略されてしまったと言った方がいい世界なんです」

 

「何ぃ!?」

 

「何だって!?」

 

 俺と同じで驚きの声を上げる総二さん。

 何となくそうなんじゃないかと思い始めていた俺ではあったが、改めてそう言われれば驚かざる得なかった。

 そして、そんな俺たちを見たリーンはゆっくりと話し始める。

 

「事の始まりは今から半年前にこの世界の守護者たるツインテール戦士が姿を見せなくなってから約1ヶ月後」

 

「ん? その言い方だとよ、この世界のツインテール戦士がいなくなったのって今回の事件と関係ないように聞こえるが……」

 

 話し始めた直後で悪いがつい思った事を口に出してしまった。

 だがリーンは嫌な顔一つせずにその疑問に答え始める。

 

「おそらくですけど、この世界のツインテール戦士がいなくなったのと今回の事件は別問題だと思います。確証はありませんが何となくそう思うんです」

 

 ふーん、成程。

 そこの辺りは敵さんに聞き出すしかなさそうだな。

 

「兎に角、それまで平和だったこの世界にとある二体のエレメリアンがやってきました」

 

「二体のエレメリアン?」

 

「はい。その一体はメフィストギルディ、そしてもう一体はその主であるサタンギルディ」

 

 メフィストは置いておいて、サタンと言う名前には心当たりがある。

 確か、魔王と称させる強大な悪魔の名前だ。

 

「メフィストギルディはこの世界にやって来るなり、わたしたち人類にこう言いました。私たちはこの世界で争うつもりはありません、ただあなたたち人類に恵を授けに来ました。と」

 

 争うつもりはない? エレメリアンなのに? これは一体どういう事だ?

 

「アルティメギルのように宣戦布告したわけでもなく、わたしたち人類に恵を授けると言い放ったメフィストギルディを見て最初はみんな疑ってかかりました。いつか本性を表すんじゃないかって。でも、メフィストギルディは特に危害を加える事無く、わたしたちに富と技術を授けていったのです」

 

 はぁ? どういう事だよ。

 だって要するにメフィストギルディとやらは何も貰わずただ人類にエレメリアン特有の高い技術力をプレゼントしていたりしたって訳だろ?

 わけわかんねぇぜ。

 

「お二人は見ましたよね? 発達した町の風景を。」

 

「「あ、ああ」」

 

 突然、話を振られた俺と総二さんは最初に辿り着いた町の風景を思い出す。

 宙を浮く車に飛び交うドローン、SFの世界その物と言った近未来の風景だった。

 

「それら全てはメフィストギルディがもたらした物です。彼らが来るまではわたしたちの世界に機械と言った物は存在しませんでした」

 

 それまで機械といった物が存在しなかった!?

 つまり、メフィストギルディが来てから半年も経たずにあそこまで技術力をあげたって事じゃねぇか。

 その事実に俺と総二さんはただただ驚かされる。

 

「話が逸れましたね、話を戻します。時にはその圧倒的な力を使って、属性力を狙う他のエレメリアンたちを倒し、少し前にいなくなってしまったこの世界のツインテール戦士の代わりをする姿を見せたりして段々とメフィストギルディは支持を集めていき、いつしかメフィストギルディとその主であるサタンギルディはこの世界に舞い降りた神と呼ばれる程になっていました」

 

「ふーん、ここまでならただの気前のいいエレメリアンだけど……何か裏があったって事だな」

 

「はい。メフィストギルディには裏の顔がありました。それは皆さん知っての通り、属性力を他者から奪おうとするエレメリアンとしての顔です」

 

 リーンのその言葉を聞いてやっぱりかと納得する俺と総二さん。

 そしてリーンはより一層、神妙な顔つきになりながら口を開く。

 

「ある時、メフィストギルディは言いました。これから先、我々に滞在して欲しければ属性力を献上しろ、さもなくば我々が与えた全ての恵は泡となって消えるだろう。と」

 

 それは間違いなく脅迫と言って差し支えない物。

 好き勝手に与えておいて、時が来たらその見返りを寄越せと言い張るだなんて質の悪い借金取りだぜ。

 俺はメフィストギルディの悪質なやり方に怒りを覚えた。

 

「わたしたちをはじめ、いくつかの人たちは属性力を渡してなるものか、それならば元の生活に戻ってやる。そう考えたんですけど、この世界の大半の人たちは一度覚えてしまった誘惑に勝てず、メフィストギルディの支配を受ける事になってしまった結果、この世界は実質的にメフィストギルディの支配を受ける事になってしまったのです」

 

 成程、だからこの世界は侵略されてしまった世界と言う訳なのか。

 だけど、何故、ツインテールが恐怖の対象になったりしているんだろう。

 俺はそれについて尋ねてみるとこう返って来た。

 

「わたしたち、ツインテール解放戦線はそんなメフィストギルディの支配に立ち向かうべく結成された組織。ここにいるみんながツインテールなのはメフィストギルディたちの社会に抗うという意思を表した印なんです。ですけど、わたしたちは所謂テロリストにあたります。だから他の人々にはツインテールが恐怖の対象になっているんです……」

 

 今にも泣き抱きそうな表情になるリーン。

 好きな髪型がテロリストの証となっているだなんて辛いに決まっている。

 そんなリーンを見て総二さんが立ち上がる。

 

「ツインテールはテロリストの証なんかじゃない!!」

 

「総二さん……」

 

 総二さんの声は怒りに満ちていた。

 俺はさっきまでの温厚そうな雰囲気との違いに面食らってしまう。

 これが最強のツインテール属性を持つ者の情熱なのか……。

 

「リーン。大丈夫だ、俺たちがついてる。俺たちが来たからにはこんな世界、ツインテールが恐怖の対象なんかじゃない元の世界に戻してやる」

 

「ありがとう……!! お兄ちゃん!!」

 

 感動の余りか総二さんに抱きつくリーン。

 総二さんはそれを優しく抱きとめリーンのツインテールを撫で始める。

 

「そーじぃ……!!」「貴様、我が妹に……!!」

 

 心なしか約二名、愛香さんとリーヴが怒りに燃えているような気がするが、俺は気にしない事にする。

 にしてもこの世界、かなりヤバい状況になっていやがったな。

 果たしてこの世界は俺たちで救う事が出来るのだろうかと不安になってくる。

 

「あれ? そういや、お前はなんでババアから鞄をひったくっていたんだよ」

 

「バ、バカ!! それを言うな!!」

 

「リール!!!」

 

 一体、リールは何を慌てているんだと思った矢先、さっきまで総二さん相手に怒りを見せていたリーヴが、その烈火の如き怒りをリールに向けると大きく怒鳴り始めた。

 

「あれ程、泥棒はいけないと言ったのにあなたって()は!!」

 

「だって、お腹空いたんだもん!!」

 

 ツインテール解放戦線はメフィストギルディがもたらした富や技術を持っていないが故に常に貧困にさらされている。だからリールが町で泥棒やっていたのは飢えをしのぐ為だったというわけか。

 お仕置きとしてリーヴに頭ぐりぐりされるリールの姿を見て、俺は何だか可哀想に思えた。

 

 

 

 

「総二さんは大学生なんですよね? もしかして大学ではツインテールの事について研究していたりするんですか!!」

 

「ああ。ツインテールをどうすればもっと広めれるかとか、古代ツインテール語についてだとか色々と沢山だ」

 

「是非ともお話聞かせてください!!」

 

 この世界の状況を把握し終えた俺たち一行は案内された客間にて束の間の交流を楽しんでいた。

 と言っても、心の底から楽しんでいるのはティアナと総二さんの二人だけであり、俺と愛香さんは互いに少しだけ話した後はそのまま黙ってティアナと総二さんの様子を遠くの席から伺っていた。

 

「ねぇあんた、あんたティアナの彼氏なんでしょ……」

 

「それがどうしたんだよ」

 

「何とかしなさいよ」

 

「うるせぇ、お前こそ総二さんの幼馴染なんだろ。何とかしろよ」

 

 途端、黙りこくってしまう愛香さん。

 どうやら愛香さんは恋愛事に関してはあまりガツガツいけないタイプのようだ。

 俺もそうなので少しばかりシンパシーを感じる。

 

「なぁ、愛香さん。少しばかりだけどよ、同盟を結ばねぇか?」

 

「同盟?」

 

「ああ。俺はティアナと総二さんがこれ以上くっつくのを避けたい。あんたは総二さんとくっつきたい。じゃあここでいがみ合っている場合じゃねぇじゃねぇか」

 

 具体的に何をするかはまだ決めていないが、少しでも仲間を増やす事に越したことはない。

 そう判断したからこそ、俺は愛香さんに同盟を結ぼうと提案した。

 愛香さんは少し悩んだ素振りを一瞬見せたが、直ぐに頷いてくれた。

 

「いいわ、その話乗った」

 

「じゃあ握手といこうぜ」

 

 利害が一致した俺たちは固い握手を交わす。

 最終目的は同じ。

 これ以上、あの二人をくっつけさせてたまるかってんだ。

 

「愛香、お前いつの間にそんな仲良くなったんだ?」

 

「何々? もしかして和輝、浮気~?」

 

「「違うわ(よ)!!」」

 

 愛香さんと握手している所を見て何かを勘違いしている様子を見せた二人に対して声を荒げる俺たち。

 その直後、慌てた様子でリールが部屋に入って来た。

 

「大変だ!! 奴らが……!! 奴らが攻めて来た!!」

 

 奴ら、それは間違いなくメフィストギルディの事を指しているのだろう。

 その言葉を聞いた俺たちの顔つきが戦士の物に変化する。

 

「みんな、行くぞ!!」

 

 総二さんを先頭に俺たちは駆け出した。




本エピソードは私の好きな仮面ライダー映画を元ネタとして使っていたりします。 
と言っても、原作5巻をオマージュする過程でかなり雰囲気が違っていきましたけど……



キャラクター紹介19

 リーン
 性別:女
 年齢:非公開
 誕生日:非公開
 身長:149cm
 体重:30g
B70・W52・H70

 リールの姉且つリーヴの妹。
 凛々しくしっかり者だが厳しいリーヴと違って誰に対しても優しい為、妹のリールに懐かれている。
 高いツインテール属性の持ち主だが戦士ではない。

 
 リーヴ
 性別:女
 年齢:非公開
 誕生日:非公開
 身長:177cm
 体重:45g
B87・W55・H89

 メフィストギルディたちと戦うツインテール解放戦線のリーダー。
 リーヴとリールの姉。
 真面目でしっかりした性格の為、よくやんちゃ者である妹のリールを叱っている。
 隠しているが本当は大のシスコン。


 リール
 性別:女
 年齢:非公開
 誕生日:非公開
 身長:133cm
 体重:25g
B60・W50・H64

 三姉妹の末っ子。
 やんちゃで男勝りな性格の為、姉であるリーヴからは日々叱られている。
 夢はいつか立派な戦士になって姉二人を助ける事である。
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