俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
メカニカルな甲冑に身を包んだ見た事もない
「モゲゲーー!!」
「「「うあぁぁぁぁ!!」」」
「「「きゃあぁぁぁ!!」」」
属性力を奪う為ではなく、このアジト近辺に住んでいる反逆者を根絶やしにせんとする攻撃方法が逃げ惑う人々へ牙をむく。
リールの報告を受けた俺たちが、総二さんを先頭にして屋敷を飛び出して見たのは、そんな凄惨極まりない現場の様子。
俺たち全員はそれを見て直感した。
この戦闘員は純粋な破壊活動をしにやって来たのだと。
「何がこの世界で争うつもりはありませんだ……!! 攻撃しているのはお前たちじゃないか……!!」
メフィストギルディのやり方に強い怒りを示す総二さん。
俺も同感だぜ。
こんな弱い者いじめのような汚ねぇやり方断じて許していい筈が無い。
「お願いだ……みんなを……お姉ちゃんを助けてくれ……」
遠くの広場で銃を手に取り仲間と共に戦うリーヴと、子供たちを安全な場所に避難させようとするリーンの、二人の姉の様子を心配するリールが総二さんに頭を下げる。
総二さんはそんなリールの頭を優しく撫でた。
「大丈夫だ。さっきも言ったが、俺たちはその為に来たんだからな」
「そうよ、あんたは安全な所で見てなさい」
総二さんの励ましの言葉に愛香さんが続く。
俺とティアナはそんな二人の様子を見て、何となくヒーローとしての年季の違いのような物を感じ取った。
「ありがとう……!! 総二、愛香、ティアナ、後ついでに和輝」
「おいちょっと待て!! 俺だけついでってどういう事だよおい!!」
そのツッコミに対してわざとらしく舌を出して悪戯っぽい笑顔を浮かべたリールは屋敷の奥へと駆け出す。
俺はそれを見て後でリーヴに言いつけてやると心に誓う。
「さて、行くぞみんな!!」
いっけね、気を取り直して今は戦うべき時だ。
俺と総二さんと愛香さんは揃って前に出て並び立つ。そして俺は、ティアナから送られてきたテイルドライバーを、総二さんと愛香さんは自身の腕に嵌められているテイルブレスを、それぞれ構えた。
「「「テイル・オン!!」」」
赤い光と青い光と青紫の光が解き放たれ、俺たち三人は戦うべき姿へと変身を遂げる。
総二さんはテイルレッド、愛香さんはテイルブルー、そして俺はテイルバイオレットだ。
「凄い……これがテイルレッドのツインテール……!!」
テイルレッドのツインテールを見て目を輝かせるティアナ。
どうやら初めて生で見るテイルレッドのツインテールに心奪われたみたいだな。
「へ~唯乃の言ってた事は本当だったんだ……。ていうかティアナは変身しないんだ」
「ええ……まぁ……」
愛香さんは愛香さんで、俺がテイルバイオレットに変身し、ティアナが変身しないのを見て驚いている様子であり、どうやらテイルバイオレットの事自体が色々と半信半疑だったみたいだ。
まぁ、無理もないか。違う世界で自身と似たような装備をしたツインテール戦士がいて尚且つそれが二人で変身だなんて、信じ込む方が難しいしな。
「ブルーは畑の方を、バイオレットは居住スペースを頼む!! 俺はリーヴたちを助けに行く!!」
「オッケー!! わかったわ」
「了解したぜ!! 総二さん!!」
レッドの指揮の下、散開する俺たち三人。
流石はツインテイルズのリーダーだと感心するが、総二さん曰く、本来のツインテイルズの指揮担当は別でいるらしい。何でもその人はこの世界で来る過程で起きたちょっとしたトラブルの影響で来るのに遅れているとの事だ。
「まっ、兎に角、いっちょやりますか!!」
青紫のツインテールを風になびかせた俺は居住スペースであるテント群へと颯爽と駆ける。
そこではツインテール姿の男たちが非戦闘員である女子供を逃がすべく必死に戦っている。
今にもやられそうになっている中、俺は何とか間に合った。
「させるかよ!!」
甲冑で武装した
俺はそんな武装戦闘員をヤクザキックで乱暴に蹴り飛ばす。
武装戦闘員はたまらず後退りし、驚きの声を漏らす。
「モゲゲゲ!?」
「随分と固ってなぁおい。まぁでも、相手にとって不足無しだぜ」
その甲冑はどうやら伊達じゃないみたいだな。
だが、突破不可能ってレベルではない。
そう判断した俺はフォースリヴォンに手を当てウインドセイバーを召喚した。
「あ、あんたは一体……」
「俺の名はテイルバイオレット。訳あって異世界から助太刀にきたって奴だ」
驚きの余り尻もちをついていた男が俺に声をかけてきたので、敵ではない事を伝える。
それを聞いた男はありがとうと言い残すとまだ逃げ遅れている人々を逃がすべく走り出す。
「さぁて、ブッ飛ばしていくぜ!!」
周囲に逃げ遅れた人がいない事を確認した俺は、ウインドセイバーを手に武装戦闘員の群れに向かっていく。
迎え撃つべく短剣らしき武器を取り出す武装戦闘員。
ウインドセイバーと武装戦闘員の短剣がぶつかり合い火花を散らす。
「モゲー!!」
「クッソ……ッタレがぁ!!」
ウインドセイバーと短剣の鍔迫り合いを力任せに押し切った俺はそのままの勢いに乗って次々と武装戦闘員を斬り捌いていく。
成程。実力的にも数的にもこいつらは、以前戦ったボティスギルティの操る強化型戦闘員と同じかそれ以上のレベルって訳か。雑魚だと思って手を抜くとうっかりやられかねない相手だ。
ここはいっちょ、必殺技で押し切るってのも手だなと判断した俺はティアナに通信を繋ぐ。
「ティアナ!! いつもの頼んだ!! 一気に押し切る!!」
『了解したわ!! 行くわよ和輝!!』
程なくして送られてきた属性力をエネルギーに変換し、ウインドセイバーへと送って
俺は武装戦闘員の群れを一掃せんと思いっ切りウインドセイバーで薙ぎ払う。
「うらぁぁぁぁッ!!」
「「「モゲゲゲゲーーーー!!!!」」」
巨大な斬撃波である強化ストームブレイクが武装戦闘員の群れを一気に斬り裂くと、武装戦闘員は連鎖的な爆発を起こし一瞬の内に全滅した。
ホッと一息つく俺は、ドッと疲れが押し寄せてくる中で、他の二人の様子を確認せんと先ずは畑エリアの方に目を向ける。
するとそこにはテイルブルーが素手で武装戦闘員の群れを蹂躙する様子があった。
「モゲッ!!」
「モゲゲッ!!」
「モゲゲ~!!」
逃げ惑う武装戦闘員たちを淡々と空へブッ飛ばし処理するテイルブルー。
その様はまさに鬼神の如し。
テイルブルーがエレメリアンの間で怪獣扱いをされる理由がよくわかる。
「テイルレッドは……?」
テイルブルーは大丈夫だなと判断した俺は、次にテイルレッドの方に目を向けると、テイルレッドは広場にて身の丈以上の大剣をぶんぶんと華麗に振り回して武装戦闘員を斬り捌いていた。
「たぁぁッ!!」
特徴的なのはテイルブルーと違って恐ろしさや怖さといった物が感じられず、寧ろ可愛いカッコいいといった言葉が自然と出てきそうになる事だ。
やはりというかテイルレッドは凄い。
戦いの中であんなにもツインテールをカッコよくそれでいて可愛く魅せる事が出来るなんて、とてもじゃないが真似できる気がしない。
「「
レッドとブルー、二人の声が戦場にて重なった。
レッドは大剣、ブルーは槍、それぞれが武器を振るって武装戦闘員を光の柱で捕縛。
二人はそれぞれの必殺技を叩きこむ。
「グランドブレイザーーーッ!!」
「エグゼキュートウェーーーブ!!」
炎の斬撃と水の槍撃が、捕縛していた武装戦闘員たちを一瞬の内に全滅させる。
それを見た生き残っていた武装戦闘員たちは我先にと逃げ出し始め、いつの間にかあんなにも多くいた筈の武装戦闘員は一体もいなくなってしまっていた。
『和輝……あれがツインテイルズの戦いなのね……』
テイルブレス越しで声をかけてきたティアナだったが、俺は二人の圧巻の戦いぶりにただただ感激し、言葉を失っていたのだった。
◇
陽もすっかりと落ちて暗くなった夜のツインテール解放戦線のアジト。
昼間の戦闘の為か、俺と総二さんがやって来た時よりも外の廃墟群は酷く荒らされてしまっており、元々ボロボロだったのがより一層痛々しい姿となってしまっている。
結果から見れば勝利だが、こうしてみると手放しに喜べるような事ではないのは明白。
だが、今まで希望が見えてなかったツインテール解放戦線の人たちにとって、昼間の戦いを勝利で終えた事に対する喜びはとても言葉で表せるような物ではなかったらしく、現在、祝勝会と称してアジト内の大広間ではちょっとした宴会が始まった。
「で、では皆さん……!! え、えーっと……
代表者として乾杯の音頭をやらされる羽目になった総二さんが渾身の挨拶をかます。
それは普通の宴会ならば空気を凍らせるに等しい絶対零度の一発ギャグ。
だが、ツインテールを守る為に日夜戦い続ける事を決めた彼ら彼女らにとっては、その挨拶は何事もなく受け入れられた。
「「「
いつかの為にとって置いたとされる酒が入ったグラスがぶつかり合う。
ちなみに俺やティアナや総二さん、それとリールやその他大勢の子共たちのような明らかな未成年組のグラスには、酒は入れられておらず、入っているのは森で採れる木の実から作られたジュースだ。
乾杯を終えた俺とティアナはジュースの入ったグラスをそれぞれ口につける。
「へ~結構美味いじゃないか」
「うん!! 美味しい!!」
普通、果汁100%のジュースと言えば添加物が入っていない為、独特な味や臭いがするのが特徴ではあるが、このジュースからはそんな事は一切感じない。
味の雰囲気で言えばリンゴのようなさっぱりとした甘みが特徴と言えるだろう。
「食い物がねぇのがちと寂しいけどな」
「和輝、それは言わないお約束でしょ」
宴会と言っても食べ物は、昼間の戦いで畑が荒らされた事もあってか用意されていない為、飲み物しか口に入れる物がなくて少し寂しい。
その事についてつい思った事を口に出してしまい、ティアナに怒られた。
「「「バンザーイ!! バンザーイ!!」」」
「わかった!! わかったから!!」
いつの間にか大広間中央にて、総二さんがツインテールをした男たちに胴上げされていた。
口ではああは言ってはいるもののまんざらでもない様子なのは、ツインテールに胴上げされているからなのかもしれない。
それにしても総二さん、妙に手馴れている感じがするのは気のせいだろうか?
「あれ? そういや、愛香さんは?」
総二さんは男どもに胴上げされていて、ティアナは俺と一緒、リーンはリールを含めたはしゃぐ子供たちの世話で、リーヴは何やら考え事があるらしくこの大広間にはいない。
だとするならば残った愛香さんは一体誰とどこにいるのだろうか。
その答えは直ぐにわかった。
「いた。あんな所に……」
大広間の隅も隅にて、愛香さんはグラス片手に、胴上げされている総二さんを見つめていた。
寂しさを纏わせるそんな愛香さんの下へと俺たち二人は移動する。
「愛香さん? 何してるんですか?」
ティアナが愛香さんは話しかける。
すると愛香さんは一転して何ともないようなそぶりを見せる。
「別に……ただそーじを見てるだけ……」
声をかけにいくでもなくただ一人寂しく見ているだけ。
何とも言えないじれったさを俺は覚えてしまう。
「なぁ、あんた総二さんとくっつきたいんだろ? ほら、今とかチャンスじゃねぇの?」
丁度いいタイミングで胴上げから解放された総二さんを指さし提案。
しかし、愛香さんは総二さんの下へ行こうとしない。
こいつは中々に面倒だなと思った矢先、愛香さんはポツリと呟く。
「今のあたしを見たらアイツは何て言うかしらね……」
「アイツ?」
愛香さんが言ったアイツ。それが総二さんを指している物ではないのは直ぐにわかるが、ならば一体そのアイツとやらが誰なのだろうかはわからない。
言葉のニュアンス的にその人物は愛香さんにとってかけがえのない存在だと言う事がわかる。
「なぁ? その人ってもしかしてあんたの親友か何かか?」
「ううん、それだけじゃない。アイツはね、あたしの親友であり、
「成程な……」
全く、総二さんも罪な男だな。
近くにこんな可愛い幼馴染がいながら別の女も惚れさせるだなんてよ。
折角同盟を結んだのだから俺としては愛香さんが総二さんくっついて欲しいと思うが、どうやら事はそう簡単にはいかないらしい。
他ならぬ愛香さんが総二さんとくっつく事に対して少し躊躇いを見せている様に見える。
「ねぇねぇ和輝? 何、盛り上がっているのよ」
「お前って奴は……」
何にも理解していないティアナを見て別の意味で頭を抱えそうになるそんな時、俺は大広間入口にて見慣れぬ男を発見した。
「誰だ……アイツ……!!」
その男の年齢は見た所、30~40代ごろと思われ、服装は優雅さに溢れた埃一つない黒一色のスーツ。とてもじゃないがこの辺り一帯に住んでいるような服装ではない。それどころか髪型がツインテール解放戦線の証であるツインテールですらないオールバック。
その明らかに異質な男の存在にツインテール解放戦線連中は誰一人として気づいている様子はなく、俺やティアナ、総二さんと愛香さんといった異世界出身組だけが気づいている様子だった。
「おい和輝、何者なんだアイツ」
男に気づいた様子の総二さんが俺たちの下に来るなり、そう尋ねてくる。
「さぁ? でも普通じゃないって事は確かです」
柔和な笑みを浮かべるその男からは不思議と敵意は感じないのだが、目元の方が一切笑っていないので、それがより一層わけのわからない不気味さと恐怖を与えてくる。
何もかもが胡散臭いその黒ずくめの男。
男は俺たちを見つめるとゆっくりと近づいてきた。
「失礼、盛り上がっている所申し訳ございませんが、私も少し参加させては頂けないでしょうか?」
まるで紳士のように柔らかく丁寧な言葉遣い。
話し形といい敵ではなさそうに見えるが、俺やティアナ、総二さんや愛香さんは警戒心を露わにする。
「随分と警戒されているようですが、大丈夫ですよ。私は見て通り、怪しい者ではございません」
一体全体、どの口が言っているのだろうか。
どう見ても怪しさ抜群じゃねぇかよおい。
「ねぇ、あんたの存在はあたしらにしか気づいていないようだけど何したの?」
「なぁに、ただの認識攪乱ですよ。あなたたちが使う変身デバイスに搭載された物の発展です。私としてはあまり騒ぎになって欲しくないので」
認識攪乱と言えば確かエレメリアンから属性力を隠す為に使われる機能だったはず。
それをさも平然と利用しているだなんてやはりというかコイツ、何者なんだ……?
「お前、一体何者だ?」
代表して総二さんが黒ずくめの男を問い詰める。
すると男はフフッと不敵な笑み見せると、懐のポケットから一枚の紙切れを取り出した。
「これは失敬。申し遅れましたねツインテイルズの皆様。私目はこういった者でございます」
「「「「!?」」」」
渡された紙切れ。
それは社会人が挨拶の時に使う名刺だったのだが、問題はそこじゃない。
その名刺には綺麗な文字でメフィストギルディと書かれていたんだ。
まさかまさかの敵が直接乗り込んでくるという事態に直面した俺たちは、それぞれの変身アイテムを構えてメフィストギルディの前に出る。
「おおっと、誤解しないでください。私は争いに来たつもりはないのです」
臨戦態勢に入る俺たちに対して、柔和な胡散臭い笑みを崩す事なくメフィストギルディはそう告げた。
「私はただあなたたちと話をしに参りました。どうぞ矛をお収めください」
「んだと? 昼間はてめぇらから攻撃してきやがった癖に!! やられ返されるのは嫌だってか? ええ!!」
昼間の戦いでの惨状を知っている俺からすればその一言は火に油を注ぐような物だった。
俺はそのまま胸倉を掴み掛からんとする勢いでメフィストギルディに飛びつこうとするが、総二さんが俺を制止する。
「待て和輝、落ち着いてここは一旦話を聞こう」
「何でですか総二さん!!」
「和輝!! 総二さんの言う通りよ!! それにこんな所に一人で乗り込んでくるだなんて何か危険だわ!!」
ティアナの言葉を聞いた事もあり、俺は我に帰る。
確かに何の策もなく敵地のど真ん中に一人でやって来るだなんて何か裏か策があるとしか思えない。
冷静さを取り戻した俺は拳を収めた。
「わかっていただけましたか。ありがとうございます」
その様子を見て深々と頭を下げるメフィストギルディ。
それに対して総二さんは別にお前を完全に信用しきった訳ではなく、怪しい動きを見せたら容赦はしないと警告を口にする。
「これはこれは手厳しい。ですが、私は本当にあなたたちと争うつもりはありません。争いというのは何とも愚かで気品の無いエレガントさからかけ離れた行為ですからね」
エレガントという言葉に引っかかった俺は思う。
コイツの属性はもしかしてそれなんじゃないのかってな。
「そもそもエレガントとは何たるものかと申しますと――」
「はいはいわかったわかった。で、要件は何だよおい、さっさと言いやがれ」
じれったくなった俺がそう口にするとメフィストギルディはこれはこれははすいませんとまたまた頭を下げた。
何というかエレガントさ以前にプライドの欠片もない奴だなと思う。
それがある意味、最大の不気味さを生み出しているのだが……
「では要件を伝えましょう。単刀直入に言います。諦めてこの世界から撤退してくださいツインテイルズの皆様方」
「「「「なッ……!?」」」」
俺たち全員言葉を失った。
まさか敵側の要件がこの世界を救うのは諦めろだとは思わなかったからだ。
「別にただでとは言いませんよ。それ相応の見返りは渡すつもりです」
悠々とそう言ってのけるメフィストギルディに対して何かガツンと言ってやろうかと思ったその時、総二さんが俺の前に出た。
「ふざけるな、お前たちのせいでこの世界からツインテールが失われようとしているんだぞ。俺たちがそんな提案にのると思っているのか!!」
皆の言葉を代弁する総二さんはとても力強かった。
これにはメフィストギルディもかたなしかと思われたが、当のメフィストギルディはわかっていたばかりに余裕の笑みを見せる。
「あなたたちは何か勘違いをしているようですね」
「勘違いだと……?」
「なにも私たちはアルティメギルのように属性力を根こそぎ奪うだなんていうはしたない行為はしてません。私はこの世界にいる人たちの同意を貰った上で属性力をほんの少し分けてもらっているのです」
メフィストギルディは支配したこの世界で全ての属性力を奪い去っているわけではなく、生活を豊かにする恵を与える代わりとして日々人々から属性力を少しずつ貰っていっていると語る。
町で出会った人々から完全に属性力がなくなっていなかったのはそれが原因か。
だがそれ続ければ、いずれこの世界から属性力が全て消えてしまうという事に変りはない。
「お前のやっている事はアルティメギルと何も変わらない。ただの侵略者と同じだ!!」
総ニさんの言う通りだ。
元はと言えばメフィストギルディの野郎がこの世界にやってきたのが原因なんだからな。
俺たちはメフィストギルディの要件を断固として拒否する。
「やはりそう来ましたか。ですが私は諦めません。いずれあなた方の方からこの世界から手を引くと私は信じていますから」
「それは一体どういう意味だ……!!」
まるで俺たちがこの世界の人間を見限るだろうとメフィストギルディは言ってのけた。
総二さんはその発言に真っ先に噛みつく。
するとメフィストギルディはまたもや不敵な笑みを浮かべる。
「なぁに、簡単な事ですよ。この世界の人々は多少の属性力なんか無くても生きていけると知ってしまった……詰まる所、この世界は既に負けているんです」
既に負けている。
それは一体、どういいう意味なのだろうか?
わからないが、不思議とその言葉は俺たちに重くのしかかる。
「お前の好きにはさせないぞ、メフィストギルディ!!」
「流石はテイルレッド。究極のツインテールと評されるだけはありますね」
大きな声で啖呵を切る総二さんだったが、メフィストギルディは全く持って意にも介していない余裕のある様子を見せる。
俺はそんなムカつく態度に我慢が効かなくなり、一発ぶん殴ってやろうかと拳を握りしめるそんな時、俺は周囲がざわつき始めている事に気が付いた。
「おいおい……」
「おい起きろ……!! 何だかへんだぞ」
「あれってまさか……!!」
「子供たちを避難させろ、急げ!!」
認識攪乱の影響もあり、さっきまで酒の入ったグラス片手にどんちゃん騒ぎしていたツインテール解放戦線の男たちだったが、異変に気が付いたのか皆が俺たちの方向に首を向けていた。
中には子供を避難させて銃を手に持つ者までいる。
「おやおや、認識攪乱の効果が薄まってしまったようですね」
総二さんの放った熱意が影響したからなのか知らないが、どうやら認識攪乱の効果が消えたみたいだな。
そう思ったも束の間、メフィストギルディは銃を持った男たちに取り囲まれた。
「どうやら勝負あったみてぇだぜ、メフィストギルディさんよぉ!!」
「これはこれは……随分と野蛮ですね。ま、仕方ないと言えばそうですが」
暴力で解決しようとした事を悲しんでいる様子のメフィストギルディ。
その後、俺たちに言いたい事を言い終えたからなのか、それとも状況が悪くなったからなのか、どちらには知らないがメフィストギルディはその場から去ろうと俺たちから背を向けた。
「逃げれると思ってるの?」
血の気の多い愛香さんを先頭にして俺たちはそれぞれの変身アイテムを構えながら一歩ずつ前に出る。
もし、この場でメフィストギルディの野郎が暴れ出したら即刻変身してブッ倒してやる考えの下だ。
だがしかし、メフィストギルディの野郎はなおも余裕の表情を見せつけていた。
「では皆さん、今日はこんなにも素晴らしいパーティーにご招待いただき大変ありがとうございました。私はここらでおいとまさせていただきます」
成程、逃げるつもりか。だが、そうはさせるかよ。
そう思い変身しようとするが、何故か体が金縛りにあったかのように動かない。
総二さんの方はどうだと目を動かして確認してみるが、俺同様に動けないでいる様子だった。
「少々手荒にはなりますが、申し訳ございません。最初から言っていますが、私は争うつもりはないのです」
変身してさえいればこんな金縛り程度にやられるだなんてなかったのに畜生。
そう後悔しても既に体は奴の術中にはまってしまっているので打つ手がない。
悔しむ俺たちの視線を受けつつメフィストギルディは、悠々とその場を後にしようとする。
「おっと、そう言えば忘れていました」
何かを思い出した様子のメフィストギルディ。
立ち止まり、おもむろに指をパチンと鳴らす。
するとどうだ。大広間の中央に、美味そうな料理が沢山並べられたテーブルが姿を現した。
「これは昼間の襲撃に対するお詫びです。ぜひ、皆さんで召し上がってください」
そう言い残した直後、メフィストギルディはスッとその場からいなくなり、俺たちにかかっていた術が消える。
そして、急に現れた見た事もないようなごちそうの数々に戸惑い驚くツインテール解放戦線の人々。
これまでの事の経緯を知っている俺たちは、そのごちそうに手を出そうとはしないが、常日頃から空腹を訴えているツインテール解放戦線の人々は恐る恐るではあるがごちそうを口にする。
美味そうに食べる人々。
どうやら毒はない様子みたいだ。
すると、それがわかった結果、ダムの水が決壊するかの如く、空腹に耐えきれなくなった人たちがごちそうに群がり始めた。
「どけそいつは俺のだ!!」
「うるせぇ!! お前さっき食ったろうが!!」
「この野郎、抜け駆けしやがって!!」
「てめぇ!! 髪引っ張るんじゃねぇ!!」
「みんな、落ちついてください!!」
遂には食事を求めて争い始める人々とそれを抑えようとするリーンたち。
俺はそれを見て何とも言えない悲しさと不安を覚えた。
メフィストギルディは某ウルトラ怪獣(宇宙人)がモチーフです。