俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
メフィストギルディがやってきたその日の夜。
大広間での宴会は、メフィストギルディが持ち込んだごちそうの山を誰が食べるかで大きく揉めてしまい、あの後、何とかリーヴがその場を収めてくれたおかげで何とかなったのだが、結局、宴会は苦い形で終わってしまった。
その後、リーンによって俺たちは就寝の為のゲストルームに案内された。
「へぇ、思ってたより綺麗だな……」
中はボロボロの外観と比べてもあり得ないくらいには綺麗な状態だった。
屋根付きベットにソファに丸形のテーブルにお洒落なキャビネット、窓にはレースのカーテンまでついている。
西洋風の造りが高級さを感じさせるぜ。
「申し訳ないんですけど、使用に耐えれる部屋がこの一つしかなくて……」
それの何がいけないのだろうか。
そう思った直後に理由がわかった。
俺たちは合計で四人いるのに部屋にはベットが二つしかなかったんだ。
「成程な、そういう事か」
「別にいいぜ。あっちのベットは俺とティアナ、そっちのベットは総二さんと愛香さんが使えばいいんだからよ。ね? 総二さん」
「あ、ああ……そ、そうだな」
さりげなくそう提案してみたが、総二さんは多少の動揺こそあれどその提案を難なく受け入れてくれた。
俺とティアナは一緒のベットで寝るだなんて事をこれまで何度もやって来たから別に今更恥ずかしくもなんともないが、総二さんはどうなのだろうかと思い、内心ひやひやしたのは内緒だぜ。
「い、いいの? そーじ?」
「まぁ……それしかなさそうだし、別に愛香が嫌じゃないのなら……」
「嫌じゃない嫌じゃない!!」
すっかり顔を赤くしてメスの顔になる愛香さん。
何だかんだ言って本当はやっぱり総ニさんとくっつきたいようだ。
何つーか色々ともどかしくて見ているこっちまでニヤニヤしちまうぜ全く。
「じゃあそういう事だから、この部屋遠慮なく使わせてもらうぜ」
「あ、ありがとうございます」
頭を下げるリーン。
余程、俺たちにこの部屋しか提供できなかった事が悔やんでいた様子。
そんなリーンに何故お前が謝んだよと俺は軽くツッコみを入れておいた。
「じゃあ、もう夜も遅いので……皆さまお休みなさい」
「ああ、お休みリーン」
皆を代表して総二さんがお休みをリーンに告げる。
別れ際にリーンのツインテールを撫でたように見えるが恐らく気のせいだろう。
俺たちは元の服装のままベットの中に入った。
◇
「ねぇ和輝、私たち元の世界ではどうなっているのかな?」
暗くなり窓から射す月明りだけがたよりの部屋の中、ベットの上で横になる俺にふと隣で横になっているティアナが話しをかけてきた。
「どういう意味だよ」
「もうわかってないんだから……いい和輝? 私たちがこの世界に来てもう一日経とうとしているのよ」
「だからそれがどうしたんだよ……」
「もう~だ、か、ら。私たち元の世界では何も誰にも何も言わずにこっちの世界に来てしまったでしょ」
そこまで言われて俺はやっとこさ気づいた。
俺もティアナもこの世界にやって来る際に誰にも異世界に出かけていますと言っていない。つまり、俺たちは現在、無断で外泊している事になる。
「やっべ……ばあちゃんに何て怒られるんだろう……」
「それよりも大変なのは華先生よ。もし、華先生がもしこっちの世界にきていたらどう言い訳すればいいのかしら」
そう言えば現在は俺たちの世界で言う所の平日にあたるので、無断外泊だけじゃなく学校までも無断欠席するような物じゃねぇか。
エレメリアンの出現もあって度々、無断欠席していた俺やティアナはまだ大丈夫だとしても、教師である華先生が無断で学校を休んじまうのはどうなんだろうか。
「てかよ、ちょっと待て!! エレメリアンはどうするんだよ!!」
「そうだ!! どうしよう和輝!!」
俺たちの世界からこの世界にやって来たのが俺、ティアナ、華先生だとするなら、俺たちがいた元の世界では今現在、エレメリアンと戦えるツインテール戦士が誰もいない事になる。
もし、その間にアルティデビルの野郎共が総攻撃でも仕掛けていたのならと思うと心配で心配でたまらない。
バアルギルディの奴がアルティデビルのトップだったのならそんな事はしてこないと断言できるのだが、バアルギルディの奴は何故か行方不明になっているのでそうもいかない。
俺とティアナの二人はますます華先生がこの世界にやってきていない事を祈るしかない。
「てか総二さん、あんたたちは大丈夫なんですか?」
「ん? 俺?」
急に話題を振られて驚く総二さん。
話題を振った俺としては何となく総二さんたちの事が心配になってしまったんだ。
「もう直ぐで終わるけど、俺たちは今、夏休み中だし……」
そうか、総二さんたちは大学生だから夏休み期間が長いのか。
それは何とも羨ましい限りだぜ。
まぁ、別に俺自身は学校を無断欠席することに抵抗はないんだがな。
「それに元の世界ではイースナや唯乃がいてくれているしな」
そういや、ツインテイルズはテイルレッドやテイルブルー以外にも数多くの戦士がいるんだっけか。
確か他にテイルイエローやテイルブラック、テイルシルバーなど。
唯乃さん変身するテイルフェニックスも含めればまだまだその数は多そうだ。
分担作業できる程の人数に少し憧れを覚えてしまう。
「むしろ未だに追ってこないトゥアールの方があたしは心配よ」
「そうだな……無事ならいいんだけどな」
「「トゥアール?」」
愛香さんがポツリと照れ臭そうに言ったその人物。
誰かわからない俺とティアナは首を傾げると総二さんが説明してくれた。
何でも、その人はテイルブレスなどの開発を担当するツインテイルズの頭脳と呼ばれる程の科学者らしく、先日言っていた本来のツインテイルズの指揮官に当たる人物との事。
「へ~つまり、そのトゥアールって人がテイルブレスやら何やらを開発してくれたって訳だ」
「ああ、そうだな」
テイルブレスを開発した科学者、トゥアール。
妙に日本人離れした名前から察するに外国人か何かだろうか。
いや、もしかしたら別の世界からツインテール戦士に相応しい適格者を探しにきた人かもしれない。
一度会ってどんな人か確かめてみたいものだぜ。
「私のテイルブレスの謎もわかるのかな……」
「そう言えば、ティアナは紫のテイルブレスをしているんだったな」
ベットから出るや否や、こっち側に来てまじまじとティアナのテイルブレスを見つめる総二さん。
ティアナが何かわかりますかと尋ねる。
だけど、本人たちは科学者でもないのであまりよくはわからないとの事だった。
「トゥアールがいてくれればな……」
「でも、そーじ。確か以前にトゥアール言ってなかったかしら? 確か現段階ではこれ以上はテイルブレスの量産が出来ないって」
現段階ではテイルブレスを量産する事が出来ない?
でも、確か唯乃さんはティアナのテイルブレスは側を真似した紛い物なんかじゃなくて本物だと言っていた筈。
それじゃこのティアナのテイルブレスは一体何なんだ?
深まる謎に頭を抱える俺たち。
まぁ、何にせよ。そのトゥアールって人がいない事に始まらない。
きっと、その人が今いてくれれば、ティアナの持つテイルブレスが何故変身出来ないのか含めて色々な謎がわかるのかもしれないっていうのによ。
運命の悪戯かどうかはわからねぇが、会う事が出来ないのがちともどかしい。
「そういや、そのトゥアールって人はどうして遅れているんですか?」
「それがこの世界に来る際に俺たちを乗せた移動艇がバリアにぶつかってしまってさ。トゥアールだけその移動艇に残って俺たちだけがこの世界にやってきたって訳なんだ」
「ちょ、ちょっと待ってください!! い、移動艇!? そんなもんまであるんですか!?」
世界と世界を行き来するのに移動艇なんてものまであるのかよ……
それももし、トゥアールって人の作った物だとするなら一体どんな頭脳をしているというんだ。
「え? じゃあ……逆に聞くけど、和輝たちはどうやってこの世界にきたんだ?」
「俺たちはお前のテイルブレスに搭載されていた機能を使っただけだよな?」
頷くティアナと驚く総二さんたち。
どうやら本来のテイルブレスに異世界移動機能とやらは搭載されていないようだ。
ますますティアナの持つテイルブレスは何なのかがわからなくなってくる。
「ま、まぁ、とりあえず話を戻しますと総二さんたちはこの世界に来る際にバリアのような物に妨害されたって事でいいんですよね?」
「あ、ああ」
もし、その妨害してきやがったのがメフィストギルディだとするのなら、色々と辻褄が合う。
先日の直接対談の時もそうだったが、メフィストギルディは直接的な戦いを望んでいないからだ。
バリアを張って妨害するだなんて如何にもって感じだぜ。
「恐らくそのメフィストギルディのせいだろうけど、トゥアルフォンさえ使えればな……」
「「トゥアルフォン?」」
「トゥアールが作ってくれた俺たちの通信端末だ」
成程、トゥアールが作ったスマホだからトゥアルフォンって訳か。
果たしてそのトゥアールって人は名付けて恥ずかしくなかったのだろうかと俺は思ってしまった。
その後、俺たちは特にこれと言った事を言う訳でもなく、夜は何事もなく過ぎていった。
◇
俺たちがこの世界にやってきたあの日からもう二日経った。
最初の襲撃があったあの日以降、メフィストギルディ側からの襲撃は全く持ってなく、穏やかとしか言えない日々を俺たちは過ごしている。
今日も今日とて俺、ティアナ、総二さん、愛香さんの四人はツインテール解放戦線のアジトにて特にやることもなく、ただジッとメフィストギルディの襲撃に備えて待機。
そして、現在、俺たちは屋敷の食堂にて昼飯を取っていた。
「今日もこれか……」
昼飯に出されたのは森で採った木の実と少量のパン。
当然だが、育ち盛りの俺の胃袋が満足できる量ではない。
後から聞いた話だが、何でも先日の襲撃の際に畑だけでなく食糧庫までもがやられてしまっていたらしく、今まで以上に飯が貧相になっているとの事だ。
「文句言わないの。折角食べさせてもらっているんだから」
「それはそうだけどよ……」
隣で同じ飯を食べるティアナが注意をしてきた。
だけど、そのティアナ自身もこの量の食事にとてもじゃないが満足しているようには思えない。
空腹を必死にこらえているのはバカでもわかるぜ。
「おやっさんの飯が恋しいぜ……」
今頃、元の世界ではおやっさんが美味そうな料理をいつものように作っているんだろうなと思うと、余計に腹が空いてくる。
クッソ、こんなになるのだったらメフィストギルディのだしたあの飯を食べるんだった。
「何だよ和輝、食べないのか。じゃあ私がもーらい」
どこからともなくリールの声が聞こえたかと思った直後、俺の皿に盛られていたパンと木の実が忽然と姿を消す。
ハッと背後を振り向くと、そこには美味しそうにパンと木の実を頬張るリールの姿があった。
「ああ!! リールてめぇこの野郎!! 俺の大事な飯を!!」
「奪われる方が悪いんだぞーだ」
「んだとてめぇ!!」
折角の大事な飯を奪うとは絶対に許さねぇ!!
飯の恨みは怖ぇんだぞこん畜生!!
そう怒りに燃える俺は、べーと舌を出して挑発してくるリールを追いかけはじめる。
「待ちやがれ!!」
「待つわけないだろバーカ!!」
「舐めやがってクソガキ!!」
「全く……子供なんだから……」
狭い食堂内で追いかけっこを始めた和輝とリール。
私としてはあまりにも低次元過ぎる争いにため息つきをつきたくなる気分よ。
「総二さんも何か言ってやってくださいよ」
私の真正面にて、愛香さんと一緒になって昼飯を食べている総二さんにそう話しかける。
だけど当の総二さんは特に気にしていないみたいだった。
「そうかな、何かむしろこれくらい騒がしい方が安心するよ」
総二さんは全然気にしていない所か寧ろこの騒がしさを楽しんでいるようだった。逆に愛香さんは少しばかりバツが悪そうな表情を見せている。
「愛香さん、一体どうしたんです?」
「ううん、何でもないわ」
まるでいつも誰かと今の和輝みたいに争っている素振りを見せる愛香さんだけど、流石にそんな事ないわよね。
愛香さんは私と同じでとても腕が立つから、少しでも力を入れると、相手にどんな怪我させるかわからないって知っている筈。
私だって全力を出していい相手は私のお母さんとそれから後……
「おい、今日もこんだけかよ!!」
「俺たち食べたりねーぜ!!」
「そうだそうだ!! それにまだあの時の飯が残ってんだろ!?」
ふと我に帰ると聞こえてくる怒号。
声がした方向に首を向けて見るとそこには、ツインテール解放戦線のメンバーの男が数人、今日の配給された昼食に文句を言っている姿だった。
必死に頭を下げて対応するリーンが可哀想に見える。
「ちょっとあんたたちねぇ……!!」
確かに食べたりない気持ちはわかるけど、だからと言ってリーンに当たっていい事じゃないじゃないの。
先日の事もあり、私は怒りのままに男たちに食って掛かり、総二さんと愛香さんも後に続く。
「あのね、あんたたち、食料は数少ないからみんなで分け合う物って決まっているでしょ!!」
「ああん? 何だお前ら……!!」
「お前ら、気持ちはわかるけど、寄ってたかってリーンに当たる事ないだろ」
「そーじの言う通りよ、あんたら弱い者いじめして恥ずかしくないの!?」
「ティアナさん……!! 総二さん……!! 愛香さん……!!」
感極まって泣き出すリーンと正論を言われてバツが悪そうな表情を浮かべる男たち。
「クッソ、わかったよ……お前ら行くぞ……」
観念したのか、男たちはそれぞれに与えられた食事を手に、食堂の隅へと移動していく。
私は大事にならなかった事に深く安堵した。
「くそぉ……逃げられたぜ……って、ん? ティアナに総二さんも一体何しているんだ?」
「和輝、あなたねぇ……」
リールとの追いかけっこが、リールの勝ちで終わった様子の和輝が、ここで何があったのかも知らずに寄って来る。
私はそんな和輝にため息をつくのであった。
◇
和輝たちが利用しているアジトの奥にあるとある個室。
ここはツインテール解放戦線のリーダーであるリーヴ専用の部屋だ。
彼女は日夜、どうすればメフィストギルディの支配からツインテールないし、人々を解放できるかについてを考えている。
がしかし、今日は別の事についてリーヴは頭を抱えていた。
「やはり……このままではジリ貧だな……」
先程、妹のリーンが食堂で戦線のメンバーに食糧不足についてを詰め寄られ、ちょっとした騒ぎになってしまった事を知ったリーヴ。
実際問題、食糧問題については彼女もこのままではいけないとわかってはいるのだが、先日の襲撃で食糧庫がやられた上に収穫間近だった畑をも荒らされてしまった事が重く響く。
彼女とて好きで皆に食糧を制限しているわけではない。
残された食糧を今いる全員に配るようにするにはこれしかないのだ。
だがしかし、先日のメフィストギルディの訪問の際に残された食事の取り合いからみてもわかる通り、皆の不満は抑え込まれているだけで爆発寸前まで溜まり始めている。
先程の食堂での一件はその前兆に過ぎないのだ。
「クソぉ……!! このまま皆の不和が重なれば、いずれこの戦線は崩壊してしまう……一体どうすればいいんだ……」
皆が愛したツインテールをメフィストギルディから取り戻したい。
その願いに賛同した者たちが今のツインテール解放戦線を構成している。
それが今、食糧難というこうも簡単な事で崩れ去ろうとしている。
「遅かれ早かれいずれこうなるのはわかっていた……わかっていたはずなのに……!!」
メフィストギルディの支配を受け入れればツインテールを愛でる事こそ出来なくても今よりもずっと裕福な生活を送る事が出来る。
なのにそれを拒み、ツインテールを優先した結果がこの様。
ツインテールに拘るが余り、彼ら彼女らはそれ以外の事を忘れていたのだ。
「どうすれば……」
「おやおや、お困りのようですね」
「ッ!?」
リーヴの耳に聞こえて来たのは本来、一人きりの個室では聞こえる筈のないもう一人の声。
扉をノックする音も部屋に入る音も聞こえなかった以上、何らかの超常的な何かが関わっているのは明白。
リーヴは周囲を見渡す。
すると、背後に黒いスーツを着たオールバックの男が柔和な笑みを浮かべながら立っていた。
「貴様は……!?」
「おやおや、そう殺気立たないで、私の名はメフィストギルディ。争いに来たわけではありません」
「メフィストギルディだと……!!」
まさかの敵の登場に焦るリーヴは仲間を呼ぶべく緊急用ベルを鳴らそうと動くが、直後にメフィストギルディが指をパチンと鳴らす。
するとどうだ、敵の襲来を告げる筈の緊急用ベルがうんともすんとも言わなくなってしまった。
「な、なにをしたんだ……!!」
「別に何もしてはいませんよ。ただ私は、あなたと二人きりで話がしたかっただけです」
笑みを絶やさずにそう告げるメフィストギルディからは底知れぬ恐怖を感じ取れる。
このままでは不味い。
そう判断したリーヴは部屋から飛び出ようと、出入口である扉を開けようとするが、これまたうんともすんとも言ってはくれない。
ならば窓はどうだと、窓に駆け寄り蹴破ろうと試みるも、窓はまるで鋼鉄か何かででも出来ているのかと錯覚しそうになるくらいには硬かった。
「落ち着いて落ち着いて、何もとって食おうだなんて思っていません。言ったでしょう? 私は別に争いに来たつもりではありません。リーダーであるあなたとお話をする為に参ったのです」
メフィストギルディはリーヴを落ち着かせるべく優しい声色で語りかける。
その敵とは思えない余りにも優しい声色にリーヴは耳を傾けてしまう。
「は、話とはなんだ……!?」
「はい。実は私、あなたたちツインテール解放戦線の皆さま方が少し困っていると小耳にはさみまして……」
ギクリと冷や汗をかくリーヴ。
対してメフィストギルディは眉一つ動かしていない。
「そ、それがどうした……!!」
「はい、ですので我々が、あなたたちの困りごとを解決して差し上げようかと思います」
うやうやしく頭を下げるメフィストギルディ。
それを見た事もあり、リーヴの怒りは爆発した。
「何が我々が解決して差し上げるだ!! こうなったのも全部お前たちのせいだろ!!」
この世界から大好きなツインテールが消えようとしている事や、リーヴたちが辛く苦しい想いをしながら戦うはめになった事、さらに言えば現在の問題である食糧難についても、それら全てはメフィストギルディが発端となって発生した事だ。
それなのにメフィストギルディは一体何を言っているんだ。
困惑が新たなる怒りを呼び起こした。
「はい、その怒りはごもっともでございます。ですので我々が……」
「ふざけるな!! そうやって私たちを丸め込んで支配下に置くつもりだろう!! 私たちは屈しない!! お前たちからツインテールを解放してみせる!!」
だがしかし、なおもメフィストギルディは声色を変えず語りかける。
「ですが、このままではこの戦線は崩壊してしまい、ツインテールを解放するだなんて夢のまた夢。違いませんか?」
「そ、それは……」
見せてしまった心の隙。
それを見逃すメフィストギルディではない。
「あなたは聡明な方だ。ならわかるはずです。このままツインテールに拘ってばかりいては何も生まない。寧ろ、大好きな筈のツインテールをみんなが嫌いになっていくかもしれない」
それを言われてしまい、ぐうの音も出ないリーヴ。
その様子を見たメフィストギルディは畳みかける。
「自らの好きな属性を皆が嫌いになってしまう。それは皆がその属性を忘れるよりも苦しい事だと思いませんか? 少なくとも私はそう思います。皆が上品さを嫌う世の中など考えたくもありません」
リーヴは思わず想像してしまう。
ツインテール解放戦線のメンバーたちが戦いの果てにツインテールを嫌いになってしまう様を。
「あなたは今までツインテール解放戦線として頑張って来た。なのに解放対象である人々にはツインテールがテロリストの象徴とされ忌み嫌われる。ならばいっその事、我々の支配、受け入れませんか? そうすれば楽になれますよ。どんな苦痛もない至って穏やかで幸せな世界です」
リーヴは俯いたままで何も答えない。
だがそれはNOと言っているわけでない。
限りなくYESに傾き始めている。
「それに今ならばあなたたちのツインテール属性を奪うかについては考えてあげてもいいんですよ?」
「ほ、本当なのか!?」
ツインテール属性を奪われないのであればエレメリアンの支配でも悪くない。
そう感じてしまったリーヴは思わずその言葉に飛びついてしまった。
メフィストギルディはより一層口元に笑みを浮かべる。
「はい。ですが条件があります」
「な、なんだ条件って……!?」
「それはですね――」
◇
陽も傾き始めた頃、俺、ティアナ、総二さん、愛香さんの四人はアジトの奥にある大部屋に召集された。
そこは作戦会議などで使われている事が多い部屋と聞く。
つまり、何かとても重大な作戦を遂行する為に俺たち四人に力を貸して欲しいとの事だろう。
果たしてそれは何なのだろうか?
きっとこの世界のツインテールを救う為の作戦に違いない。
「すまねぇ、少し遅れちまったみてぇだな」
大部屋に着いた俺たちを出迎えたのは、円卓のテーブルを囲んだ銃などで完全武装した屈強な男たち。髪型こそツインテールな為に色々と違和感が凄まじいが、彼らの迸る気迫を前にして髪型を笑う者などいないだろう。
ピリリと張り詰めた空気が重苦しい中、部屋の奥で皆を纏めていたであろうリーヴが俺たちに席に座るように促した。
「先ずは来てもらって感謝する。ありがとう、総二、和輝、愛香、ティアナ」
「大丈夫、礼なんていいよ」
「総二さんの言う通りだぜ。なぁ? ティアナ」
「そうね……」
総二さんに続く形で同意した俺に対してティアナはどこか不安そうな表情を見せた。
同じように愛香さんも、部屋にいるみんなの雰囲気から何かを感じ取ったのか、部屋全体を不審な目で見つめている。
一体全体、どうしたんだろうか?
そんな事を考える俺の耳にリーヴの要件が聞こえ始めた。
「では、早速だが君たちにお願いがある。我々は今より、メフィストギルディたちへ総攻撃を開始する」
「「総攻撃だって!?」」
俺と総二さんが驚きの声を上げる。
俺としてはまさかここにきて総攻撃に出るとは思いもしなかったぜ。
「そうだ。このまま防衛戦を続けていても埒が明かないからな。だから君たちにも是非、我々に協力して一緒に戦ってほしい」
もう一度深く頭を下げたリーヴ。
その姿からは強い覚悟を感じられる。
最悪の場合、二度とツインテールを結べなくなるかもしれないのにな。
俺と総二さんは頷き合った。
「わかりました協力します」
総二さんがリーヴの願いを承諾。
これに対してリーヴはありがとうと返す。
これには他の戦線のメンバーたちも一安心だろうと思い、周囲を見渡すが、誰一人も笑っておらず、気難しい表情を見せている。
そうか……!! 彼らは今から死地に赴く兵士と同じなんだ。だからこんな程度の事で喜んでいられないんだな。
あまりの温度差を受けて俺は気合を引き締めた。
「ではまず、作戦を伝える。我々ツインテール解放戦線はメフィストギルディを何としてでも抑える、だから君たちツインテイルズには敵の親玉であるサタンギルディの撃破をお願いしたい」
「ああ、任せろ」
「サタンギルディはその巨体故に町一番のコロシアムの中に潜伏している。奴は強いと思うが、奇襲すればきっと倒せるはずだ。そして肝心のコロシアムへの潜入手段だが……」
そこから俺たちはこの一大作戦の概要を余すことなく頭に叩き込む。
コロシアムへの侵入経路からサタンギルディの弱点と様々だ。
そして、作戦を伝え終えたリーヴは大声を張り上げる。
「いいかみんな!! これが我々最後の作戦だ!! ツインテール属性を持ったまま幸せな未来をこの手に掴もう!!」
「「「おう!!!!」」」
皆が一つの目的の為に一致団結する姿は胸が熱くなる。
俺と総二さんもみんなに続く形で声を上げた。
「計画通り……実にエレガント……」
だがしかし、この時の俺は何一つわかっていなかった。
メフィストギルディが言った、既にこの世界は負けているの意味が……
次回、和輝たちが大ピンチに陥ります。