俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「「テイルオン」」
夜になり、明かりは星の光のみとなるほどに暗くなった採石場の中で響く
赤と青紫の光が爆裂し、暗い夜の闇を眩く照らす。
テイルレッド、テイルバイオレット。違う世界でそれぞれ活躍する二人のツインテール戦士が今、このどちらの世界でもない異世界で互いの想いをぶつける為に変身を遂げた。
「先ずは礼を言うぜ総二さん。こんな我儘に付き合ってくれてよぉ……」
「別に構わないさ」
アルティメギルと戦い始めたばかりの嘗ての総二ならば仲間同士の意味のない戦いは避けようとしていたが、今は違う。
様々な経験を積んだ今だからこそ言える。
時には仲間同士、言葉でぶつかるのではなく、直接拳を交えて全力でぶつかり合い、
「そう言ってくれてありがとよ。まぁでも……それとこれとは話が別だぜ。今は言葉なんていらねぇ、全力であんたをブッ飛ばす!!」
「そうか、なら全力で来い!! テイルバイオレット!!」
「言われるまでもねぇ!!」
駆け出すテイルバイオレットと逆に悠然と待ち構えるテイルレッド。
今ここにテイルレッドVSテイルバイオレットという戦いのゴングが鳴り響く。
そしてテイルバイオレットは先制攻撃を仕掛けるべく拳を握りしめて腹部目掛けて力任せに叩きつける。
「おらぁ!!」
「ぐっ……!!」
両腕をクロスさせる事で初撃を防いだテイルレッドではあったが、その高い威力に思わず顔をしかめながら反動で大地を削りながら後退する。
「いいパンチだ。中々やるな……!!」
「そう言ってられんのも今の内だけなんだよ!!」
そこから始まるテイルバイオレットの猛ラッシュ。
相変わらずの型もクソもない乱暴な拳の嵐がテイルレッドに襲い掛かる。
対してテイルレッドはそれら全てを避けるのではなく、受け止めるべく防御の構えに入る。
それはまるでテイルバイオレットの全てを受け止めてやると言う気概を感じさせる。
「おらおらおらぁ!! そんなもんかよ、ええ!?」
一見すると、この戦いで押しているのはテイルバイオレット側だ。お決まりのラフファイトで攻めの手を緩めていない。テイルレッドは防戦一方だ。
だが、テイルレッドにはまだまだ余裕が見える。
初撃こそ思わず顔をしかめる程であったが、受け続ける内に次第にどう防けばいいかがわかってきたのだろう。
的確な防御でテイルバイオレットの攻撃を受け止め続けている。
故にテイルバイオレットはどう攻めればいいかを焦り始めた。
「こんの……クッソたっれがぁ!!」
このままでは埒が明かない。
そう判断したテイルバイオレットは仕切り直すべく十八番のヤクザキックでテイルレッドを蹴り飛ばす。
急な蹴りに反応が遅れたテイルレッドは蹴られ吹っ飛ばされた拍子で宙を舞うが、即座に空中で姿勢を整え、バク宙の要領で華麗な着地に成功する。
「クッソ……余裕ぶりやがってこの野郎……!!」
口ではそうは言っているものの、その実テイルバイオレットはテイルレッドとの力量の違いを実感しつつあった。
あれだけ殴られ続けたのにも関わらず、あの炎のように真っ赤なツインテールは全く乱れていないのが何よりの証拠であり、逆にテイルバイオレット側は攻めに集中し過ぎる余り、ツインテールがやや乱れている。
ツインテール戦士としての格の違いがこんな所に現れるだなんて……
距離を取ったテイルバイオレットは気持ちを切り替え、乱れたツインテールを元に戻し突撃する。
「うおらぁぁぁ!!」
「よし来い!!」
第二ラウンドの始まりを告げる打撃音が周囲に木霊する。
攻めているのは先程同様にテイルバイオレットだが、さっきまでとは違い、ツインテールに一切の乱れがない。
寧ろ乱暴に振り回されている筈のツインテールに強烈な魅力を感じさせる。
一瞬だが、そのツインテールに心が奪われるテイルレッド。
その隙を見逃さないテイルバイオレットは一層、苛烈な攻めに転じる。
拳という拳の嵐がテイルレッドの幼い肉体に容赦なく叩きこまれるのだ。
「ぐっ……!! なんてツインテールだ……!!」
「エレメリアンみてぇな事言ってんじゃねぇよ!!」
テイルレッドからすればつい思った事を口にしただけなのだが、テイルバイオレットは見逃さずにツッコんだ。
それを聞いてテイルレッドは攻撃を受けているのにも関わらず、笑みを浮かべる。
「かもな!!」
「ッ……!?」
ここに来て遂に反撃に転じたテイルレッド。
乱暴で無茶苦茶な我流その物とも言えるテイルバイオレットの拳とはまるで違う正統でしっかりとした拳がカウンター気味に放たれた。
咄嗟に反応し、防御するテイルバイオレットだったが、その絶大な威力はとてもじゃないが防ぎきれない。
正に一発一発が必殺の一撃。
成長に成長を重ねたテイルレッドの強さは言葉では表せない。
「クソ……これがテイルレッド。流石に効くぜ……!! 」
「へへっ、まぁな」
鼻を擦りニッと笑うテイルレッド。
その可愛すぎる姿に一瞬、揺らめくテイルバイオレットだったが、再度拳を握りしめて突貫し攻撃を再開する。
「どうしてあんたはそんなに眩しいんだよ!!」
「何がだ!!」
「色々とだよおぉッ!!」
テイルバイオレットが繰り出す渾身の一発。
だがテイルレッドには遠く届かない。
ならばこれだとばかりにテイルバイオレットはフォースリヴォンに手を振れウインドセイバーを手に取った。
するとテイルレッドはテイルバイオレットに応えるが如く、フォースリヴォンに手を当ててブレイザーブレイドを出現させて手にする。
そして、一瞬の静寂の後、炎の大剣と風の太刀が激しい金属音と共にぶつかり合った。
◇
「おらああああ!!」
「うおおおお!!」
私たち女性陣の目の前で裂帛の気合と共にぶつかり合うツインテールの二人。
一人は和輝が変身したテイルバイオレット、もう一人は総二さんが変身したテイルレッド。
互いに自身が纏うギアをボロボロにしながらも、互いに主張をぶつけ合うが如く熾烈な戦いを繰り広げている。
あまりにも真剣なその戦い故に私たちの言葉が介入する余地はなく、私はただ、愛しき人である和輝と、憧れの人である総二さんの二人の無事を祈るしか出来ない。
「和輝……総二さん……」
どうしてこうなったのか。
テイルバイオレットの変身プロセスの一つである和輝と私、二人の心を一つに合わせるという事を考えれば、簡単に阻止する事が出来た筈だと皆は思うわよね。
実際に私は最初こそこの戦いを反対する立場だった。
別に互いの主張をぶつけ合う為に戦うのは悪いと思っている訳でなく、寧ろ場合によっては分かり合う為にも積極的にやるべきだとも思っているけど、それは飽くまで時と場合によるわ。いつ敵が襲ってくるかわからない安全とはいかないこんな場所で今やる事ではない。
そう合理的な判断から反対した私だったけど、和輝は私に頭を下げた。
(お願いだティアナ、俺の我儘に付き合ってくれ。今、ここでこのまましこりを残したままじゃ、俺はこれから先、戦えない)
余程の事じゃ素直にならない和輝がそう私に言ってくれた。
それが堪らなく嬉しかった事と、いざという時はあたしたちが何とかするわと力強く後を押してくれた愛香さんの発言も相まって、私は変身の許可を出した。
そして現在、和輝はテイルバイオレットとなり、テイルレッドとなった総二さんにぶつかっていっている。
「うらぁぁ!!」
傍から見ればどっちが優勢なのかは明らか。
余力を残さず、今ある全てをぶつけようとしている和輝と余力を残しつつそれら全てを受け止めようとする総二さん。
はなからわかっていた事だけど、このままじゃ和輝に勝ち目はない。
宙を舞う二人のツインテールからも和輝からは余裕はあまり感じないけど、総二さんからはまだまだやれるぞといった余裕を感じることが出来る。
それ程までに和輝と総二さんには壁がある。
「ねぇ、神堂さん? 本当にこんな戦いに意味があるの? やっぱり今すぐやめさせるべきなんじゃ……」
私の隣で戦いを見ていた華先生はこの戦いに否定的。曰く、想いをぶつけ合うには言葉でやればいいとの事。
そんな華先生は、戦いに肯定的な私や愛香さんではなく、慧理那さんに声をかけていた。
喧嘩のケの字も知らないようなお嬢様である慧理那さんならこの考えがわかってくれるのだろうとの判断でしょうね。
でも、慧理那さんは華先生の予想とは違っていた。
「わたくしはそうは思いませんわ。時にはヒーロー同士、互いの信念や主張をぶつける展開は必要ですもの」
「神堂さんまで……」
「意外といいものですわよ。ああやって拳を交えてぶつかり合うのも。わたくしはそれのおかげで大切な友を得る事が出来ましたわ」
自分もあんな風に誰かと喧嘩するかの如くぶつかり合った事がある。
慧理那さんのその発言は私にとっても驚きの物だった。
「華さんもいつかわかる時が来ますわ」
「そうかしら……?」
慧理那さんは一体、誰とどんな争いをしたかしら?
気になる部分ではあるけど、今はこの目の前で起きている戦いに集中しなくちゃと私は向き直る。
「ティアナ……!! ブレイブチェインだ!!」
丁度、和輝の方からも私にブレイブチェインの使用を求める声が来た。
私はそれに応える為にもテイルブレスに念じ、赤い光を飛ばす。
「頑張って……和輝……!!」
私が今できる最大限の事、それは和輝に力を送る事とこの戦いを見守る事だから……
◇
ティアナから送られてきた赤い光が勇気の赤い炎となって俺を包み込む。
そして俺はテイルバイオレットの進化形態の一つであるブレイブチェインへと姿を変える。
「それがバイオレットの
変化した俺の姿を見て驚くテイルレッド。
恐らく、ブレイブチェインの追加装甲の形や色がテイルレッドのそれと似通っているのが原因の一つだろうと俺は分析する。
「言っとくがさっきまでの俺とは訳が違うぜ」
追加精製し、二刀となったウインドセイバーの一つを突き付け宣言。
そして俺は追加されたブースターの勢いに乗りながら急接近し、ウインドセイバーを大きく上段に振りあげる。
テイルレッドはそれをブレイザーブレイドを横に盾にする事で防ぐが、そう来るだと思っていた俺はもう片方のウインドセイバーでガラ空きになった脇を斬りつけるべく振るう。
だがしかし、テイルレッドは咄嗟に右膝を突き出し、その一撃を器用に受け止めやがった。
「くッ……やりやがる!! だがな!! 脚一本で耐えれる程やわじゃねぇんだよ!!」
「ぐぅ……!!」
今現在、テイルレッドを支えているのは左脚の一本のみであり、ブレイブチェインとなった影響で力が増した俺の攻撃を受け止めるには力不足だろう。
そう判断した俺は二刀のウインドセイバーにより一層の力を籠めて全力で押し込み、そして吹き飛ばす。
今がチャンスだ。
吹き飛ばされつつも何とか体勢を整えるテイルレッドだが、そこから始まる先程までとは比べ物にならない怒涛の攻撃は流石に捌ききれない。
一斬、一斬が確実にテイルレッドのギアをボロボロに傷つけさせていき、フォトンアブソーバーが悲鳴を上げはじめているのが手に取るようにわかる。
「これで終いだぜ!! テイルレッドォォォ!!」
トドメの一撃を放つべくブースターの勢いを全開放して突撃、すれ違いざまにブレイザーブレイドもろとも叩き斬ってやる。
そうやってウインドセイバーを構える俺だったが、その瞬間、テイルレッドの手に菱形の何かがあるのが見えた。
「プログレスバレッタ―ッ!!」
そう叫ぶや否や、テイルレッドはその菱形のアイテムを二つに割り、自身のフォースリヴォンに合体。
閃光が走り、ボロボロだったテイルレッドのギアがみるみる内に元通りになり、新しく出現した追加装甲が上半身を中心に形成されていく。
いや、それだけじゃねぇ。
テイルレッドのツインテールが先程よりも結び目が上になっていやがる。
もしや、これがテイルレッドの強化形態……
「チェンジ――ライザー!!」
そう勇ましく宣言し、ライザーチェインへと進化したテイルレッドは俺の振るうウインドセイバーをブレイザーブレイドで受け止める。
「うぅ……!? なんてパワーだ……!!」
受け止められて初めてわかるこの力。
さっきまでとは明らかにパワーが違っていやがる。
少しでも力を抜けば弾き返されそうなくらいだぜ。
「だがな……!! 剣は二本あるんだよ!!」
先程同様にもう一本のウインドセイバーで四角から斬りつけてやる。
そう思い、ウインドセイバーを振るうが――
「何ッ!?」
テイルレッドのもう片方の手には、いつの間にかもう一本のブレイザーブレイドが逆手で握られており、俺の斬撃はいとも簡単に受け止められた。
「奇遇だなバイオレット!! 俺だって二刀流なんだ!!」
まさかテイルレッドも二刀流の使い手だったとは……
驚く俺にレッドの二刀流が襲い掛かる。
俺は何とか二刀のウインドセイバーを操る事で受け止めるが先程とは違って得物の多さによるアドバンテージは消失した事と、二刀流の経験値の違いからなのか一気に劣勢へと追いやられてしまう。
そんな俺に対してテイルレッドはダメ押しとばかりにテイルギアの形を変化させる。
「チェンジ――フォーラー!!」
コンマ一秒も満たないその神業的速度で、ツインテールを上結びから下結びへと結び直したテイルレッド。
上半身を中心とした装甲は下半身を中心に。
テイルレッド、フォーラーチェインへ姿を変えた。
「今度はこっちの番だ!!」
そう言った直後、俺はテイルレッドを目視出来なくなる。
瞬間移動したとか、透明になったとかではない。
これは目に見えない速度で加速しているんだ……!!
「は、速ぇ……!!」
目にも止まらない速さに翻弄される俺。苦し紛れに振るうウインドセイバーは残像こそ捉えるも掠りともせずに空を切る。
なんて速さだ。このままじゃ勝負にならねぇぜ。
焦りそうになる俺だが、ある秘策を思いつき、目をつぶる。
目の見えない暗闇の中で集中する俺はかすかだが高速の中で動くツインテールの存在を感じ取った。
「そこなんだよぉぉぉッ!!」
「何ッ!?」
一瞬の静寂の中、俺は加速するテイルレッドを捉えた。
テイルレッドは、まさか捉えられると思っていなかったのか、驚きの余り隙を見せたので、俺はその隙に渾身の一発を叩きこむ。
テイルレッドは大きく息を吐きながら後ろに下がった。
「このスピードを見抜くなんて……やるな……!!」
「前に似たような敵を倒した事があったんだよ」
思い出すぜ。確かあれは俺とティアナが入れ替わっちまった時だっけか。
懐かしき過去に礼を言いつつ、俺は強化変身がもたらす心体への負担を考慮してブレイブチェインへの強化変身を解除、もとのテイルバイオレットの姿へと戻る。
同時にテイルレッドも元の姿へと戻った。
「互いに強化は終わりか……」
「そうみたいだな」
周囲を見渡してみると俺たち2人を中心にツインテール状の跡ができている。
どこをどうやればこうなるのかなんてツッコミはNGだ。きっと俺たちのツインテールへの愛が自然と形になったのだろう。
にしてもこうして見ると随分と派手にやり合ったみたいだな。
風のせいでより勢いの増した炎が焦がしたであろう土砂の臭いが、辺り一面に広がっていやがる。
「なぁ総二さん、一つ提案なんだが、次でラストにしねぇか?」
これ以上同じことを続けていてもキリがないような気がしてきた俺はそう提案する。
丁度、強化時間も終わった事もあるし、タイミングとしてはバッチリだ。
テイルレッドは快くOKの返事をくれた。
「んじゃ、決着といこうぜ。総二さん!!」
「ああ、いくぞ!!」
すぅぅと深呼吸した後、俺はティアナから送られてくる属性力を風のエネルギーへと変換し、ウインドセイバーを
対するテイルレッドもブレイザーブレイドを
「ストーム――」
「グランド――」
一瞬の静寂の中に今持つ全エネルギーを集中。
そして――
「スライサァァァーーーッ!!」
「ブレイザァァァーーーッ!!」
コンマ数秒も乱れぬ同じタイミングにて、俺たちは互いの属性力と信念を剣に乗せて猛進、全力を持って放つ互いの必殺技がぶつかり合った。
大地引き裂く轟音と共に凄まじい衝撃をもたらし、火花散りぶつかる刃。
余りの負荷に互いの剣の刀身がミシミシと悲鳴を上げはじめる。
ここから先は意地と意地の張り合い。どっちが先に限界を迎えるかどうかの勝負。
正しいとか正しくないとか、どっちが良くてどっちが悪いかとか、そんな事はもうどうだっていい。俺は男としての意地がある。
この勝負、絶対に負けられねぇ……!!
「「うおおぉぉぉぉ!!」」
拮抗する二つの力。
だが終わりの時は突然やって来た。
バキィンと派手な音を立てて片方の刀身が折れて砕け散る。
果たして勝者は――
「総二さん、あんたやっぱすげぇ、見事だよ……」
力を出し切った影響か、崩れ落ち大の字になって地面に転がる俺。
その手には刀身のないウインドセイバーが握られている。
そう、勝ったのはテイルレッド。俺は負けた。
「ツインテールがか?」
「何もかもだよ……」
何故だろう。
負けたっていうのに何故か悔しいとかの気持ちが湧いてこない。
何というかとても爽やかで気持ちがいい。
今なら全て言える気がする。
「なぁ、総二さん?」
「なんだ?」
「俺さ……わかってたんだ。ツインテールに罪はない。どんなに悪い事をしたとしてもツインテールを愛する事自体は何も悪い事じゃないし、その気持ちを守ろうとするのはツインテールを愛する者として当然だって……それに戦線の奴らだってツインテールを残す為に必死だったんだよな」
ツインテール解放戦線のアイツらは俺たちと違って戦う力がない。
言ってしまえばそんな絶望的な状況下の中、アイツらはツインテールを残す為に仕方なく俺たちを裏切ってメフィストギルディ側についた。
それが良いか悪いかなんて関係ない。
あるのはツインテールがただ好きだったって事だけだ。
「でも俺さ、あん時どうしたらいいかわからなくて、それであんたに当たっちまった。眩しいくらいツインテールを信じられるあんたと自分を比べて惨めに見えた」
「……」
テイルレッドは黙って聞き続けてくれている。
そんなテイルレッドに俺は改めて問いかける。
「なぁ? 俺もあんたみたいにツインテールを信じる事が出来るかな?」
するとテイルレッドはニッと太陽の如き眩しい笑顔を見せ答える。
「なれるさ。ツインテールを愛する限りな」
そうか……そいつはよかったぜ。
何つーか憑き物が落ちたような、そんな気がする。
俺はさっきまでとは違う、晴れやかな笑みを浮かべて夜空を見上げた。
◇
戦いを終えた俺たちは、同じ場所に居続けるのは危険という事もあり、華先生たちが先程まで彷徨っていた森の中にある開けたエリアに場所を移していた。
開けたエリアと言っても、周囲にはかなりの木々が並んでおり、星明りだけが頼りの暗い夜の闇の中では得体のしれない恐怖心を与えてくる。まぁでも、いざとなったら変身すればいいだけだし、それに相手が野生動物程度ならティアナと愛香さんと華先生の三人が軽く捻ってくれるので大丈夫だろう。
そんな普通とはズレた感覚の下、始まるサバイバル。
華先生の指示の下、皆が役割分担を決めて動き始める。
ティアナと愛香さんの二人が食材集め、俺は総二さんと一緒に火を灯すのに必要な木の枝を集める仕事が与えられた。
「全くよぉ……かったりぃぜ……」
「まぁまぁ、そんな事言うなよ。な?」
俺が文句を言い、総二さんがそれを優しく宥める。
そんな年の近い仲の良い兄弟のようなやり取りを続けながら俺たちは未開の森を散策していく。
もし、迷子になりそうになったらツインテールの気配を探れる総二さんが、拠点で待つ華先生と慧理那さんのツインテールを頼りに戻るって寸法だ。
「なぁ、総二さん?」
ある程度歩いた頃、俺はふと聞いてもらいたい事を思い出した。
でも直接、それを伝えるのは何か恥ずかしい。
さてどうするか。
俺はさっきの戦いを思い出して感じたある事をダシにつかう事を思いつく。
「なんだ?」
「いや、その……あんたさっきの戦いでまだ本気出してなかったろ?」
ギクリとバツの悪い表情浮かべる総二さん。
恐らく、俺がその事に不満を持っていると思っているみたいだ。
「ははーん、やっぱりか。ま、何となくわかってたけどな」
「わかってたのか!?」
「あたぼうよ、俺なんかに拮抗する程度の腕じゃとても天下のテイルレッド様とは言えないからな」
「あははは……」
別にあれだ。本気出さなかったからキレてるとかじゃない。
そりゃあ悔しいか悔しくないかで言えば悔しいけど、寧ろあれでマジの本気だったのなら少し失望しちまっていたかもしれねぇ。
何つーか逆に安心したまである。
「とりあえずすまん。別に悪気はなかったんだが……」
「なぁに別にいいぜ。ま、罰としてちょっと俺の戯言を聞いてくれよ」
ようやく本題に移ることが出来る。
回りくどいが俺の性格上、こうなんだから仕方ないんだ。
俺はしんみりとして口調で話し始める。
「実は最近俺さ、元の世界でちょっと思う所があってよ。何つーかその今まで守って来た筈の人々に牙を向けられたっていうか……」
俺の脳裏に浮かぶのはあの憎きジャーナリスト、藤倉。
あの野郎は自分自身がただ楽しむ為だけに他者の不幸をハイエナのように求め、遂にはテイルバイオレットの正体を探り、その築き上げてきたヒーローとしての立場を失墜させる事を目的としている。
奴の書く記事のせいでテイルバイオレットに対する人々の疑いが生じてしまった事は記憶に新しい。
「なぁ総二さん、あんたはそんな事あったのか? もしあったのならあんたはどうやって信頼を勝ち取ったんだ?」
正直、総二さんはそんな経験ないと俺は予測している。
我ながらちょっと意地悪な質問だ。
「俺はそんな事なかったな」
即答する総二さん。
俺としてはやっぱりかという感想を抱き、話を終わらせようとするが、総二さんは続けた。
「でも、俺の仲間なら似たような感じではあったけどな」
「似たような感じ?」
「ブルーにイエローにブラック。みんな最初は危険人物だったり変態扱いだったりととてもヒーローに対する態度、いや、それどころか人間としての扱いをされていなかった」
「そ、そう……なのか」
ブラックはどうだか知らないが、確かにブルーとイエローの二人の扱いは戦い方を見ていても察することが出来る。
ブルーは兎に角怖いし、イエローは直ぐにハァハァと喘ぎ声を上げやがる。
レッドと比べたらそりゃあもう雲泥の差だ。
「今となっては懐かしいけど、活動し始めた頃は特にテレビで特集組まれ放題だったんだ。もしテイルブルーと出会った時はそう対処すればいいかってさ」
「え、そこまで?」
いやまぁ、確かにテイルブルーの戦い方は怖いけどよ、いくら何でもそんな危険動物みたいな扱いは酷くねぇか。ヒーローとか以前に元は女の子なんだし。
それを機に話されるブルーとイエロー、あとブラックの扱い。
実写化映画で一人だけ男だったとか、助けてあげた筈の人々から逃げられるだとかは日常茶飯事とか聞けば聞くほど苦労が伝わる所業の数々に目が点になる。
「あんたら色々と苦労しているんだな……」
「はは、まぁな。でも、アルティメギルとの最終決戦の時はみんながいてくれなかったら俺たちツインテイルズは勝てなかった」
アルティメギルとの最終決戦。
それはツインテイルズにとって最大とも言える戦いだったらしく、逆転のきっかけを作ったのは他でもない世界中の人々だったという。
なんて熱い展開なんだと俺は思う。
「だから和輝も戦い続ければいつかはみんなわかってくれるさ」
「そうだといいけどな……」
口ではそう生意気に返しているが、俺としては何となく希望を感じていた。
ありがとな総二さん。
「さて、そろそろみんなの下に帰ろうか」
「そうですね」
話しながら夢中で枝を集めていたせいで俺たちの両手には木の枝が山のように積み重なっていた。
これじゃ多すぎるなとも思いながらも俺は総二さんが探知できるツインテールの気配を頼りに拠点へと戻る。
するとそこには凄まじい光景が広がっていた。
「ねぇそーじ? どっちの方が大きいと思う?」
「和輝、勿論、私よね?」
二人の後ろで横たわるのは俺たちの世界に生息するものの倍以上の大きさはある熊。
狩る立場から狩られる立場になってしまったのは一重に彼女たちに見つかってしまったが故だろう。
俺と総二さんはただただ苦笑いを浮かべるのだった。
◇
陽が上り、眩しい太陽が照らす森の中。
円を描かくかのように地面に雑魚寝していた俺たちは続々と起床し始める。
さて、これからどうするか。
女子組がツインテールを結び終えるのを確認した総二さんが今後の方針について話し合おうとした、その時。
俺たちの下に息を切らしながら走って来る少女がいた。
「リーン!? どうしたんだ一体?」
その少女はリーンだった。
総二さんを筆頭に駆け寄る俺たち。
彼女の体は俺たちが知っている以上に泥だらけのボロボロになっており、一日中、森の中を駆けまわっていたのだろうと推測できる。
まぁ兎に角、一体全体、どうしたって言うんだ。
「リールが……リールが……!!」
「おい、落ち着け!! リールがどうしたんだ? ええ?」
リールの身に何か起きたのかが気になる俺は慌てて駆け寄る。
するとリーンは必死の形相で俺に飛びついた。
「あの子、一人でメフィストギルディの下に向かったんです!!」
和輝がアルティメットチェインに拮抗できるビジョンが全く浮かばなかったので、アルティメットチェインには出番がありませんでした。
次回からはいよいよ決戦です。