俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第87話 滅びゆく世界

 あまり広いとは言えないホールの中、激しい余波と共にぶつかり合う青紫と黒の影。

 一人はこの俺、テイルバイオレット。

 もう一人となる相手は憎き敵、メフィストギルディ。

 まぁ、ぶつかり合うって言っても野郎の方は自分から手をあげに来ることはない。メフィストギルディは余裕ぶった表情を崩すことなく的確に俺の攻撃を捌き、隙を突いてカウンターを叩きこんでくる。

 

「くッ……!!」

 

「おっとどうしました? 先程の威勢は何処へ行きました?」

 

 煽るメフィストギルディ。

 俺はその発言に耳を貸すことなく至って冷静に拳をメフィストギルディの顔面目掛けて拳を繰り出す。

 しかし、メフィストギルディは頭を少し横にずらして攻撃を回避。

 俺の拳はあえなく空を切る。

 

「お返しですよ」

 

「何!?」

 

「むぅん!!」

 

 回避し、そのまま俺の懐に潜り込んだメフィストギルディは、その黒い拳に力籠めて俺の顎目掛けて見事なアッパーカットを決めてきやがった。

 打ち上げられ宙を舞う俺の体。

 朦朧としかける意識の中、何とか持ち堪えた俺は空中で素早く体勢を整え着地に成功する。

 

「いや~実にエレガントな攻撃。我ながら惚れ惚れしますよ」

 

 メフィストギルディの野郎、隙あらば自画自賛して俺を煽りやがる。

 何がエレガントじゃボケ。

 そう俺は唾を吐く。

 

「和輝、大丈夫?」

 

「大丈夫だ。だから下がってろ」

 

 駆け寄り心配してくれたティアナに大丈夫だと言ったものの、俺の体は正直だった。

 脚はがくがく震え、息切れが止まらねぇ。

 メフィストギルディの野郎、コイツ相当な強さだ。

 あの総二さんでも勝てるかどうかわからねぇ……

 

「ふっふっふ、どうしました?」

 

「どうしたもこうしたもあるかよ、余りにもてめぇが弱すぎて眠くなっちまっていた所さ」

 

「ほう、まだそんな戯言を抜かせましたか」

 

「まぁな。俺は口だけ達者なんでな!!」

 

 俺は立ち上がるとそのまま勢いよく飛び掛かった。

 狙いは野郎の顔面。

 その澄ました表情を俺の拳で歪ませてやる。

 

「またですか、相変わらず品がない」

 

「ッ!!」

 

 今度は避けられまいとばかりに放った俺の渾身のストレートは、メフィストギルディの野郎によっていとも簡単に受け止められてしまった。

 もはや避けるまでもないと言わんばかりの対応に思わず歯噛みする。

 メフィストギルディはそのまま虫でも払うかのように俺を吹き飛ばした。

 

「ぐあああッ!!」

 

 壁を突き破り瓦礫に埋もれる俺。

 

「和輝!!」

 

 ティアナの悲鳴がホール全体に響き渡る。

 

「全く、私を抑えると言った割には随分とあっけないものですね。もう少しこう……歯ごたえがある者かと思っていましたが残念ですよ」

 

 悔しいが野郎の言う通りだ。このままでは勝ち目がない。

 その後、メフィストギルディはトドメを刺す必要すらないとばかりに悠々とこのホールから出て行こうとする。

 恐らく、総二さんたちを追うつもりだ。

 そんな事させるものかよ。俺はてめぇを食い止めるっていう役割があるんだ。

 

「そうだ……!! よし、こうなりゃ一か八か……!!」

 

 瓦礫を見たことで俺はメフィストギルディに一泡吹かせる作戦を閃いた。

 そしてそのまま瓦礫の山から起き上がった俺は、メフィストギルディ目掛けて、人一人が後ろに隠れられるほどの大きさの瓦礫を一直線に蹴り飛ばした。

 

「はぁ……しつこいですね。そんな石ころ程度で……」

 

 ため息をつき、呆れた様子のメフィストギルディは、腕を突き出しそこから黒い雷のような光線を発射、蹴り飛ばされた大きな瓦礫をものの数秒で粉砕してみせる。

 だがそれを読んでいた俺は瓦礫に隠れるようにウインドセイバーを投擲していたんだ。

 放たれたウインドセイバーがぐるぐると縦に回転しながらメフィストギルディを狙う。

 

「成程、瓦礫はただの囮。本命はこちらですか。でも……」

 

 ふぅん!! と野太い掛け声と共に飛んでくるウインドセイバーを強引に弾き返すメフィストギルディ。

 やはりと言うべきか野郎は全くもってこの二段攻撃を意に介していない。

 

「詰めが甘いですよ。そんな囮、この私に効くはずが……」

 

 相も変わらず余裕ぶるメフィストギルディ。

 がしかし、その余裕はついに崩れる事となる。

 

「何!? いないだと!?」

 

 メフィストギルディの見つめる先、俺がさっきいた瓦礫の山。

 そこには誰の姿もなく、ただ瓦礫だけが積み重なっている。

 てっきり俺がそこにいるとばかりに思い込んでいたメフィストギルディは焦り始める。

 ついに見つけたその隙を逃さない訳がない。

 

「かかったな!! ウインドセイバーも囮だぜ!!」

 

「なっ、後ろか!?」

 

 振り向くメフィストギルディの目の前には俺の拳が迫っている。

 余りにも急な攻撃、流石のメフィストギルディの野郎も反応しきれる道理はない。

 

「歯ァ食いしばれ!! この一発はお前がこの世界の人々にやって来た事だぁ!!」

 

「ぐぉぉぉッ!?」

 

 俺の渾身の一発は見事、メフィストギルディの顔面を捉えた。

 壁に吹き飛び新たな瓦礫の山を作り上げるメフィストギルディ。

 初めてもろに喰らう俺の拳は相当重かったのか、それとも今まで格下とばかりに侮っていた俺にやられた事が相当に応えたのかは知らねえが、メフィストギルディは中々立ち上がれないでいやがる。

 まぁ何にせよ野郎の澄ました顔面を遂にぶん殴る事が出来たぜ。

 

「やったわね和輝」

 

「ああ、見たかこの俺の一発!! どうだメフィストギルディ!!」

 

 こうなればこっちのもの。

 後は適当に煽ってより冷静さを削いで俺のペースに持っていくだけ。

 こういう妙に自信たっぷりでプライド高そうな奴ほどこういうやり方は効くってもんだぜ。

 今まで培ってきた喧嘩のやり方からくる知識でペースを握ろうと考える。

 

「成程、これは一本取られましたね。まさかこの私が殴られるとは」

 

 ようやく起き上がるメフィストギルディ。

 きっとメフィストギルディの野郎は俺の一発に相当頭に来てやがる筈だ。

 だがしかし、メフィストギルディの態度は俺の想像とは違っていた。

 

「ですがそれにしても実に素晴らしい……!! やり方は兎も角、結果だけ見れば実にエレガント。素晴らしいですよテイルバイオレット」

 

「は、はぁ?」

 

 拍手をして賞賛するという予想だにしていない反応に思わずポカーンとしてしまう。

 もしかしてコイツ、Mっ気でもあるのかとも思ってしまう。

 

「お、落ち着いて和輝。しょ、所詮エレメリアンよ。そっち系でもおかしくないわ」

 

「馬鹿、お前こそ落ち着け」

 

 そうティアナにツッコミつつも、俺はそういやコイツもエレメリアンだったわと思い出す。

 手口や戦い方が明らかに今まで戦ってきたエレメリアンのそれとは違っていたからか全然感じなかったぜ。

 そんな俺たちの態度にメフィストギルディはご立腹のようだ。

 

「失敬ですね……私だって立派なエレメリアンですよ。エレガントな行為に喜びを覚えて何が悪いんですか」

 

「エレガントっててめぇ……」

 

 エレガントって一体全体何なんだっていう哲学的な事に足を踏み込もうとするのは一先ずやめておこう。

 それよりも俺はこの野郎にツッコまざる得ない事が一つある。

 

「それよりお前、自分の事を立派なエレメリアンだとか何とか言ったよな」

 

「はい、それがなにか?」

 

「何がもクソもあるかよ。てめぇ、エレメリアンとして何かおかしくねぇか?」

 

 一応言うが今まで戦ってきたエレメリアンの中にも卑怯な手口を使う奴は多かった。でも、メフィストギルディがやって来た事に比べれば些細なレベルでしかないし、それに今まで戦ってきた奴らは何だかんだ言って自らの愛する属性に熱くなる馬鹿たちばかりだった。

 なのにメフィストギルディからはその熱意があまり感じられなかった。

 さっきの反応をみてようやく「そういやコイツ、エレメリアンだったな」と感じられるレベルでしかない。

 

「そういやてめぇ、何のためにこの世界にやってきたんだ?」

 

 ふと思ってしまった疑問を口にする。

 隣のティアナが属性力を奪う為じゃないの? とは言ってくるが俺にはどうもそれだけじゃないような気がしてならなかった。何というかまだ何かあるような気がする。

 

「ふぅむ……」

 

 それを聞いたメフィストギルディは一瞬、悩む素振りこそ見せたが、すぐに口元を邪悪に歪ませる。

 

「そうですね……生きる為に属性力を奪うというエレメリアンの本能やサタンギルディ様の命ってのもあるにはあるんですが……それよりもですね……」

 

 ゴクリと息を呑む。

 そしてメフィストギルディの口から衝撃的な言葉が飛び出した。

 

「私、人の心とやらを支配してみたくなったんですよ」

 

 な、なんつったコイツ!? 人の心を支配?

 俺やティアナは、メフィストギルディのエレメリアンとは思えないその衝撃的な発言に思わず驚愕してしまう。

 

「ど、どういう意味だ?」

 

「どういう意味? そのままの意味ですが」

 

 あっけらかんと言い放つメフィストギルディ。

 俺はその姿に悪寒を覚える。

 何なんだ? この野郎から溢れ出る悪意とは別な何かは。

 俺はウインドセイバーを手にして斬りかかる。

 

「そう言う意味じゃねぇ!!」

 

「おっと、危ない」

 

 俺の斬撃をメフィストギルディは必要最低限の動きで躱し続ける。

 それはまるで俺が踊らされているかのようだ。

 

「ちょっとした興味本位ですよ」

 

「興味本位だと?」

 

「はい、人の心を操り暴力なき方法で属性力を手に入れる。それって実にエレガントではありませんか? 私はある経験上、そう思ったのですよ」

 

 だからエレガントって何なんだよってツッコミはこの際どうでもいい。

 この野郎が暴力が嫌いなのはずっと口にしてやがることからもわかるが、だからといってどうしてそんな考えに至ったのかがわからねぇ。

 俺はより一層激しくウインドセイバーを振るうがメフィストギルディには掠りすらしない。

 

「この際です。教えてあげましょう。私の生い立ち(ルーツ)を――」

 

 

 

 

 それは遥か昔、まだアルティメギルが存在している時代。

 アルティメギルに所属していないエレメリアンであるメフィストギルディは、主であるサタンギルディとそれに心酔するその他大量のエレメリアン共に平行世界を渡り歩き、人々から属性力を奪い続けていた。

 

「ではいただきますよ」

 

 逃げ惑う人々に手をかざし属性力を奪うメフィストギルディ。

 奪われた対象のツインテールは力なく解け倒れ伏す。

 それはエレメリアンとしての日常のような光景だ。

 

(虚しい。何か虚しい)

 

 だがいつからだろう。メフィストギルディはそんなありふれた日々の日常に空虚な感情を持ち始めていた。

 それは力づくで属性力を奪い取るという行動その物に対してだった。

 元々、暴力を嫌うメフィストギルディは近頃台頭してきたアルティメギルを野蛮だと吐き捨てていた。

 なのにやっている事だけみればアルティメギルとなんら変わらない。

 エレメリアンと人間という捕食者と被捕食の絶対の関係に物を言わせた強引なやり方。

 それでは何かがいけない。こんなやり方ではエレガントとは言えない。

 そんな考えに至る中であった。

 メフィストギルディにとって運命といえる出会いがあった。

 

「余はアルティメギル首領、全てのエレメリアンを統べる者である」

 

 それは偶然か必然か。

 メフィストギルディの前にアルティメギル首領が現れた。

 当時、ある世界にてメフィストギルディたちサタンギルディ一派はアルティメギルの部隊と衝突、交戦し、その部隊を撃破している真っ最中だった。そんな中、アルティメギル首領はメフィストギルディの前に姿を現したのだった。

 

「な、何なんですか!?」

 

 狼狽えるメフィストギルディ。

 当たり前だ。アルティメギル首領と言えば今現在、絶賛衝突中の敵の大将に当たる。

 そんなメフィストギルディを襲う首領の口から紡がれる常人では理解できない意味がありそうでなさそうな言葉の羅列。

 それはさしものメフィストギルディですら吐血しそうになる。

 だがそんな中でメフィストギルディの耳にはある言葉が心に響く。

 

「そなたは迷っているな。このままでいいのかと」

 

 心の隙間に入り込むかのようなその甘い声色。

 首領のその言葉は警戒心を露わにしていたメフィストギルディは思わず心を許してしまう程であった。

 

「余ならばそなたの悩みを解決してやろうぞ」

 

 葛藤するメフィストギルディ。

 このままサタンギルディと共にいても何も変わらない毎日が待っているだけなのではないかと思えてくる。

 それではいっそのことアルティメギル首領の下に行くのも悪くない。

 そう考えたメフィストギルディはいつの間にか首を縦に振っていた。

 

 そして迎えるアルティメギル首領とサタンギルディの全面対決。

 両者互角とも思われる争いを終結させたのは他でもないサタンギルディの一番の忠臣であった筈のメフィストギルディであった。

 まさかの裏切りに混乱するサタンギルディ一派。

 その隙を突かれる形で首領よって封印されるサタンギルディ。

 勝者はメフィストギルディを取り込んだアルティメギルであった。

 

「見せてもらいますよ。あなたのやり方を……」

 

 以降、メフィストギルディはアルティメギル内で傍観者という立ち位置につきながらアルティメギルの侵略を見続けた。

 だが、空虚な感情は一向におさまらない。

 そんな中だった。

 アルティメギルが侵略したある世界の最終決戦。

 その戦士たちの名はツインテイルズ、彼ら彼女らは一度は完全敗北と言ってもいい敗北を期したのにも関わらず、最後は人々の声援や想いを背に立ち上がり見事、あの無敵とさえも思われていたアルティメギル首領すらも打ち倒した。

 それはメフィストギルディにとって衝撃的であったと同時にある考えが浮かぶきっかけになった。

 

(人の心とは実に興味深い。そうです……!! その心に挑戦し勝利、そして支配する事こそが私の想い描くエレガントな侵略……!! 野蛮な暴力のない理想の世界)

 

 ついに吹っ切れたメフィストギルディ。

 そして彼は、首領が倒された影響もあり封印から復活したサタンギルディの下に戻るとこう進言する。

 

「サタンギルディ様、あなた様の憎むツインテールを滅ぼす方法について……私にいい考えがあります」

 

 それは新たな侵略の始まりであった。

 

 

 

 

 成程、それがコイツの全てって訳か。

 

「どうです? これが私の考え。これこそが理想の侵略と言えませんか?」

 

 戦いの中、何故この世界にこのような侵略を行ったのかを話してきやがったメフィストギルディ。

 ウインドセイバーを振るいながらそれを聞き続けた俺は話が終わると同時に距離を取る。

 

「今からでも遅くありません。お仲間たちを説得し、この世界から立ち去ってください。サタンギルディ様が一度暴れ出してしまったあとでは私などでは止める事が出来ないのですよ」

 

 サタンギルディはかのアルティメギル首領に匹敵するほどに強いらしく、奴が暴れ出してしまったらもうこの世界は滅ぶしかないという。

 メフィストギルディはそうなる前にこの世界から撤退しろ。

 そう言ってきやがった。

 

「それにあなたは勘違いをしているかもしれませんが、こう見えて私は平和を望んでいるのですよ」

 

 メフィストギルディは、私の作り上げた世界こそエレメリアンと人間の正しき共存の例だと続ける。

 確かにこの野郎が作りあげたこの世界はツインテール解放戦線といった一部のテロリストな奴らを除いて考えれば平和その物といってもいい。それにエレメリアンが人間に技術や知恵を授け、人間がその見返りとして属性力を人体に影響がない程度に提供するってのもある意味理想的な共存といえるかもしれねぇ。

 でも……!!

 

「そんなの俺は認めねぇ……!! 誰かの支配の上に成り立つ平和なんて間違ってんだよ!!」

 

「そうよ!! それに真の共存っていうのは互いが互いの事を真に理解することから始まるの!! あなたは人間の事を何にも理解していないわ!!」

 

 ティアナと共に声を張り上げ、メフィストギルディの語る共存を否定する。

 するとメフィストギルディはまたしても邪悪な笑みを浮かべる。

 

「一つ言いますが、あなたたち人間が動物たちに対してやっている事が共存というのならば、私のやり方もまた共存というのですよ」

 

 詰まる所、メフィストギルディの野郎は人間が動物に対してやっている事と何ら変わりないと言ってのけやがった。

 一見間違っているようにも聞こえるがこればかりはぐうの音もでない正論だ。

 俺もティアナも反論できない。

 そんな俺たちに向かってメフィストギルディはダメ押しとばかりにある映像を空中に映して見せてくる。

 

「それにこれを見てください。実に悲しい事ですよ」

 

 そこに映っていたのは町中で武装戦闘員(アーマードアルティロイド)と戦うテイルブルームの姿。

 だがその様子は明らかにおかしかった。

 テイルブルームは武装戦闘員相手に無双しているのに涙を流している。

 そんな様子に困惑する俺たちの耳に映像の中からある声が聞こえてくる。

 

『帰れー!! お前らツインテールが来なけりゃ一生楽な生活が出来たんぞー!!』

『そうよ!! 私たちの平和を返して!!』

『ツインテール戦士なんか負けちまえ!!』

 

 聞こえてくる罵詈雑言。飛び交う罵倒。耳を覆いたくなる程にキツイ言葉の数々。

 俺もティアナも言葉を失った。

 

「わかったでしょう? あなたたちがやっている事は誰にも望まれていないような事なんです。それに町の人々から言ってしまえばあなたたちの方こそが侵略者と言ってもいい」

 

 かつてない程の虚無感。

 昨日のツインテール解放戦線の裏切り以上に心にくるものがある。

 俺たちは一体、何のためにこの世界にやってきてこうやって命がけで戦っているんだろうと悲しくなってくる。

 項垂れる俺の手からウインドセイバーが落ち、カランと虚しい音を響かせる。

 

「ようやくわかってくれましたか。そうです……!! あなたたちで良ければ私たちの仲間になりませんか? 一緒にこの世界を……いや、全平行世界を平和的にエレガントに支配してみませんか?」

 

 聞こえてくる悪魔の囁きと共に手を差し出してくるメフィストギルディ。

 この手を取ったらもう戻れないだろう。

 だが、一体どうすればいい? コイツの仲間になる事こそが俺たちに残された唯一の道だとでも言うのか……?

 どうしようもないそんな状況に陥れられたそんな時だった。

 テイルギアを通してある声が聞こえてくる。

 

『みんな大丈夫だ!! ツインテールを信じろ!!』

 

 幼い声だがそれは強く勇ましく温かい。

 そう、テイルギアを通して聞こえて来たのはテイルレッドの声だった。

 それを聞いて俺たちはハッと思い出す。

 

「そうだ……!! そうだったな!! 総二さん!!」

 

「そうよ……!! 私たちがツインテールを信じなくて誰が信じると言うの!!」

 

 メフィストギルディの言っている事は確かに正しいかもしれないし、俺たちがやっている事は望まれていないかもしれない。

 でも、それでも、俺たちはツインテールを信じて戦い続ける。

 それにそもそも、俺たちは人類の為だとか世界の平和の為だとか大それた願いの下に戦っているんじゃねぇ。大切な好きという感情を、想いを、守る為に戦っているんだ!!

 決意と共にメフィストギルディの差し出す手を払いのけた俺はウインドセイバーを拾い構える。

 

「もう迷わされねぇぞメフィストギルディ!! 俺たちはお前の支配からツインテールを解放する!! いくぞティアナ!! エモーショナルチェインだ!!」

 

「ええ!! 受け取って和輝!!」

 

 ティアナの願いと共に放たれる青い光が俺の体を包み込み、新たな姿へと変化させる。

 

「何ッ!?」

 

 驚愕するメフィストギルディ。

 それもその筈、俺の姿はさっきまでの青紫の形態とは一変して青が基調となったエモーショナルチェインへと進化しているからだ。

 ウインドセイバーをもう一つ精製しそれを連結、ウインドセイバーナギナタモードを構える。

 

「いくぜメフィストギルディ!! てめぇだけは俺がブッ倒す!!」

 

「くッ……!! そうですか……!! ならば仕方ありませんね。私も本気でいくとしましょう」

 

 本気でいくとの宣言通り、メフィストギルディの動きは今までがまるで遊びだったのかと思える程に機敏且つ激しい物へと変化する。

 だがそれは俺も同じ、ブレイブチェイン以上の機動力と攻撃力に特化した超攻撃形態であるエモーショナルチェインでならそんなメフィストギルディとも対等以上に渡り合うことが出来る。

 

「おらぁッ!!」

 

「ふぬぁッ!!」

 

 渾身の力と共に振るったウインドセイバーの斬撃をメフィストギルディは腕を盾にして受け止めやがった。

 互いの力が拮抗しぶつかり合い火花散る中、俺はすかさずウインドセイバーを滑らせてそのまま下半身から狙おうとするが、それを読んでいたメフィストギルディは逆に大きく弾き返してくる。

 

「チっ……!!」

 

 やはりいくら俺が戦闘経験を積んでいても野郎の経験値は俺を上回っている。

 このままただ我武者羅にやり続けても消耗の速さで俺が不利。

 ならばどうする?

 そう考えるもののいい考えは浮かんでこない。

 

「和輝!! 何を考えているのよ!! こういう時こそツインテールを信じて真っ向勝負でしょ!!」

 

 聞こえてくるティアナの声。

 そうだ。そうだったな……!!

 こういう時こそただツインテールを信じてツインテールだけを考えればいいんだよなぁッ!!

 

「うおらぁッ!!」

 

「何ッ!? さらにスピードアップだと!?」

 

 ツインテールだけを頭に思い浮かぶ事で更なる次元へと突入した俺の動きは遂にメフィストギルディですらも捉えられない程にまで加速。

 青き動きの軌跡が見える度にメフィストギルディの体はどんどんボロボロになっていく。

 いける……!! 

 そう確信した俺は全エネルギーをウインドセイバーに収束。完全開放(ブレイクレリーズ)したウインドセイバーナギナタモードが青い光を放つ。

 メフィストギルディを叩き斬るべく俺は真正面から一気に振り抜いた。

 

「エグゼキュートスライサァァァーーー!!!」

 

「ぬぉぉぉぉォォォっ!!」

 

 間一髪、両腕をクロスして受け止めに成功するメフィストギルディ。

 今までにないくらいの途轍もない衝撃がこのホールを襲う。

 そして凄まじい音と共に俺とメフィストギルディは互いに弾き飛ばされ、エモーショナルチェインへの変身が解除される。

 

「くッ……!! まだ倒しきれねぇのかよ……!!」

 

「生憎、私はまだ倒される訳にはいかないのでね……」

 

 悔しいが必殺のエグゼキュートスライサーはまさかの失敗に終わった。ウインドセイバーもボキリと折れてしまっている。

 だが、弾き返した側であるメフィストギルディの方も満身創痍といった具合なのが唯一の希望だ。

 後は通常形態でも十分に倒しきれるだろう。

 そう思い、俺は拳を握りしめる。

 メフィストギルディも起き上がると俺に応えるかのように拳を握りしめる。

 今度こそ正真正銘最後の一撃が決まろうとするそんな時だった。

 

 

 

「ウオォォォォォォォォォッ!!!」

 

「「!?」」

 

 このコロシアム全体を揺るがす途轍もない衝撃と音と共に怪物の咆哮と思われしき声がここではない別の所から伝わって来た。

 何事だと思わず立ち止まる俺たち。

 そしてメフィストギルディは何かを察したのか拳をおろし始めた。

 

「どうしたメフィストギルディ、まだ勝負は終わってねぇぞ」

 

 俯き明らかに戦意が無くなったメフィストギルディに俺はそう問いかける。

 するとメフィストギルディの口からとんでもない言葉が発せられる。

 

「これ以上の戦いは無駄です。もうやめにしましょう」

 

「何だと!?」

 

「どういう意味よ!?」

 

 困惑する俺とティアナ。

 一体、メフィストギルディの身に何が起きたと言うんだ。

 

「お二人とも今の咆哮をお聞きになったでしょう? 大方、あなた方の仲間達がサタンギルディ様に必殺技か何かでも放ち、サタンギルディ様をお怒りにさせたのでしょう」

 

「それが一体、どうしたんだよ?」

 

「サタンギルディ様がお怒りになった。それは即ち全平行世界の破滅を意味しているのです」

 

 何ッ!? 破滅だと!?

 急な破滅というワードに驚く俺とティアナ。

 対するメフィストギルディは何処か諦めを覚えたかのような態度で淡々と告げる。

 

「サタンギルディ様はかのアルティメギル首領ですら封印せざる得なかった程に強力且つ無敵の存在。いくらあなたたちの仲間があのテイルレッドといえど倒せる通りはありません」

 

「そ、そんなのわからねぇだろうが!!」

 

「そ、そうよ!! テイルレッドたちツインテイルズは私たちなんかよりもずっとずっと強いんだから!!」

 

 だがしかし、メフィストギルディは首を横に振り続ける。

 もう無理だ。諦めろとでも言っているかのようだ。

 

「私はサタンギルディ様の怒りが収まるまで避難するつもりです。あなた方はどうするおつもりですか?」

 

 敵なのに俺たちの事を心配してみせるメフィストギルディ。

 その姿からはこの事態は余程のレベルなのだなと理解させれれる。

 

「そんなの助けにいくに決まってんだろ!!」

 

「そうよ!! 私たちツインテール戦士が力を合わせれば勝てない敵なんていないわ!!」

 

「そうですか……。ならば私に見せてください、ツインテールを信じる力とやらをね」

 

 そう言い残しメフィストギルディは姿を消した。

 決着をつけれなかった事は少し残念だが、今はそれどころじゃない。一刻も早く助けに向かわねば。

 俺とティアナはボロボロになったホールを抜けて通路をひた走る。

 そしてサタンギルディがいるであろうコロシアムのメインホールに辿り着いた。

 しかし、そこでは……

 

「嘘だろ……」

 

 ボロボロになり横たわるテイルレッド、テイルブルー、テイルイエローの三人の姿がそこにはあった。




次回で終わるといいなと思っているんですがどうなるかなぁ……




キャラクター紹介20

 メフィストギルディ
 身長:215cm
 体重:158kg
 属性力:淑女属性(レディ)

 リーンたちの世界を侵略するエレメリアン。
 エレガントであることに拘る。
 争いが嫌いな平和主義者であるが、他者の心を支配する為には手段を選ばない冷酷な一面も併せ持つ。
 人心掌握術に長け、それでいて戦闘能力もアルティメギル幹部エレメリアンをも軽く凌駕する凄まじい。
 

 サタンギルディ
 身長:30m
 体重:5万t
 属性力:不明

 かつてアルティメギル首領と戦い敗れたとされるエレメリアン。
 憤怒を司るとされるその力は全平行世界を滅ぼす事が出来るとされ恐れられている程。
 現在は過去の敗北がきっかけでツインテールに対して憎悪を抱いている。
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