俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
突如発せられたその声。
それはとても小さく、とても幼い少女の声。だけどそれは誰よりも強く、そして誰よりもハッキリと聞こえる声だった。
だけど、突然の事過ぎて私やリーンは一瞬何が聞こえたのかがわからなくなる程に面食らってしまう。
「今なんて……」
そんな筈ない。でもそうであって欲しい。
そんな風に思う私たちに対してなのかはわからないけど、少女はもう一度ハッキリと空に向かって声を上げる。
「がんばれー!! ツインテール!!」
先程よりも強く聞こえるその声。
よく見るとその少女は自らの長い髪をその小さな手を使うことでツインテールのようにしている。
町の人々であるその少女は大なり小なりツインテール属性を失っている筈なのに、ツインテールを結ぶ真似と言えどそんな事が出来るなんて最早奇跡としか言いようがない。
「どうして……!?」
少女の身に一体、何が起きたのか。
皆目見当もつかないその光景。
そんな私たちに更なる驚きが襲う。
「そうだ……!! 頑張れー!! ツインテール!!」
また声が聞こえて来た。
その声を発したのはサラリーマン風のスーツを着た男性。
先程まではその眼に絶望を宿していたというに今はその眼からは希望しか感じない。
あんなにもさっきはツインテールを嫌っていたというのにどうして……
「負けないで……!! ツインテール!!」
今度は若い女性だった。
彼女は懐のポケットからゴムを取り出すと一瞬の内にツインテールを結びきる。
その手際からはとてもじゃないけどツインテール属性を奪われたようには見えない。
「そ、そうだ……!! 負けるな!! ツインテール!!」
「いっけぇ!! ツインテール!!」
さらにさらに今度はやんちゃそうな不良少年二人組が声を上げる。
その手にはいつの間にかツインテール少女のフィギュアが握られていた。
それは嘗てこの世界を守護していたであろうツインテール戦士の物にもみえる。
「俺たちのツインテールを……!! 守ってくれーーー!!」
「立ち上がれーーー!! ツインテール!!!」
「わしらの未来とツインテールを頼む!!」
「さっきはごめん!! だから立ってくれーー!! ツインテール!!」
「これは一体……!?」
若い男女から老人たち、果てには町中で私たちの事を非難した者。いつの間にか立っていたそれらの人々は連鎖するかのように続々と声を張り上げ、頑張れと空に向かって放ち始めた。
そして、それはいつの間にかツインテール解放戦線の人たちをも巻き込みながら避難所全体で大きな一つの波となり、町中に響き渡る。
まるで皆の持つ大好きなという気持ちが伝染していくかのように。
「「「「「「頑張れーーー!!! ツインテールーーー!!!!」」」」」」
ただの声援なんだけどなんて温かく、なんて心強いのだろう。
私にはわかる。この声援は決して上辺だけの見せかけなんかじゃない。
皆がこの世界を守りたい。この世界でツインテールを愛したい。
その気持ちが強く強く伝わって来る。
「町の奴らに俺たちツインテール解放戦線が負けるな!! 俺たちもいくぞ!! 頑張れーー!!! ツインテールーーーー!!!」
ずっと呆気に取られていたツインテール解放戦線の人たちも、ある男の人がきっかけとなり、和輝に向かっての声援が送り始める。
そしてリールやリーヴ、彼女らも負けじと声を上げはじめた。
「いっけぇぇぇ!! 和輝!! そんなバケモンやっつけろ!!!」
「そうだ!! 勝て……勝ってくれ!! ツインテールの戦士たち!!」
ツインテール解放戦線の人たちを加えたその声援はいつしか勝利の雄たけびを上げるサタンギルディの声よりも大きく聞こえていた。
ツインテールを通じてこの世界に住む皆の心が一つに纏まり結ばれていくのがわかる。
「ティ、ティアナさん……!! 一体……一体これは何が起きたんですか!?」
あまりの急展開に困惑するリーン。
当たり前ではあるけど、彼女は何故こうなったのかがわかっていないようね。
ぶっちゃけ、私も何がどうしてこうなったのかなんてわからない。
けど、わかることが一つある。
「奇跡が起きたのよ。皆のツインテールを結ぶ……そんな奇跡がね」
声援はツインテールとなり、和輝たちにむかって飛んでいく。
彼ら彼女らはもう絶望したりなんかしない。今度は俺たちも私たちも一緒になって戦うという気持ちを胸に声援を送っている。
私はそんな彼ら彼女らに負けじと声援を送る。
「頑張って……和輝……!!」
◇
俺は今、瓦礫の山の中に埋もれ立ち上がれずにいる。
体が動かない。もう戦えない。
それほどまでにサタンギルディのもたらしたダメージは心身共に凄まじい物であり、テイルギアの方もバチバチと各種武装から火花が飛び散ってその機能がもう限界だと知らせてくれている。
「クソ……!! もう無理なのかよ……!!」
思わず諦めたくなる程に最終闘体と化したサタンギルディの強さは別格だった。
なんせ俺よりも強いあのツインテイルズ三人の最強形態の必殺技を同時に受けたっていうのにまるで意にも返していなかったばかりか、サタンギルディの身体は、メフィストギルディ及びテイルレッドの話を聞くに奴は撃破されても属性玉の状態から即座に復活できる不死身で無敵の身体までもっていやがる。
さらに言えばその身体の大きさは今まで戦ってきたエレメリアンの平均身長の約数十倍である100メートル前後。ただ腕を振るうだけでその破壊力は今まで苦戦してきたエレメリアンの攻撃の比にならない。
そんなのいくら俺たちが戦っても勝てっこねぇじゃねぇか。
悔しいが俺はこのまま、全平行世界のツインテールがサタンギルディによって滅ぼされるのを見ているしかできないのかもしれない。
「ッ……!! くッ……」
頼みの綱であるテイルレッドこと総二さんも立ち上がれずにいるという誰しもが諦めたくなるそんな状況。
このまま俺たちの戦いは終わるのか。
「さらばだ……!! ツインテールゥゥゥゥゥゥ!!」
目の前で勝利の雄たけびを上げていたサタンギルディが今度は俺たちに向かって大きく口を開く。
そしてそのまま俺たちをツインテールごと纏めて消し去らんと破壊光線を放たんとするそんな時、俺たちの耳に突如として声が聞こえた。
「がんばれー!!」
「負けるなー!!」
「立ち上がれー!!」
初めはとても小さな声だった。まるで幻聴でも聞こえたかと思ってしまいそうな小さな声だ。
だけど、それは段々と大きくなりハッキリと聞こえてくる。
負けるな頑張れ、次第にそれは耳をすまさなくても聞こえてくる程に大きな大きな音となって聞こえてくる。
「こ、こいつは……!?」
「こ、声……?」
「そうですわ!! みなさんの声ですわ!!」
「でもどうして……!!」
「これは……みんなのツインテールへの想いだ!!」
一体何が起きたんだとばかりに困惑する俺やテイルブルーム、テイルブルーとテイルイエローとは違い、テイルレッドは即座にこの声が一体何なのかがわかった様子。
それはすなわち、この世界に生きる人々のツインテールへの想い。メフィストギルディの策略によって無くされていた筈の大好きを守りたいという心。
何故それが突如として蘇り、声援といった形で聞こえて来たのかはわからないが、何にせよさっきまではもう駄目だと諦めかけていた俺たちに力を与えてくれる。
そうだ……!! 俺たちはこんな所で諦めていい筈が無い……!!
「何だ……!? 何なのだこの声は……!?」
遅れながらその声に気が付いたサタンギルディが困惑し始める。
対して俺たちは湧き上がる力を元に再び戦うべく立ち上がろうとする。
「ば、馬鹿な……!! たかが声援を受けた程度で立ち上がるとでも言うのか……!?」
たかが声援だと?
違うな。これはただの声援なんかじゃねぇ。
これは自分たちも一緒になってサタンギルディと戦うという意思が形になった物。お前たちが最後まで完全に奪いきれなかった物だ。
「「「「「うおおおおおおおおッ!!!!」」」」」
そして、俺を含めた皆が一斉に立ち上がる。
見た目こそボロボロなのにその立ち姿からは疲労だとかダメージだとかの類は微塵も感じられない。
もう立ち上がる気力は残っていないとそう判断していたサタンギルディが驚愕の眼差しで俺たちを見つめている。
「何が……!? 何が起きたというのだ……!?」
「サタンギルディ!!」
「ッ!?」
テイルレッドはテイルカリバーの切っ先をサタンギルディに向けると声援に負けない声量で言い放つ。
「俺たちを含め、この世界の人々はもう負けやしない!! 俺たちのツインテールは――この世界のツインテールは――希望だ!!!!」
それはもう心も体も負けないという意思表示。
何が起きても、どんな誘惑に惑わされようとも絶対にツインテールを裏切らないという希望の言葉。
サタンギルディは先程までとは違い、テイルレッドの迫力に思わず後退る。
「ほ、ほざけ!! ならばその声援ごと消し去ってくれる!!」
サタンギルディの野郎、なおも聞こえてくる声援に恐怖したのかは知らねぇが、さっきまで俺たちに向けていた口を避難所がある方角へと向ける。
だがしかし、それを黙って見過ごす俺たちじゃねぇ。
「いくぞバイオレット!!」
「おう!!」
テイルレッドに続く形で飛び上がった俺はウインドセイバーに流れる風の力をフルで発揮し、強烈な風の防壁を作り出し破壊光線の威力を弱める。
そしてテイルレッドはテイルカリバーを掲げ属性玉を使用。
「ば、馬鹿な……」
「「はぁぁぁぁぁぁッ!!」」
「ッ!?」
驚愕するサタンギルディの懐にテイルブルーとテイルブルームの強烈な拳と掌底が同時に叩き込まれる。
余りの威力にグラつきよろめくサタンギルディ。
そして今度はダメ押しとばかりにテイルイエローがヴォルティックブラスターフォートレスを構え、銃撃を見舞う。
「うおおおおお!?」
ドシーンと大きな音を立てて倒れるサタンギルディ。
ようやくその巨体を倒す事が出来たこともあり、声援はより一層大きなものとなる。
「「「「「「いけぇーーー!!! ツインテールーーー!!!!」」」」」」
その声援がピークに達したその時、俺たちの体に変化が現れた。
傷ついていた筈のテイルギアが修復され元通りの姿になり、さらにそれだけでなく、ツインテールの端から足のつま先にあたる部分まで眩い光が俺たちを包み込む。
俺は青紫、テイルブルームは緑、テイルレッドは赤、テイルブルーは青、テイルイエローは黄色。
テイルギアの形こそ元のままだが、それぞれ皆が各パーソナルカラーにそった光が全身から発せられる。
「すげぇぜ……俺たち輝いてる……!!」
「こんなの私、知らないわよ……」
「キラキラしてカッコいいですわ……!!」
「そーじ、これって……」
それぞれが違った驚きを反応として見せる中、テイルレッドだけは全く持って驚いておらず、寧ろ最初からこうなるとわかっていたようにも見える。
「そうだ……これがこの世界に生きる人々のツインテール。俺たちに託された希望だ!!」
名づけてシャイニングチェイン。
ただの強化形態ではなく、この世界に生きる人々のツインテールが具現化し俺たちに力を与えてくれた最強を超えた希望の形態。
もう負ける通りなどない。
俺たち全員は皆がそれぞれ光輝くツインテールを羽ばたかせ空を舞う。
「ツインテールで飛ぶだと……!?」
「どうよサタンギルディ!! これがお前の嫌うツインテールの底力!! ツインテールを信じればたかだが空を飛ぶなんざ朝飯前だぜ!!」
「ほざくなァァァッ!!!」
怒りのままに破壊光線を乱射するサタンギルディだったが、空を飛ぶ術を得た俺たちには掠りすらもしない。
風でたなびくツインテールのように俺たちはヒラリヒラリと躱しきる。
そしてあらかた躱し終えた俺たちは、この勝負を決めるべく天高く飛翔すると、一斉に
「いくぞ!! みんな!!」
テイルレッドの掛け声に合わせるように皆一斉にサタンギルディに向かって弾丸のように突貫。ツインテールの羽ばたきにテイルギアのブースターからの加速をプラスしたことでその速度は音を置き去りにし光をも超越する。
てめぇの支配もこれで終わりだぜサタンギルディ!!
ツインテールは滅びたりしねぇんだよ!!
「「「「「シャイニングブレイザーーーーーーーーーーーーッ!!!」」」」」
五色のツインテールが混ざり合い一つの大きな流星となり、サタンギルディの巨体に降り注ぎ、そして貫いた。
貫かれ、体に大きな穴を開けたサタンギルディはその身体をボロボロと崩壊させていく。
「そ、そんな……我は……我はまた……ツインテールに敗れるとでもいうのか……!? この世界の……この世界のツインテールを支配したはずなのにか……!?」
崩壊していくサタンギルディがそう口にする。
そんなサタンギルディにテイルレッドは声をかける。
「いいかサタンギルディ。大好きな何かを想う気持ちはそう簡単に支配できるものじゃない。どれだけ忘れてもどれだけ失ってもきっとその気持ちは蘇る。俺はそれを知っている」
頷くテイルブルーとテイルイエロー。
その反応を見るに心当たりがあるのだろう。
「そ、そうか……そうだったか……貴様、名は?」
「テイルレッド。そして俺たちはツインテイルズだ」
「そうか……覚えておこう……」
そう言い残すとサタンギルディの100メートル近い巨体は完全に崩れ落ち消滅。不死身の肉体を形成するのに一役買っていたサタンギルディの属性玉は出現すると同時にシャボン玉が割れるかのように消滅した。
これで奴はもう二度と姿を現すことがないだろう。
そう一安心した瞬間、大量の属性力がシャワーのように世界中に振り注いだ。
これは恐らく、奴らが今まで奪ってきた全ての属性力だろう。
俺たち全員はその属性力のシャワーに祝福されながら気絶するかのように倒れ込んだ。
◇
暗雲に覆われていた空が元の明るい青空を戻った。
瓦礫の山の上で倒れ込む俺たち。
いつの間にか全員の変身は解けており、誰一人として自力で立ち上がる気力が湧いてこない。
正に死力を尽くした戦いだったぜ。
みんなの声援とそれが生んだ奇跡がなければサタンギルディに勝つことは決してできなかったと断言できる程には辛い戦いだった。間違いなく今回の戦いは俺というかテイルバイオレット史上、最も大きな戦いだっただろうな。
「お疲れ、和輝」
駆け寄って来たティアナが俺に労いの言葉をかけてくれる。
俺はそれに対して、無言で手を伸ばすという返しを見せ、ティアナはそれに応じる形で俺の手を取り、立ち上がらせる。
「痛ってて……もうちょい優しく起こしてくれよ」
「何言っているのよ、これでも十分優しいわよ」
ティアナはそう言うとニカっと笑う。揺れるツインテールが素敵だ。
俺はそれを見て今日も守り抜く事が出来たのだなと安堵する。
「なぁ、そういやリールはどうなったんだ? 無事なんだよな?」
そもそもの話、俺たちはリールを助け出す為にサタンギルディに挑んだ。
肝心のリールが無事でないと当初の目的を達成できたとは言えない。
「ああ……それなら――」
妙にニヤニヤとした表情を浮かべながらもったいぶるティアナ。
直後、俺の背中に走る衝撃。
衝撃の度合いからして誰かが背中を蹴ったのだと容易に想像つく。
普段の状態なら全くもって痛くないのだが、今のボロボロなこの体には随分と応えるぜ。
ったく、誰だぁ? 無防備な俺の背中を蹴るクソ野郎は……?
「バーカ、背中がガラ空きなんだよ~だ」
振り返るとそこには悪戯な笑顔を浮かべたリールが立っていた。
こんのクソガキ……!!
怒りのままに俺はリールを追いかける。
まぁ、何はともあれ無事でよかったぜ。
「待ちやがれこのクソガキ!! 今度という今度は許さねぇ!!」
「誰が待つかよ、和輝のバ~カ!!」
「全く、ほんっと仲いいわね」
さっきまでの激戦でのダメージは何処へやら。
和輝はリールを追ってそこら中を走り回っている。
私はそんな和輝を見ながらも微笑んだ。
「元気そうで良かったな」
後ろから声が聞こえて来た。
振り向くとボロボロになりながら立ち上がった総二さんがいた。
「総二さん……大丈夫なんですか?」
「ああ、俺はもう大丈夫だ」
よく見ると後ろで愛香さんと慧理那さんは瓦礫に腰掛け談笑にふけっている。
流石はツインテイルズ、あんなのにも激しい戦いだったというのにもう元気になっているだなんてね。
まぁ、和輝の馬鹿も元気に走り回っているけど……
「そう言えば……総二さん?」
「ん? どうしたんだ?」
「いや、その……ずっとお聞きしたいと思ってたんですけど、私たちこの世界で出会うよりもずっと前に……何処かでお会いしたことありませんでしたっけ?」
自分で言っておいてなんて変な質問なのだろうとは私も思う。
でも、そう思えてしまう。
それくらい総二さんといると不思議な安心感がある。
和輝といるときとはまた違う、もっとこう、昔から感じている安心感というか何というか……
「う~ん、ごめん……ちょっとわからないな」
「ですよね……いや、気にしないでください……!! ただの勘違いですから多分……!!」
申し訳なさそうになる総二さんに必死で大丈夫ですと答える。
そうよね、ただの勘違いよね。
でも、何処か引っかかる。
「あれ……そう言えばもう一つ何か忘れているような……」
考え込む中、私は何か大事な事を忘れているような気がしてきた。
その何かが何だったっけなと思い出そうとした時、拍手と共に声が聞こえてくる。
「お見事、お見事、流石はツインテイルズ。まさかサタンギルディ様を倒してしまうとは……」
ハッとなり声がした方向へ振り返る私たち。
そこには相変わらずの胡散臭い笑みを浮かべたメフィストギルディの人間態が立っていた。
「メフィストギルディ……!! 生きていたのか!!」
総二さんたちはメフィストギルディが逃げていた事を知らなかったが故、生きているという状況に最初こそ驚いていたが、即座に臨戦態勢に入る。
するとメフィストギルディはわざとらしく大きく手を振った。
「落ち着いて落ち着いて、私は戦いに来たのではありません」
「じゃあ何しに来たんだ!! サタンギルディはもう倒したぞ!!」
「わかっておりますとも、ですから私目は降参を告げに来たのです」
「降参だって!?」
再度驚く私たち。
対するメフィストギルディは淡々と告げる。
「私の目的はそこのお嬢さんに告げた通り、人の心を支配し完全なる勝利を得る事でした。ですが我が主、サタンギルディ様は人の心に負けた。完敗ですよ、これがあなたたちの言うツインテールを信じる力とやらだったのですね」
負けたというのに妙に清々しそうに見えるのは私だけだろうか。
相変わらず見た目こそ胡散臭いのに嘘をついているようには私には見えなかった。
「これからどうするつもりだ」
「そうですね……また一から出直しって所ですかね。当分の間はジッとしておくつもりですよ」
そうかと頷く総二さん。
総二さんもまた私と同じ考えみたい。
戦意のないエレメリアンを倒す気はないのか、総二さんは警戒心を解く。
「嘘よそーじ、どうせまたあたしたちの事騙そうとしているに違いないわ」
「そうですわ、この手の悪役は嘘しかつかないっていうのはお約束ですわ」
愛香さんと慧理那さんが総二さんに抗議する。
二人ともこの場でメフィストギルディを倒すべきだと思っている様子。
だけど、総二さんはそれを制止する。
「ご理解していただき感謝します。では私はお邪魔なのでそろそろおいとまするとしましょうか。あ、そうそう、この世界を覆うバリアは解除しておかなければならないですね」
指をパチンと鳴らすメフィストギルディ。
恐らく、宣言通りこの世界を覆っていたバリアは解除されたのだろうと思う。
「最後に一つ、またお会いできる時を楽しみにしています。ツインテイルズの皆さん、そしてテイルバイオレット」
そう言い残し消えるメフィストギルディ。
「おーい!! 何かあったのか~!!」
直後、何も知らない和輝が帰って来た。
私はそれを見て大きなため息をつくのだった。
◇
サタンギルディとの戦いが終わってもう数時間経った。
戦いの影響で廃墟と化してしまった町では、もう既に復興のために多くの人々が頑張っている。
あれだけ町の住民たちはツインテール解放戦線の奴らを嫌っていたのに今ではすっかりそんな事はなく、共に復興の為に手を取り合っている状況だ。
俺たちはそれを見てようやく
そして現在、俺たちは元の世界に帰るべく町を離れている。何でも総二さん曰く、トゥアールさんと連絡がとれたから合流するポイントまで向かおうとの事でどうせなので俺とティアナと華先生、そしてリールとリーンもついていっている。
「ねぇ、そういやあんたたちどうやって帰るつもりなの?」
トゥアールさんの到着を待つ間に愛香さんがそう尋ねてきた。
俺とティアナはそれを聞いて真っ青になりながら顔を合わせる。
「おい、そういや俺らどうするんだよ?」
「どうしよ……何も考えてなかった」
俺たちはこの世界に半ば事故のような形でやってきている。
帰るすべなど知る由もないんだ。
総二さんたちはそんな俺たちを見て移動艇で送って行ってあげるよと言ってくれたが、ティアナがそれは無理ですと否定する。
何でも、俺たちの世界に戻るための位置情報か何かないと無理との事。
「ったくしょうがねぇなぁ。じゃあ私たちの家で面倒でも見てやるよ。なぁ? 姉ちゃん?」
リールがリーンにそう提案するがそうはいかない。
俺たちにだって帰るべき場所がある。
脅威がさった今、俺たちは帰らねばならないんだ。
「ねぇ二人とも、行きと同じようにもう一度祈ってみればどうかしら?」
今まで黙っていた華先生がふとそう提案する。
それを聞いた俺たちはそれだとばかりにその提案に乗る事にした。
一か八か何とかなれ……!!
「「……!?」」
するとどうだ、祈りが通じたのかティアナのテイルブレスのエンブレムが光り、行きと同じようなゲートを出現させた。
これはもしや、俺たちの世界に繋がっているのか?
確証はないが、そんな気がしてならない。
幸いな事に行きのように俺たちを吸い込んだりしない。
「すっげぇな、マジでなんとかなっちまったよ……」
「そ、そうね……」
驚く俺たち。
これには総二さんたちも俺のテイルブレスにはない機能だと驚いている。
まぁ、何はともあれこれで俺たちも帰れる術を得た訳だ。
俺たちは別れの挨拶をすべく総二さんたちに向き直る。
「お別れ、みたいだな」
「だな。あんたたちには色々と世話なったぜ。ありがとな総二さん」
俺は総二さんと、
「じゃあね、またいつか手合わせしましょ」
「はい!! その時は喜んで!!」
ティアナは愛香さんと、
「またいつか何処かでサバイバルする機会があれば」
「ええ、その時はまた一緒に」
華先生は慧理那さんと、それぞれ握手し別れの挨拶を述べる。
ありがとうツインテイルズ。
この出会いは一生忘れないぜ。
その想いを胸に俺たちはゲートを進もうとするそんな時、リールが俺を呼びかける。
顔を赤くしてもじもじしやがってどうしたんだ?
「何だよリール?」
「その……ありがとな……。今度また会えたら、その時はその……」
「その?」
「ッ……!? やっぱり何でもない!!」
そう言うとリールは俺を蹴った後、リーンの後ろに隠れてしまった。
全く、アイツ何を考えているんだか。
追いかけたい気分で山々だが、今回は許してやるとする。
いつまでゲートが維持されているかわからないしな。
「じゃあ行くとすっか」
「ええ」
頷きあう俺たちは三人同時にゲートの中へとくぐる。
その先に待つのは行きと同じ異空間だ。
「じゃあな!! ツインテイルズ!!」
俺たちがゲートをくぐった次の瞬間、ゲートは跡形もなく消えるのだった。
「皆さ~ん!! お待たせしました~!!」
俺たちが去ってから数秒後、空高くに移動艇が出現し、その後リーンが別れ際にリール同様にひと悶着を起こす事になるのは、俺の知らない物語。
◇
和輝たちが去り、程なくして総二たちツインテイルズも帰った。
この世界に生きる人々は復興の為に皆が力を合わせて頑張っている。
きっと彼ら彼女らならもう二度と悪魔の誘惑に負けないだろう。
そんな平和溢れるこの世界。
誰も観測できない上空にて一つの赤い影があった。
「流石は総二だ。別次元のとはいえ、まさかあんな奇跡をおこしちまうなんてなぁ」
赤いツインテールに赤い装甲。
その姿はまさしくテイルレッドといっても差し支えない。
だがその赤い影はテイルレッドとは思えない邪悪な笑みを浮かべている。
「ま、それはそうと、まさかこんな所で再び会えるとはなぁ」
脳裏に浮かぶは赤紫のツインテールが特徴の記憶喪失の少女、ティアナ。
「究極のツインテール、いや、
そう言い残すと赤い影は姿を消したのだった。
今回で総二たち原作組の出番は終了です。
今後また出てくる予定なので、その日を楽しみにお待ちください。
あとシャイニングチェインは劇場版限定フォームのように思っていただければ幸いです。