俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
これはバアルギルディと初めて戦った日の夜の事――
「和輝には言ってなかったけど私、少しだけ思い出したことがあるの」
明日は一緒にスマホを買いに行くことを決めたので今日は解散としようとした直後だった。
「でも思い出したって言ったら少し語弊があるかも……だけど」
全く、わけがわからなかった。
頭に?を浮かべる俺に気にせずにティアナは静かに続けた。
「夢をみたの……この世界に来た最初の夜、もう2週間も前ね……」
「夢にはある人が出てきたの…………その人は美しい銀髪の女性だったわ。私はその人の名前も覚えてないけど……その人は私のとても大切な人だった……ような気がするの」
「女性ってことは恋人って線はないな。仲のいい親友か?それとも親か?」
銀髪の女性……ミステリアスで如何にも異世界っぽい雰囲気だなと俺は思った。
「親友でも親でもないと思うけど…………まあでもその人のことで思い出したことが二つあるわ」
「思い出したこと?」
「一つはその人はツインテールを愛していた。もう一つは……」
ティアナの言葉が詰まった。表情も何か辛そうなようにも見えた。
そしてティアナは俺の方を真っすぐに見つめながら意を決して再び語りだす。
「……その人はツインテール属性を失っていて、ツインテールをすることができなかったの」
「マジかよ……」
その夢の人がどんな人かは俺にはわからない。けど、自分の好きなことを好きであり続ける為の属性力を失うなんてとても辛いことだろうと思った。
「その人は強かった、私にツインテール属性を失ったことにもう後悔はしていないと言えるくらいには……」
後悔はしていない。その言葉から察するに何らかの事情でその人は自分自身のツインテール属性をわざと失ったのだろうか? もしそうなら強いなんてものじゃない。どんな状況であれ自分自身のツインテール属性を手放し、ツインテールへの愛を失うなんて俺なんかには決して真似できないことだと感じた。
「でも、皆その人みたいに強い人ばかりじゃないわ、自分の好きを奪われるってことはとても辛く、悲しいことだもの……だから私は……いや、私たちは戦わなくちゃいけない」
「ああ、そうだな」
この時、俺とティアナはエレメリアンと戦う決意を固めた。
もう属性力を失い、悲しい想いをする人を出さないために……
◇
ジリリリリリリと目覚まし時計が部屋に鳴り響いた。
いつもなら「まだもう少し……」と目覚まし時計を止め、二度寝に入ろうとするのだが、今日の俺は違った。布団の中から素早く飛び起き、リビングに向かい朝食を取る。
「さっきの夢……」
2日前の土曜日、バアルギルディと戦ったあの日の夜にしたティアナとのやり取りが夢にでてきた。
あの時、俺は話を聞いて思った。俺もツインテールが好きな人の端くれだ、ティアナの夢にでてきたその人ように自分自身の属性力を失うような目には誰にもなって欲しくない……
そう思ったのに……
「クソッ」
昨日のことを思い出す。マルコシアスギルディを取り逃し、属性力を取り戻すことができなかったことを……
奴は明日、決着をつけるためにやって来ると言っていた。今日こそは倒して必ず取り戻してやる。
食パンを口にくわえながらテレビの電源をつけた。
「随分と浮かれちまいやがって……」
昨日の今日だ、ある程度予想はしていたがテレビのニュース番組はテイルバイオレット一色であった。
ちなみに昨日も同じ報道をしていたので一日中、同じ内容のニュースを送っていることになる。
「それにしても浸透するスピードが早すぎるだろ……」
昨日、別に人々に名乗った訳でもないのに「テイルバイオレット」の名が爆発的に浸透している様子がテレビのインタビュー映像を見て伝わってくる。
基本的にどこのチャンネルもテイルバイオレット特集であり、エレメリアンに関する特集はかなり少なかった。
俺としては自分自身の特集などどうでもいい。寧ろ少しでもエレメリアンに関する情報が欲しい。チャンネルを切り替えてエレメリアンを特集している変わり者の番組を漁る。
『12年前の再来!?アルティメギル再び!?』
中々興味深いタイトルの番組を見つけた。内容としては十二年前、この世界を襲ったエレメリアンの組織、アルティメギルについてだ。
『この世界に住まう全ての人類に告ぐ! 我らは異世界より参った選ばれし神の徒、アルティメギル!』
十二年も前とは思えないほど綺麗なVTRが流れてきた。
VTRに映っているのはライオンのような外観の怪物。玉座に座りながら堂々と演説する様は歴戦の戦士を想わせる。
「俺がガキの頃にこんな奴らがねぇ……」
考えてみれば何故、俺はアルティメギルなんて連中のことを覚えていないのだろうか?
十二年も前の話だ、その頃の俺はまだ4歳。忘れていても不思議ではないが……
そんなことを考えている内にVTRは終わりを告げ、十二年前アルティメギルと戦った戦士についての特集に移っていた。
魔法少女シャイニーブルーム。この世界でアルティメギルと戦ったツインテールの少女。
今頃どうしているんだろうか? 歳を考えると今頃、もう二十歳は超えているだろう。この可愛さだ、さぞ美人でツインテールの似合う女性になっているんだろう。
「でも、まてよ……俺と同じで正体が男って線は……」
……ないないない。それは絶対にありえない!! この世で俺以外の男でこんな事態になっている奴はいない……筈だ。
何時の間にか番組は終了していた。時計の時刻を見ればもう八時半だ、学校にいく本来なら遅刻を焦る時間だが今日は違う。
「学校は休むしかない……か」
今日のいつ何時に攻めてくるかわからない以上、学校でゆっくりと授業を受けている暇などない。
先生には適当に理由をつけてくれと匠に頼もうとスマホを開くが……
「そういや、匠と絶交したんだよな……」
あの時、勢いでそんなことを言ってしまった俺自身に腹が立つ。
昨日のことは完全に俺が悪い。匠に悪気はなかったことはわかっている、わかっているんだ。
「謝ろうにも……絶対に許してくれないよな………」
絶交を言い出したのは俺だ。絶交を切り出した方がこんなに早く、仲直りを切り出すなんて虫が良すぎるだろう。
「あ~もうこんなこと考えていてもしかたねぇ!! とりあえず今は!!」
うじうじ悩んでいても性に合わない、とりあえず今はマルコシアスギルディに集中しなければ。
身支度を整えた俺はティアナの下へ向かうことにする。
「先輩たちもこんな悩み、あったのかなぁ……」
さっき、テレビに映っていたシャイニーブルームやバアルギルディが言及したツインテイルズと呼ばれる集団。ツインテール戦士の先輩たちもこんなことで悩んだのだろうか? 無性に聞いてみたくなった。
◇
「見たかよ、昨日のニュース」
「ああ、見た見た、可愛かったよな~」
「テイルバイオレットだろ? 格好良かったよな~」
和輝たち2年2組の教室内は昨日のテイルバイオレットの話で持ち切りだった。男子も女子も皆、夢中であったがこの教室で一人だけ様子が違う者がいた。
その人である匠は窓の外を眺めていた。
「…………」
クラスメイト全員がその様子に気づき始める。
こういう事件には人一倍興味を持ちそうな匠がここまで静かだとクラスメイト全員何かあったのか?と勘繰りたくなるものだ。現に今日はいつも一緒にいる筈の和輝もいない。
そんな匠を気にして一人の生徒が恐る恐る声をかけた。
「川本、お前も見ただろ? 昨日のニュース。 てか涼原はどうしたんだよ?」
「知るかよ、あんな奴……」
その一言に教室内がざわついた。あのバカ二人組がもしかして仲違い?と
和輝と匠、彼ら二人は学校内でも有名なコンビであった。古くからの幼馴染である両者共に彼女はおらず今まで彼女がいたこともない。そんな二人は頻繁に堀井先生に生徒指導室に連れ込まれては口八丁で丸め込め、よくラーメンをおごらせていると噂されるくらいには良くも悪くも有名だったのだ。
「噓でしょ!? あの二人が!?」
「もしかして、どちらかに彼女ができたとかか?」
「あの様子だと川本君ではなさそうね」
「まさか!? あの涼原が!?」
「ありえるわよ~涼原君、意外と見た目は悪くないもの、見た目は」
ある意味、的を射た憶測が生徒の間で飛び交った。こんな憶測が飛び交うのも普段から彼女を作ろうと躍起になっていたせいだろう。
当の本人の匠はそんな教室内の様子を見ても、何も喋らずに思い詰めていた。
(殴りだしたのも絶交を言い出したのも和輝からだ。俺は悪くない……筈なんだ)
あの時、悪かったのは本当に和輝だけだったのか?
しかし、いくら思い詰めても答えはでてこない。
「おはよう~みんな~」
担任の先生の朝の挨拶が教室を木霊し、皆お喋りをやめて席に着き始める。
(そうだ、昼休みにでも堀井に相談してみるか……あんななりでも一応は教師だし)
一人で思い詰めても埒が明かない。そう判断した匠は堀井に相談してみたくなった。
◇
「おはようございます! 山村先生!!」
「もうお昼ですよ、堀井先生」
山村華の言う通り、時刻は12時を回って既に昼休みに入ろうとしていた。
授業から帰還した堀井の余りも場違いな挨拶が職員室に響き渡る。
「いや~これは失敬、山村先生とは今日はじめてですから挨拶は大事だと思いましてね」
堀井は頭を掻きながら返答した。
堀井は悪い人ではないのだが、如何せん華に対して気持ち悪さが目立つ。生徒間、特に非公式に存在している山村華ファンクラブからは目の敵にされているほどであった。
華自身は堀井に対してはただの先輩教員としか思っていないのだが……
「それにしても元気がないようですが、どうしました?」
堀井の言う通り、華は元気がなかった。周りの教師たちは敢えて触れようとしなかったのだが、堀井はそんなことお構いなしに聞いてみていた。
「も、も、もしかして、誰かに告白されたとかですか!?」
「そんなことじゃないですよ!?」
堀井の頓珍漢な推測は華本人がしっかりと否定した。堀井自身はその答えを聞いてホッと胸を撫で下ろした。
「そんなんじゃ……ないんです……」
「よ、よろしかったら相談に乗りましょうか? お昼を取りながらでもゆっくりと」
これは千載一遇の大チャンス、華への好感度を上げる機会としてはまたとない機会だ。堀井は緊張を殺しながら華をランチに誘う。
「……お言葉に甘えさ――」
もう少しで華とランチに行くことができる。そう確信していた堀井の耳に一人の生徒の声が聞こえてきた。
「堀井~!! 昼飯一緒に食べようぜ~!!」
「川本!! 呼び捨てにするな!! 堀井先生だ!!」
堀井が今まで作った雰囲気が台無しであった。
「やっぱり、遠慮します。お昼はまた次の機会ということで」
華は新米とはいえ教師の一人だ。匠は悟られぬように明るく声をかけていたが、匠が何か悩みを抱えていることが華には一発でわかった。
「ちょっと!? 山村先生!?」
華は堀井に謝りながら職員室を出て行き、堀井の声が職員室に虚しく響いていった。
◇
アルティデビル基地の大ホール。今日は二体のエレメリアンが中央で言い争っていた。
言い争いと言っても激しい口調でヒートアップしているのは片方のみでもう片方は余裕の態度を崩さずに聞いているだけなのだが。
「いいか!! 今日は昨日のような手助けは無用だ!!」
バアルギルディの忠告した通りにテイルバイオレットの実力を見誤って油断し、あまつさえ、撃破寸前まで追い詰められたのは何処の誰なのか。
周りで聞いていたエレメリアンたちのマルコシアスギルディへの視線は嘲笑を含んだものに変わっていた。
「マルコシアスギルディも堕ちたものだな、人間風情に遅れをとるとは」
ここにいる誰かがポツリと呟いた。
今は亡きアンドラスギルディもそうだがアルティデビルのエレメリアンたちはアルティメギルのエレメリアンと比べて人間という種其の物を見下しているものが多い。
我ら、エレメリアンこそがありとあらゆる生命体の頂点であり、人間という種に対する絶対なる捕食者。
幾ら最強と謳われるツインテール属性をもってエレメリアンと戦うことができた所で所詮は取るに足らない人間の一人、そう考える者が大半を占めていた。
正に傲慢。悪魔の名を持つエレメリアンたちにピッタリであった。
「誰かは知らぬがその考えがいけないのだよ、彼の有名なアルティメギル首領も結局はテイルレッドという一人の人間に敗れているんだ。人間を見くびってはいけないと私は思うがね」
アルティメギルという偉大なる先人たち、アルティメギルは多くの世界の侵略に成功してきた。それは偏に強かっただけではない。アルティメギルの戦士たちは自らの属性に誇りを持ち、向かってくる相手にも一定の敬意を払った上で全力で戦ったからなのだ。
アルティデビルの戦士にはそれが足りない。大多数が人間を見下す処か自らの属性以外も認めようとしない。アルティメギルでも巨乳、貧乳論争など属性の対立はなくはなかったが、最終的にそれぞれ完全に認め合ったわけではなかったものの、互いに一定の敬意を払うほどにはなった。
「いいか!! ここにいる皆にも改めて告ぐ!! 我々はアルティメギルを超える!! 今のままの我々ではアルティメギルを超える処かその足元にも及ばない!!」
バアルギルディは大ホールにいる全エレメリアンに告いだ。皆の反応はそれぞれ違う。右から左に受け流す者も多い。
しかし、バアルギルディは信じていた。何時かアルティデビルがアルティメギルを超えることを。
「それで、勝算はあるのか? マルコシアスギルディ?」
脱線していた話を元に戻し、マルコシアスギルディに問いかけるバアルギルディ。
それに対してマルコシアスギルディは自信満々と答えた。
「貴様の言う通り、今回は油断するつもりはない。それにテイルバイオレッドは何か嘘をついている」
「嘘?」
「ああ、俺が嘘を嫌うのは知っているだろう。奴からは俺の嫌いな嘘の臭いがした」
そう言い残すとマルコシアスギルディは大ホールを後にした。
銀髪の女性、一体誰なんでしょうかね(棒)
キャラクター紹介4
性別:女
年齢:22歳
誕生日:3月1日
身長:165cm
体重:50kg
B88・W57・H82
今年、春に大学を卒業してしたばかりの新米の数学教師。
就いて早速、ファンクラブが非公式に作られるほど容姿端麗。
シャイニーブルームやアルティメギルなどにやけに詳しい。
ちなみにツインテールは小学生の頃に卒業したとのこと。
性別:男
年齢:27歳
誕生日:8月14日
身長:170cm
体重:78kg
和輝、匠と仲の良い日本史教師。
華のことが好きでよくアプローチをかけるが本人には恋愛対象として見られていない。
少し、ポンコツで生徒からは舐められがちだが根はいいので親しい生徒からは何だかんだ慕われている。