俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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今回は前回のエピローグ兼次回以降への繋ぎです。


第96話 蘇る記憶

「今日はありがとうございました!!」

 

 ヒカリの自宅である高層マンションのエントランスにて、ヒカリは感謝の言葉を述べつつ大きく頭を下げてくる。

 今現在、俺はヒカリを自宅まで送り終えた直後だ。

 

「別にいいさ、それよりももう大丈夫だよな?」

 

「はい!! もう変な気配はしてこないので大丈夫そうです」

 

 ヒカリの事をコソコソつけ狙っていたエレメリアン。確かティアナが言うに名をアムドゥシアスギルディ。何だか無性に苛つかせて来る野郎だったが、エモーショナルチェインの力もあってか何とか先程撃破に成功したので一安心だ。

 一応念のため、他に変な気配はないかどうかを聞いてみたが、どうやらその心配はない様子でこれまた一安心だぜ。

 

「そっか、じゃあ明日からまた頑張れよ」

 

「はい!!」

 

 何はともあれこれにて一件落着。

 明日以降、俺やティアナがヒカリの護衛に出向く必要が無くなったって訳だ。

 俺は何かあったらまた連絡するようにと言った後に帰路につこうとする。

 エントランスを抜けてマンションの外にでようとするその時、何となく振り返ってみると名残惜しそうに俺を見つめるヒカリの視線と目が合った。

 

「なんだ? まだ何かあるのか?」

 

「いや……その……」

 

 頬を赤くし俯くヒカリ。

 

「何でも……ないです……」

 

 ヒカリが何とか絞り出した言葉はそれであった。

 俺はそれに対して何を問いかける訳でもなく、ぶっきらぼうに「そうか」とだけ返して去っていった。

 

 

 

 

 ヒカリと別れた俺は、暗い夜道を街灯の光を頼りに歩き、自宅を目指す。

 ティアナの奴は先に帰ってしまっているので現在は俺一人。

 女子供が一人で出歩くにしては危険極まりない程に人通りが少なくなっている時刻ではあるが、喧嘩の腕には自信があるので襲われようが別に怖くはない。

 寧ろ、そんな事よりも俺は深刻な事態に直面している。

 

「はぁ……どうしたものかねぇ……」

 

 さっきのヒカリの態度といい、ティアナの態度といい、これは間違いなくあれだ。俗に言う三角関係って奴だ。しかも結構面倒くさいタイプの奴。

 何が面倒なのかと言うとそれは二人ともが互いに遠慮しているという事の一点に尽きる。

 一応、ティアナとヒカリの態度から最初から俺の事を取り合おうとしていたという事に関しては気づいてはいたものの、二人の間で何か友情のような物が芽生えた為なのか、それが余計に事態をややこしくしている。

 俺としてはどちらを選べと言われれば迷わずティアナを選ぶつもりではあるものの、それじゃティアナの奴が納得しないというか幸せにならないような気がするし、かと言ってヒカリを選ぶと言っても今度はヒカリの奴が同じ反応をしそうな感じがする。

 まぁ、要するにかなり面倒くさい事になってしまっているという事だ。

 

「たっく……わかんねぇよ……!!」

 

 クッソ……三角関係なんてありきたりなラブコメだけの展開かと思っていたのに、まさか俺自身がその渦中に巻き込まれちまうとはな……!!

 俺としてはどっちにも納得して欲しいけど、そうはいかないのがもどかしい。

 ここはやっぱり、男らしく俺の気持ちをガツンとぶつけるべきなのか?

 

「畜生……、これじゃ総二さんの事笑えねぇな」

 

 ふと思い出すのは、リーンたちがいた異世界で共にサタンギルディに立ち向かった赤髪の青年観束総二、またの名をテイルレッド。彼はツインテイルズと呼ばれるツインテール戦士のチームにおいてのリーダーであり、唯一の男性戦士。

 そして何よりも彼は、他のツインテール戦士たち全員から好意を抱かれており、話を聞くにその関係のややこしさは三角関係を優に超えるレベルだそうだ。

 当の本人は鈍感且つツインテール一筋な事もあり、その事実に気づいてなさそうなのがある意味、幸せと言えるだろう。

 俺はそんな総二さんを見て、何て罪作りな男だよと内心笑っていたのに、これじゃ寧ろ笑われるのは俺の方じゃねぇかよと苦笑いするしかない。

 

「でも、総二さんはいずれ結婚するんだよな」

 

 嘘か真か、総二さんは未来からやって来た娘がいると言っていた。

 その娘の名前がティアナの本名と同音なのはこの際置いておくとして、それよりも今は、総二さんがいずれツインテイルズの誰かを選び娘を作るという事実に注目するべきだ。

 皆に言い寄られているあの総二さんがその中の誰かと結婚する事になる。

 それは即ち、俺なんかとは比べ物にならない葛藤があった筈だ。

 もし未来にいけるのなら、今よりもさらに大人になった総二さんに今の事を相談してみたいぜ。

 

「それはそうと……総二さんって誰と結婚するんだ?」

 

 気になりだすと止まらなくなるとはよく言ったもんだぜ。

 現に俺は総二さんが誰と結ばれるのかが気になって来た。

 俺が直接出会った面々でも愛香さんと慧理那さんと唯乃さんと既に三人いる。

 このままうじうじ俺の三角関係を悩んでいても仕方ないし、それぞれが総二さんと結ばれた時の事を妄想して予想してみるとする。

 

「唯乃さんは……夫婦って感じあんましないな……」

 

 本人に失礼かもしれないが、あの二人だと夫婦というより共に高め合う好敵手と言った関係がしっくりくる気がする。

 まぁでも、何となくだがもし結婚して夫婦になっても暑苦しい事を除けば悪くはないような気はする。

 

「慧理那さんは……っと」

 

 慧理那さんは確か凄まじいくらいのお嬢様だったし、それはもう優雅な夫婦生活があるのだろう。

 でも、頭に浮かぶのは慧理那さんの首に首輪をつけて散歩する総二さんの姿ばっかりなのは謎だ。

 

「愛香さんは……」

 

 トリを飾るのは愛香さん、異世界での俺の同盟相手でもある。

 彼女は総二さんの幼馴染であるが故にその夫婦生活はある意味、一番妄想しやすいだろう。

 そう踏んで頭に思い浮かべたその時だった。

 

「え? 待てよ……俺、知ってるぞ。そうだ……!! 思い出した……!!」

 

 今まで忘れていた大事な事を思い出した。

 それは以前、ティアナと入れ替わった際に見たティアナの過去。

 そこに出てきたティアナの父親と母親の姿。それは紛れもなく総二さんと愛香さんだった。

 

 

 

 

 

 

 夜12時をとっくに過ぎた現在。

 普段の私ならとっくにベットの上で眠る準備に入っている筈なのだけど、今日はさっきまで和輝と一緒に夢宮ヒカリの護衛をしに出掛けていたという事もあり、こんな時間になってしまっていた。

 色々あって和輝と別れて一人で帰宅した私はアラームクロック裏口にある扉を開けて店内へ。

 

「ただいまー」

 

 当たり前だけど、もうとっくに営業時間は過ぎている。

 中は怖いくらい真っ暗闇。

 私は窓から射す月の明かりと慣れた感覚を頼りに二階へと繋がる階段を上って家の中へ。

 そして、階段を上ってすぐの居間では正樹さんがテレビの前で寝転がりながら今朝放送していた特撮ヒーロー及び魔法少女系アニメの録画を鑑賞していた。

 

「随分と遅かったな、心配したんだぞ」

 

 私に気づいた様子の正樹さんは録画している映像を一時停止した後、少しきつめの口調で遅くなったことを咎めてくる。

 それは親代わりである以上、至極当然の事だった。

 

「ご、ごめんなさい正樹さん」

 

 申し訳ないと思いすぐさま真剣に謝る私。

 だけどその姿は先程までのヒカリとの一件もあってか、何処か落ち込んでいるように見えてしまったのが不味かった。

 

「いやいやいや、無事ならいいんだ……!!」

 

 慌てだす正樹さん。十中八九、正樹さんは私が怒られてへこんでいるように見えたからだろう。

 私は焦った。普通ならここで別にそういう訳じゃないんだよとでも言ってのける物だとは思うんだけど、上手く言葉が出てこない。

 結果、何というか微妙な空気になってしまっている。

 私も正樹さんも特に意識はしていないのに壁のような物を作ってしまっており、これもやっぱり本当の家族でもなんでもない赤の他人同士だからとでもいうのかなと思ってしまう。

 

「じゃ、じゃあ私、もう遅いしお風呂入って寝るね」

 

「お、おう」

 

 気まずくなったこともあり、急いで居間を離れ、お風呂場へ。

 そしてそのままお風呂場にていつも通りツインテールのケアを入念に行い体を洗った後、私は湯舟の中に肩いっぱいまで浸かった。

 

「はぁ……」

 

 思わずため息が漏れる。

 原因はやっぱり正樹さんとの見えない壁についてだ。

 私としては正樹さんには感謝してもしきれない位には感謝しているし、実の父親かのように慕っているつもりだ。さらに正樹さんも正樹さんで私の事を本当の娘かのように可愛がっていてくれている。

 だけど……この関係はあくまでも仮初の形。私たちは所詮赤の他人同士であり、私には血のつながった本当の父親がいる。

 血のつながった家族でない以上、どこかしらよそよそしさが出てしまうのはある意味当然と言えば当然の事。いくら意識してもいずれ何処かでさっきみたいなちょっとしたすれ違いは起きてしまうのよね。

 

「そもそも私ってお父さんとどうやって接していたんだろう……」

 

 ここに来てふと気が付いた。

 私の思い出した記憶の中にお父さんとの思い出があまりない。お母さんとの思い出は沢山思い出したし、何ならお母さんとは記憶の再現とは言え、夢の中の幻想空間内で何度も会っているのに。

 思い出せるのは確か幼い頃の私がお父さんと一緒に眼鏡が特徴的なアイドルのライブを見に行った事くらいであり、それ以外は驚くほどに何も思い出せていない。

 別にお父さんと仲が悪かった訳では決してない筈なんだけど、どうも何かを疑ってしまう。

 これには何かあるんじゃないかってね。

 

「一体、お父さんってどんな人だったんだろう……」

 

 そもそも私はお父さんがどういう人物だったのかすらあまり思い出せていない。

 今辛うじてわかっている情報はお母さんとラブラブだった事、私と同じかそれ以上にツインテールが好きだという事の計二つ。

 これではお父さんがどんな人物だったかがまるでわからない。

 

「お父さんならわかるのかな……究極のツインテールについても」

 

 今日、和輝が撃破したアムドゥシアスギルディと名乗るエレメリアンが言った究極のツインテールという言葉。

 私はその言葉に何処か引っかかりを覚えた為、失われた私の記憶に関係しているのは絶対的な筈だと睨んでいる。

 もし私のお父さんが私以上にツインテールを愛していて且つ私以上にツインテールに詳しかったとするのならこの言葉の意味もわかるのかもしれない。

 究極のツインテール、それは一体何を意味をしているのだろう?

 

「ダメね、まるでわからないわ」

 

 湯舟に浸かりながら考え続ける事数十分、何一つとして手がかりを思い出せずに堂々巡りなっていた私は、このままでは埒が明かないと気づき湯船から上がりお風呂場から出た。

 体は兎も角として濡れた髪をゆっくり丁寧に乾かした私は寝間着に着替えそのまま自室のベットに向かいダイブする。

 

「はぁ……本当、どうすればいいのかしらね……」

 

 ヒカリとの三角関係、正樹さんとの見えない壁、私のお父さん及び私の失った記憶。考えないといけない事や解決しないといけない事はこんなにも沢山ある。

 私自身、どうすればいいのかまるでわからない。

 それにもう一つ、私の本当の名前とされる総愛って名についても謎が深いし、ああもうどうすればいいのよ。

 

「本当に何なのよ……」

 

 何が何だかわからない状態のまま、私は深い眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 気づくと私は見知らぬ街の見知らぬ道路の真ん中に立っていた。

 

(ここは……)

 

 閑静な住宅街といった雰囲気でありとても落ち着ける。

 だけど、私にはここが何処だかまるでわからない。

 何処かで見た覚えはあるんだけど……

 

(それにこの格好……)

 

 高校の制服って言えばいいのかな? 

 全体的に綺麗で纏まっている何処か学校の制服を思わせるような服装を私は身に纏っている。これは普段通学の為に着ている双神高等学校の制服とはまるで違う。

 知っているのは右腕についているテイルブレスだけだった。

 

(そっか……これは私の記憶なのね)

 

 私は今まで何度も同じように失った記憶を再現した世界を夢の中で体験してきた。という事はつまりこれは夢であり、私の記憶なんだ。

 そう理解したと同時に私の体は私の意思とは関係なく一人でに動き出した。

 私が夢で自身の記憶を再現した世界に来るときのパターンは大きく分けて二つ、一つは自分の意思通り自由に動き回る事が出来るパターン、もう一つは自分自身はただ見るだけで動くことは出来ず何があったのかを追体験するパターン。

 私が何かを思い出すのは決まって後者だ。

 つまり、今回は記憶の追体験であり何か大事な事を思い出せるのではと理解する。

 

(お父さんの事、思い出せるのかな……)

 

 寝る前に悩んでいた事もあり、私はそう淡い期待を抱いてしまう。別に何を思い出すかは私自身の意思では決められないのにね。

 そんな中、記憶の中の私はいつの間にか駆け出していた。

 まるで何かを焦っているかのような感じであり、段々と何か良からぬ事が起きてその現場に急行しようとしているという事を思い出す。

 そして走り続ける事数分、街の様子はさっきとはまるで違う様子になっていた。

 

(何なの……これ……)

 

 リーンたちがいた異世界でのツインテール解放戦線のアジト付近を思い出させる程に酷く倒壊した街並み。あちこちから黒煙が上がっており、空は太陽が雲に覆われ暗く淀んでいる。

 まるで大規模な戦闘の被害にでもあったのかなとでも思ってしまうけど、倒壊した建物の様子からしてこれは明らかに故意に破壊した者なんじゃ……と勘ぐってしまう。

 もしそうだとするのならこれだけの被害をもたらした犯人、恐らくエレメリアンはとてつもなく狂暴な奴だったのではと私は思う。

 

(何者なのかしら……ッ!?)

 

 突如目の前で大きな爆発音がしたかと思うと一際大きな10階建てマンションが地響きを立てながら崩れ去った。

 もしかしてこの先にこの被害を巻き起こした犯人がいるのでは……?

 そう思った直後、私の体は動き出す。

 

「テイルオン!!」

 

 テイルブレスを構えいつもの変身機構起動略語(スタートアップワード)を叫んだ私の体を赤紫の光の繭が包み込み、変身。

 あまりにも懐かしい変身の感覚に少し感動を覚えながら私はテイルギアを身に纏うツインテールの戦士の姿へと変身を遂げる。

 赤紫のツインテールに赤紫のメカニカルな装甲の数々。

 テイルバイオレットの青紫だった部分をそのまま赤紫に変えたかのような姿が特徴的だ。

 

(これが私の変身……ってそれどころじゃない!!)

 

 今までずっと変身出来ないがために煮え湯を飲まされ続けた事もあってか、記憶の世界とは言え変身できた事実に感動して少しの間我を忘れてしまったけど、今はそれどころじゃないとすぐさま思い出す。

 そう、今はこの時に何が起きたのかを知るべき。

 今更だけど、この記憶の中の私の年齢が今とそう大差ない事から考えるに、もしかしたら私の記憶を失う事になったとても重大な出来事がこの後起きるかもしれない。もしそうなら究極のツインテールが何なのかや私はどうして記憶を失うはめになったのかなどが全てわかるかもしれないのだから。

 

 そう決意している間も動き続ける私の体。

 何となくだけど、この時の私は何が何をして何が起きているのかを知っていたかのような素振りをしている気がする。

 つまり、この被害を起こしたのは私の知っている人……?

 そう思った次の瞬間だった。

 

(あれって……嘘……)

 

 倒壊した建物に上に佇む人物を見て私は言葉を失った。

 それもそのはず、その人物は私自身にも見覚えがあり、決してこんな事をするような人物ではない人物。それはかつて全平行世界を侵略しようとしたアルティメギルと戦い勝利を収めた伝説の英雄にして、私や和輝もリーンたちの世界で深く関わった赤髪ツインテールの戦士。変身前こそ男だけど、変身後は誰もを魅了するその幼き戦士の名は……

 

(テイルレッド……!?)

 

 そんな筈ない。これは何かの間違いな筈、決してそんな事があっていいわけがないし、総二さんはこんな事をする人じゃない。総二さんはもっと優しくて頼りになって例えるなら実のお父さんのような温かみを持つ人であり、万が一でもこんな事する筈が無い。

 私の知っている総二さんとの違いに頭がパニックになる。

 一体、私の世界で何が起きたっていうの!? もしこれが本当なら私たちがあった総二さんは何!?

 何が何だかわからずにいる私を置きざりにするかのように記憶の中の私はテイルレッドに叫ぶ。

 

「やっと見つけたわ!! どうして……どうしてこんな事を!!」

 

 その直後、テイルレッドは邪悪に笑うとフォースリヴォンを叩き、ブレイザーブレイドを召喚。そして、その切っ先を私に向けると獣のような形相で飛び掛かって来る。

 当然、応戦する私。

 剣と拳、赤と赤紫の二つのツインテールの力がぶつかり合う。

 その凄まじすぎる衝撃の前に私は夢から醒めるのであった。

 

 

 

 

 アルティデビル基地最奥にあるベリアルギルディの自室では部屋の主であるベリアルギルディがいつも通りパソコンを前に頭を抱えている。

 

「やはり上手くいかんな、わかってはいたが、究極のツインテールに匹敵するほどの属性力が無ければどうにもできん」

 

 何度シミュレートを重ねても上手くいかない。

 これ以上、研究を進めるには一刻も早く目当てである強大なツインテール属性の持ち主が必要なのだ。

 少し休憩でもと思い席を外したベリアルギルディ、保存してある愛しきマイエンジェルとの記録でも眺めようかと思いスマホを開くそんな時だった。ベリアルギルディは先程出撃中であり既に撃破されたと報告を受けたアムドゥシアスギルディから一件のメールが届いていた事にようやく気が付いた。

 いつもなら直ぐに興味を失いスルーするところであるが、この日に限っては何となく開いて確認してみる事に、するとそこにあるメッセージはベリアルギルディの度肝を抜いた。

 

「何々? 目当ての人物を見つけた……だと!?」

 

 メール内容はズバリ、ベリアルギルディが探し求めている人物について。

 喉から手が出る程に欲しかった情報が突如来た事に驚愕するベリアルギルディは、早速、添付されている写真に目を向ける。

 

「コイツは……?」

 

 写真に写っているのはアムドゥシアスギルディに首を絞められ苦しそうにもがく少女ことティアナ。赤紫のツインテールが月光に照らされとても綺麗だ。

 ベリアルギルディはティアナの姿を見て何処か引っかかりを覚えた。

 この少女は実際に会った訳ではない筈なのに見覚えがあるのは何故だという奴である。

 

「そうか……!! わかったぞ……!!」

 

 数分、考えた後、ベリアルギルディは答えに辿り着いた。

 その答えとはズバリ、以前バアルギルディが撮って来たとされるテイルバイオレットの正体を写した写真の人物と今さっき送られてきた写真の人物が同じであるという事だ。

 ベリアルギルディは思い出す。バアルギルディは以前、テイルバイオレットの正体が男ではないかと疑われた際にその正体を探る為にわざわざ赴いていた事があった。尤も、結果としてはバアルギルディの勘違いであり、テイルバイオレットの正体は何処の馬の骨かもわからぬ男であったのだが、その時最初にテイルバイオレットの正体だと目されたあの少女がまさかまさかベリアルギルディ自身が探し求めていた人物であったとは思っても見なかった。

 

「面白い事になってきたじゃあないか」

 

 そう呟いたベリアルギルディは善は急げとばかりに早速大ホールに向かい、基地にいる全エレメリアンを招集。

 程なくして大ホールに大勢のエレメリアンが集まった。

 

「今度はなんだなんだぁ?」

「どうせ大した事じゃねぇんだろぉ?」

「今、ゲームが良い所だったんだぞ!!」

 

 集まったエレメリアンは口々に大声で文句を口にする。

 その様を見て額に青筋を浮かべるベリアルギルディであったが、ここは我慢だとばかりにグッとこらえる。

 

「諸君、先程出撃していたアムドゥシアスギルディが敗れたとの報告があった」

 

 しんみりとでもなく、かと言って大々的に言うのでもなく、淡々と事実を伝えるベリアルギルディ。

 対する他のエレメリアンはやっぱり大した事じゃないんだなとすぐさま興味を失い、手持ちのスマホを開き始める。中には大ホールから出て行こうとする者まで現れる始末だ。

 ベリアルギルディはそんな彼らの様子を見て、慌てて本題を切り出した。

 

「勿論だが諸君、君たちに集まってもらったのはそんなつまらない事ではない。実は今さっき、驚くべきことが発覚したのだ!!」

 

「「「驚くべき事?」」」

 

 自信満々に答えるベリアルギルディと頭を傾げる他のエレメリアンたち。

 

「何と今さっき、我々アルティデビルが目標としているこの世界に潜む究極のツインテールに匹敵する属性の持ち主、その者が誰かわかったのだ!!」

 

 それを聞きざわめく大ホール。

 今まで目標も何もわからずにただこの世界で好き勝手属性力を集めていた彼らにとってようやく目標とされる存在が誰かわかったのは大きい。

 

「一体、誰なんだその者とは!!」

「やはりテイルバイオレットなのか!? それとも違う者なのか!?」

「早く教えろベリアルギルディ!!」

 

 先程までの態度は何処へやらとばかりに催促し始めるエレメリアンたち。

 今までやる気がなく自室にこもっていた連中もこれにはこぞって食いついている。

 

「落ち着け諸君!! 先ずはこれを見てくれ!!」

 

 そうベリアルギルディが言った後、大ホールの中央に巨大なスクリーンが展開。

 そこには今から約数ヶ月前にバアルギルディが撮影してきたテイルバイオレットの正体を写した写真が表示された。

 

「あれは確か……テイルバイオレットの変身前だっけか?」

「ああ、確かそうだったはず」

 

 昔あんなの流行っていたよなみたいな感覚でそう口にし始めるそんなエレメリアンたちにベリアルギルディは衝撃的な言葉を口にする。

 

「皆の者、勘違いするな。ここに写っているのはテイルバイオレットではない」

 

 何だって? それは本当か?

 今までの常識があっさりと崩れ去るような事をさらりと言ってのけるベリアルギルディに混乱する一同。

 尤も、あまり自室から出てこない一部のエレメリアンは、先程の写真について何も知らなかったので何が何だかさっぱりの様子。因みに以前、和輝たちと戦い敗れたグシオンギルディは前者であり、フォラスギルディ及びアムドゥシアスギルディは後者に属する者であった。

 

「ここに写っている少女がテイルバイオレットであるという事はバアルギルディのただの勘違いだ。だが、幸か不幸か、彼女こそが!! 我々アルティデビルの目的とするツインテール属性の持ち主なのだよ!!」

 

 今までテイルバイオレットの変身前だと思っていた少女が我らアルティデビルの目標とする属性の持ち主だと!?

 またしても衝撃的な発言を口にしたベリアルギルディとそれを聞いてざわめくエレメリアンたちだが、今回は先程よりも衝撃が少ない。

 皆、この少女ならありえなくはないだろうと心の底で思っていたからである。

 

「テイルバイオレットではないと言われた時は驚いたが、成程、道理で素晴らしいツインテールをした少女だ」

「これからはあの少女を目的に動けばいいって訳だな」

「よしきた!! 俺が出撃した暁にはあの少女を連れて帰ってやるぜ!!」

 

 大ホールにいるエレメリアンたちは今まで不明確だった目標の確かな姿を知り、勢いづいている。

 それはベリアルギルディがリーダーの座に座って以来の事だ。

 

「言っておくが、彼女の属性力は奪うんじゃないぞ。彼女はあくまでも捕獲してオレ様の所に連れてきてくれ。尤も、テイルバイオレットの奴は好きして構わんがな」

 

 盛り上がっている所悪いが、これだけは守って欲しいとベリアルギルディが釘をさす。一応、士気を無駄に下げぬようにテイルバイオレットは好きにしてくれていいとのおまけつきだ。

 他のエレメリアンたちはこれに対しおう!!! と返事をする。

 

(ふっふっふ、いいぞ……!! それでいい、貴様ら凡才共はオレの思うがままに動くがいい)

 

 ほくそ笑むベリアルギルディに気づきもしない彼らエレメリアンたちは大いに盛り上がる。中には次は俺に出撃させてくれとベリアルギルディに媚びを売り始める者まで現れる始末だ。

 上機嫌になるベリアルギルディ。

 そんな中、アガレスギルディが慌てて大ホールにやって来た。

 

「ベリアルギルディ殿!! 大変ですじゃ!!」

 

「どうしたアガレスギルディ!! 何があった!!」

 

「そ、それが、何者かが別の世界からこの世界に侵入したのですじゃ」

 

「何?」

 

 何者かがこの世界に侵入した?

 それは即ち、平行世界を移動したという事だ。

 そんな事はエレメリアンしかできない筈。つまり、侵入したのはアルティデビルに属していない野良のエレメリアンという事になる。

 そう結論づけたベリアルギルディはなおも慌てるアガレスギルディに言い聞かす。

 

「放っておけ、我々の目的に支障はない」

 

 それに対してわかりましたのじゃと小さく返事するアガレスギルディ。

 だがアガレスギルディは内心何か良からぬ事が起きるのではと不安を隠せないでいた。

 

 

 

 

 真夜中の摩天楼。

 真夜中だと言うのに煌々と照らされている街を見下ろす一つの影があった。

 

「ここだ。この世界だ。ようやくついたぜ」

 

 アガレスギルディが報告した謎の侵入者、それはこの人物で間違いない。

 彼女……いや彼の血のように真っ赤なツインテールが風になびく。

 

「追いかけっこも終わりだぜ。総愛……!!」

 

 総愛、そう口にした人物の口元が邪悪に歪む。

 

「さぁて、狩りの時間(ゲームスタート)だ……!!」




次回からのエピソードでは今まで謎だったテイルレッドらしきあの人物の正体やティアナの記憶についてを描いていくつもりです。
そして、原作からあの人物も遂に登場しますのでお楽しみください。
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