俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~   作:中川カイザー

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第98話 ツインテールを継ぐもの

 エレメリアン出現を受けた俺とティアナは共にバイクに乗って現場へ急行する。

 昨日撃破したばかりだというのに今日も出てくるとはまったく、疲れるっちゃありゃしない。最近出番が少ない華先生に代わってもらいたい所ではあるが、華先生は文化祭についての事もあってか少し遅れてくるとの事らしい。

 

「ここよ、和輝」

 

 辿り着いたのは俺たちの学校からそう遠くない場所にあるオフィスビル前広場にある屋外フードコート。

 昼飯にはまだ時間がある筈だと言うのにそこそこに賑わっている。

 そんな中にエレメリアンはいやがった。

 ふさふさの毛を纏った獣人型のエレメリアン。さしずめスカンクかそこらがモチーフだと推測できる。

 そんなスカンクのエレメリアンは驚き逃げようとする人たちを捕まえてはその顔とお腹を確認するかのようにジッと見つめ、何やら違うとわかったら解放するといった事を繰り返している。

 

「ほほう。貴様、中々にお腹が張っているな。さぞかし気持ちの良い屁をこくのであろう。だが違う、悔しいが今は貴様に構っている暇はない。次だ次!!」

 

 あのエレメリアン、どうやらおならの属性のようだ。女子の出すおならの臭いや音が好きだとかその類の変態なのだろう。

 でも、それにしては少し奇妙だ。

 普通、目当ての人を見つけたらその人物にしつこく構っては属性力を狙おうとするのだが、今回の場合、明らかに目当ての人物らしき人を捕まえても違うとばかりに解放している。

 余程こだわりが強いのか? 

 いや、それにしては何か変だ。何というかただ人探しをしているだけのようにも見える。

 

「あのエレメリアン、もしかして私を狙ってるんじゃ……」

 

「はぁ? 何、お前、おならでもすんのか!? やめろよこんな時に!!」

 

「違うわよ!! そうじゃなくって昨日の事よ!!」

 

 昨日の事と言われ、俺は昨晩戦ったアムドゥシアスギルディをハッと思い出す。

 確かアムドゥシアスギルディの野郎、俺が到着する寸前、ティアナをアルティデビルの基地に連れて去ろうとしていやがった。

 つまり、今回のエレメリアンはティアナを探していやがるっていうのか?

 もし、そうだとするのら一体どうしてだよおい。

 そんな疑問を抱く俺にティアナは口を開く。

 

「アムドゥシアスギルディは私を見て究極のツインテールがどうたらとか言っていたわ……もし私にその力があってアルティデビルがそれを狙っていとしたら……」

 

 究極のツインテール。

 何だが、不吉な予感を感じる言葉だ。

 もし、ティアナの言う通り、アルティデビルの面々がそれを狙っているとするのなら……

 

「兎に角、今はあのエレメリアンを止める事が先決ね。行くわよ和輝!!」

 

「お、おう!!」

 

 バイクから降りたティアナは朝っぱらの暗かった状態が嘘かのように駆け出し、俺は後に続く。

 逃げ惑う人たちに気づかれぬように物影に隠れた俺は、出現したテイルドライバーのスイッチを押し込み、変身を完了させる。

 変身しテイルバイオレットとなった俺は物影から飛び出すと、なおも逃げ惑う人々を追いかけているエレメリアンに急接近するや否や思いっきり蹴り飛ばす。

 

「おらぁ!!」

 

「うがぁッ……!!」

 

 蹴り飛ばされたエレメリアンはフードコート上のテーブルと椅子を破壊しながら倒れ込む。

 そしてむくりと起き上がり、俺の姿を見た瞬間、何やら慌てだした。

 

「テイルバイオレットっ……!!」

 

 エレメリアンと言えば例外を除いて基本的には好戦的なタイプが殆どであり、俺の姿を見たら「来たなテイルバイオレット!!」とでも言って即座に戦闘態勢に入る奴の方が多いのだが、どうやら今回のエレメリアンは違うタイプらしい。

 あまり戦いたくないという情けないオーラがひしひしと伝わってくる。

 

「ど、どうしてここに……!!」

 

「どうしてもこうしてもあるかよ。お前が騒ぎを起こしているからだろうが!!」

 

「し、しまった……!! つい派手にやりすぎてしまった……!! 俺とした事が放屁への情熱を持ちすぎてしまったばっかりに……!! ああ畜生!! こうなるんだったらもっと嗅いでおくべきだったーーー!!!」

 

 額に手を当てて派手に嘆くエレメリアン。

 随分と五月蠅い奴だが、俺からすればどこからツッコんでやればいいのかわからない。

 てかおならへの情熱ってなんだ。

 

『今回のエレメリアンは中々に強烈ね……』

 

「だな、久々に見たぜ。こういうの」

 

 遠くで避難誘導にあたるティアナも色々と同情してくれている様子。

 それほどに色々癖が強い相手だ。

 気持ち悪いのでさっさとぶちのめしたいのは山々なのだが、意外とこういう奴ほど手強かったりするので慎重に戦うとしよう。

 

「っと……その前に」

 

 先程のエレメリアンの妙な行動を思い出した俺は、このエレメリアンが何の目的をもって動いているのかを戦い始める前に聞いてみる事にする。

 ティアナ曰く、私を狙いにやってきたとの事だが、本当にそれかどうかは直接本人に聞くのが一番手っ取り早くて助かるからな。

 それにきっとこのエレメリアンならすぐに口を割ってくれるだろう。

 

「なぁてめぇ、お前は何にしにやってきたんだ? 見た所、属性力が目当てじゃなさそうに見えるが?」

 

「うう、中々に鋭いな貴様……!!」

 

 いや、お前の様子を見て察せない奴がどこに居るんだよ。

 少なくとも俺やティアナにはバレバレだぜ。

 

「まぁいいだろう。こうなってしまったばかりは仕方ない。ならば刮目して聞くがいい!!」

 

「お、おう」

 

 相変わらず妙に高いテンションで話し始めるエレメリアン。

 目論見通りとは言え、本当に馬鹿正直に答えてくれるとは思っても見なかったぜ。

 

「いいか!! 我らアルティデビルは元々、とある存在を追ってこの世界にやって来たのだ!!」

 

「とある存在?」

 

「ああ、そうだ。そしてその存在はかの有名な究極のツインテールに匹敵する強大なツインテール属性を持つ者であり、我らが新リーダーベリアルギルディ様はその人物を強く欲していられる!!」

 

 なんてこった……。ティアナの言っていた事が勘違いでも何でもない本当の本当にマジだったとは……。つまり、昨日、アムドゥシアスギルディがティアナを連れ去ろうとしたのはやはりそういう事だったって訳かよ。

 アルティデビルの目的が先程ティアナが危惧した通りであるとわかり動揺を隠せない俺は遠くで避難誘導にあたっているティアナをチラリと見る。

 ティアナ自身は今は避難誘導に必死で反応を返してくれる様子ではないが、俺と同じように動揺しているのだと容易に察することが出来る。

 

「テイルバイオレット。我々は当初、貴様こそ究極のツインテールを持つ者としていたがどうやら違うようだ」

 

「はぁ? 何を証拠にそんな事言ってんだ? 俺かもしれねぇだろうが」

 

 ティアナが狙われているとわかった以上、ここは嘘をついてでも俺がターゲットであると誤認させるべきだ。

 そう判断した俺はそうハッタリをかますが、エレメリアンは動じない。

 

「フッ、つまらんハッタリはよせ。そんな事は貴様の動揺をみればわかる」

 

 チっ!! やはり見抜いてやがったか……!!

 数分前は俺が会話の主導権を握っていたというのに、先程の話を経て変に勢いづいた影響か、この野郎に会話の主導権を握られちまっている。

 一番最初に見た俺を見ておどおど慌てる姿は何処にもいない。

 

「それに貴様は知っているのだろう?」

 

「何をだ……!?」

 

「この少女の事だ!!」

 

 そう言うや否や、エレメリアンはどこからともなく取り出したスマホの画面を俺に見せてくる。

 そこにはティアナが写った一枚の写真が映し出されていた。

 

「チっ……!!」

 

 やはりバレていたかと思わず舌打ちをしてしまう。

 対するエレメリアンはニヤリと口元を歪ませる。

 

「やはり、その反応。貴様は知っているのだな。この少女の事が!! ならば貴様を倒してその居場所と貴様自身の属性力をいただくとしよう!!」

 

 勢いづいた結果か、エレメリアンの野郎はついに戦闘態勢へと入る。

 全身の毛という毛が逆立つ様は中々に迫力があり、よく見ると足が馬の足になっている事からただのスカンクモチーフではないと今更になってわかった。

 

「俺の名はバティンギルディ!! 放屁属性(ファート)を愛し、放屁属性(ファート)に愛されし戦士である!!」

 

 勢いよく名乗ったバティンギルディは俺目掛けて飛び掛かって来る。

 だがしかし、それはまるで子供が親に抱きつきに行くかのような緩慢な動きであり、とてもじゃないが戦闘中に見せるような攻撃ではない。

 俺はその動きからやっぱしこの野郎は戦闘は苦手なのだと理解する。

 そして俺は飛びかかるそれを容易く躱すと、カウンターで逆に腹目掛けて強烈な一発を叩きこんだ。

 

「ぐぼぉ!?」

 

 腹に一撃叩きこまれ悶絶するバティンギルディ。

 これなら楽勝だなとわかり、余裕の笑みをこぼしたその時だった。

 バティンギルディの顔がニヤリと歪んだ。

 

『逃げて和輝!!』

 

 ティアナの叫びが聞こえてくるがあまりに急すぎて反応が出来ない。

 そして次の瞬間、バティンギルディの身体が黄色く発光し、溜め込んでいたであろう強烈なエネルギーが爆発となり解き放たれた。

 逃げることが出来ない俺はその爆発に直撃。強烈な痛みと共に大きく吹き飛ばされた。

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

『和輝!! 大丈夫!?』

 

「ああ、大丈夫だ……ってくっせ~!!!」

 

『どうしたの!?』

 

 爆発の衝撃と同時に広場全域に巻き上がった黄色い煙。

 避難を完了させ遠くで見守るティアナには到底わからないであろうが、この煙は鼻がひん曲がるかと思うような強烈な臭いを発しており、爆発の痛みをかき消す程だぜ。

 あまりの臭さに気絶しかねないとそう判断した俺は鼻を摘まみながら立ち上がる。

 

「ほほう、俺の一週間ぶりの放屁を耐えるか。中々のタフネスだなテイルバイオレット」

 

「当たり前だ!! こんなおなら如き……!!」

 

 口ではカッコつけてそう言ってはいるものの、現在の俺は鼻を摘まんで立っているが故にダサいことこの上ない。

 

「如きとは言ってくれるではないかテイルバイオレット!! いいか!! 放屁とは生理現象の中でも切っても切れぬ現象の一つ。即ち、屁をこく事こそが生きる意味であり存在する理由なのだぞ!!」

 

 堂々と意味不明な自論を語るバティンギルディの野郎。

 ツッコんでやりたいが臭いが邪魔で満足に口を開く事すらままならない。

 幸いなのはバティンギルディの野郎が特にこれといった攻撃を仕掛けてこない事だ。

 これならまだチャンスはある。

 ようやく臭いも消え、空気が晴れて来た。そう思った矢先、俺の腹部に異常が走る。

 

「……!?」

 

 ゴロゴロと音が鳴り、今にも何かが尻の穴から出そうになるこの感覚。

 これはまさか……

 

「ほう、貴様もしかして今、屁をこきたいと思っているな?」

 

『え、嘘でしょ……』

 

 ごめんティアナ……悔しいが図星だぜ。

 正直、今が戦いと関係ない時ならば思いっきりおならを出したい。

 けど、こんな奴の前でおならを出すだなんて死んでもごめんだ。

 

「まさかテイルバイオレットよ、貴様は屁をこくのに躊躇いを持っているのではないだろうな。屁をこくのが恥ずかしい事だとそう思っているのではないだろうな?」

 

 我慢だ。

 落ち着け、俺。

 あんな変態の戯言に耳を貸すな。

 もし、いまツッコんでしまったら俺の尻が爆発しちまう。

 

「安心しろ。俺は恥ずかしながら屁をこくのも遠慮せずにこくのも両方大好きだ。だから思う存分、俺と屁をこきあおうではないか。これこそまさにランデブーなのだからな」

 

「うっさいわボケぇぇぇーーーーー!!!」

 

 堪忍袋の緒が切れ、そう叫んでしまったのが不味かった。

 俺の我慢が限界点に達してしまう。

 

「あ……」

 

 せき止めていた栓が抜けるような感覚と同時に言葉にし辛い快感が俺の全身を襲う。

 ヤバい、もう無理だ。

 

「おお!! 遂にテイルバイオレットが屁を……」

 

 俺の表情からそれを察したのか、食い気味になって耳をすませるバティンギルディ。

 だがしかし――

 

「ってあれ? 何も聞こえぬぞ。それに臭いすらもせん。一体、どういう事だ!?」

 

 首を傾げるバティンギルディ。それもそのはず、俺の尻からは音の一つ聞こえなかっただけでなく、臭いすらもなかったのだ。

 言っておくがバティンギルディが耳を澄ませるのが遅すぎたとかではないし、俺が我慢して臭いも音も消したのでは決してない。俺は確かに我慢しきれずに出した筈だ。

 だが、結果は無音無臭とおなら好きにとってはおおよそ喜びづらい物だった。

 

『もしかしてエクセリオンショウツにはおならを吸収する効果があったのかも……』

 

「テイルギアにそんな機能もあんのかよ!?』

 

 ティアナの口から語られる衝撃の真実。

 まさかテイルギアにそんなしょうもない機能があるとは思っても見なかった俺はただただ驚くしか出来ない。

 

「何故だ!? そんな馬鹿な筈が無い!! 俺はどんなに小さいすかしっ屁でも聞き取れるし、どんなに無臭な屁でも嗅ぎ分けることが出来る!! なのに何故だ!?」

 

 対してバティンギルディの野郎は何が起きたのかがわからずにただただ困惑しており、凄く隙だらけだ。

 それを好機とみた俺はティアナに呼びかける。

 

「行くぞティアナ!!」

 

『ええ!! やっちゃって!!』

 

 ウインドセイバーを構える俺の体にティアナから送られてくるエネルギーが駆け巡る。

 

「「完全開放(ブレイクレリーズ)!!」」

 

 僅かに残ったおならをかき消すかのように紫の旋風が俺の周囲に巻き起こり、ウインドセイバーに収束していく。

 刀身が紫に輝いたのを確認した俺はバティンギルディを切り裂かんと一気に加速する。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「はっ!? いつの間に!?」

 

 ようやく我に帰り気が付いた様子のバティンギルディだがもう遅い。

 

「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 必殺のストームスライサーがバティンギルディを両断。

 真っ二つになったバティンギルディは大爆発を起こすのであった。

 

 

 

 

「ふぅ……なんとかなったぜ……」

 

「お疲れ様、和輝」

 

 バティンギルディを撃破することに成功した俺は変身を解除せずに地面にへたり込み、属性玉を回収し終え駆け寄ってきたティアナが労いの言葉をかけてくれた。

 はぁ、にしても色々な意味でゾッとする相手だったぜ。

 テイルギアにあんな機能が無ければ一体どうなっていたかわからない。

 やはりエレメリアンはふざけた言動をしている奴ほど別の意味で厄介なのだと再認識させられたぜ。

 だが今はそれよりも……

 

「なぁティアナ?」

 

「どうしたの?」

 

「言ってたよな。お前もバティンギルディの野郎も、究極のツインテールとかいう存在であるお前の事を狙ってアルティデビルはやってきているってよ」

 

 バアルギルディがいなくなり変わってしまったアルティデビルの目的。

 それはティアナを狙い捕まえるという事だった。

 その事実を知った以上、俺はある決断をせざる得ない。

 

「だからよ、今後は俺一人で出撃しようと思うんだが……」

 

「……」

 

 黙り込むティアナだがそれもそうだろう。何せティアナは俺と共に現場に向かい戦うという事で変身出来ないでいるというコンプレックスを軽減しているのだからな。

 だけど、ティアナが常に狙われる状況だなんて俺からすれば気が気でないなのは事実だし、それに今後どんな強い奴がやって来て俺や華先生がピンチになるかわからない。

 そう思うとやっぱりティアナが近くに居続けるのは危険な気がしてならないんだ。

 

「……でも和輝、私が近くにいないと必殺技も撃てないし変身も出来ないのよ」

 

「だけど、変身さえしちまえば大丈夫。それにトドメは華先生に任せればいい。そうだろう?」

 

 実際、変身を維持するだけならティアナと離れすぎてもさほど問題ないのはわかっている。大事なのは変身をする事なのだが、それは現場から離れた安全な所で行い、変身した状態のままで急行すればいいのだからな。

 なんとか絞り出したティアナに対し俺は反論を許さない言葉を返した。

 

「そ、そうね……」

 

 酷く落ち込むティアナ。

 だけどこればかりは仕方ない。

 俺は優しくティアナの肩を叩く。

 

「すまねぇ、でもわかってくれ……」

 

「うん……」

 

 変身している影響もあってかティアナの辛さがテイルギアを通してより強く伝わって来る。

 だがそれはティアナも同じなのだろう。

 俺自身が決してただ邪魔になるからではなく、心配だからこそなのはわかってくれているが故にティアナは辛いながらも頷いてくれている。

 

「とりあえず、今日は帰ろうぜ。もう直、避難していた人たちが戻ってきちまうしよ」

 

「……そうね」

 

 周囲を見渡すがまだ人影は全くもって存在しない。

 今はまだ戦闘を終えてからそこまで時間が経っていないからなのだろうけど、それも時間の問題だろう。

 いざティアナと一緒に帰還する時に他に人がいれば面倒くさい事この上ないし、さっさととんずらするに限るぜ。

 そう思い、変身を解除しようとしたその時。

 

「ッ!? 待って和輝!! 何かただならぬ気配がこっちに来る!!」

 

 突然、必死の形相でティアナがそう訴え始めた。

 それと同時に鳴り響くブザー音。

 明らかな異常事態に俺は警戒心をMAXに引き上げる。

 そして次の瞬間、俺は上空から途轍もない殺気を感じ取った。

 

「危ねぇッ!!」

 

 急いでティアナを抱え今さっきいた場所から離脱。テイルギアで強化された跳躍力を活かして大きく跳びあがった。

 そしてその直後、今さっき俺たちがいた広場が大爆発に飲み込まれた。

 

「何だよこれ!? 誰の仕業だ!?」

 

 咄嗟に離脱することに成功したから良かったものの、もし離脱するのが少しでも遅れていたら大惨事になるのは間違いない。

 そう思える程に上から見下ろす広場は凄惨な状況になっており、バティンギルディのおなら爆発なんか文字通り屁でもないという事を見せつけている。

 一体、誰だ? 誰がこんな事をした?

 

「和輝!! 後ろ!!」

 

「ッ!?」

 

 振り向いた次の瞬間、さらに上空から赤い影が俺に向かって猛突進してくるのが辛うじて見えた。

 ティアナを抱えている上、制御の効きづらい空にいる都合上、俺はその突進を背中で受けざる得ない。

 

「ぐああああぁッ!?」

 

「きゃあああぁッ!?」

 

 何者かからの突進を受け撃墜される中、俺はティアナを傷つけさせまいと自分自身をクッション代わりにしてする事で何とかその身を守り抜く。

 結果、俺はともかく、ティアナを無事に地上に降ろすことが出来た。

 先程の爆発の影響で見る影が無い程に荒れた広場で立ち上がる俺とティアナ。

 そんな俺たちに上空から声が響く。

 

「ブラボーブラボー、この攻撃を耐えるたぁ中々だぜぇ」

 

 その声には聞き覚えがあった。

 だけど、俺の脳はこの声の主はこんな事をする人じゃないと訴えかけてくる。

 同時に俺とティアナは今朝部室で話した事を思い出し、ここに来る途中感じていた形容し難い不安が現実の物になったのだと確信する。

 そして、舞い降りる赤い影。

 その姿はまさしく……

 

「「テイル……レッド……!!」」

 

 

 

 

 私たちの目の前に現れた赤いツインテールの少女。

 それは周囲で燃え上がる炎よりも赤く、鮮血のように鮮やかな赤い。正に燃え盛る太陽といっても過言ではない戦士、テイルレッド。

 かつて異世界で和輝と共に戦った筈の彼とはまた違うであろう彼が私たちの目の前に現れた。

 

「久しぶりだな総愛。元気にしてたか? ええ?」

 

 私の本名をさらりと言ってのけたテイルレッド。

 やはり、このテイルレッドは私のいた未来の世界からやって来た存在なのねと確信すると同時に私はとある衝動を抑えきれなくなる。

 

「お父さん!! お父さんなんでしょ!? どうしてこんな事をするの!?」

 

 テイルレッドこと観束総二は私のお父さんだ。(厳密に言えば今いる世界線とはまた違うパラレルワールドに位置する世界線における私のお父さんであり、私たちがリーンたちの世界であった総二さんとはまた違った存在なのはややこしいのでこの際置いておく)

 私や和輝は夢という形ではあるけど、私の失った記憶を見る事でお父さんの優しさや温もりを確認してきた。

 だけど、今私の目の前にいるお父さんことテイルレッドからは微塵もその優しさを感じない。寧ろ、私や和輝に対する殺気を感じることが出来る。

 私の脳裏によぎるのはテイルレッドが誰かに操られているもしくは身体を乗っ取られているという可能性。

 故に私は訴えかける。

 

「お願いお父さん!! 目を覚まして!!」

 

「はぁ? 何言ってんだ総愛?」

 

 頭を傾げるテイルレッド。

 やはり私の言葉はそう簡単に通じないなのねと絶望しそうになる。

 そんな中、隣のテイルバイオレットが駆け出した。

 

「おらぁ!!」

 

「おっと、危ねぇ危ねぇ」

 

 不意に放ったテイルバイオレットの拳は虚しく空を切った。

 だけど、テイルバイオレットは諦めずに再び拳を握りしめ応戦を開始する。

 

「総二さん!! あんた本当に悪に墜ちちまったのかよ!!」

 

「はぁ!? 坊主も何言ってんだぁ!?」

 

「とぼけんなボケェ!!!」

 

 テイルバイオレット渾身の右ストレートがテイルレッドの顔面目掛けて炸裂するがテイルレッドは腕をクロスしてそれを防御。

 後退るテイルレッドはすかさず距離をとった。

 

「ほう……成程、こいつは中々に狩りがいがあるぜ。だがそれよりも……」

 

 私たちを見つめ何やら考え込むテイルレッドと様子を伺う私たち。

 私たちとしてはテイルレッドを怪我無く正気に戻さないといけない故に慎重にならざる得ない。

 

「おい、総愛!! お前もしかして記憶が飛んでいるな?」

 

「そうだけど……」

 

 何かを思いついたのかそう尋ねてきたテイルレッド。

 私としては別に隠す理由もないのでハッキリと答えた。

 するとテイルレッドは何かを思いついたかのようにニヤリと笑う。

 

「はぁん、そういう事か……!! 通りでそんな反応になるわけだ」

 

 通りでそんな反応? 一体どういう事? もしかしてまだ思い出せていない秘密があるっていうの?

 小声でテイルレッドがそう言った次の瞬間、テイルレッドは突如頭を押さえだした。

 

「うぅ……!! こんな時に……!!」

 

 苦しそうに頭を押さえうずくまるテイルレッド。

 私にはまるで何かを思い出して苦しんでいるように見えた。

 私はテイルレッドに向かって声をかける。

 

「どうしたのお父さん!?」

 

「そ、総愛……!! た、助けてくれ……!!」

 

 さっきまでとは違って記憶の中でも聞いた事がある優しい声色で助けを求め始めたテイルレッド。

 

「お父さん!!」

 

 もしかして正気に戻ったの!?

 何がきっかけなのかはわからないけど、正気に戻ったのなら助けるしかない。

 私はお父さんの下へ駆け出した。

 

 

 

 

「違う……何かがおかしい……!!」

 

 急に頭を押さえだして助けを求め始めたテイルレッドを見て俺は足が止まった。

 この感じ、何か変だ。何か重大な勘違いをしているに違いない。

 そう思ったのも束の間、隣のティアナは頭を押さえうずくまるテイルレッドの下へ駆け出し始めた。

 そして、俺は見てしまった。

 ティアナが駆け寄って来るのを見て二ヤリと笑うテイルレッドの姿が。

 

「待てティアナ!! 罠だ!!」

 

 そう叫んでみるがこのままじゃ間に合わない。

 それを感じた俺は全速力で駆け、ティアナを突き飛ばす。

 その直後、俺の全身に凄まじい衝撃が襲う。

 

「ぐあぁぁぁぁッ!!」

 

「和輝!!」

 

 ティアナの悲痛な叫びが木霊し、俺は瓦礫の山に叩きつけられる。

 同時にテイルレッドはさっきまでの様子が何もなかったかのように立ち上がった。

 

「おいおい、邪魔するなよ。折角のオレの大芝居だっていうのによぉ……これじゃ台無しじゃねぇか」

 

「どういう事……!? 芝居? 正気に戻ったんじゃ……」

 

 何が何だかわからずに困惑するティアナ。

 そんなティアナに俺は真実を伝えるべく立ち上がり口を開く。

 

「違うティアナ。こいつは正気に戻るもなにも元から正気でさっきのただの演技だ」

 

「元から正気!? でもあのテイルレッドはお父さんじゃ……」

 

「違う。奴はテイルレッドじゃない」

 

「どういう事よ和輝!!」

 

 訳が分からずただただパニックに陥るティアナ。

 そんな中、俺は黙って見つめるテイルレッドに向かって声を張り上げる。

 

「そろそろ正体を明かしたらどうだ!! テイルレッドの偽物さんよぉ!!」

 

「偽物ですって!?」

 

 そんな馬鹿なと驚くティアナ。

 対するテイルレッドは腹を抱えて大きく笑い出した。

 

「はははははは!! 成程、随分と勘がいい坊主じゃねぇか!!」

 

 俺はそれを見てやはりなと今まで抱いていたかすかな疑問が確信に変わる。

 やっぱしこいつはただの偽物だ!! 総二さんじゃねぇ!!

 

「だけど、偽物ってのはちょいと違うなぁ……」

 

 ちょいと違う? 一体それはどういう意味だ?

 その疑問を抱いた次の瞬間、テイルレッドのブレスが光り、その身体を赤い光の繭が包み込む。これは変身を解除する時の光景だ。

 一瞬の静寂と共に、赤い光が弾け中から変身者の正体が露わになる。

 そこには赤黒い髪が特徴の30代くらいの男が立っていた。

 

「オレの名前はレイジ。レイジ・レオン=ザード。テイルレッドを継ぐものだ」

 

 レイジと名乗ったその男はハッキリとそう答えたのだった。




悪墜ち好きの人には申し訳ございません。
別人とは言えやはり原作主人公を悪墜ちさせるわけにはいかないと思い、最初から謎のテイルレッドの正体はこうなる予定になっていました。
レイジの正体及びティアナとの関係においてはまた次回以降をお楽しみください。
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