俺、ツインテールになります。2 's ~二人で結ぶツインテール~ 作:中川カイザー
「テイルレッドを継ぐもの……だと?」
突如俺たちの前に現れ襲い掛かって来たテイルレッド。
その正体は総二さんではなくレイジと名乗った謎の男だった。30代前半かはたまた後半か、このレイジとかいう男を見てわかるのは俺たちの親世代にあたるであろう年齢だというくらいであり、それ以外は敵であるという事を除けば、何故テイルレッドの姿になれるのかや何故ティアナを狙っているのかなど殆どの事がまるでもってわからない。
「ああそうだ。オレこそ全平行世界、いや、全平行次元のツインテール属性を支配し、その頂点に立つ存在になる者ってわけだ」
平行次元とかいう聞きなれないワードに頭を傾げながらもこのレイジとかいう男の目的を推理する。
今の発言とこれまでの攻撃的な行動からしてつまり、この男はテイルレッドとなって全世界のツインテール属性を奪おうとでもいうのだろうか? どう聞いても正しい意味でテイルレッドの後継者になるという事ではないのは確かだ。
もしそうだとするのなら本物であるテイルレッドに対する冒涜その物だ。
レイジの発言に歯噛みするそんな中、ティアナが口を開く。
「そんな事より!! どうしてあなたみたいな偽物がテイルレッドの姿になれるのよ!! あの姿は総二さん……いや、お父さんの物よ!!」
ティアナの叫びはごもっともだ。
どうしてこんな奴がテイルレッドと瓜二つの姿に変身できると言うんだよ。
「おいおい。テイルレッドが総二だけの物と思わない事だ。オレだってテイルレッドになる権利はいくらでもある。そうだろ?」
この野郎、テイルレッドの姿を独り占めするなとでも言いたいのかよ……
ある意味それは正論ではあるのだが、俺とティアナには怒りしか湧いてこない。
「それに言ったよなぁ? オレは偽物とはちょいと違うってなぁ」
「どういう意味よ!!」
「どういう意味もなにもそういう事さ。オレが変身するのは総二の変身するテイルレッドとはまた違うテイルレッド。中身が違うだけの正真正銘、本物のテイルレッドって訳さ」
ますます意味がわからない。
何をもってお前を本物のテイルレッドだって言うんだよ。
「それともあれか? オレが何故、総二の変身するテイルレッドと瓜二つに変身できるのかとでも言いたいってか? だったら答えは一つだ。オレや総二のように男がテイルギアを纏い変身する時になる女の姿、それはその男が理想とするツインテール女子の姿なんだからだぜぇ」
つまり、俺がこうやって変身するテイルバイオレットの姿も元は俺が理想とするツインテールが具現化したからとでもいうのか。
テイルギアの新たな発見に驚く俺たち。
テイルバイオレットの姿がどことなくティアナに似ていたのはそういう事だったのか。
「つまり……てめぇは総二さんと同じ理想を抱いていたって事かよ……」
「惜しいけど不正解だ。オレは総二の描いたテイルレッドの姿に憧れを抱き、真似にしたに過ぎない。最初にテイルレッドの姿に辿り着いたのは紛れもなく総二だ」
「じゃあやっぱり偽物じゃない!!」
「ノンノン、別にパクったわけじゃねぇ。総二をリスペクトしたって言ってくれよな」
鋭くツッコんだティアナだけどレイジはまるでもって意に介していない。
むしろリスペクトだのなんだのほざいてやがる。
これには俺もティアナも我慢できない。
「何処がリスペクトよ!!」
「そうだ!! てめぇのようなパクリ野郎が何言ってやがる!!」
「けッ、好きに言ってな。オレも総二と同じようにテイルレッドだっていうのは後でよーくわかる事だからな!!」
そう吐き捨てるレイジ。
そんな中で俺はレイジの発言からとあることに気が付いた。
「てかお前、さっきから総二さんの事を随分と馴れ馴れしく呼び捨てで呼びやがって……!! 未来じゃ一体、どういう関係なんだてめぇ!!」
事あるごとに口にしやがった総二という気さくな言い方。
何というか随分と親しい間柄かのようだが、コイツの性格や目的からして総二さんとは相容れるとは到底思えない。それに俺がかつて総二さんと出会った際に聞いた話ではツインテイルズの関係者にレイジなんて男の存在はなかった。
いくらこの野郎の出身の世界が俺たちが知っている総二がいる世界とは異なる未来を歩んだ世界からやってきたと言えど、ここまでのイレギュラーが起きる物なのかと疑問でしかない。
「どういう関係も何も……ただの友人に決まってんだろ。それとも何か? オレが総二を呼び捨てにしちゃいけないって理由でもあんのか? ええ?」
レイジの野郎はそう言い放つ。
対する俺は訳が分からず困惑する限りだ。
考えられるとしたらやはりティアナやレイジがいたツインテイルズの世界は俺たちが知っている物とは大きく異なる歴史を辿ったとしか思えない。
困惑しながらも頭を回転させるそんな中、レイジはおもむろにテイルブレスを構える。
「さてと……そろそろいいよなぁ? 遊びは終わりだぜ?」
身構える俺たち。
そして奴の口から紡がれるお約束の
瞬く間にレイジの身体の周りを赤い光の繭が包み込み、その変身を完了させる。
偽テイルレッド……いや、この野郎の言う事を尊重してやるとするならさしずめアナザーテイルレッドとでも言うべきか。
アナザーテイルレッドは再び俺たちの前に姿を現した。
「いくぜぇ覚悟しな!!」
身の丈以上の巨大な大剣ブレイザーブレイドの切っ先をティアナに向かって突きつけるアナザーテイルレッド。
やはり、コイツはティアナのツインテール属性を狙っていやがる。
何故、ティアナを狙うのか……それはやっぱし……
「狙いはティアナの持つ、究極のツインテールか……!!」
「ご名答だぜ坊主!! わかってんじゃねぇか!!」
やはりコイツの狙いはアルティデビルの奴らを同じって訳か!!
そうとわかればと俺はティアナの前に庇うように立ち、臨戦態勢に入る。
体はさっきまでの襲撃とバティンギルディとの戦闘でボロボロだがここは一発やるしかない。
「いくぞティアナ!! ブレイブチェインだ!!」
「そ、そうね!! 偽物相手なら何も心配はないわよね!!」
ティアナの言う通り、この野郎がただの偽物野郎だとわかった以上は加減してなんかいられない。寧ろ、今持ちうる最強の形態の力をもってしてじゃないとこの野郎には太刀打ちが出来ないといえる。
俺たちの心が重なり、シンクロしたその瞬間、ティアナのテイルブレスから勇気の赤い光が飛び出し、俺の下に降り注ぐ。
俺はその光を新たな
……筈だった。
「隙ありぃ!!!」
「ッ!?」
テイルアーマーを装着していく最中に襲い掛かって来たアナザーテイルレッド。
変身ヒーロー及びヒロインにおける変身中の攻撃はある意味最大のタブーと言ってもいい行動だ。なのにコイツは平然とそのタブーを破って来やがった。
あまりにも予想外且つ突然のその行動に俺は戸惑いを隠せない。
結果、俺は防御する事も出来ず、アナザーテイルレッドに蹴り飛ばされる。
「和輝!!」
ティアナの叫び声は虚しく、俺は再度瓦礫の山に叩きつけられる。
そして霧散するブレイブチェインの勇気の光。
俺の強化変身は完全に失敗だ。
「くッ……!! 卑怯者がぁ……!!」
「ハハハ、悪いがオレは卑怯もラッキョウも大好きでねぇ」
忌々しく睨みつけてやるものの、アナザーテイルレッドの野郎は寧ろ俺を煽るかのように笑みを浮かべてきやがった。
完全に奴のペースに乗せられているとわかっていてもこれには怒りを覚えるぜ。
だが、頼みのテイルアーマーはもう使えないと言ってもいい。
だったらもうこれしかない。
「クッソ……!! タレがぁっ!!」
「和輝!? 無茶よ!!」
ティアナの制止も聞かずに飛び出した俺は一気に決着をつけるべく
握りしめたウインドセイバーを大きく構えてアナザーテイルレッド目掛けて解き放つ。
怒りと共に放つ俺の全力の一撃であるストームスライサーはどんなエレメリアンでも躱しきる事はできないだろう。
だがしかし、アナザーテイルレッドはツインテールを翼代わりにして飛び上がり、空中に離脱するという事でいとも簡単にそれを回避しやがった。
この野郎……!! 空も飛べんのかよ!!
「甘いんだよぉ、坊主!!」
「ッ!? そんな……!!」
「おらよお返しだぜ!! 受け取りなぁ!!」
着地と同時に横薙ぎに大きく振るわれるブレイザーブレイドの一閃を俺は防御する事も出来ずに直撃。
余りの威力に俺を守るフォトンアブソーバーは容易に突破されてしまい、俺の全身に凄まじい激痛が走る。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
「和輝ぃぃぃ!!!」
僅かだが聞こえてくるティアナの悲鳴を聞きながら俺は絶叫した。
負けるのが悔しい。だけどそれ以上に痛みが勝ってしまう。
辛うじて変身は維持しているものの、俺はそのまま倒れ込んだ。
「何だよ、もう終わりかい。これじゃ狩がいがない」
そう呟いたアナザーテイルレッドは俺の髪、というよりツインテールを乱暴に掴み無理矢理立たせるかの如く持ち上げる。
俺は虚ろな目でその様を見ているしか出来ない。
もう勝負の行方は見えていた。
「ま、役目はキッチリ果たしてくれたって事だし、坊主は見逃してやってもいいんだが……さてどうしようかねぇ?」
役目は果たしてくれただと? どういう事だ?
アナザーテイルレッドの言葉に疑問を抱く俺ではあるが、今はそんな状況ではない。
このままじゃ俺はティアナのツインテール属性を奪われるのを見ているしか出来ない。
だけど、もう体は動かない。
絶体絶命、その言葉がピッタリ合うそんな時だった。
「ブルームツインシュート!!!!」
「ッ!?」
突如として聞こえて来たその声。
アナザーテイルレッドは即座に俺を放り投げるとその場から即座に離脱。
元居た場所に強烈な光を放つ光の矢が突き刺さるのが見えた。
「この声……もしかして……」
駆け寄ってきたティアナに肩を貸してもらいながら何とか立ち上がり、周囲を見渡す。
そして彼女を発見した。
広場を一望できるオフィスビルの屋上に佇む緑のツインテールが特徴の戦士の姿を。
「母なる大自然の力を持つ緑のツインテール戦士、テイルブルーム!! これ以上、私の生徒には指一本たりとも触れさせはしないわ!!」
「「華先生!!」」
広場に舞い降りる緑のツインテール戦士、テイルブルーム。
この突然の乱入には流石のアナザーテイルレッドも怯まざる得ない様子だ。
「チっ、お仲間が来やがったか。まぁいい、今日の所はこの程度で勘弁してやるとするか」
2対1となり状況が悪くなったからなのかは知らねぇが、アナザーテイルレッドの野郎は突如として空中に浮き上がる。
そしてアナザーテイルレッドはツインテールを羽ばたかせどこか空の彼方へ去って行ってしまった。
「助かった……のか……」
「そうみたいね……」
駆け寄って来るテイルブルーム。
俺はその姿にとてつもない安心感を覚え気を失うのであった。
◇
その日、アルティデビル秘密基地に激震が走った。
事の発端はベリアルギルディの命を受けたアガレスギルディが撮影し持ち帰ってきたテイルバイオレットとバティンギルディの戦いの様子を大ホールにて流した時の事だ。
最初はいつも通りバティンギルディがテイルバイオレットにやられる映像。
これは別に何も問題ない。
寧ろ、機材トラブルの影響で音が無く、映像だけの戦闘描写を見せつけられても何の意味もなければ面白みもないとして大ホールから離席しようとする者もあらわれた始末だった。
だが、問題なのはバティンギルディ撃破直後の映像だった。
「夢か? これは夢か?」
「いいや、違うぞ。これは夢ではない……!!」
「遂に……遂に……俺たちの前に……!!」
互いに頬を引っ張り合い夢ではないかどうかを確認するエレメリアンたち。
それもそのはず、スクリーンに映っていたのはこの世界に存在する筈のない存在であり、大なり小なりツインテール属性を有するエレメリアンにとって正に女神とも言える憧れの存在であったからだ。
「テイルレッドたんがやってきた……!!」
とあるエレメリアンが感激のあまり、声を漏らす。
そう、彼らが見たのはテイルバイオレットの前に突如として現れたテイルレッドらしき者の姿。
噂では聞いていながらもこのままでは決して会って見る事が出来ないと思っていた存在がスクリーンに映ったのだ。その興奮は計り知れない。
大ホール内は一瞬の内に狂喜乱舞に包み込まれる。
だがしかし、一部のエレメリアンはそんな中でこう疑問を抱いた。
何故、急にテイルレッドたんがやって来たのだろうか? 本来、敵である筈のバティンギルディはもう倒されたのに……
さらに言えば映像の雰囲気も何だがおかしい。
ツインテールを愛し合うヒロインの出会いにしては余りにも緊迫し過ぎている。
映像に映っているテイルレッド及びテイルバイオレットは何やら喋っているが、録音に失敗した影響でそれが聞こえてこないのがもどかしい。もし、聞こえてくるのであれば何故、こうも一触即発な雰囲気なのかがわかるというのにだ。
一部のエレメリアンがそう考えるそんな時、映像が動き出す。
映像の中でテイルレッドとテイルバイオレットの戦闘が始まったのだ。
「何!? どういう事だ!? テイルレッドたんとテイルバイオレットが仲間割れだと!?」
先程まで感激していたエレメリアンたちもこの突然の事態には慌てだす。
なんせ同じツインテール戦士の仲間だと思っていた二人が突然戦いだしたからだ。
微笑ましい喧嘩だとか正義の味方同士の模擬戦とは決して違うマジバトル。
映像を見る限りでは攻撃しているのはテイルバイオレット側であり、テイルレッドはただ回避しているだけのように見えるが、何となくテイルレッド側から不吉なオーラを感じ取れる。
おおよそ似つかわしくない邪悪な笑みを浮かべるテイルレッド。
それを見た一部のエレメリアンは確信する。
あれはテイルレッドではないと。
「何だ? 今度はどうした?」
「レッドたんが苦しみ始めたぞ!?」
映像が変わり、今度は突如として頭を抱え苦しみ始めるテイルレッドの姿が映し出される。
そしてそれに駆け寄ろうとするのは赤紫のツインテールが特徴の少女。アルティデビルがターゲットとしている究極のツインテールに匹敵するツインテール属性の持ち主だ。
一体、何がどうしたんだと慌てる一同。
そして次の瞬間、予想だにしていない映像が流れ始めた。
何とテイルレッドが手から衝撃波を放ち駆け寄るその少女を攻撃したのだ。
「「「レッドたん!?」」」
辛うじてその少女はテイルバイオレットが庇う事で無事であったが、その騙し討ちとも取れる狡猾な戦法はとてもじゃないがイメージしていたテイルレッドの姿ではない。
大ホールにいる多くの者たちが困惑するそんな中、更なる衝撃が襲い掛かる。
「テイルレッドたんが男だと……!?」
スクリーンに映ったのは変身を解除し、荒々しい30代くらいの男の姿へ戻るテイルレッドの様子であった。
予想だにしていない光景を前にして固まるエレメリアンたち。
一応、彼らはテイルレッドの正体が男なのではという噂を知ってはいた。
がしかし、その噂が本当であれテイルレッドに変身している男はもっと可愛げのある好青年であると信じていた。
なのに、スクリーンに映ったテイルレッドの正体は可愛げなどまるでなく、獣のような瞳を宿した如何にも乱暴そうな男。カッコいいかカッコ悪いかで言えばカッコいいの部類には入るだが、如何せん変身前とのギャップが強すぎる。
「これは一体……」
「夢だ……これは夢だ……!!」
現実逃避をし始める一部のエレメリアンたち。
数分前までのあの喜びに溢れていた彼らの姿は何処にもいない。
大ホールは阿鼻叫喚の渦に包まれた。
「諸君!! 落ち着きたまえ!!!」
そんな中、突如大ホールに声が響き渡る。
声の主はベリアルギルディだ。
ベリアルギルディは傍らにアガレスギルディを連れ大ホール中央に現れたのだ。
「いいか諸君!! 今見たのは紛れもなく真実!! あれが我らアルティデビルの新たな敵の姿だ!! だが安心して欲しい!! 諸君らが見たテイルレッドはただの偽物だ!!」
「「「偽物だと!?」」」
そうだと頷くベリアルギルディ。
そしてベリアルギルディは語る。オレ様はかつてアルティメギルに所属している時にテイルレッドの正体を見たことがあるが、それはあんな紛い物などではないと。
「諸君らに見てもらったのは他でもない。今後、もし出撃した際に混乱して何も出来ずにやられるのを阻止するためだ!! いいか!! あのテイルレッドはただの紛い物なのだよ!!! それを忘れるな!!!!」
ベリアルギルディのその言葉を聞いてホッと一安心するエレメリアン一同。
本来ならベリアルギルディの話など聞かない者たちも今回ばかりは藁にも縋る気持ちでその言葉に耳を傾けていた程だ。
「そうとわかればレッドたんの偽物なんか怖くねぇ!!」
「そうだそうだ!! 危うく騙されるところだったぜ!!」
「我らの手で偽物に裁きの鉄槌を!!!」
盛り上がる大ホール。
かくしてアルティデビル基地を震撼させた大事件は終わりを迎えた。
彼らエレメリアンは今後、偽物であるアナザーテイルレッドと相対しても混乱せずに戦えるだろう。
「それにしても……奴は何者なんだ? これはオレ様が直々に出向く必要がありそうだな」
大ホールを後にするベリアルギルディはそう呟いた。
◇
アナザーテイルレッドの初襲撃から3日が経った。
ようやく傷も癒え体力を回復した俺はティアナと共に現在、新聞部部室にて悠香さんたちとアナザーテイルレッドの事について話し合おうとしている所だ。
本来なら今日含めてほぼ毎日、文化祭の準備に勤しむ筈なのだが、今は文化祭の準備どころじゃねぇのでこうなっている。
一応、匠の奴には俺たちが手伝えない分まで頑張れとは言ってはいるがな。
「涼原君? 体は大丈夫なの?」
「まぁな」
心配そうにそう聞いてきた華先生だが俺はもう大丈夫だぜ。
今日からはもしエレメリアンが出現しやがったとしても俺も出撃できる。
俺がダウンしていた間、常にエレメリアンなどの事を警戒してくれていた華先生には頭が上がらない。
「よし、和くんも復活したみたいだし、話し合いを開始しましょう」
仕切る悠香さんと頷く俺たち。
ティアナによると、大まか何が起きたのかについてなどは俺がいなかった間に言っておいたとの事なので先ずは何があったのかを説明する必要はない。
「とりあえず、先ずはこれを見て欲しいの」
悠香が取り出したのはゴシップ記事やスキャンダル記事が多くまとめられている週刊誌の一冊。
そこの一面には先日の襲撃の様子が取り上げられていた。
「悪の戦士、テイルレッド。テイルバイオレットを襲撃……」
まるでテイルレッドという悪の戦士がテイルバイオレットを攻撃したとも見えるその記事。
いや、実際その通りではあるのだが、ここに写っているテイルレッドは本家本元のテイルレッドではなく、ただの偽物であるアナザーテイルレッド。記事を書いている人達にはその事を知らないからとは言え、これでは本物のテイルレッドに対する風評被害もいいところだぜ。
本物のテイルレッドの凄さを知っている分、この記事の書き方に怒りがこみ上がって来る。
「クッソ……何も知らねぇ癖に!!」
「それだけじゃないわ。これも見て」
リモコンを手にし、テレビの電源を入れる悠香さん。
映ったのは昼間放送されているニュース番組。
そこには見覚えのある顔をした野郎がゲストとして招かれていやがった。
『では藤倉さんはテイルレッドとテイルバイオレットはグルだと、そう言いたいんですね?』
『はい。寧ろ今回の事件でハッキリとしましたけどね。テイルバイオレットもあの怪物どもの仲間なんですよ。大方、今回の襲撃もとい戦闘は獲物の取り合いみたいなものですよ』
テレビの中で自信満々に持論を述べる男、名を藤倉幹太。
奴は以前、テイルバイオレットの正体を探りに俺たちの下にやってきただけでなく、悠香さんと青葉さんに知っている事を教えない限りお前たちの未来はないと脅しに来やがったクソ野郎だ。
「誰がグルだこの野郎!! 俺があんな偽物野郎の仲間な訳ないだろうが!!」
「でも、世論はまたしても真っ二つに分かれようとしているわ」
「はぁ!? ふざけんな!!」
「仕方ないわよ和輝。ツインテール戦士に悪い奴がいるって事が知られちゃったもの」
悔しそうな表情を見せるティアナを見てしまっては何も言うことが出来ない。
ティアナからすれば自分の父親が変身するテイルレッドが悪者扱いされ、尚且つ自分の信じるツインテール戦士の中に悪の存在がいやがったんだからな。
「クソッたれが……!!」
「兎に角、あたしたちは今まで通り活動して疑いを晴らすしかないわね」
テイルバイオレットへの疑いはそれで何とかなる。
だが、テイルレッドへの風評被害は奴がいる限り収まらないだろう。
これを止める為にも奴は早くブッ倒さねぇと……
「それでティアちゃん? あれからそのレイジって男の動きは?」
「それが……怖いくらい何もしてこないんです。まるでチャンスを伺っているみたいな……」
ティアナの言う通り、アナザーテイルレッドことレイジはあの日以来、積極的に何かをしようとはしていない。
実際、俺がダウンしているこの三日間はアナザーテイルレッドもエレメリアンも両方とも出現することない平和な日々だったのがそれを物語っている。
だというのに一部のマスゴミは……
「ツインテール戦士が二人いるとわかって暴れたくても暴れられないんじゃないかしら?」
「先生……多分、それはない……」
「華先生、青ちゃんの言う通りですよ。相手がもしテイルバイオレットとテイルブルームの二人の力を警戒しているとしたら和くんがダウンしている間、何も仕掛けてこないのはおかしいですし」
華先生が口を開いたが、青葉さんがそれをやんわり否定し、悠香さんがそれに続く。
「そ、そうね……」
悠香さんの説明は正しい。
実際、レイジの野郎が俺と華先生のコンビネーションを警戒しているのなら先日の襲撃からこうも日を置いているのはおかしいからだ。
尤も、先述の通り、奴がチャンスを伺っているだけの可能性は捨てられない。
「何か企んでいるのは確実って訳か……」
「私のツインテール属性を狙って……」
不安気な素振りを見せるティアナを見て俺は心が痛くなる。
ただツインテールが好きなだけなのにその気持ちを色々な悪い奴らから狙われているだなんて嫌にだし怖いに決まっている。
「にしても、究極のツインテールって何なのかとか、レイジって男は何者なのかだとか、これじゃわからない事だらけね」
悠香さんの言う通り、未だにわかっていない事は多い。
これも全て、ティアナの記憶が全て蘇ればわかる事なのかもしれないが、ティアナの記憶を戻す手立てがない以上はどうしようもないのがもどかしい。
その後、俺たちの対策会議は数十分間にわたって続いた。
だがしかし、これといっていい案が出てこなかった。
そんな中、ティアナの持つエレメリアン探知用レーダーが大きなブザー音を鳴らし始めた。
「こんな時にも出やがったか!! エレメリアンの野郎!!」
「いやまって!! この反応はエレメリアンじゃないわ!! これは……!!」
何だって!? つまりこの反応はまさか……!!
いよいよやってきやがった
アナザーテイルレッド、奴が再び動き出した……!!
◇
和輝たちのいる世界とは違う世界、違う時間。
とある喫茶店の地下にある秘密基地の中、
「待っていてください総愛。今、もう一人のママが行きますから……」
銀髪碧眼の白衣を纏うその女性は誰に告げる事なく、そのメカの中に乗り込んでいき、格納庫の中から姿を消すのだった。
アナザーテイルレッド及びレイジについてのキャラクター紹介は次回をなります。
次回は遂にティアナの謎が明らかとなり、あのキャラが登場するかも……