複雑な思いもありながらローズさんの案内で武器を集めた倉庫のようなところまで案内される。城の中はやはり大きく入り組んでおり1人では間違いなく迷ってしまうだろう。
「ありがとうございますローズさん。案内してもらって」
「いえ、コレも仕事の内です」
ここ数日世話になっている身からすれば、ある程度どの様な人物かは見えてくるものだが、ローズさんは寡黙ではあるが真面目でとても優しい人だと言うことがよくわかる。
身長は俺の肩程だから165cm程だろうか?顔は可愛いと言うよりも綺麗な顔立ちをしている。切れ長の目元も相まって少しキツイめの印象を与えるがそれも彼女の魅力の一つだろう。髪の毛は白く見えるが遠目からは銀色にも見える綺麗な色。そして何より胸がデカイ。メイド服から弾けんばかりだ。
「どうかされましたか?」
「い、いいえ」
途中この城の兵士達とすれ違ったがこちらを見る目が何とも言えない不気味さを醸し出していた。
こちらを嘲るような、蔑むような下卑た目をしているように思う。
そんな視線に苛まれながらローズさんと長い廊下を歩んでいく。
初めて本物の城を見た転移初日に比べだいぶこの城での生活も落ち着いてきた。
改めて城の中を見渡しているとなんとも豪華なものだと感心した。壁はレンガや石が積み重なったように見えるが白に統一されており天井には絵画が施されていた。
天井にある一角の絵画に何やら違和感の様なものがある。
翼を広げた天使?神様?の様な人物から鎧を着た人間たちが一斉に赤黒い不気味な姿をした1人の人物に相対している様な絵だ。
「ローズさん。あの絵はどんな意味があるんですか?」
指ををさしながら問いかける。すると立ち止まり指さす方向を見て「はい」と返事をくれた。
「あの絵は今から300年ほど前に描かれたとされる初代の勇者様達の絵です。神からの祝福を受けひとつの強大な悪を討ち滅ぼした、という物でございます。」
「ちょうど今の俺たちと同じだと言うことですね」
「はい。伝説では異世界より召喚された勇者たちは強大な悪を倒すためにいくつもの試練を乗り越えたそうです」
「なるほど…」
先に進みましょう。と言われ歩みを進めていく。
少し歩いたところで3人ほどの槍と剣を持った兵士が守っている2mはある大きな扉の前で止まった。
ローズさんが会釈すると門番達も確認するように俺を見る。
「通れ!」
門番の一声で後ろに控えている別の門番たちが重々しく扉を開ける
扉の向こうに見えるのは金銀財宝などではなく周りの景色とは全然別物のレンガ造りの頑丈な部屋という印象だった
中には白いローブに金糸で草のツルの様な模様が刺繍された服装の白髪の老人が1人佇んでいた
僕よりも少し背の高いこの老人の後ろには真っ黒な水晶玉の様なものがある
「はじめまして勇者様、私はダンカイと申します。この国で学者をさせて頂いております。」
「はじめまして、イヌカイです」
「ご丁寧にありがとうございます。早速ですがこのオーブに触れて魔力を流して頂けますかな?」
「魔力?」
「はい、王女様からあなたは以前、授かった職業から身体強化を行ったとお聞きしました。身体強化を行った際に全身を流れたはず」
魔力?あの時の感覚は今でも覚えているが殺意しか覚えがない
「あまりピンと来ないんですが」
ふむ、と少し考えて顔を下ろし腕を組むダンカイさんはすぐにこちらに向かい直す
「では、魔力の使い方のコツをお教えしましょう」
「お願いします」
『魔力』
ファンタジー要素の代表的なソレは誰もが憧れるもの
炎を出したり水を自在に操るなど、この世界では誰もがほとんど当たり前のように扱えるものらしいが、やはりそれ相応の練習が必要だという
人の身体に流れる血液と同じ様に『魔力』も身体に流れているらしくその『流れ』を感じ取り少しづつ研鑽を積むことでいつかは大魔法を習得する事が出来るかもしれないとダンカイさんは教えてくれた
「まずは私の手に触って頂けますかな?」
ダンカイさんは右の掌を正面にゆっくりと向け、僕もそれに合わせて左の掌をダンカイさんの掌に合わせる
「!!」
触れた瞬間、解る
ダンカイさんの全身を強く脈打つ様に流れる明るい小さな光の粒の様なものが全身を巡っている
そして自分が触れている左の掌からその流れが伝染するかのように段々と混じり合いながらダンカイさんの中を巡る光と同じように僕の身体を巡っていく
それはたった1呼吸で全身を巡り、ダンカイさんの身体も巡り、また戻って来るように
「これが魔力?」
「はい、イヌカイ様は中々飲み込みが早いですな」
好々爺とした表情で微笑んでいる
その間もダンカイさんと僕の魔力は同じ速さでお互いの身体に巡っていく。まるで自分の魔力とダンカイさんの魔力が交互にお互いの身体を巡っていき繋がっているかのような、しかし決して不快にならずどこか温かみのある錯覚にさえなる
「ではこの調子で貴方の武器を精製していきましょうか」
「はい」
ダンカイさんが後ろを向くと真っ黒な水晶玉が光り輝いているように、こちらを手招きしているかのように怪しく光っていた
「このオーブの名前は『デ・ザストリー』。300年前にいたとされる初代勇者様達のひとりがお作りになったとされるもので、勇者が生涯にたった1度だけ自身の武器を精製出来るとされている伝説のオーブです」
少し興奮しているかのようにダンカイさんが話していると「しかし」と肩を落とす
「この300年間一度もこのオーブが機能された事が無いとされています」
「ある意味ではこれは使い物にならない物って訳ですか?」
「いえいえそれはまだ分かりません。何せこのオーブの製作者様はこことは別の世界から来たと文献には残っております。」
「つまり今の自分達にはこれが使えるかもしれないという事ですね」
「はい、そういうことでございます。いやはや私初代勇者様達の研究をしていたものですから自分が初代勇者様達と同じ世界から来られた勇者様に会っていると思うと、年甲斐もなく興奮しておりまして」
なるほと、今までの興奮はこの為だったのか。
つまりこの好々爺は自分の推しに会えて最高にハイってやつか
「分かりました、このオーブには魔力を流せば良いんですね?」
オーブに右手を乗せさっきやった様に魔力を身体に巡らせていく
はじめはゆっくりとした流れから段々と速さを増していきオーブに魔力を巡らせていく感覚だ
俺の魔力に反応するように漆黒のオーブもその間輝きを増していき部屋一面を闇で包み込んでいく
オーブに巡らせた魔力がその中で乱反射していき今にも爆発させてしまうのではないかと不安に思うが、そんな様子はこれっぽっちもなく、ただその闇を増すだけだった
オーブに魔力を巡らせる量を少しずつ増やしていく
バケツの中に水を入れても、全くと言っていいほど満タンには程遠い様に、このオーブにもそこが見えない
ならばと思い今できる最高速度、ダンカイさんとやったくらい、それ以上で魔力を巡らせオーブに注ぎ込んでゆく
すると部屋一面に押し寄せていた闇が急に右手に集まり形を成していく
溢れていた闇が全て集まり右手に集まるとそこには刃渡り15センチから20センチはあるオーブと同じ黒い水晶の様な刃
グリップ部分は植物のツルで出来た様なローブで縛られ、濡れた手でも決して滑り落ちないようによく馴染んだ『ナイフ』が握られていた
またせたな:((´•̥ω•̥`)):
これからまたぼちぼち始めます