ローズさんの柔らかい唇が触れる
呆気に取られていたが抵抗しようと身体を押しのけ離そうとする。だが、何処を触っていいか分からずとりあえずお腹、腰あたりを押して離れようと試みるもローズさんは逆に身体を押し付けてくる。
ローズさんの長い手足が俺の身体に絡みつくように包み込んでいく。先程まで覆い被さる形であったが今では完全に俺の上に寝ている状態で身体が密着している。
「!!」
1分以上の長い口ずけが、あるいはそれよりも短かったのか分からないが変化が起こっている。
先程までの倦怠感が嘘のように軽くなっている。
唇を離したローズさんが起き上がり口を拭いく。そして俺も身体を起こし何が起こったのか状態を確認する。
頭の痛みはまだ少々残るものの、今は身体が少しだけだるい状態だった。
「体調は良くなりましたか?」
なんてことの無い口調で話す。こっちは初めてのキスでドキドキだと言うのに。
「いや…良くはなりましたけど」
「それは良かったです」
「あの…聞いてもいいですか?」
「どうされました?」
「さっきのはどういう事ですか?」
「アレは、魔力の譲渡行為です。簡単に言うと足りないのなら外から補えばいいだけの話です」
”少しコツがいりますが”と付け加えやはり業務的な姿勢は崩さず話すローズさん。確かに話だけなら簡単なことだ。車もガソリンを使って走る。ガゾリンが無くなったらガソリンをまた入れればいい。
理屈はわかるが気持ちの整理がつかない。
「体調も良くなった様なので私はこれで失礼します」
「あ…分かりました…」
一礼するとそのまま出入口の所まで行く。本当に何事も無かったように歩みを進める。
そしてドアノブに手をかけ扉を開けると何故か怖い顔をした勿花がいた。何か怒ってるいるような、悲しんでいるような表情をしている。そして俺の方を見て睨んでくる。
「勿花」
「…最っ低」
なにがだよ
閑話休題
その日、日が沈んでからしばらくしてからの事。
コンコン
「失礼します。お食事をお持ちしました」
人参やトウモロコシに似た野菜を細かく切ってから麦と一緒に煮て作られたお粥の様なものを受け取る。
「いただきます」
「食べながらお聞きください。今後のご予定をお伝えします」
他の人達は全員各々の武器を入手した事、また明日から本格的に訓練に参加する事となった、等を教えてくれた。
「ご馳走様でした」
「食器を片付けさせて貰います」
食器をカートに乗せると「失礼します」と言い直ぐに部屋を出ていってしまった。
結局、その日は体調も不安定であったが夜になる頃にはある程度動かしても問題ないくらいには回復していた。ベッドの上でダラダラと過ごし、なんとも言えない虚しさが押し寄せてくる感覚になるほどには頭も働く。
今はまだ無理が効く訳では無いから、と天井を見上げていると先程の勿花の事が頭をよぎった。アイツは、何故あそこにいて、何故あんな発言をしたのだろう…。さっぱり分からない。
勿花はアイツ、『今藤』の彼女だ。だから勿花に『最っ低』などと言われる筋合いはこれぽっちもないはずだ。
どうにも、勿花の事が分からない。高校に入ってからは殊更に分からなくなってきている。言ってしまえば勿花は家族みたいなものだ。だから、という訳では無いが少なくとも中学に入るまでは勿花の考えている事、気持ち等言葉を交わさずともお互いが分かっていた。まさに一心同体と言える間柄であった。
「…」
昔は良かった、などと感傷に浸る。過去は変わらないし、今現状が変わる訳でもない。何か行動など起こしている訳でもない。
一人で居ると、クソッタレな気分になってくる。
「…ハァ」
もう寝よう、明日から訓練が始まる、着替えるのも面倒だ。夜も多分だいぶ更けてきただろう。お腹も満たされて眠くなってきた。
( *・ω・)ノやぁ