やはりこのセカイはまちがっている。   作:エイトマン

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 ニーゴ箱推しなので執筆を始めました。
 好きな曲①:まらしぃさんの『空想少女への恋手紙』


第1話

 人生はリセットできないが、人間関係はリセットできる。

 

 我ながら、いや、まあ、かなり黒歴史なのだと言える中学生活を送ったものだ。中学校デビューは失敗するし、中二病を患ったし、いわゆるボッチだった。女子からは嫌われるし、男子からは『ナルが谷』扱いだ。

 

 だからって、俺だけが悪いんじゃない。

 やさしくない社会が悪い。

 

「よう司! バイトでなんかあったのか!」

「ずっと気難しい顔してたな」

「……人の話を理解しないモンスターに出会い、異世界に飛ばされ、怪力のぬいぐるみに脅迫された!」

「は? またなんかの芝居の話か?」

 

 クラスのイケメンがなんか奇妙なことを話していて、相変わらず目立つ。空気を読めないところもあるが、ムードメーカーで人気者で、なんか普通にいいヤツだし、さぞ女子からモテることだろう。妬ましい。

 

「比企谷、少しいいか?」

 

 といっても、たとえ誰かに憧れたとして、人間はそう変われるものではなく、ていうか、変えるつもりもない。ともかくとして、あのまま近所の海浜高校に進学していたのなら、中学のことをネタにされて、胃痛に悩まされる高校生活になっていただろう。

 

「なあ、比企谷……?」

「あっ、えっ、はい?」

 

 肩を軽く叩かれて、呼びかけられていたことにようやく気づく。このイケメンの名前は、天馬だったか、ペガサスだったか、そんな感じだったはず。根暗でボッチで孤高な俺様に話しかけてくる稀有な俺様キャラだ。

 

「比企谷、確か『初音ミク』に詳しかったよな?」

「ま、まあまあっすね」

 

 実際のところ、数学の授業のお供はボカロ曲だし、なんならUTAUにだってかなり精通しているし、いわゆるオタクという部類だ。このクラスでボカロの話を耳にする度に、早口で語りたくなるくらいであり、俺の知識に付いてこられるのは、リアルにおいては後輩1人といったところ。

 

「なあ、『初音ミク』は、いるのか?」

 

 ははーん、『空想少女への恋手紙』しちゃったわけか。

 わかるよ、恋の病ってやつな。

 

 俺も、『初音ミク』は存在するって信じたいものだ。

 

「お前が信じる俺でもない、俺が信じるお前でもない。お前が信じるお前を信じろ」

「ああ、そうだな! 良いことを言うじゃないか!」

 

 えっ、もしかして『天元突破グレンラガン』を履修してないでござるか。おいおい、あれは青少年の必修科目だろ。では、こいつのイケメンキャラって、一体何を参考にしたのだろう。もしかして、素でこのキャラに目覚めたのか?

 

「ふむ。あれは夢ではなかった、ということか」

 

 顎に手を当て、ブツブツと呟くイケメンを置いて、俺はこっそり教室から出る。

 

 イケメンで中二病とか、もう王子様じゃないか。イケメンをうっとりと見つめる女子までいたし、近くにいたゾンビが浄化されてしまうところだった。だれの目が腐ってるだって。そんなこと、かわいい妹くらいにしか直接言われたことないのに!

 

 また1人で『ふひひ』とかしてたら、なんか半分青い髪の男子に不思議そうに見られたので、いそいそとベストプレイスに向かった。

 

 といっても、屋上や中庭といった人気スポットではなく、理科室が立ち並ぶ棟の横であり、じめじめとした雰囲気が漂っている。運動場とは真逆の位置なのだから、昼練する運動部の喧騒もほとんど聞こえない。俺にとっては、安らぎの場所だ。

 

 

「おっ、やっはろー」

 

 薄ピンクの髪は、いつも通りくるんくるんしていて、手を大きく振っていることで、ふわふわサイドテールが揺れている。胸元の赤いリボンとか、シャツの第一ボタンとか、制服を着崩しているし、いやはやけしからんな。

 

「よう、暁山(あきやま)

「み・ず・き、だよ?」

 

 とことこ近づいてきて、俺の顔の前で、細い人差し指を振り振りした。やだっ、ほんといいにおい、もとい、香りがするし、空腹を誘ってくる。いや、これマックの香りじゃねーか。

 

「待った? ううん、今来たとこー?」

「なに1人で完結してんだ」

 

 あれこれ駄弁りながら、ベンチに隣り合って座って、お互いの昼食を取り出す。といっても、こいつはマックのポテト、俺はコンビニの菓子パンであり、いやはや幼なじみにお弁当作ってきてほしい人生でしたね。夕食の残り物を入れるお弁当だって、なかなか労力を要するものだ。

 

「あはは、先輩ねむそう」

 

 どうやら、自然とあくびが漏れていたようだ。

 まあ、なんだ、こいつといても気が緩んでいるのは確かだ。

 

「そういうお前さんは、しっかり寝てきたようで」

「当然。寝不足はお肌の天敵だからね~」

 

 俺は4時くらいには寝たが、どうせ2人で朝まで駄弁っていたのだろう。こいつは重役出勤で、おしゃべり相手は夜間定時、てか、あともう2人はいつ寝てるのかよくわからん。

 

「先輩、それ美味しそう」

「はいはい……」

 

 こいつといると、だんだん女子語が分かってきた。食べかけじゃないほうから、いちごジャムとマーガリンたっぷりのコッペパンをちぎって渡す。『ありがと~』って呑気に食べているが、この光景を見て勘違いされても困るだろうに。

 

「はい、あーん」

 

 指先でつまんだポテトを、こちらに向けてきた。

 もう、友達の女子とはこういうことやってるの? いいぞもっとやれ。

 

 たまにこいつが語っている友達は、たしか(あん)ちゃんだったか。ていうか、俺ほどではないが、こいつも友達少ないし。

 

「むふ~ 」

 

 ぬるくて、しんなりとしたポテトがほんと美味い。これは、甘いものの口直しに、塩気のあるポテトが欲しかっただけだし、等価交換ってやつなんだからね。「全」は世界!「一」はオレ!

 

「で、今日は会えそうなのか?」

「んー、どうだろ。もう少しほとぼりが冷めてからになるかもなぁ」

 

 たしか、お隣の2-Bに転入生がいるのだが、そいつに気軽に会えないのが、最近の悩みの種らしい。一度見かけたが、うちのクラスのペガサスくらい、イケメンかつ、変わったやつという印象だった。ゴーイングマイウェイなキャラというべきか、そういうやつは嫌いじゃない。

 

「前と違って、教室で機械いじりしてるみたいだし」

 

 たぶん、かつてのサボり仲間といった関係なのだろう。

 中学時代の友達と再会とか、さてはボッチではないな。

 

「まっ、そのうち会っておくよ。で、今日も来るんでしょ? ナイトコード」

 

 ネットの知り合いとやるLINEのようなものだ。俺もこいつも、気づけば数ヶ月はそこに入り浸っているし、なんなら、その時間を中心として、日々の生活を送っているくらいだ。

 

「まあな。どうせ家帰っても、ゲームかスマホ見るかだ」

「えー、いいなー、1人暮らし」

 

 たしか、我らがリーダーのKも1人暮らしだとかなんとか、言ってたような気もする。こいつが夕食の話をしても、毎度カップラーメンだとしか言わないし。うちのマッ缶くらい買い置きしてそうだ。

 

「いやいや、洗濯とか超めんどいから。だがまあ、これもいい練習か」

「おー、さすが専業主夫志望」

 

 ニコッと微笑むこいつは、たぶん純粋に褒めてくれている。

 てか、こいつほんと顔可愛いな。

 

 まあ、こいつもこいつで、養ってもらいたい気質があるのは確かだ。共働きの父ちゃん母ちゃんの多忙さを考えると、今の段階で、働きたくないでござるって考えているくらいな、高校生の俺である。

 

「ねっ、機会があったら、先輩が作ったカレー食べさせてよ」

「機会があったら、だな」

 

 そこで、授業残り5分を示す、予鈴が鳴った。

 む~と少し不機嫌なのは、これから授業があるからだろう。

 

「授業はなんだ?」

「数学、そっちは?」

 

 『国語だ』って答えを返すと、お互いの表情が綻ぶ。こいつもなんだかんだ勉強ができるので、暗記の少ない科目は得意らしい。ちなみに俺だって、理系科目はヤバいのだが、国語に関しては学年1位になったことがある。

 

 ていうか、こいつ、午後から体育とか文系科目がないから来たんじゃなかろうか。

 

「あっ、先輩、クラスメイトの友達できたの?」

「聞くな」

 

 友達の数と、真面目に登校しているかどうかは、比例しないらしい。

 

 杏って女子が、『男前なんだー』とか『歌上手いんだー』とかの話を聞きながら、お互いの教室に向かった。

 

 

 これは、学校における日常に過ぎない。

 通っている場所が、もう1つある。

******

 

 すでに。

 時刻は午前1時、つまり25時

 

 俺は、ナイトコードのアプリを起動した。

 

『25時、ナイトコードで。』(ニーゴ)について

  • イベントストーリーも読んでいる
  • メインストーリーを全部読んでいる
  • メインストーリーを途中まで読んでいる
  • 二次創作によって知識はある
  • キャラは知っている
  • ほとんど知らない状態
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