蛇毒の女帝は栄光へとひた走る   作:にょろたろ

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 朝の陽ざしが地平線を上る前、曙の空を感じ取り、私は目を覚ました。

 

 

 

ベットから体を起こそうとして、違和感に気づく。いや、ここ最近の恒例行事となりつつある朝の一コマだ。

 

 

 

 

 

「ベットに入ってくるなって、私言ったよね?」

 

 

 

「ん?むにゃむにゃ~聞こえません・・・」

 

 

 

「起きてんだろ!ちょっと、抱きしめるな!どこ触ってんの!?やめろ!」

 

 

 

 なんということでしょう、私のベットにシモイが入り込んでいるではありませんか。

 

 

 

あれからシモイはネガティブ美少女ウマ娘から、ミラちゃんしか勝たん系レズ属性持ち美少女ウマ娘になってしまったみたいです。

 

 

 

 

 

 どうして・・・心当たりがないよ(困惑)

 

 

 

 

 

 で、なんでこうなったのか、ここまでのあらすじなんだけど・・・

 

 

 

 シモイと友達になった後、彼女から過去を聞いた。

 

 片親を事故で亡くしてしまったしまったこと、実家はそこそこの名家だったけど自分は浮気相手の子であること、引き取られたけど煙たがられて色んな家と学校を転々としたこと、最終的にここに置いて行かれたこと、いじめの対象になったこと・・・

 

 

 

 うん、思った以上にくそ重なウマ生歩んでて胃がやばい。マジ?

 

 

 

 正直相槌を打つのも躊躇するくらいのお話が同じ年の子から放たれていることに私、衝撃を隠せません。

 

 

 

 彼女が熱を出したときにケーキをねだり、外出した母親がケーキを買った直後に事故に合ったという悲劇の始まりからもう重い。

 

 

 

「だから、母を殺した元凶は私・・・なんです」

 

 

 

 なんて自虐するもんだからその都度否定&抱きしめてあげた。庇護欲とか母性とかではなく、メンタルケアが必要だという気持ちでね。

 

 

 

 この子に必要なのは愛情と信頼・・・そう思ったね。

 

 

 

 お話が終わり、さあ部屋に帰ろうとなったその時、先のいじめっ子らが先生を連れて戻ってきた。

 

 

 

そしてなんたることか、先生にいじめを訴えたのだ。しかも、彼女らは「砂場で遊んでいたらいきなり何かを投げつけられた」と、被害者ぶって。

 

 

 

 

 

 そこからは口論となった。やれあっちが悪いそっちが悪いと、お互いに正当性を主張し合った。あわや鎧袖一触となったとき、リーダー格の子がこう叫んだ。

 

 

 

「だったら勝負よ!かけっこで速かった方がいい分を通す!ウマ娘の道理でしょう!?」

 

 

 

 と。

 

 

 

 

 

 こうして口論の決着はまさかの徒競走ということになった。

 

 

 

 

 

「ウマ娘の道理ってなんだよ・・・」とこぼしたときの周りの「はあ?」という顔は忘れられない。その顔をシモイも浮かべていて孤独感が凄かった。

 

 

 

 

 

 ・・・どうやら孤児院お決まりの流儀らしく。

 

 

 

 

 

 

 

 これがぼっちの弊害・・・!!心で涙を浮かべたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 準備期間は一周間、場所は「ウマ専」グラウンド。その一周800mで決めるという。

 

 

 

「ミラと一緒なら負ける気がしません!」

 

 

 

 そうシモイは胸を張っていたが実際彼女の足は悪くはないが、ウマ娘で見るとタイムが遅かった。

 

 

 

なので彼女の走法を改める、一周間で勇者になれる的なノリで「一週間でつよつよウマ娘になれるスペシャルハードマニュアル」を作成した。

 

 

 

 

 

 無論、一週間で強くなれる魔法なんざあるはずもなく、やる事は単純明快、シモイの脚質の把握とコースの理解、身体づくりである。

 

 

 

 

 

 ウマ娘の脚質は前世の競走馬と同じで「逃げ」「先行」「差し」「追い込み」の4種に分けられる。他にも「大逃げ」「自在」もあるが割愛。

 

 

 

 

 

 何日か使って一緒に走ると、得意不得意や走り方の癖、特徴なんかが見えてくる。

 

 

 

 

 

 その中でもシモイが持つ脚質は「差し」であった。そもそも彼女が遅いと言われていた理由は、勝負を仕掛けてきたいじめっ子達にあった。

 

 

 

 

 

 普段からちょっかいをかけてくる相手と一緒に走るとなると、レース中に何をされるかわからない。

 

 

 

いやがらせや妨害を防ぐためには・・・とシモイが考え付いたのが「逃げ」の選択だった。

 

 

 

 しかし、そんな緊張した心境で走っても無駄に体力を使ってしまう。さらに、彼女が持っていた最大の武器であった「末脚」を発揮する前に疲れ果てて抜かれてしまう。そんなところだった。

 

 

 

 

 

 故に行った練習は、私をペースメーカーとしながら走ることで一定のペースで走ることや、所謂「抜いて走る」ことを覚えさせること、それから、残り300mで駆け抜けることだった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで日にちが経って行ったのだが、先生方より問題を起こしている者同士でいてくれた方が余計な心配がなくて助かるということで、私の個室にシモイが引っ越してきた。

 

 

 

 ……それを当の本人に話すことはどうなの?とも思ったのだが、あちらもケンカの空気が拡大することはごめんなのだろう。ここは先生からの信頼が得られたから、ということで納得しておく。

 

 

 

 荷物は多くなかったらしく、大がかりなものは勉強机だけでスムーズに引っ越しは終わった。

 

 

 

 寝具だが、部屋にあったのは二段ベッドであったため、空いている方で寝てもらおうとしたが返答はまさかの断固拒否。

 

 

 

「初日くらいはいいでしょう」といい笑顔で無理やり入ってきたのだ。最初くらいはと許容したが、シモイは足や手を絡ませてくる。毎夜これでは流石に寝苦しい。ただでさえもう初夏なのだ。

 

 

 

 ・・・ついでに言うと、彼女は発育がいい。押し付けられたりしてみろ、この身体には本来ないはずの男の感情がうまだっちする危険性がある。

 

 

 

 まずい。

 

 

 

 確かに私の恋愛対象は今のところ女だが、流石に適正年齢外のうまぴょい案件はごめんだ。

 

 

 

 ついでだが、ウマ娘は本能が人と比べて強いと文献で呼んだ。……いま思い出すことではないな。うん。

 

 

 

 

 

 どうにかこうにかして、4日目からは追い出した。毎日の枕交換を条件に出されたが必要経費と割り切った。だがこれで安泰、安眠ライフが待ってるぜ・・・ということにはならず、朝になると入り込んでいるのだ。シモイの侵入に気づけないほど眠りが深い私も考え物だが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで冒頭の下りが始まる。

 

 

 

 

 

「ったく、今日もランニングでしょ。明日が勝負の日なんだからさぁ・・・ほら起きて、てか離して、着替えて走りに行くよ!」

 

 

 

「待ってください、まだ早朝のミラ成分の摂取が終わってません・・・」

 

 

 

「だまらっしゃい!」

 

 

 

 シモイを蹴飛ばしてベットから追い出すと、軽く一つ伸びをする。

 

 

 

 

 

 さっさっさと寝間着からジャージに着替えて走りに行く・・・前にシモイの手伝いをする。

 

 

 

 髪をとかしてカチューシャを渡して、彼女の準備の間にベットメイキングを済ませておく。無駄に色んなことが出来る「自分」の多趣味に感謝しておこう。

 

 

 

 

 

 そうしてグラウンドで二人並んで走り出す。軽いジョギングから全力走を並走で行い、そのあとは前後で走り、フォームの確認やタイム計測で調子を整える。

 

 

 

 ウマ娘の身体は不思議で、その身が持つパワーに身体が追い付いていない。故に、練習中に骨折等のケガが発生する可能性がある。多くは走法の癖がもたらす疲労骨折だろう。

 

 

 

 それを防ぐためには適切なフォームで走る必要がある。身体の負担を全体に均等に分配することで、ある一点に疲労が貯まることの防止になるし、回復するにも効率がいい。

 

 

 

 

 

「シモイ、体幹が揺らいでる。右重心。早く直して」

 

 

 

「っ……!はいっ!」

 

 

 

 シモイの後ろを走りながら声をかける。一年間の練習を活かし、私は指導を行う。特に違うのはスタミナで、汗がうっすら浮かぶ私に対し、シモイは返事に遅れるほどになっている。

 

 

 

 ウマ娘にとって800mは短距離以下。されど800mだ。一瞬で終わってしまうような短い距離でも、それぴったりの体力なんかじゃ足りない。むしろ倍の1600mを走り切ってなお余りある・・・というのは言い過ぎだが、それくらいの余裕が無ければ競争の読み合いなんぞ出来やしない。

 

 

 

 本命穴ウマかき分けて、追いつけ追いこせ引っこぬけ。あ、でも作戦いのちだいじにで走る走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、締めの本番練習を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 有明の月に見守られながら、汗を滲ませた二人のウマ娘がターフに並ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 ふーっと息を吐き、目線を合わせ、準備の程を確かめる。

 

 

 

 

 

 

 

 コクリとシモイが頷いたのを見て、私はポケットからコインを出した。

 

 

 

 

 

 

 

「位置について」

 

 

 

 

 

 私はそう言って指にコインを乗せる。

 

 

 

 

 

「よーい・・・」

 

 

 

 

 

 コインを高く、弾く。横についているシモイは膝にグッと力を入れ、私はその場に跪き、腰を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・芝にコインが落ちる。「サッ」という小さな音が聞こえたその瞬間、二人は風の如く走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、今日の朝練終わりね」

 

 

 

「つ、疲れた・・・おんぶして下さい」

 

 

 

「・・・仕方ないなぁ」

 

 

 

 

 

 こんな調子で勝てるんかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うp主「ちなみにシモイの過去話は用意してある」

 シモイ「どういう話ですか?」

 うp主「……物語ってさ、曇らせれば曇らせるほど、立ち上がったときの感動があるよね」

 オロチ「あっ(察し)」

 うp主「抱きしめられたキャラが嬉しくて大泣きした理由となるお話だよ」

 シモイ(絶句)

 うp主「……わりぃ。書いてて重いって思ってたわこの話。あ、どっかで上げます」

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