蛇毒の女帝は栄光へとひた走る   作:にょろたろ

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 翌日、さんさんと照りつける太陽の下、私たちはグラウンドに立っていた。スタートラインとなる白線の周りには既に大勢の野次ウマが集まっている。

 

「・・・勝負を仕掛けた側が遅れるとか論外じゃない?」

 

 指をコキコキと鳴らしながらそう言うと、周りがざわついた。

 

「風派のウマにケンカ売った奴がなんか言ってるよ」

「どっからくるんだよあの自信」

「うわ、あいつ終わったわ」

 

 なんか言ってら。てかいじめっ子らよ。派閥規模にまでなぜ発展させたんだ。そんな話聞いてないぞ。

 

 まあ、例えどっかで話していたとしてもずっとシモイと一緒にいたから気づかなかっただろうけど。

 

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」の初手が出来ていないとか慢心してるな、なんて反省する。

 

 

「まあ、向こうにも何かあるんでしょう」

 

 あきれ顔でシモイも返してくれた。やられっぱなしの彼女だったが、一周間で自信が付いたらしい。協力者冥利に尽きるね。

 

 ちょっと嬉しくなってムフフとにやついたら、シモイに頬をつつかれた。なんでよ。

 

 

 

 

 それから少しして。

 

「さあ、決着の時が来ましたわよ!」

 

 とリーダー格の子が3人のウマ娘を引き連れてやってきた。

 

 シモイをリーダー格の視線から隠すように移動しながら、私はニヒルな笑みを浮かべる。

 

「随分と遅れたね、逃げ出したのかと思ったじゃないか」

 

「なんですって!!」

 

 上がった口角と共に挑発すると即爆発。顔を真っ赤にして拳を振り上げたのを取り巻きが必死になって抑える。

 

 リーダー格・・・もうA子でいいや。あと取り巻きB子C子D子ね。君たちレース前に体力使っていいのかいな。

 

 肩で息をしながら、A子はにやりと笑う。

 

「まあいいわ!その口、すぐに黙らせてあげる!」

 

 そう言うとA子たちは左右に分かれる。すると間から、頭一つ身長の高いウマ娘が歩いてきた。

 

「お願いします、先輩!」

 

 お辞儀をした4人を抜けて、私を上から見下ろす深緑色のウマ娘。

 

「・・・あんたが、風派にケンカ売ったウマ娘か?」

 

 ギロリと睨みを聞かせた低い声。その一言で周りのざわつきが大きくなる。

 

「あれ、風派のリーダーだよね!?」

「怖っ!」

「やばいよ・・・」

 

 ふむ、情報ありがとう。野次ウマも役に立つもんだな、なんて考えながら。

 

「はい、その通りです。失礼ながら、貴女の年齢とお名前をお聞きしても?」

 

「・・・ウインドパーティだ、12になった」

 

「なるほど、ありがとうございます先輩。」

 

 ・・・なんだよ、組のドンとはいえ話が通じんじゃん。ウマ専の現状的にもっと世紀末的な性格だと思ってたわ。

 

 それは置いといて、脇でにやついていたA子に向かって叫ぶ。

 

「おい!年上連れてくんのは反則だろ!一周間の準備期間もあれか?先輩に泣きつく時間か?正々堂々当人同士で戦え!」

 

「うるさいわ!そんなの「今は紫のやつと俺がしゃべってたろ!?」すいません!」

 

 A子の間に入るようにウインド先輩が立ち入りこちらを睨んでくる。巻き込まれただけのはずなのに、瞬時の謝罪ができたA子に拍手。

 

 頭を少し下げながら、ウインド先輩に向く。

 

「これは失礼をば。何分、当人同士で片を付けるのかと思っていたので、彼女に聞きたくなってしまいました」

 

「ああそうかい。残念だが、俺も勝負にゃ嚙ませてもらう。派閥のウマ娘としてやられた分は返さなきゃいけねえんだわ。無名のやつに傷つけられたなんざ、面子に関わんだよ。てなわけだ。大人しく叩き潰されろ」

 

 

 そうやってぶっきらぼうに語る。派閥トップの名は伊達じゃないってか。

 

 

 ・・・ウインド的には、下っ端の面倒に巻き込まれただけだろうに。ご愁傷さまです。

 

 

 そんな考えが顔に浮かんだのだろうか。私の顔を見てウインド先輩は「チッ」と舌打ちをすると、私の横を通り過ぎていく。

 

「ざわついてるおめえら!さっさとどけや!」

 

 怒号一閃。悲鳴と共に、蜘蛛の子を散らすように野次ウマが去っていく。

 

 そうして開いた道を、ウインド先輩は歩いていく。その後ろを慌ててABCD子が付いていく。

 

 

 はあ、と息が漏れた。12歳となると、800mなんざすぐに走り切るだろう。どういったレースメイクをするべきか脳内会議をしたくなるが、そんな悠長な時間は残念ながらない。

 

 

 走り出す前までに何か考えておこうなんて思いつつ、先に行った彼女らに私も続こうなんて歩き出した時、不意に腕を引かれて止められてしまった。見ると、シモイに袖をつかまれている。圧に押されてしまったのか、彼女の腕から小さな振るえを感じる。

 

「ねえ、ミラは怖くないの?」

 

 急に、そんなことを言われた。見ると今までのいじめがフラッシュバックしたのか、シモイの瞳には暗い影が落ちている。

 

「怖くなんか、ない。絶対勝てるよ。だってこれまで頑張ってきたからね。」

 

 そう言って笑い、腕を曲げて力こぶを作る。

 

「負けちゃうかも、なんて考えないの?」

 

「敗北なんて、これまでの私を裏切る行為だ。出来るはずなんかない。負けたときは、その時考えるよ」

 

 それにね、なんて続けながら、シモイの手を握り包む。

 

「一人じゃないから。シモイがいるから、私はここにいる。」

 

 だから大丈夫・・・そう切り上げて彼女の顔をのぞき込むと

 

 

「ぷしゅーー」

 

 

「え!?ちょ、シモイさん!?ちょっと!?」

 

 

 真っ赤な顔をして湯だったシモイがそこにいた。散ったはずの周りの連中がキャーキャーと黄色い歓声を上げる。

 

 うろたえる私とショートしたシモイ、騒ぎ立てる野次ウマと溜息を吐くウインド先輩。

 

 

 なんとも締まらないスタート前の時間だった・・・。

 

 

 

 

 




うp主「次回、芝800mです。レースもの初めてなので楽しんでもらえるかドキドキ」

シモイ「レースを書いてくださってる先駆者様に感謝ですね」

オロチ「ちなみにウインド先輩で落ち担当ってま?」

うp主「ま。」
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