蛇毒の女帝は栄光へとひた走る   作:にょろたろ

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書き貯めが減ってきた+リアルが多忙なので更新を遅らせます。

pixivのウマ娘SSで尊死する毎日



7

 ゴールを駆け抜けて、すぐに反転。

 

 倒れそうになったシモイを支えに行く。

 

「はい、ゴールイン。おめでとう、シモイ」

 

「はぁ、はぁ、・・・ありがとう、ございます。ミラさん・・・」

 

 練習通り、いや練習以上の力を出したのだろう。息絶え絶えで立っている。だが、その表情は晴れやかで、嬉しそうに笑っていた。

 

「・・・私、勝てたんですよね?」

 

 そういった彼女に向かって、私は満足気に微笑んだ。

 

「うん!負けるなんてことなかったでしょ?」

 

「はいっ!」

 

 元気な返事を聞いて、私は支えていた手を離した。

 

 

 

 

 シモイから目を離すと、丁度最後の一人がゴールラインを超えたところだったらしい。

 

 

「いやぁ~~負けた負けた!こんなに白熱したレースなんざ初めてだ!」

 

 ウインド先輩は耳をピコピコ動かしながら、大声で笑いながらこちらに歩いてきた。その後ろにABCD子らが続く。先輩の表情とは裏腹に、取り巻き達の顔は悔しそうだった。

 

 

「愉快そうですね、先輩」

 

 

 如何にもこっちは不快ですよ、という声色で話しかけたが、これまたでかい笑い声で返された。よく笑うウマだなぁ・・・。

 

 

「いやぁ、俺が負かされるなんざ初めてなんだ!しかも年下に負けるなんざ思ってもみなかったんだ!」

 

 

 そう言いながら手をつかまれて握手をされた。興奮冷めやらぬというやつだろうか。それとも闘争狂(バーサーカー)なのか。とりあえず、手を離して欲しい。シモイの視線が凄い刺さってる気がするから・・・。

 

 シモイの冷ややかな視線が私の背中から先輩に移り変わると、何かに気づいたのか即座に手を離した。よかった。

 

 

「さ、さぁて、お前ら!」

 

 若干の震えを伴った先輩の声にビクッと身体を震わせるABCD子。

 

 

「競走で負けた以上、きっちりけじめつけろ。いいな?」

 

 

 キッと彼女らを睨むと、それに臆したようにABCD子は謝罪する。

 

「わ、悪いことをしたわね」

「ごめんなさい」

「もうしません」

「すいませんでした」

 

 ABCD子はシモイに向かって、頭を下げた。耳はたれ、尻尾も下を向いている。

 

「・・・というわけだ。どうか、許してほしい。すまなかった」

 

 とウインド先輩も頭を下げた。

 

 

 

「・・・いいんですよ、わかってくれたのなら」

 

 シモイの優し気な声色に、先輩とABCD子が安堵の息を吐きながら頭を上げる。

 

「ですが一回は一回です。歯を食いしばってください」

 

 そういってシモイは拳を握った。

 

 何処か顔に黒い影が差したような笑顔に、ABCD子は戦慄した。顔色が豊かだね、なんて現実逃避したくなっちゃった。シモイ、今なんて言った?

 

「あの、シモイさん?」

 

「勿論、ウインドパーティ先輩もですよ?お分かりですね?」

 

 あ、これ駄目っぽい。止められないわ。

 

 その声にウインド先輩はびくりと身を震わせた。蒼い顔してるけど、下の不始末は上の責任だからねシカタナイネ。

 

 ・・・なんか胃が痛くなってきた。昔の嫌な思い出がよみがえった気がする。

 

 

 

 

 数分後。風派の説得もむなしく、決行されたけじめの結果、計5名の左頬が赤く腫れることとなった。

 

 

 容赦なし。シモイは強い子になりましたよ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これからの風派なんだが・・・」

 

 ウインド先輩は赤くした頬に手を当てながら話し出した。

 

「負けた以上、俺はトップを降りる!」

 

「ドンッ!!」と、擬音語がなるような迫力で、集まった風派のウマ娘たちに言い放った。一斉にざわつく周囲を先輩は鎮める。

 

「安心しろ、俺より強いウマ娘が頭になるから」

 

 

 そのセリフを聞いて、周りにいるウマ娘が一気にこっちを見た。おい、なんでだよ。

 

 

「つーわけだ"姐御"!俺を舎弟にしてくれ!そんで風派共々、いっちょよろしく頼んまぁ!」

 

 

 勢いよく頭を下げるウインド先輩。それに続くように風派のウマ娘も頭を下げる。

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

 大声で耳がキンキンした。幻聴じゃないよと現実が教えてくれたみたいだね。うるせえよ。

 

 残響がなくなったのを確認して、スゥっと息を吸う。期待と不安が周囲に満ちる中、私は口を開いて叫んだ。

 

 

「ふざけんな!面倒ごとに巻き込むんじゃねえよ!!!!」

 

 

 そのまま私は、シモイを回収して逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、毎秒頼み込まれるもんだから、結局了承した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 了承してから数日後・・・

 

「所詮風派は最弱!セミラミスオロチよ、我ら月派の力を見よ!」

「お~ほっほっほ!毒蛇さん、私たち花派の団結力、とくと見なさい!」

「私は雪派の長。セミラミスオロチ、私と一対一(サシ)で勝負しようではないか」

 

「・・・なんでこうなんだよ」

 

 風派の連中が舎弟になったら、他の派閥がけしかけてきました。いやほんと、どうしてこうなった。

 

 競走してほしいとのことだったので、全員等しくぶっちぎりの大差で勝ちました。風派はシモイがいる手前レース中に道しるべになってあげなきゃいけなかったけど、今回の指名は私だけ。だったら手加減はいらないね!ボッコボコにしてやらぁ!

 

 

 

 ・・・そんなこんなで夏が終わる頃、ウマ専は私がトップになりました。わけわかんない。

 

 

 そうなると面倒ごとが増える増える。特に、私と派閥のレースを見ていないウマ娘へのハラスメントについてだ。

 

「あ”?お前姐御のレース見とらんのか?」

 

 とかの「君、流行乗れてないよハラスメント」とか

 

「姐御強すぎ~。な?お前もそう思うだろ(圧)」

 

 とかの同調圧力。

 

 派閥間のギスギス感は解消されず、むしろ直接的に衝突する機会が増えたように感じる。いじめやらの陰の行動から、いかに私に気に入られるかの陽の行動に移ったと言えばいいか。

 

 どの派閥も躍起になって私の信者を増やそうとしていたのだ。

 

 

 ・・・そういった問題が上がると、先生方から私へ苦情が入る。下のものが勝手にやったんです、なんて言い訳は許されるわけがないと痛いぐらいに知っている。上の者の責任だ。だから何度も頭を下げる。

 

 だが下手に出すぎたのがいけないのか、にやついたおばちゃん先生に「そういった問題児の教育をやってくれない?」なんて頼まれた日には流石に怒った。それは引率者の役割だろうに。

 

 それにトップとか言われても所詮は9つの子供に過ぎない。過度な期待は厳禁なのだ。

 

 

 なので、色々改善案を提出しながら暴走を押さえることにした。

 

 

 まずは派閥の解体。これは当然の如く行った。競い合う大きな団体は有益でもあるが、いかんせん方向性が悪すぎる。

 

 なんだ「どこの派閥が一番姐御の良さを語れるか」だよ。変な企画をやるんじゃない。

 

 

 

 舎弟制度ももれなく廃止した。私からなにを慕うというのだ。特に年上の連中。

 

「誰が一番弟子か決定戦」とか始めるな、やめろ。

 

 

 それに嫉妬がらみからか、一部のウマ娘が下剋上を目論んでるというリークもあったし、半ばめちゃくちゃな団体だったきがする。

 

 

 ウインド先輩が最後まで嘆いていたけど無視。そのあと泣きつかれたけど無理やり振り切る。もともと言えばお前らのせいで構ってられなくなったんだよこっちは。

 

 

 

 それの代わりに、シモイに課していたマニュアル、その改良版を舎弟たちに渡すことにした。一週間ではなくもっと長期的な期間でトレーニングを行える冊子を作成し、希望者の分配布する。

 

「これでセミラミスオロチ、イスタバリスシモイのように強くなれる!」

 

 なんて本人からの謳い文句があればいいだろう。

 

 あとはそれを読みながら実力の近い友達を見つけてお互いに切磋琢磨してくれ、そんな願望を冊子に込めておいた。

 

 

 

 最後に、孤児院にウマ娘の先生とトレーナー資格のある職員の配置を会議にかけるようお願いした。元々ストッパーがいなかったことや、速力の格差がこの環境を形成させてしまったのだ。暴走する学童と黙認するヒト職員、それによって引き起こる現場の環境とそれの対策の旨をA4用紙にびっしりと手書きで院長に叩きつけた。

 

 それを受け取った院長は衝撃を受けたのちに神妙な顔を浮かべ、ただ私に感謝を述べた。

 

 

 

 

 それから数週間後。

 

 何人かの職員の解雇と、新年度雇用における新規基準の変更があったと教えてもらった。また、オーナーであるメジロ家の本家からいつか直々に会って話してみたい、なんてお言葉を貰ってしまった。胃が痛くなる事案だこれ・・・。

 

 

 

 

 

 さて、そんな根本的な問題を解消させても、細々とした事件は起こる。私という存在は変に必要とされているそうで、仲裁役やら解決役やら、何かと便利屋扱いされた日々を送った。

 

 

 

 

 

 それと、面倒ごとのおかげで疲労困憊になってシモイに構えない日は、シモイが私のベットに入ることを許可した。なにかと理由を付けて入り込んでくるので今更だが。

 

「スンスン……スンスン……」

 

「……………………あの」

 

「……スンスン……スンスン……」

 

「……………………」

 

 ……ただシモイさんや、頭皮やうなじの匂いを嗅ぐのは勘弁してくれないだろうか?

 

 

 





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