まともな千聖さんを返して(マジで)   作:黒ハム

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こちらではお久しぶりです。慧人くんとピー音くんは、今日は有給をとったのでお休みです。
代わりに花音さんがやってきました。
……え?キャラ崩壊?何のことですか?彼女は平常運転ですよ。


辛いことは誰にでもある

「ねぇ、花音。私、とても辛いわ」

「え?きゅ、急にどうしたの……?」

 

 慧人が合宿に行っているとある日のこと。千聖は親友である花音に相談をしていた。

 

「どうしようもなく辛いの」

「えっと……私でよければ話を聞くよ……?」

「ありがとう」

「うん……で、辛いことって……えっと、慧人さんがいないこと?」

「そうね。もちろんそれもあるわ」

「それも……?」

「慧人がサッカーをやっていることは知っているわよね?」

「うん。サッカー部のランニングって言って、よく街中を走り回っているよね?」

「えぇ。しかも代表候補に選ばれるくらいだもの。彼の身体能力も相まってきっと凄いと思うわ」

「あはは……身体能力高いもんね……」

「どうしたの?遠い目をして」

 

 この時、花音は思い出していた。道に迷ったとき、手を差し伸べてくれる彼の姿を。そして……その度に見せる彼の恐ろしい身体能力を。

 ある時は自身を脇に抱えて、山を駆け下り。ある時は自身を背負い崖を登り。ある時は自身を肩車して屋根を飛び移り。終いにはよく分からない人たちに連れて行かれそうになれば、全員をボコボコにして救出してくれ……

 

(ああ……よく生きていたなぁ……私)

 

「……大丈夫?何かあったの?」

「ううん。私ってよく生きていたなぁって感心していたんだよ」

「???」

「それで……えっと、何が辛いんだっけ……?」

「私が、アイドルとして活動しているところやバンド活動でベースを弾いているところ、後は役者として活動しているところは、慧人も見ているじゃない?」

「そうだね」

「でも、慧人がサッカーをしているところを見たことがないの」

「…………あ、確かに……」

「でしょう?」

「うん。私も、慧人さんが大きな男の人を蹴り飛ばして、壁に激突させたところしか見てないよ」

「待って。何に巻き込まれたら、そんな現場を目撃することになるの?」

「……色々あったんだよぉ……」

 

(おかしいわ。花音が慧人と関わり始めてから変なことに巻き込まれている気がする……大丈夫かしら?)

 

 再び遠い目をする花音。慧人の奇行はある意味彼女が一番知っているが……それでも驚きを禁じ得ないのだ。

 

「それで、サッカーをしているところを見たことがない……って話だったよね?」

「そうなの。それでね、本人に聞いたら『あー見たいなら勝手に来れば?試合の日程と場所は聞かれれば答えるけど……』って言われたの」

「じゃあ、行けばいいんじゃないの……?」

「私、思うの」

「な、何を……?」

「サッカーする彼を見たら、倒れるんじゃないかって?ほら、慧人って格好いいじゃない」

「そうだね……黙って、静かに腕を組んで、目を閉じて立っていれば、普通に見えるよね……」

「つまり、普段は格好いいと?」

「どっちかというと……災害……?」

「なるほど。一度動き出したら誰にも止められない、ということね。流石だわ花音。よく分かっているわね」

 

(おかしいなぁ……一応、千聖ちゃんの彼氏(仮)なんだけど……災害って褒め言葉じゃないと思うんだけど……?今更だけど……千聖ちゃんって慧人さんが関わるとバカになるよね……)

 

「そんな彼が活躍しようものなら、卒倒する自信があるわ」

「……つまり?」

「見に行きたいけど一人じゃ行けないのよ……」

「それを私に話すってことは……」

「一緒に行きましょう。お願い!」

「う~ん……いいけど……私、ルールとかよく分かんないよ?」

「大丈夫よ。私も詳しくないわ」

「そもそも、電車使うような遠い場所が会場だったら、辿り着かないかもしれないよ?」

「多分、近場でしょう。それに遠かったら……神様が何とかしてくれるわ」

「神様って……」

「あっ、神様じゃダメね。慧人が魔王だから相性が悪いわ。どっちかというと邪神に頼むべきかしら?」

「邪神も結局神様じゃ……でも、いいの?」

「何が?」

「ほら例えば……私が慧人さんの勇姿を見て惚れる……とか考えないの?」

 

 その言葉を口に出してからハッとする花音。思わず出てしまった言葉。恐る恐る、目の前の彼女の顔を見ると……

 

「今更何を言っているの?」

 

 何を言っているか分からない、疑問を浮かべるような表情をしていた。

 

「既にあなたは慧人なしでは生きられないでしょう?」

「そ、そんなこと……」

 

 と、言って彼女は考えてみる。確かに、慧人と居ると命の危険はある。しかし、慧人が居なければどうなっていたか想像してみると、果たして自分はここに居たのだろうか……と。

 

「……あるね」

「花音は既にこちら側なのよ。だから、心配していないわ。寧ろ……」

「寧ろ……?」

「いえ、何でもないわ。慧人の魅力は多くの人に知ってもらいたいだけなの」

「あはは……」

 

(何か、おかしなことに巻き込まれそうな予感がするなぁ……)

 

 貼り付けたような笑顔を向ける千聖。そこそこの付き合いになる花音には分かる。彼女がそういう笑顔を向ける時は何か裏があるときなのだ。そして、今の話の流れからして、トラブルメーカーである慧人関連……嫌な予感しかしない。しかも、既に彼女の掌の上で踊らされている感じがしている始末。

 

(でも、花音が堕ちてくれれば、きっと幅が広がるわね……慧人は花音に警戒を向けることはほぼないもの)

 

 一瞬、寒気がする花音。目の前の千聖は紅茶を優雅に啜っているだけ。気のせい……にしておくには、あまりにもはっきりとしている感覚。

 

「まぁ、慧人の話はこの辺にしておきましょう。…………少し寂しくなってしまうわ」

「えっと……今日が三日目……なんだよね?」

「そうよ。だから丁度折り返しよ」

「でも、千聖ちゃんはお仕事が忙しかったりして、会えなかったことも多いんじゃ……」

「そうね。確かに、普段も頻繁に会えているわけではないわ。でも、会おうと思えば会えるのと、会おうと思っても会えないのでは違うのよ」

「そっかぁ……そうだね……慧人さんが居ない間は気をつけないと……」

「気を付けて治るなら苦労していないんじゃないの?」

「うぐっ……な、なんでそんなこと言うのぉ!」

「ふふっ、冗談よ。でも安心して、今日はしっかり家まで送っていくわ」

「うぅ……ありがとう」

 

 感謝を伝えつつ紅茶を一杯。

 

「そう言えば千聖ちゃん」

「何かしら?」

「少し前から、学校で噂になり始めたよ。千聖ちゃんに彼氏が出来たんじゃないかって」

「ふふっ、隠しきれないものね。アイドルという立場上、そういうことは隠しておきたかったのだけど」

 

(凄い嬉しそうだなぁ……)

 

「それでね、色んな憶測が飛び交っていたみたい」

「例えば?」

「イケメンとか芸能人とか天才とかドMとかペット志願者とかメンタル鋼とか」

「後半!後半に悪意しか感じなかったわ!」

「でも多少は合っているんじゃ……」

「逆に少ししか合っていないのよ。後、慧人は天才じゃなくて天災よ」

「あはは……だから、多少訂正して、バケモノと付き合っているってことに……」

「訂正雑ね!?」

「したら、今度は『遂にバケモノを従えた……』って一歩引かれることに……」

「そこなの!?人外と付き合うことに引いたんじゃなくてそこなの!?」

「半分冗談だよ?」

「半分?どこから半分なの?」

「バケモノじゃなくて魔王と付き合っているって……」

「結論が変わらないじゃない!?」

「でもね、不思議なんだよ」

「何が?」

「何故かそう伝えたら、一部の人から『それって虎南高校の冬木慧人のこと?』ってなり始めたの」

「凄いわ。一周回って何で当たるのよ。あの男はどんなイメージを持たれているのよ」

「…………え?聞きたい?」

「……なんとなく察したわ。だけど、ほんの少しだけ知りたいわね」

「えっとね、学校破壊の常習犯、警察の胃痛の種、人間に転生した元魔王……」

「どうしたらあの男はそんな噂が流れるのかしら?」

 

(流石に本人が聞いたら、噂に背びれ尾びれどころの話じゃないって怒りそうね。それにしてもいくら学校が近いとはいえ、何でここまで有名なのかしら?)

 

 それは冬木慧人だからとしか言い様がない。後は事あるごとに名前が挙がることだろうか。

 

「でもね、最初の6つの印象がガラッと変わって……ドSで鬼畜な最強魔王って事で固まったの」

「当たっているから否定できないわね。というか、イメージじゃなくて、本人が言い当てられているもの」

 

(余りにも的確すぎて否定できないわ。後は『天災』って言葉も付けておくとなおよしね)

 

「そして、千聖ちゃんはその最強魔王を尻に敷いているってことで、神格化されているとか」

「あの男はそんな器じゃないわよ。あの男は束縛が大嫌いなタイプよ?」

「そうだね……自分を縛るルールとか鎖を全部壊しそう……」

「せめて、最強魔王の側近とか僕とか第一夫人とかがいいわ」

「勇者って言われそうだよね?」

「その称号は紗夜ちゃんにプレゼントするわ」

 

 ただし、彼女も勇者という言葉に相応しいかと言われると、正直悩みどころではあるが、少なくとも千聖よりは相応しいだろう。

 

「って、また慧人の話に戻ったじゃない。今日は慧人って言葉は禁止よ禁止」

「遂に禁止ワードに認定された……もし破ったら?」

「クラゲ禁止」

「罰が重いよぉ……でも、クラゲ禁止って何?」

「クラゲを見る、触れる、考えること……クラゲに関するあらゆることを禁止するわ」

「む、無茶苦茶だよぉ……それに元々触れたくても気軽に触れられないよぉ……」

「それでもよ」

「じゃあ、そう言う千聖ちゃんは慧人さん禁止ね」

「うっ……わ、分かったわ」

 

 こうして、謎の慧人禁止縛りをした状態での彼女たちのお茶会は進んでいくのだった。




色々あって心を病んだ結果プロセカの25時、ナイトコードで。(特に朝比奈まふゆ)に惹かれ、マスターデュエルやアルセウスに熱中した結果、キラフェスで紗夜さんだけが引けなかった悲劇が起きました。
最近は特にヘブバンに力を注いでおり(メインストーリー、イベントストーリー共に泣かせに来ている)、来月あるであろう誕生日ガチャでも悲劇が起きそうで怖いです。
ということで(どういうことで?)、次回は慧人くんとピー音くん(の胃)を殺しに行くのでお願いします。
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