一話目から、アクセル全開で行ったのについて来てくれるとは……なんだろう。そのうち、前回の話が通常運転になりそう。
ちなみに、今回は前回よりはアクセルを踏んでないと思います(個人の感想)
私、白鷺千聖と冬木慧人の出会いは桜舞い散る春のことだった。
「いけないわ。このままだと遅刻してしまうわ」
晴れて高校生になったその日。前日に仕事の都合で少し帰るのが遅くなってしまい、少し寝坊してしまった。そのため、少し走って学校に向かっている。
「きゃっ!」
曲がり角で誰かとぶつかってしまい、その拍子に尻餅をついてしまう。
「いたた……」
「大丈夫か?」
「あ、ごめんなさい。前を見ていなくて……」
差し伸べられた手を掴み立ち上がる。
「悪い。俺の方こそ見ていなかった」
彼は少しばつが悪そうに頬を掻きながら、謝ってくる。
「いえ、私が走ってぶつかってしまっただけだから……」
背は私よりも高く、見上げれば、春まで残っている雪のような鈍い白さを持つその髪と整った顔立ち、目は鋭く私を貫いているようで……
「怪我はないか?」
一瞬、急いでいることも忘れ、私は彼に見惚れていた。
「は、はい……」
「じゃあ、行くから」
「あ、あの……」
彼がここから去ろうとしたとき、私は反射的に彼の手を握っていた。そして……
「あなたの名前は……?」
「誰だよそいつ」
「え?あなたのことよ?」
「いや、そんな出会い方じゃなかっただろうが」
目の前で千聖が何か喋っていた。何というか……恋愛漫画とかでのテンプレ過ぎて逆にあまり見ないような出会い方……うん。そんな出会いしてねぇから。
「あれ?こんな感じじゃなかったかしら?」
「全然違うだろ阿呆が」
「……おかしいわね」
おかしいのはお前の頭だ。そう思いながら俺は宿題を進める。
そんな曲がり角でぶつかってなんてあるわけねぇだろ。まぁ、曲がり角ではないが、ぶつかって出会ったのは花音くらいだ。
パチンッ!
「分かったわ。こんな感じよ」
指パッチンからのキメ顔。なんだろう。凄い嫌な予感がしてきた……
「なぁ?いいだろ?ちょっと付き合ってくれよ」
「いえ、結構です」
「そんなこと言わずにさー」
とある休日のショッピングモール。私はよくあるチャラい男の人たちに絡まれていた。
知っている人がほとんどだと思うけど、私は事務所に所属している所謂芸能人。身バレしないようにある程度変装はしているものの、私から溢れ出るオーラは隠しきれないらしい。現に仕事もオフで一人でショッピングを楽しもうとしているのにコレである。
「私、急いでいますので。これで」
相手の考えは見え見え。そのまま数人で囲んで私を逃がさないようにしているのでしょう。相手は私を一般の女子高生と思っているだろうが、私が芸能人だとバレれば、きっと……
「いいじゃねぇかよ!」
「きゃっ!」
一人が無理やり腕を掴んでくる。相手は男。振りほどこうにも力が強くて振りほどけない。
「少しお茶に付き合ってもらうだけだからよ……」
「離して……!」
周りにいた男の人たちも無理やり連れて行こうとその手を伸ばし……
「おい」
その手は別の人が現れたことによって振り払われた。
「触んなよ」
「あ?何を言っててててててっ!?お、折れる!」
静かに現れた男は、私を掴んでいた男の腕を掴む。力が強かったのか簡単に腕は放される。
そして、私はあることを思いつく。
「もう、遅かったじゃないの。お陰で変なのに絡まれたじゃない」
現れた男の人に目線を送る。当然だが私はこの人を待っていた訳でもないし、そもそも知り合いではない。ただ、穏便に済ませるにはこうするのが一番だと考えたからだ。
「……悪い。遅くなった」
ぶっきらぼうに言い捨てる彼。どうやら意図に気付いてくれたようだ。そして……
「俺の女に手を出したヤツは潰す」
右手を前に出し、ひねり潰すような仕草を見せる。彼の圧に怯んだ男の人たちは逃げるように去って行く。
「……ありがとう。助かったわ」
彼らが見えなくなったところでお礼を言う。
「別に。礼を言われるようなことはしてない」
そう言い残すと、その場を立ち去る彼。
そして、次の日……
「今日から転校生がこのクラスにやってきます」
昨日の人には感謝し切れていない、それなのに何処の誰かが分からず感謝することが出来ないというもどかしさを感じながら朝のHRに出席していた。どうやら転校生が来るらしいが、興味ない……そうさっきまで思っていた。彼が入るまでは。
「じゃあ、自己紹介を」
「……冬木慧人。よろしく」
「……あ」
これが彼との出会い。そして彼との関係の始まりだった……
「わけがねぇだろうが」
俺はペンを置きながらそう答える。嫌な予感が的中したよおい。
「お前、自分が通ってる学校名言ってみろ?」
「花咲川学園ね」
「アホか。花咲川
「……え?」
「何で男の俺が転校生として現れるんだよ」
ついでに言えば、俺は近くの男子校もどきの普通科高校に通っている。
「それはほら?よくある共学化になったからじゃないの?」
「いや、そんな話は聞いたことねぇよ?」
「そ、そんな……!ま、まさか……本当は慧人って女の子なの?」
「いや、なんでそうなる?」
「ボーイッシュな女の子なの?」
「いや、男だからな?」
「訳あって男として育てられたの?」
「いや、違うけど?」
「でも、慧人。よく考えてちょうだい」
「何だよ」
「あなたは目の前の人の性別をどう判断しているかしら?」
「オーラ、雰囲気、空気」
「…………」
「どうした?頭抱えて?」
(ああ、そう言えばこの男は頭おかしかったわね……)
何を言っているのだろうか?人なんてオーラを見れば、年齢性別仕事の業種、パチンコや競馬などのギャンブルにいくらつぎ込んでどれだけ負けているかに、敵意を持つかとか大体分かるだろ?
(……どうしたら、相手を見ただけでギャンブルにいくらつぎ込んで、しかも負けているのかが分かるのかしら……?絶妙に……いえ、クソほどもいらない能力ね)
「…………普通の人はね。見た目とか声とか仕草とかね?そうやって答えると思うの」
「はぁ…………で?」
「つまり、慧人が男であることを知るにはね?100%男ですっていう証拠が必要なの。それか、男だという証明ね」
「学生証でいいか?健康保険証でもいいけど……ああ悪い。運転免許証はまだ持っていないんだ」
「甘いわ。私はそれらが偽造されている可能性も考えて……」
「いや、偽造って結構ヤバいこと言ってるぞ?」
「……慧人の裸を見る義務があるわ」
「ねぇよ」
「……裸を見たいわ」
「見せねぇよ」
「……(ピーーー)したいわ」
「しねぇよ」
「……はっ!今、思い出したわ!私と慧人との関係!」
「いや、悪友だろ」
「そう。あれは10年前……」
「やめろ。回想シーン行くんじゃねぇよ?ちょっ、10年前なんて俺ら会ってないから回想するものがねぇんだよ?ねぇ聞いてる?おい、聞けやコラ」
「ほんとうに……いっちゃうの?」
白鷺千聖、当時7歳。そこはとある空港で、私はある男の子を見送っていた。
「うん……しかたないよ。しごとだって」
冬木慧人、当時6歳。幼い頃から一緒に遊んでいた彼が今日、遠くに行ってしまう。
「わたし……はなれたくない。もっと、いっしょに……!」
「だめだよ。わがままいっちゃ」
幼い私は涙を浮かべている。幼い慧人も少しだけ涙を流している。
「でも……」
「いつか……おおきくなったらさ。またあおう?」
「ほんとうに……?」
「うん。ぜったいにあう。やくそくするよ」
「じゃあ!もういちどあえたらそのときは……わたしをおよめさんにしてくれる?」
「もちろん」
そしてお互いの小指を絡め、契りを交わす。
そのまま慧人は両親に連れられ、飛行機に乗っていった。
それから10年。ついに私たちは再会して……
「……おかしいわね。再会したのに私、プロポーズをされていないわ」
「それは、そんな約束をしてねぇからだよ」
「私はこんなにも、あなたのことが好きなのに?」
「いや、そうだとしても……いくつかステップを飛ばしたなおい」
「そうなのね……慧人は引っ越し先で記憶を失ったのね……私と愛し合った記憶も消えたのね……」
「うん。ちげぇからな?元から存在していないからな?」
「そうなのね……きっと私と(ピーーー)をすれば全てを思い出すわ」
「だから、思い出すものがねぇんだよ。というか、何で思い出す方法が(ピーーー)なんだよ」
「……シたいから?」
「テメェの欲望じゃねぇか」
「……もう、私じゃなかったらきっと狂っていたわよ?愛し合った思い出をなかったことにされて……これは、ヤンデレメンヘラ無理心中ルートの一緒のお墓に入ってBADEND待ったなしよ?」
「そこまで行くか?というか、それで狂われていたら、俺は記憶の改竄をした馬鹿野郎を腕の立つ医者に診せに行かせる必要が出てくるんだが?」
「医者……産婦人科の?」
「精神科か脳外科か小児科」
「小児科とは失礼ね!いくら私の身体が貧相で胸も背もそこまで大きくない。身体的な魅力がなくて、子どもでも通じそうだからって、それはないわ!」
「いや、行けると思うけど?ワンチャン行けるだろ」
「…………慧人」
「なんだよ」
「……私って小児科がお似合いの女なのね」
すると先ほどまでの勢いはどこへやら、若干落ち込んでいる様子だ。
「……悪い、言い過ぎた。お前の身体は子どもかもしれねぇけど。頭は高校生だし、心はそれ以上だったな」
「そ、そうよね!性的な知識なら他の人の何倍も学習している自信があるもの!」
「待て。何で余計な枕詞がついた?」
「え?だ、だって……あなたと話すためには、いくらあっても足りないから……」
「足りてないのはお前の常識だド阿呆」
「失礼ね!足りてないのはあなたとの実践経験だけよ!」
「足りていなくていいわそんなの」
「酷いわ……(シクシク)」
嘘泣きをしている彼女は放っておこう、そうしよう。
「…………はぁ」
すると一段落ついたのか、ため息をつく。ようやく流れが途切れたので、気になったことを聞いてみる。
「で?さっきのクソみてぇな偽造の過去話が何にどう繋がるんだ」
「私たちは幼馴染みなのよ」
「お前の妄想の中ではな」
「結婚を決めた関係なのよ」
「お前の頭の中ではな」
「つまり、私には慧人の成長をこの目で見る義務があるのよ」
「ねぇよ」
「じゃあ……私の成長を確認する?」
そう言って服の端をつまむ千聖。
「興味ねぇよ」
「…………(シュン)」
すると、悲しい表情を浮かべる千聖。何だろう。そんな彼女を見ていると罪悪感が……
「……ハッ」
わかねぇわ。というか、よく考えなくてもこのド変態、俺と会った時から別に劇的な変貌を遂げていないし。
「……いいわ、絶対に脱がせてみせるわ。あなたは私の性欲に火をつけたのよ」
「火をつけるところ間違ってねぇか?」
「そうね。あなたは私の面倒くさいところに……って、誰が面倒くさいのよ!」
「自分で言ったんじゃねぇか!?……って、ちょっ、ズボンに手をかけるなこのド変態。いや、どさくさに紛れてどこ掴もうとしているんだおい!」
「あなたの(ピーー)」
「よし。よく考えろ?もし、俺がお前の胸とか(ピーー)を触ろうとしたら……」
「興奮するわ!むしろ触って欲しいわね!」
「…………」
終わった……この女はダメかもしれねぇ。
「ねぇ、触ってくれるんでしょ?ねぇ触って……ほらあなたの(ピーー)を頑張って私の胸で挟んでみたりとか……ねぇしましょうよ。しましょうよ慧人。ここからは保健体育の実技の時間よ」
「しねぇからな。しねぇから、そんな哀しそうな顔をするんじゃねぇよ」
「じゃあ、慰めるついでに(ピーーー)を……」
「しねぇよ」
この後、不毛な言い争いは数時間続いた。
本当に、なんであんな出会いからこんな関係になったんだろうな。
彼女との出会いは去年の秋だった。
「花音から離れなさいっ!」
店と店の間にある、人目に付かないような狭い路地。そこには泣いている
「ふぇ?千聖ちゃん……?」
「来て花音。……あなた、花音に何したの?」
「何したの?って言われてもなぁ……」
「あなたが花音を泣かせたのでしょう?」
……まぁね?これだけ見たら、普通俺が泣かせたって思うよね?やってきた千聖もそう思ったわけである。
「あ、あの……冬木さんは……迷った私を案内しようと……」
「いいのよ花音。脅されてるいるのでしょう?」
「ち、ちが……」
「あーそういうことか」
で、この時点で俺は千聖が勘違いしたのを察した。察したのはいいんだが……
「なぁ?もし脅しているって言ったらどうする?」
この時の俺はちょっと頭がおかしかったのだ。え?今もおかしいって?オイコラ〆るぞ。
この後、怒る千聖を花音が抑え、誤解と説明。泣いていたのは単純に目にゴミが入ったこと。俺のもしもの話は単純に反応が気になったということを説明したのだ。俺って凄いね、ほんと。
「ごめんなさい。先ほどは失礼しました」
場所を移しカフェにて。千聖が頭を下げて謝ってくる。
「…………?」
ただ、この時の俺は理解が出来ていなかったのだ。
「なぁ、花音。何でコイツ謝ってるの?」
「それは不快な思いをさせたのだから謝るのが当然でしょう?」
「そういうもんなのか?お前は花音を助けようとした。そこに謝る要素なんてなくね?」
「いや、あなたが不快な思いを……」
「別に何もねぇけど……」
千聖の行動は結果的には勘違いだった。それでも、見た目が怖そうで、路地裏という他の助けが期待できない場所。そんな状況で、友人のために声を荒げた彼女を俺は、賞賛こそあれ不快だとかそういう気持ちはなかったのだ。
だからこそ、彼女のとった行動は勘違いであるものの、俺にとっては格好良く見えたのだ。
「じゃ、花音はお前に任せるわ。俺、これからバイト行ってくるんで」
そして、そのままバイト先へ向かう。バイトがあるのは別に、逃げるための嘘とかそういうわけじゃないからだ。
この日を境に彼女との交流を深めていくが、間違いなく言えるのは、千聖は俺を嫌っていたこと。そして、俺はこの時、少しだけ白鷺千聖という人間に興味が湧いたことだろうか。
慧人→対象となる相手を見ただけで、年齢性別仕事の業種、ギャンブルにいくらつぎ込んでどれだけ負けているかに、敵意を持つかとかが大体分かる能力を持っている。
千聖→慧人の思考を大体読み取れる程度の能力を持つ。変態発言が多いのは、慧人の深層心理を読み取っている結果……と言っておけば、それっぽくなると考えている。
この二人って会話がジェットコースターみたいだなぁ……(白目)
次回、多分今までで一番千聖さんがまともではないかも……(そもそもこの二話でお察しですが)