まともな千聖さんを返して(マジで)   作:黒ハム

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今回は……あー前回の予告通りです!


疲れたときは癒やしが欲しい

 疲れ。一言で言ってもそれは色んな意味を持っているだろう。

 例えば、運動などをして肉体的な疲れ。何かしらプレッシャーのかかることを続けて精神的な疲れ。或いは、勉強などで頭を酷使して脳の疲れ。他にも人によって感じる疲れや疲労といったものはそれぞれ違う。

 

「けーとーきーてるのー?」

「へいへい、聞いてるっての」

「大体あの無能スタッフは……」

 

 ちなみに目の前に居る彼女……千聖は、俺の膝の上に頭を乗せて、ベットの上でゴロゴロしていた。最近は仕事も忙しかったのか、まるでせき止められていたダムを破壊したように、愚痴が止まることを知らない。

 

「もうね、ダメなの。分かる?全くねぇ。どれだけ尻拭いが大変だったと思うのよ。ねぇ?分かる?」

「そうだな。大変だったんだな」

 

 この怠い感じの絡みはかれこれ二時間続いているだろうか。最初の三十分は、激しい剣幕というか何というかで荒れていたけど……ん?つまり俺って二時間半も彼女の愚痴を聞き続けているのか?……ついでに膝枕も。

 更に三十分後……

 

「何だか疲れたわね」

「そうだな」

 

 三時間ほど愚痴をはき続けた千聖はついに止まった。よくもまぁとは言わないが……三時間もなんだかんだでぶっ続けで話し続けたわコイツ。

 

「トイレ行きたい」

「行ってこい」

「動きたくない」

「知るかよ」

「連れてって」

「一人で行け」

「抱っこ」

「何歳だよ」

「17歳」

「じゃあ、一人で行け」

「抱っこ」

「…………」

「抱っこ」

「……はぁ。とりあえず身体起こせ」

「はーい」

 

 ということで何時間ぶりかに身体を起こす千聖。ベッドの淵に足をかけて座り、手を拡げて待っている。

 

「ほら、行くぞ。放すなよ」

「うん」

 

 ギュッと俺を抱き締める千聖。彼女が落ちないよう身体を支えながら1階のトイレまで連れて行く。

 

「着いたぞ」

「うん」

「放せ」

「いや」

「……は?」

「だって、放すなよって言われたもん」

「…………」

 

 マジかよコイツ。

 

「阿呆か。放せ」

「じゃあ、代わりに傍に居て」

「ドア越しには居てやる」

「いや。一緒にいるの」

「…………」

 

 千聖は普段も壊れているが、こうしてストレスや精神的な疲労が溜まりに溜まったときは、面倒い。普段の変態として壊れるより、何というか……ワガママなところが増える。仕事上、仮面を付けていたり、学校とか普段も、白鷺千聖はイメージを損なわないよう立ち回りを気を付けている。だからこそ、普段から押さえつけている性欲以外の欲望もこうして、止めていたダムが決壊すれば漏れ出てくる。

 

「何でお前が用を足すところにいないといけねぇんだよ」

「だって、そのまま興奮してくれれば襲ってくれるでしょ?」

「はい。ドアの前にいるからな」

 

 そう言って強引に扉を閉じる。ワガママ×変態はどうしようもねぇ。

 今の状態のこの女の相手をするのは、はっきり言って面倒。ただ、ストレスを解消する場は誰にでも必要になってくる。もちろん、ストレスの発散方法は人それぞれだが、コイツの発散方法はこうやって誰かに対し愚痴をはくこと。あくまでコイツは共感とか意見が欲しいわけじゃなく、溜まりに溜まっている毒を吐き出したいだけ。それコイツが自分を壊さない方法だから。……まぁ、その毒をぶつけられる相手は俺なんだが。

 

「ん」

 

 扉を開けた千聖。洗面台に行って手を洗ったかと思うと、手を拡げて待っている。

 

「……は?」

「ん」

 

 手を拡げ、ジト目で見てくる。……ああ。

 

「はいはい」

「……ん」

 

 彼女の背中に手を回すと、彼女も首の後ろあたりに手を回す。そして……

 

「……むぅ」

「なんだよ。どうせ抱っこだろ?」

「……そうだけど違うのよ」

「なんだよ」

「……そのままキスして欲しかった……なんてね」

「…………」

 

 俺の部屋まで連れて行き、ベッドの淵に腰掛ける。

 

「…………迷惑をかけて……ごめんなさい」

「別に、迷惑なんて思ってねぇよ」

「いつもより品がなかったわ」

「いつも下ネタを提供してくるだろうが」

「私は品のあるネタを提供していたつもりよ?」

「知らねぇよ」

「……酷いわ。私の上品なネタも分からないなんて……」

「分かるか阿呆が」

「いい?品がないっていうのは(バーン!)とか(ドーン!)とか(ゴーン!)なの」

「…………」

「そして、品があるのは(ピーー)とか(ピーーー)とか(ピーー)なのよ?」

「…………」

 

 おかしいな。今全部にモザイクがかからなかったか?

 

「……かなり疲れているんだな。お前」

 

 そうだ。彼女はきっと疲れているに違いないんだ。んー疲れているか……

 

「……一緒に寝るか?」

「え?」

「いや、寝たら少し落ち着くかなって」

「うん。一緒に寝る」

「そうか?あ、お前がさっき言ってた(ピーー)とかそういう系はなしだけどな」

「は?」

「え?」

「ちょっと待って。(ピーー)とか(ピーーー)がないって正気なの?」

「いや、正気だけど?お前の頭が正気か?」

「……騙されたわ」

「知るかよ」

「……私のわくわくを返して欲しい」

「わくわくって……はぁ。……そこまで言うなら、少しだけするか?」

「えぇっ!?いいの!?」

「腕枕でいいか?」

「それのどこが少しなのよ!」

 

 という鋭いツッコミを無視してベッドの上で横になる。そして、腕を軽く伸ばして……

 

「来るか?」

「…………」

 

 不服そうな顔をして、俺の隣に横になる千聖。そして、腕を枕にしてくる。反対の手で掛け布団を俺たちにかけて準備完了。

 

「よしよし……」

「…………」

 

 千聖が上腕二頭筋あたりに頭を乗せているので、肘を曲げて彼女の頭を優しく撫でる。反対の手は、彼女の肩あたりに置いてある。

 

(あ、あれ……?ど、どうしましょう……思ったより慧人が近くに居て恥ずかしいわ……!)

 

 この後、二人揃って寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 慧人は恐ろしいまでに体力がある。俗に言う無尽蔵な体力を持っているのだ。そして、精神もガラスみたいな脆いものではなく、鋼……いえ、鋼を超えたレベルのメンタルを持っている。メンタルにヒビが入ることも、メンタルがプレッシャーなどですり減らされることもほとんどない。

 しかし、そんな彼でも疲れを感じないわけではない。どんなに体力があろうと、どんなに精神が強かろうと、彼もまた一人の人間である以上疲労とは背中合わせ。疲れという感覚は彼にも存在する。ただ、彼が疲れを見せる姿というのは中々にレアだったりするが。

 

「…………」

 

 ベッドに背中を預けながら床に座る彼。

 ただいま、私と彼は勉強会中……あ、保健体育じゃなくて普通に勉強中ね。宿題を一緒に終わらせているわ。まぁ、彼は面倒くさがりだし、不真面目だし、口も悪いけど頭はいい方だと思う。何というか、タイプだけ見れば日菜ちゃんに近い。だけどその才能を見せつけることもなければ、そもそもやる気を出す気がほぼ感じられない。能ある鷹は爪を隠すタイプかしら?いえ、ただクソほどマイペースなだけね。

 そんな彼も、ただやる気が起きないだけではなく、今にも寝落ちしそうなのか、時折手に持つペンがミニテーブルの上に落ちる。

 

「慧人。お疲れ?」

「……まぁな……」

「何してたの?」

「昨日、放課後に部活やって……帰ってNFOして……夜中に自主練して……」

「そう……」

 

 いつもならここで『夜の自主練って(ピーーー)の?』とか言うところだが、生憎私は空気が読めない慧人専用ド変態ドMペットではない。今のご主人さ……慧人の疲れ具合を考えるといつもみたいに冷たい目で、相手を蔑むような感じで、私の身が震え上がるような返しが帰ってこないことぐらい分かるわ。

 

「休む?」

「これだけ終わらせる」

「そう。じゃあ、すぐに終わらせて休みましょう」

「ああ……」

 

 彼の意志を尊重し、目の前にある課題を終わらせにかかる。疲れているはずなのに、何故かいつもより課題を終えるスピードが早いわね……あ、そっか。あまりに慧人が疲れすぎているから、私が色仕掛けしていないからだわ。流石、ご主人様のことを考えられる優秀なペットね。

 ……ふふっ。今、色気がないでしょと思った人たち?後でオハナシがあるから校舎裏ね?

 ということで、いつもの何倍というスピードで課題を終わらせた私たち。

 

「ふぁああああ……」

 

 慧人が大きなあくびを一つ。ベッドに背を預け、このまま寝そうな感じだ。

 

「慧人、ハグをしないかしら?」

「……ハグ?」

「えっとね、30秒ハグをするとね、ドーパミンとオキシトシンっていう幸福感を感じたときに出るホルモンとストレス軽減に役立つホルモンが出るの。だから、その……」

「分かった……しようか」

「…………えぇ!行くわよ……!」

 

 慧人が手を広げて、受け入れ体制になっている。私は伸ばされた慧人の足に……太股に座り、慧人を抱きしめる。慧人も広げていた腕を私の背中に回し、優しく……しかし、私を放さないように抱きしめる。

 静かな時間が流れる。気まずさから来る静かさではなく、今の時間を噛み締めるような……ああ、本当に好きなんだな。心の底から……彼のことが……

 

「そろそろか?」

 

 ゆっくりと手を放す慧人。気付けば時間がかなり経っていたように思える。

 

「ありがとな」

 

 私の頭を撫でる慧人。そんな彼の手を両手で掴んで私は……

 

「……胸も触って」

 

 そっと自身の左胸に持って行く。いつもなら、この時点で彼に抵抗されたり、なんか言われたりするが……

 

「分かった」

 

 静かに服の上から揉み始める彼。そしてそのまま……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……やってしまった。頭を抱えている俺に対し、千聖はからかうように言葉を紡ぐ。

 

「ふふっ、凄くいい気分ね。……最後まで流せなかったのは残念だけど」

「いくら疲れが溜まっていたとはいえ……まさか、雰囲気に流されるとは思わなかった」

「ほんと、あと少しで行けそうだったのに残念だったわ」

「あぶねぇ……マジであぶねぇ……初めてお前を怖く感じたわ」

「怖いなんて酷いわ。私はそっと流れに身を寄せただけなのに」

 

 普段が、ガツガツ下ネタをぶっ込んでくると言うか……そういう空気に持って行こうという感じが強すぎていた。そのため、今回みたいな、ゆっくりと少しずつ進められるのは予想外すぎた。警戒心を解きすぎた……いや、()()()()すぎた。

 

(ふふっ、なるほどね。慧人はガツガツよりこうやって、雰囲気を作って、焦らずゆっくりと進めればコロって落とせそうね。まぁ、いつもみたいに頭が回っていたら、初手で詰んでいたでしょうけど。……いえ、それもあるけど恐らく普段とのギャップね。なるほど……ギャップ萌えかしら?)

 

「でも、残念だったわ。あなたの(ピーー)を触ろうとするのはもっと後の方がよかったわね。キスとか、服の下から揉ませるとか……そっちだったわね」

「マジで後者だったら流されてたな……そのおかげでお前の欲が見えたし」

「そう思うと惜しいわね。ねぇ、やり直さない?テイク2よ」

「嫌だよ。もう完全に目覚めたからな」

「え?(けだもの)としての本能が?」

「頭がだよ阿呆」

「あ、そうだ慧人。これからも定期的に揉んでくれないかしら?バストアップしたいのよ」

「ぜってぇ、協力しねぇからな」

「そう、残念ね」

 

 珍しく早めに切り上げる千聖。いつもならもう少し長引かせそうだが……

 

「ふふっ、今日は聞き分けのいい千聖さんよ」

「…………そうかよ」

「私、分かったわ。あなたは聞き分けのいいペットが好きなんだって」

「お前をペットにした覚えはない」

「そんな!こんな愛おしく、ご主人様が大好きで、従順なペットの何処が不満かしら!?」

「俺に人をペットとして扱う趣味はねぇ」

「え?ないの?」

「ないわ」

 

 流石にそんな趣味はない。

 

「仕方ないわ。じゃあ、私がこれからあなたを調教して、ペットの正しい躾け方とペットの扱い方を伝授してあげるわ」

「嫌だよ」

「……あれ?ペットに調教されるご主人様……?でも調教されるのはペットだし……?ん?慧人が私を調教する、私が慧人を調教する。……なるほど、パラドックスね」

「鶏が先か卵が先かみたいに言うんじゃねぇよ。というか、俺はお前を調教しないし、お前に調教されなければ解決だわ」

「……本当に目が覚めたようね。……はっ、まさか私の胸を揉んで回復を……?私の胸にはそんな効果が……?」

「ねぇよ。目が覚めただけだ」

 

 本当に油断ができないな……ただ、コイツに上を取られたくないな。なんとなくそう思いました。

 

「今、気付いたわ。実はゲームの女僧侶って、こういうことして男性を回復させているのかしらね」

「やめろ?お前、今全世界のRPG好きを敵に回したからな?」

「ふっ、喧嘩なら買うわ――慧人が」

「勝手に買うなよ。買うならお前が買え」

「じゃあ、喧嘩を冬木慧人一人で買うわ」

「だから、なんで諭吉さんを差し出す感じで、俺を差し出すわけ?」

「しょうがない。少し譲歩して、冬木慧人二人で買うことにするわ」

「俺は一人しか居ねぇっての。勝手に二人目を差し出すな」

 

 後、こいつの発言も注意しないといけないと、改めて思いました。

 そんな感じでいつも通り今日も過ぎていくのであった。




次回、進展。
後、下のアンケートは気軽なお気持ちでお答えください。

変態なのはどっち?

  • 千聖
  • 慧人
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