まともな千聖さんを返して(マジで)   作:黒ハム

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気付けば10月も中旬ですか……え?早くない?
後期の授業が始まり、バイトで色々と疲れて中々執筆が出来ない今日この頃。月一では投稿したいですね(目標が低い)ちなみに11月はバイトが週4くらい+ゲームの発売+大学の講義の中間が……!
ハロウィンの日にハロウィン回投稿したいしなぁ……(現実逃避+願望)


嘘から始まる新たな関係

 最初は彼のことが理解できなかった。好きか嫌いかで言えば嫌いだったと言える。

 

 最初の出会いの後も何度か会って一言二言、話をすることがあった。仮面を付けて対応していたが、彼は何処か楽しくも面白くもなさそうだった。

 

 いつからだっただろうか。彼に興味を持ち始めたのは。

 

 彼は、私が有名人と知ってもなお、接し方を変えなかった。至って普通に、出会ったときとそんなに変わらない。まるで、そんな肩書きなんて興味がないように。

 

 いつからだっただろうか。彼のことを目で追いかけるようになったのは。

 

 彼を街で見かける度、通学路ですれ違う度に気付けば視線は彼を追っていた。見ようとして見ているのではない。気付けば、彼を見ていることが増えていた。

 

 いつからだっただろうか。彼に対して仮面を付けなくなったのは。

 

 彼と話すときは、ただの一人の女子高校生、白鷺千聖に戻れていた。元天才子役なんて大層な肩書きを捨て置いて、一人の少女として話すことが出来た。

 

 いつからだっただろうか。彼のことが好きになったのは。

 

 不良に助けてもらったみたいな、そういう特別なことはなかった。何度も会って、何度も話して、そういう何でもないことを通して、彼に対して段々と惹かれていった。

 

 いつからだっただろうか。彼とただの友達で居るだけでは満足できなくなったのは。

 

 ただの友達では居たくない。でも、今の関係が壊れてしまうのが少し怖い。せっかくの関係が崩れ去ってしまうのは耐えきれない。一歩踏み出したい……でも、その一歩は踏み出したら戻れない気がして…………怖い。でも、何もしないで居れば、何処か遠くに行ってしまいそうで……

 

 だから私は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、慧人」

「なんだよ。改まって話とか」

 

 夜の公園。俺は千聖に呼び出されてやって来た。

 いつもは俺の家とかCiRCLEとか喫茶店なのに、指定された場所は公園。しかも、時間帯が夜。『大事な話があるから来て欲しい』って感じで、いつになく真面目な感じで頼まれた。流石に、そこまでされたら断ることも出来ないしなぁ……

 

「あなたって、彼女は欲しくないかしら?」

「はぁ?」

 

 いきなりよく分からない質問を投げかけてくる。彼女だと?

 

「いや、別にそうでも……」

「そうよね。欲しいわよね」

「聞けよ」

 

 特に欲しいと思ったことないけど?

 

「年頃だもの。欲しいに決まっているわ」

「だから、そうでも……」

「隠さなくていいわ。全て分かっているもの」

 

 勝手に話を進められているのだが?どうすればいいんだ?

 

「えっとね、その……高校生の青春とか恋愛を題材にしたドラマのヒロイン役に抜擢されたの」

「おぉ、すげぇじゃん。おめでと」

「ありがと。それでね、役作りのためには……その、私が恋愛を知る必要があると思うの」

「なるほど……役作りって大変だな」

「それでね、私って実は処女なの」

「飛んだなおい」

「あ、間違えた」

「間違えた?それって経験済みってことか?」

「いえ、処女って言うのは間違っていないわ。そうじゃなくて、私って実はまだ彼氏いたことがないって言いたかったの。こんな絶世の美少女だけど、実は未だ彼氏ができたことないの」

「あっそ」

 

 正直、コイツの過去の恋愛云々とか興味ないけど?

 

「あら?結構、重大発表したつもりだったのだけど?ほら、私が彼氏いたことがないって相当な衝撃じゃないかしら?」

「いいや?お前のその腹黒い性格と、芸能界でのし上がることしか考えていなかったことを踏まえれば、予想外ってわけではないと思うけど?恋愛にかける時間はないわとか、その恋愛が私のキャリアにプラスになるのかしらって」

「あなたって……私の良き理解者よね」

「そうでもねぇだろ。お前のことを知っていれば想像に難くない」

「いいえ、それだけじゃないわ。あなたは私のスリーサイズから食べ物の好みに、週に何回(ピーーー)をしてそのオカズにあなたを使っていると言うことまで……」

「特に後半は知らねぇし知りたくもないけど?……ん?ちょっとまて。今、すげぇこと言われたの気のせいか?」

「そんな!あなたは私の隅々まで知りたいと想っているんじゃないの!?」

「思ってねぇけど?」

「ちなみに私はあなたの全てを知りたいと想っているわ」

「あっそ」

「えぇ。あなたを24時間監視して、何時何分何秒に何処で誰と何をしているのかを知りたいわ」

「…………」

 

 恍惚そうな笑みを浮かべる千聖。あれ?俺って実はヤバいヤツに目を付けられた?ド変態、腹黒にヤンデレって……

 

「ふふっ、冗談よ。精々、あなたの過去、現在、そして未来……全てを知りたいと想っているわ」

「…………」

 

 それも充分やばくね?というか、目が笑っていないし、過去も入った分さっきよりヤバさ増した?

 

「……それも冗談よ。あなたが傍に居てくれれば他に何もいらないわ」

「…………」

 

 なんだろう。何がガチなんだろうか。もう何がガチでもいいけど、俺はもしかしたらコイツとの接し方を見つめ直さないといけない気がしてきた。

 

「……そんな……それって……正真正銘、私のご主人様になってくれるってこと!?」

「…………」

 

 ちげぇよ。あぁ。やっぱりどうしようか。コイツ……

 

「……ここで捨てるか」

「あぅっ……!そ、そんなゴミを見るような冷たい目……はぁ……はぁ……もっと見てぇ……!」

「…………」

 

 やっぱりダメか。ゴミのポイ捨てはよくないよな。うん。…………というかさ。捨てるって言われて、興奮するとかもう末期だろ。

 

「……話が逸れたわね」

「逸らし過ぎだ」

「えっとね……単刀直入に言うわ」

「どうぞ」

「私と付き合って」

「…………」

 

 一体、どういう話の流れからこうなったんだろうか?

 

「あ、も、もちろん役作りって意味よ?ほら、さっき言ってたでしょ?」

「あーお前が逸らすからすっかり抜けていたわ」

「そ、そのね?えっと、その役作りの為に……さ、三ヶ月!三ヶ月という期間を設けて、あなたには私の恋人になって欲しいの!」

「つまり、仮の彼氏彼女の関係を三ヶ月間結ぶってことか?」

「そ、そうね。流石慧人、物分かりがいいわね」

「それ、俺じゃなくてもよくねぇか?」

「それはダメよ!」

「は?」

「慧人じゃなきゃダメ……他の人じゃ嫌なの」

「……そうかよ」

「……ダメ?」

「別に。そういうことなら協力は惜しまないぞ」

「ありがと……あ、えっとね。仮のって付いているけど、もちろん恋人らしいことは何でもしていいからね!」

「はいはい」

「(ピーーー)とか(ピーーーーー)とか(ピーーー)もしていいからね!」

「それは検討するわ。多分、却下するけど」

 

 まぁ、要するに千聖が悪友から彼女(仮)という立ち位置になったわけか。

 

「じゃあ、三ヶ月間よろしくな」

「え、えぇ……そうね」

 

 それにしても奇妙な話だな。まさか、千聖とよく分からない関係になるとは思わなかった。いや、割と前からか。

 

「帰るか。送っていくぞ」

「ありがと……あ、恋人同士だからやっぱり恋人繋ぎかしら?それとも、腕を組んだ方がいいかしら?」

「どちらでも」

「きっと慧人のことだから、腕を組んだ方が喜ぶわね。そうね、だって事故で胸が当たったりするかもしれないもの。でも、慧人。恋人同士だからいいのよ。胸を触ったりしても……あ、流石に付き合って初日で、肉体関係まで進んじゃうのは進みすぎかしら?いえ、でも既に胸は揉まれたことがあるからセーフねきっと」

「うん。手を繋ぐか」

「あらそうなの?別に私としては胸を当てる……失敬、腕を組むのはやぶさかではないのよ?」 

 

 当てるほどの胸がねぇだろ、というツッコミは心に秘めておこう。

 

「いいかしら?恋人同士になったとしても、節度をしっかり守るのよ?」

「……マジか……お前から節度って言葉が出るとは思わなかった」

「えぇ。だから、今からホテルに行って朝まで……」

「帰るぞ。明日も学校あるからな」

「あなたなら平然とサボりそうよね」

「…………そんなわけないだろ?」

「だいぶ間があったわよ」

 

 と、そんな感じで俺たちは二人、横に並んで帰ることにする。

 期間限定の彼女と彼氏という関係になったが……あんまり、実感がわかねぇな。まぁ、いっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、自宅に帰った白鷺千聖は、ベッドの中で一人悶えていた。

 

「私のバカ……!何で()をつかないと、告白の一つも出来ないの……!いえ、あんなのを告白と呼べないわ」

 

 千聖は嘘を付いている。ヒロイン役に抜擢されたといっていたが嘘である。そんな話は一切、存在していない。では、何故彼女は嘘をついたのか。

 彼女は恐れていた。本気で告白をして振られることを。慧人との関係が終わってしまうことを。

 

「それに……返事が怖いからって……三ヶ月とか……役作りというのも強調しちゃったし……」

 

 当初の予定では、期間を設けるつもりはなかった。役作りというのも最初の導入だけで、念押しするつもりはなかった。

 

「はぁぁあああああああ……私って面倒くさい女ね。……好きなのに、好きという言葉をうまく伝えられないなんて……」

 

(もし、これが演技なら……役者としての私なら言えた。相手が慧人以外なら、仮面を付けてスラスラと言えた。……でも……演技じゃないから……本当に好きだから……)

 

「……好き……大好き……」

 

(……あなたは演技って想うかもしれない。雰囲気を作るための言葉って想うかもしれない。……でも、何度でも、何回でも伝えるから……)

 

 こうして、彼と彼女の関係は新たなステージに立ったのだった……

 現在11月中旬。残り期間、三ヶ月。




余談ですが、私が書く作品の中では付き合うのがむちゃくちゃはやいです。
章分けするなら、次回から次章、恋人(仮)編かな?
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