まともな千聖さんを返して(マジで)   作:黒ハム

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まさか日間ランキングに載っていたとは……
今日はハロウィンなので番外編です。
時系列的に、本編はまだ2年生の11月終わり。この話はそれより後の話ですね。


番外編 ハロウィン

 10月31日。ハロウィン当日である。元々は古代ケルト人が起源と考えられているお祭りで、今は民間行事として広まりつつあり、祝祭本来としての意味はない。

 

「ハロウィンは収穫祭じゃぁ!」

「「「そうだそうだぁ!」」」

「決して仮装した男女がイチャつく日じゃねぇ!」

「「「そうだそうだぁ!」」」

 

 現在、10月31日午前。今日は学校があるため、登校しているが……うんまぁ、こんな感じだ。俺が通っている虎南高校は、普通科の高校ではあるが、そこまで偏差値も高くなく、有り体に言えば、バカが集まってドンチャン騒ぎをしている高校だ。

 ちなみに、今の時間は……

 

「喰らえ!必殺の……」

「返すわ」

「ぐはぁっ!?」

「ヤツに一人で挑むな!大人数で囲んで、確実に叩きのめすんだ!」

「「「おう!」」」

 

 体育、サッカーの時間である。本来、サッカーとは11人1チームで、相手のゴールを奪い合うようなスポーツだが……うんまぁ。何故か1対21で、しかも、ボールをオレにぶつけるスポーツに変わったな。

 

「貴様は最重要警戒人物!ここで大人しくくたばれ!」

「そうだこのハーレム野郎!死に晒せ!」

「何でお前ばっかり……!」

LIFE or DEATH?

 

 怨嗟と悲鳴と羨望と願望と……なんかもう、色んな(ヤバそうな)ものが込められたボールを的確に蹴り返していく。やれやれ、こいつらがバレンタインやクリスマスの前にうるさくなるのは知っていたが、ハロウィンでもうるさくなるのかよ。

 こんな殺伐として居る中、先生はというと……

 

「いいねぇ~青春だねぇ~」

「……そうですね」

「眺める雲をのんびり見ているのもいいよねぇ~」

 

 こういうことに騒がない系の(希少な)クラスメイト(友達)と一緒に、ベンチに腰掛け空を見上げていた。まぁな?気付けばサッカーボールを使った死闘をしているからな?現実逃避もしたくなるよな?だから、先生を責めることは出来ないが……少しくらいは助けてくれても罰は当たらないと思いますよ?

 

「オレらも混ぜろぉ!」

「そうだそうだ!選手交代だぁ!」

「お前ら……ああ!あの魔王を討ち取るぞ!」

「「「おっしゃぁあああ!」」」

 

 ああ、空は青いなぁ……

 

「というか、収穫祭なんだろ?もっと平和に行こうぜ?」

「はぁ?何を言ってやがる」

「はぁ?いやだって最初に収穫祭って……」

「収穫祭……そう!リア充の命を収穫する祭りだろ?」

「……なるほど。そういう解釈をしたか…………ふむ。一理ある」

 

((いや、ねぇよバカ))

 

「さぁ、カーニバルの始まりだぁ!」

「「「Yeah!Let's party!!Fooooooooooooo!!!」」」

「カーニバルかパーティーか統一しろよ」

 

 今日も、俺たちの高校は平和です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな平和な学校生活も終わり、家に帰ると……

 

「お帰りなさい♪慧人」

「…………」

 

 そっと、スマホを取り出して電話をかける。

 

「もしもし警察ですか?不法侵入です」

「ちょ、ま、待ってちょうだい!?不法侵入なんてしていないわ!堂々と玄関の鍵を開けて入ったのよ!」

「どうやら、鍵を奪って玄関から押し入ったとのこと。窃盗罪も重ねていそうです」

「重ねていないから!重ねていないから、お願いだから話を聞いて……!」

「…………すみません。オレの勘違いです」

 

 そう言って電話を切る。

 

「え?ちょっと?本当に電話をかけていたの?」

「そんなことより、犯罪者予備軍さん。何か言い分は?」

「そうね、鍵は奪ったわけじゃなくお義母さんに……って彼女に対する扱いが酷すぎない!?本当に通報されるとは思わなかったわ!」

「いや、ド変態のお前なら喜ぶだろ」

「ふざけないでちょうだい!私が喜ぶのはあくまでペット扱いされた時で、犯罪者扱いされた時じゃないわ!」

 

 それで喜ぶのも大概だけどな……これでも、彼女なんだけどな……

 

「というか、お前。今日仕事だっただろ?まさか……」

「あなたと違ってサボっていないわ。十五時までだったから、早めに家に帰ってきたの」

「帰る家を間違えているだろ」

「間違えていないわ。しっかりとお義母さんに連絡したもの」

「俺には?」

「え?いらないでしょう?」

「…………」

 

 まぁ、確かにいらないな。うん。

 

「そ・れ・よ・り!」

「何だ?」

「どうして私の衣装に関する感想がないの?」

「いろいろあってそこまでたどり着かなかった」

「じゃあ、今、たどり着いたでしょう?」

「ふむ……」

 

 衣装と言ったが、要するに仮装である。大きめの帽子を被って……ああ。

 

「去年の衣装か」

「そうね。よく覚えていたわね」

「まぁな。にしても、魔女か……いいんじゃないか?可愛いぞ」

「……ありがと」

 

 少し照れている彼女を尻目に、オレはリビングへと歩いて行く。そして、服の裾を引っ張りながらついてくる彼女……なんだろう。衣装一つでここまで可愛くなるんだな……普段から(静かにしていれば)可愛いけど。

 とりあえず、鞄を一旦床に置いて、ソファに腰掛ける。すると、千聖も隣に座ってきた。

 

「あれ?でも去年の衣装がそのまま着れたってことは……」

「ふふっ、体型維持をしっかりやってきた証拠よ」

「そうだな。…………胸の大きさも維持していたんだな」

「じ、実は胸回りだけは少しきつく感じて……」

「心配するな。それは気のせいだ」

「…………」

 

 無言でつねられました。どうやらこれ以上は言わない方がいいらしいです。はい。

 

「ねぇ、慧人」

「何だよ」

「お菓子をくれなきゃ悪戯しちゃうぞ、ってこういうときは言うじゃない?」

「そうだな」

「でも、思ったの。私から慧人に対しては、そんなこと言っても無駄だって」

「まぁ、そうだな」

 

 ちなみにだが、ハロウィン用のお菓子は既に作ってある。しっかり千聖の分もあるから、それを持って来れば解決だ。

 

「ちなみに今回のお菓子は?」

「パンプキンケーキ。昨日作った」

「……相変わらずあなたは女子力高いわね……でも甘いわ。それくらい想定内よ。残念だったわね」

「いや、何が想定済みで何が残念なのかは知らんが、今から食べるなら出すけど?」

「慧人……お菓子をあげるから悪戯して!」

「……はぁ?」

 

 何を言っているんだコイツは。

 

「私は思ったの。お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!って言った側は得だと思うの。でもね、言われた側って、お菓子をあげるか、悪戯されるかで損しかないのよ」

「いや、大体子どもが大人に言う想定だし……損得じゃないと思うが……まぁいいや。で?」

「そこをお菓子をあげるから悪戯して!に変えることでWin-Winの関係になれるのよ!」

「……すまん。日本語は分かるんだが……」

「それなら問題ないじゃない」

 

 ……いや、お前の話している日本語はきっと、俺の話している日本語と決定的な何かが違うに決まっている。だって、どうしてその言葉に変えたらWin-Winになるのか理解できていないんだから。

 

「はぁ……この程度も理解できないなんて……一体、何年私の恋人をやっているのかしら?」

「まだ年単位まで行ってねぇよ」

「いい?私は慧人にお菓子をあげる。つまり、慧人はお菓子を貰えて得をする。慧人は私に悪戯をする。つまり、私は慧人に悪戯をされて得をする……どうかしら?この完璧なロジックは。完璧すぎて声も出ないでしょう?」

「…………」

 

 それで喜ぶのは変態だけ……と言おうとしたが、彼女が末期の変態だということを思い出して涙が出そうになった。

 

「さぁ、この飴をあげるから……飴を……飴……?」

 

 衣装のポケットを探すが、飴がない様子だ。

 

「ちょっと待ってちょうだい」

 

 そう言うと、彼女は置いてあった自身のバックに手を伸ばす。なんだろう。とりあえず、自分の鞄を自分の部屋に置いてきて、制服だし着替えるとするか。

 そして、着替え終わってリビングに戻ると……

 

「おかしいわね。どうやら、持ってくるのを忘れたみたいだわ」

 

 思案顔で答える彼女。その姿が様になっているのは流石と言うべきか。ほんと、考えている内容さえ違えば素直に感心できるのに……

 

「どうしましょう。私の完璧な計画が台無しじゃない」

「そもそも完璧じゃねぇだろうに」

「そうだわ慧人!私に、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!って言ってちょうだい」

「嫌だよめんどくせぇ」

「そんな……!はっ、じゃあ、私が慧人からお菓子を貰って、そのお菓子を慧人に渡せば……」

「ただ、お菓子が帰ってきただけだな」

「それじゃあ、悪戯してもらえないじゃない……!」

「ちなみにどんな悪戯を想定しているんだ?」

「え?当然(ピーー)とか、(ピーーー)とか、(ピーーーー)とか……」

「…………」

 

 いつも通りというべきか、選択肢全てに訂正音が入る。おいおい……

 

「困ったわ……」

 

 そういう彼女を無視して、スマホを弄る。こういうときの彼女は放置するに限る。

 

「…………!」

 

 だからこそ俺は、彼女が何かを閃いた、悪魔のような微笑みを見逃してしまった。

 

「あ、そういえば話は変わるのだけど。この前、宿題でちょっと読めないものがあったのよ」

「へぇ~どんなだ」

「これよ」

 

 そう言って、スマホの画面を向けてくる。えーっと……?

 

「『Trick or Treat(トリックオアトリート)』だな。いや、普通に読めるだろ……あ」

「ふふっ、今、あなた『トリックオアトリート』って言ったわね?」

「…………」

 

 は、はめられた……だと……!

 

「残念なことにお菓子はないわ。ふふっ、これは悪戯されるしかないわね~あー残念だわー」

 

 あからさまな棒読みで言ってくる彼女……クソ、こんなトラップに引っかかるとは……!一体、どこまで狡猾なんだ……!……はっ、まさか今の今まで『Trick or Treat』と言わなかったのはこのためか……最初からコレが狙いで話を……?彼女が考えた作戦が失敗したと思わせて、油断させたところを一気に突いてくる……最初のは決まればラッキー程度でこっちが本命……クソ!なんて女だ……!

 

(この男は警戒していないとチョロいわね。まぁ、作戦が失敗した時はどうしようかと思ったけど、引っ掛かってくれてよかったわ♪)

 

「……はぁ。すればいいんだろ?」

「えぇ!お菓子を持ってこなかった私への罰ね!」

 

 何で罰という言葉をこんなにノリノリで使えるのだろうか?

 

「分かった……ただ、覚悟しろよ?ちょっと本気を出すからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 約4時間後……

 

「おいしいわね。流石慧人」

「どういたしまして。飲み物は紅茶でいいよな?」

「えぇ」

 

 夕食後、切り分けたケーキを食べる千聖。その姿は何処か上品さに満ちており、いつものアレななりは息を潜めている。そんな彼女を見つつ、紅茶を淹れる。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

 自分の分も淹れて、一息つく。

 

「何から何までやってもらって……何か悪い気がするわね」

「別に、今日ぐらいはいいだろ」

「ふふっ。それとも悪戯が少しやり過ぎたとでも思ったのかしら?」

「あの程度でやり過ぎとは微塵も思ってねぇけど?」

「…………え?」

「というか、やる前に言ったろ?ちょっと本気を出すって」

「…………それ、100%本気を出したらどうなるのかしらね」

「さぁな」

「……ただ、今日の激しさは少し癖になりそうね……」

「お前……本当にマゾヒストとして目覚めているよな……」

「でも、大好きな慧人があんなに激しく求めるから、これは仕方のないことよ」

「はいはい。で?今日も泊まっていくのか?」

「もちろん。それで、この後はどういう予定?」

「もう少し時間経ったら練習しに行ってくる」

「(ピーー)の?」

「サッカーのだ。何でノータイムでそれが出てくるんだよ」

「私だからね」

「納得した」

 

 相変わらず凄まじい説得力だな。いつ何時(なんどき)どういう流れでアレな発言が飛び出しても千聖なら納得だ。

 

「なら私は台本でも読み込んでおこうかしら。外に出たい気分じゃないし……というか、よく体力持つわね」

「現役の運動部舐めんな」

「え?夜の運動部?」

「それだと卑猥な意味にしか聞こえねぇよ」

「えぇ、卑猥な意味で使ったもの」

「……肯定されると何か複雑だな」

「だって、嘘をつく意味はないでしょう?」

「まぁいいや、それまでは宿題でも片付けるか」

「そうね。宿題を片付けようとする慧人の邪魔をするわ」

「いや何でだよ」

「私、さっきまで慧人に遊ばれていた」

「いやお前が言い出したことだけどな」

「今度は私が慧人で遊ぶ番」

「安心しろ。その順番は来ねぇよ」

「ふふっ、待ってて来ないなら強引に行くまでよ」

「はっ、やれるものならやってみろよ」

 

 この後、妨害を受けながら宿題を片付けるのであった。




本当は、紗夜さんverやリサ姐verもおまけで書こうと思ったけど、ハロウィンに間に合わなかったandそもそも千聖さん以外、こっちに登場していなかったので、千聖さんonlyです。
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