天の河原に龍と来たりて 作:KaNDuMe
中編小説くらいのイメージなので、前置きがどうしても伸びてしまって漸くデュエル出来ます。
「ついたぞ。ここで合ってるよな」
「うん。ありがと」
Dホイールから降りてヘルメットを返す。
龍巳の目の前には、先程訪れた特徴的なゲームセンターの姿があった。
「じゃあな。……頑張れよ」
ヘルメットを受け取ると、言葉少なにDホイールは走り去っていった。
小さく息を吐きながら後ろ姿を見送る龍巳の表情は、傾き始めた太陽の所為か、少しだけ影が差しているようである。
「……っよし!」
両手で頬を叩くと、パンっと小気味の良い音が鳴った。
再び目を開けた龍巳の表情は、元の無邪気な笑顔に戻っていた。
「店員さーん! ただ今戻りましたー!」
カードショップの入り口、階段の方から明るい声が響く。俯き気味にカウンターに立っていた店員が反射的に顔を上げると、あの時の少女が手を振りながら歩いてくるのが見える。
「君! 無事だったんだね」
「はい! 盗まれたカード、取り返してきました!」
言いながら鞄を開け、取り返してきたカード達をカウンターに並べる。
「まさか取り返してくるなんて……危ないことしてない?」
「あはは……色々先走り過ぎちゃって、大変な目に遭うところでしたけど……。なんか凄い人達に助けられちゃって」
喜ぶ前に店員は、心配そうな、咎めるような顔で龍巳を見つめた。誤魔化す様に笑いながら視線を逸らす龍巳だが、助けがなければ笑い事では済まなかったことは、彼女も分かっている。
「その……心配かけちゃって、ごめんなさい」
「僕より君のご両親に、ちゃんと事情を説明して謝ると良いよ。でも……本当にありがとう。カード達が無事に帰ってきて、本当に助かったよ」
申し訳なさそうに頭を下げる龍巳に、店員は優しく感謝の言葉をかける。
そして、カウンターに並べられたカードの中から一枚を選び、手に取った。
「これ、持ってって良いよ」
「え!? 良いんですか……ってもうバーコード通してる!?」
龍巳が驚いて目を丸くしている間に、店員はバーコードを読み込ませると、自分の財布の中から表示された金額を取り出し、レジの中に納めてしまった。これではもう、断るわけにはいかない。
「僕と常連さん達からの感謝の気持ちって事で。探してたんでしょ?」
「……わかりました。ありがたく、受け取らせてもらいます!」
大事そうに両手でカードを受け取り、再びそれを鞄の中に戻す。
最後に大きくお辞儀をすると、龍巳は出口に向かって歩き出した。
「また来ますね!!」
「うん。またの来店を待ってるよ」
お互いに手を振り合いながら、彼女は店を後にした。
「~~♪」
傾きかけた夕日に赤く照らされたネオ童実野シティの街を、鼻歌を歌いながら龍巳は歩いて行く。
仕事や遊びを終え帰途につく人々とすれ違いながら、彼女は街外れの公園を目指す。
歩きながら何度も持ち物に間違いが無いかを確認し、その度に会心の笑みを浮かべて小躍りする。小さな子供の様な仕草であるが、不思議と彼女には似合っていた。
そうする内に、目的の公園に辿り着く。
赤く塗られたベンチ座っていた少女が彼女に気づき、顔を上げた。
歩み寄りながら、バッグからカードを取り出し、ニッコリ笑ってみせる。
その絵柄が確認できるようになるにつれ、悲しげだった少女の顔に段々と喜色が広がっていく。
「探し物はこれかな? お嬢さん」
芝居がかった仕草で片膝をつき、龍巳は右手に持ったカードを差し出した。
少女は待ちきれないと言うようにさっとそのカードを手に取り、角度を変え、裏返し、何度も何度も、それが本物である事を確かめる。
そして龍巳に向き直り、晴れやかな笑顔で応えた。
「お姉ちゃん! ありがとう!!」
目に涙を浮かべながら、少女は片膝をついていた龍巳に抱きついた。
そのまま何度も、ありがとうと言葉を繰り返す。
龍巳はその体勢のまま、頷きながら優しく頭を撫でてやった。
やがて落ち着いたのか、少女は言葉を繰り返すのを辞め、身体を離す。まだ目尻に涙の跡が見えるが、明るく笑うその顔に悲しさの影は感じられない。
そしてもう一度、改めて大きくお辞儀をする。
龍巳も笑顔でもう一度頷き、涙の跡を払ってやった。
「見つかってホントに良かったわね! もうすぐ暗くなるし、そろそろ家に帰った方が良いわよ」
「うん! でも……」
そう言って立ち上がると少女もそれに倣うが、すぐに視線を落としてしまう。
「帰り道が、わからないの」
「うえ!? もしかして、探し回って結構遠くまで来ちゃったのかな……?」
旧サテライトの端まで行ってきた龍巳が言うことではないが、それはあり得るのではないかと彼女は思った。
「あ、でも!」
しかし、顔を上げた少女の顔は悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「デュエルしたら思い出すかも!」
「デュエル? あ、なるほどね!」
それを聞いて、龍巳は納得した。折角無くしたカードが手元に戻ったのだから、完全になったデッキでデュエルがしたいと考えるのはデュエリストとして当然のことである。
「この子もきっと、そう言ってるから」
そう言って、龍巳の探してきたカードを見つめる。緑色の瞳のような模様をあしらった、青い翼で織られた和装を纏う女性のカードである。
「そっか。そういうことなら、おねーさんがもう一肌脱いじゃいましょうかね!」
日の傾きを見て、まだ幾らか余裕がありそうな事を確認する。龍巳はバッグからアカデミア仕様のデュエルディスクを取り出し、左手に装着した。
「ありがとう! お姉ちゃん大好き!」
少し距離を取った少女が振り返ると、その左腕にもデュエルディスクが装着されていた。
(あれ? あの子、あんなの持ってたかな?)
龍巳は少々首を捻ったが、互いのデュエルディスクは正常に相手を認識していた。
「準備は良い? お姉ちゃん!」
少女の声に顔を上げると、既にその左腕は水平に構えられ、右手には五枚のカードが握られている。
「っとと、余計な事考えてる場合じゃないわね。いつでも大丈夫よ!」
龍巳もデュエルディスクを構え、カードを引く。デュエルディスクが状態を確認し、ライフポイントが表示された。先攻後攻がランダムで決定され、全ての準備が整う。
「それじゃ行くよー!」
「ええ! 来なさい!」
「「デュエル!!」」
「私のターンからね!」
先攻に選ばれたのは龍巳。
「手札の太古の白石を捨てて、ドラゴン目覚めの旋律を発動! デッキから攻撃力3000以上で守備力2500以下のモンスターを二体まで手札に加えることが出来る。私が加えるのは、青眼の亜白龍と青眼の白龍の二枚よ」
低い音色が夕焼けの空に響き渡り、龍達の咆吼がそれに続く。
「そして青眼の亜白龍は手札の青眼の白龍を相手に見せることで特殊召喚する事が出来る。来なさい、青眼の亜白龍!」
大気を揺るがす咆吼と共に、白き龍が舞い降りる。白く輝く鱗に青き光を湛えた巨龍の姿は、恐ろしくも美しい。
「青眼の亜白龍……!」
「ふふ。気に入っちゃった?」
「うん!」
その雄々しき姿に見入る少女は、龍巳の問いに怖じることなく嬉しそうに頷いた。
「それじゃ、まだまだ行くわよ。手札からチューナーモンスター、ジェット・シンクロンを通常召喚!」
続いて現れたのは、ジェットエンジンに手足を生やした機械族のモンスター。炎の尾を引きながら現れたそれは、更に速度を上げるとその身を光の輪へと変える。
「レベル8の青眼の亜白龍に、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング!」
続いて青眼の亜白龍も自身の姿を八つの星に変え、光の輪がそれを包み込む。
「穢れなき白の翼、聖なる青の御霊を宿し、光の霊堂より現れ出でよ! シンクロ召喚!」
光の柱が光の輪を貫き、閃光が空を照らす。
「来なさい、青眼の精霊龍!」
光の中から、新たな白き龍が舞い降りる。その神々しい姿は、少女の目にはどこか優しげに見えた。
「この子には色々効果があるんだけど、今回はこれね。青眼の精霊龍の効果発動! シンクロ召喚したこのカードをリリースすることで、エクストラデッキからドラゴン族、光属性のシンクロモンスター一体を守備表示で特殊召喚する。私が召喚するのは、閃珖竜スターダスト!」
青眼の精霊龍の姿が、透き通るような嘶きと共に夕焼けの空に溶け込んでいく。その嘶きは、新たな光の竜を呼び覚ました。
「折角シンクロ召喚したのに、レベルの低いモンスターに交換するの?」
少女はその行動の意図が分からず、小さく小首を傾げた。
「まぁまぁ、見てなさいな。墓地のジェット・シンクロンは手札一枚を捨てることで特殊召喚することが出来る。手札のダークストーム・ドラゴンを墓地に捨てることで、ジェット・シンクロンを特殊召喚! さて、それじゃあもう一度行くわよ! レベル8の閃珖竜スターダストに、レベル1のジェット・シンクロンをチューニング!」
ジェット・シンクロンはもう一度その身を光の輪へと変え、閃珖竜スターダストの身体を包み込む。
「シンクロ召喚! 浮鵺城!」
光の中から現れたのは、空に浮かぶ巨大な石の城。巨大な姿に目を丸くする少女は、その城がもう一体の龍を伴っていることに気がついた。
「浮鵺城の効果発動! シンクロ召喚成功時、墓地のレベル9モンスター一体を特殊召喚することが出来る。私が特殊召喚するのは、青眼の精霊龍!」
次第にその姿がはっきりする。透き通るような白き龍は、青眼の精霊龍に他ならない。そしてこれで、フィールドには。
「レベル9のモンスターが二体……!」
「そーいう訳よ! 私はレベル9の浮鵺城と青眼の精霊龍の二体でオーバーレイ!」
宣言と共に、龍巳の前に黒い渦が現れた。浮鵺城と青眼の精霊龍はその身を黄金の光へと変え、その中へと飛び込んでいく。
「悪意纏いし混沌の翼、真理の闇を御霊に宿し、深淵の底より現れ出でよ! エクシーズ召喚!」
溢れた光を闇が塗りつぶし、邪悪なる咆吼が轟き渡る。
「来なさい! 真竜皇V.F.D!!」
現れたのは、闇を纏った黒き竜。その姿は正に悪魔のそれでありながら背に生えたわざとらしいまでに白い天使の翼は、己が世の全てであると誇示しているかのようでもある。
「青眼の白龍と違って、ちょっと怖いね……」
「うーん、確かに雰囲気はちょっと合わないかしらね……。まぁ、とりあえずこれでエンドフェイズに移行するわね。そしてこのエンドフェイズ、墓地に送られていた太古の白石の効果を発動! このカードが墓地に送られたターンのエンドフェイズ、デッキから「ブルーアイズ」モンスター一体を特殊召喚出来る。来なさい! 深淵の青眼龍!」
黒き龍の傍らに、四枚の翼を湛えた白銀の龍が舞い降りた。真竜皇V.F.Dが悪魔なら、こちらは正に天使の装いである。そして舞い降りた白銀の天使は、柔らかな咆吼と共に眩い光を放つ。
「特殊召喚に成功した深淵の青眼龍の効果発動! デッキから儀式魔法か融合を手札に加えることが出来る。私は高等儀式術を手札に加えるわ。更に深淵の青眼龍の効果発動! 自分のエンドフェイズに一度、デッキからレベル8以上のドラゴン族モンスター一体を手札に加えることが出来る。私はレベル8のブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴンを手札に加えるわ」
光は彼女のデッキに宿り、二枚のカードとなって龍巳の手札に加わった。
「これでターンエンド。お嬢ちゃんのターンよ!」
少女 手札5 LP8000
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龍巳 手札4 LP8000
深 深淵の青眼龍
真 真竜皇V.F.D
それにしても、こんな鬼畜な初手で本当に良いんだろうか……?