ついに迎えたメイクデビュー当日、中山競馬場はあいにくの曇天だが熱気が渦巻いていた。サクラバクシンオーは見事一番人気に推され、パドックでのパフォーマンスも上々。普段のトレーニングと変わらない雰囲気にたまらずトレーナーは溜息を漏らす。初めてのレースでここまで落ち着けるウマ娘はそういない。
各ウマ娘がゲートに入り、一瞬の静寂の後でゲートが開く。ここから先にトレーナーにできることは祈ることと信じることだけだ。
まずは全員そろってきれいなスタートを切る。何人かのウマ娘は浮足立っているのか我先にと先頭集団へ飛び込み、必死に自分自身を主張している。対してサクラバクシンオーは作戦通りに無理に一番手は狙わず、先行策をとる。スタートから400メートル。サクラバクシンオーは3番手だ。
「いけええええ!! バクシンオー!!!!」
トレーナーが声を張り上げる。その声が届いたのかどうかは定かではないが、サクラバクシンオーは大きく息を吸い込む。
「勝利に! 向かって!!」
600メートルを通過し、一歩踏み出すごとに加速していく。
「バクシーン!!!」
まるで風と一体化したようなその加速に、たまらず2番手のウマ娘、バイトアルヒクマは背後を振り返った。サクラバクシンオーは口を真一文字に結び、ただゴールだけをまっすぐに見つめる。普段の緩やかな、ともすればどこか抜けたような雰囲気からは想像できないほどの凍てついた瞳に彼女は大きく目を見開くと背後から吹き抜けた風を、サクラバクシンオーの背中を見た。
「負けるもんかぁぁぁ!」
コーナーを抜けて残り400メートル。サクラバクシンオーと1番手のウマ娘、セントスターラインが横に並ぶ。互いに譲らず、そのまま100mほど走る。中山の直線は短い。
「私が! 私が勝つんだ!! 勝たなくちゃいけないのに!!」
残り200メートル。残り100メートル……。
サクラバクシンオーは両足に渾身の力を籠めて地面を蹴る。頭一つ、半バ身、1バ身抜け出す。
「むーりいいいいい!!」
残り50メートル……!
サクラバクシンオーは完全に抜け出し、ペースを落とすどころかそのまま加速しながら一着でゴールへと突っ込んだ。
2着と2バ身差の圧勝で、サクラバクシンオーは初勝利を飾った。
「よし! 良いぞバクシンオー!!」
トレーナーはガッツポーズをする。サクラバクシンオーはトレーナーに向けて大きく手を振り続けた。
「バケモノだ……」
ぽつりと、そんなつぶやきが聞こえた気がした。
方向性どうしましょうか?
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シリアス
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ほのぼの