サクラバクシンオーの夢を叶えさせたい   作:喜多見 健

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バクシン的祝勝会

 メイクデビューの快勝の夜。トレーナーとサクラバクシンオーはささやかながら祝勝会を開く。食堂の一角を使わせてもらっているのはこの光景を目にするウマ娘に「みせつけてやる」ためだ。

 

 「見ろよ。短距離でこんなにも強いウマ娘がいるんだぞ」と。

 

 そんなトレーナーの思惑は、サクラバクシンオーは微塵も気づかないだろう。いつものそそっかしい所作からは想像できないほど繊細に、ていねいに食事を進めている。箸の持ち方が美しい。

 

「トレーナーさん、食べないんですか?」

 

 口の中を空にして、それでも口元に手を当てて言葉を続けるサクラバクシンオー。普段の豪快な様子とは裏腹に、彼女は相当育ちが良いのかもしれない。

 

 ぼんやりとそんなことを考えながらトレーナーはこの「祝勝会」で口にしたものを思い出す。

 

 水。それにニンジンハンバーグの付け合わせの野菜を数欠片。腹は減らない。

 

「気にするな」

 

 トレーナーはにこりと微笑み、サクラバクシンオーを見つめる。彼女も深く考えることはなく、食事を進めてゆく。

 

 食事の最中にもさまざまなトレーナー、ウマ娘がサクラバクシンオーや片岡トレーナーに声をかける。ほとんどは祝福の言葉だったが、中には悔しさをにじませるウマ娘もいる。特に2番手につけていたセントスターラインは彼女を見るなり歯を食いしばって食堂を後にするほどだ。

 

 勝つからにはそれ相応のことが起こる。それはトレーナーも知っている。そして、負けた時にそんなことをさせないということも、トレーナーが教えるべきことだと片岡は考えている。

 

 片岡トレーナーの予定では、まずはスプリンターズステークスを制し、そのあとに有馬記念でスピードとスタミナにものを言わせて先頭をもぎ取る。考えていることを言葉にしたら、聞いた全員が「無理だ」というだろう。

 

 短距離専門のウマ娘に長距離を走らせるなんて、狂気の沙汰以外の何物でもない。

 

 でも、トレーナーが信じてやらなかったら一体だれが信じられるのだろう?

 

 目の前の無垢に、無邪気に、理想を口にする委員長の夢を叶えたい。

 

 それが片岡トレーナーが彼女のトレーナーになった理由なのだから。

 

 やるべき方法は見つけてはいない。でも、出る前にあきらめるなんて論外だ。やってみなくちゃわからない。

 

 

「バクシンオー、ハンバーグ少しもらっても良いか?」

 

「もちろんです!!」

 

 腹は減らないが、少しだけ口元がさみしくなった。

 

 片岡トレーナーはサクラバクシンオーが大きく、豪快に切り分けたニンジンハンバーグにひきつった笑みを浮かべた。

方向性どうしましょうか?

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