オペレーターとポケモンたちの日常。
 短編集一覧
①『ピカチュウ。俺に十万ボルト』
②『ピッピと真銀斬』
③『ゴーストタイプとファントム』
④『カクレオンとイーサン』
⑤『サーナイトとオーキッド』
⑥『ライン生命〜シルバーアッシュのテンジンはポケモン説〜』
⑦『メタモンとマネネ』
⑧『トゲキッスとエリジウム』
⑨『ジガルデとアレーン』
⑩『マルマインとWとサーマル大明神』
⑪『クルビアにミュウツー襲来!?〜つづく(続きません)〜』

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 既に誰かがやっていそうなネタです。
 続かないです。
 ※7/8ソーンズ・エリジウム・トゲキッス/アレーン・イグゼキュター・ジガルデのエピソード追加。
 ※7/11W・マルマイン・サーマル―EXのエピソード追加。


夜明けの騎士と獣たち(アークナイツ×ポケットモンスター)

 ポケットモンスター――縮めてポケモン。

 鉱石病(オリパシー)、災害、テロリズム。様々な困難に見舞われる世界(テラ)に未知の生物が突如、大量発生した。

 事態を収束したのは『ライン生命』――予め予想していたかのようなその動きは、様々な憶測を呼んだ。

 

 ライン生命が開発したモンスターボールによって、ポケモンたちはテラの住人の所有物になることが位置づけられたのである――

 

 

 

「ピカチュウ。俺に十万ボルト」

「ピッ!? ピカピ……?」

 

 突飛なエアースカーペの命令に黄色い電気ネズミ、ピカチュウは混乱した。

 

「なぜ、しない……?」

「いやいや、主人に危害を加えないように躾られてるからね?」

「それはそうか」

 

 耳が垂れる程、首を傾げるエアースカーペに正論を突っ込むレオンハルト。

 

「じゃあ、お詫びに枝豆(これ)を……」

 

 彼の大好物、皮付きの枝豆を差し出すが――

 

「ピカァ……?」

「うん。こんなの貰っても困っちゃうよね」

 

 不思議がるピカチュウに、コータス族の少年は二ヒヒと笑う。

 

「なんでだ……?」

 

 

 

「ピッ、ピッピッ、ピッ!」

 

 真銀斬を放つシルバーアッシュの真横で、交通整備の警備員のように、ピッピは指を振る。

 可愛らしいピンクのポケモンから放たれるのは、相手を切り裂く斬撃の猛吹雪――真銀斬。

 

「ふむ。ポケモン――というのは空恐ろしいな。可能性を見抜いた我が盟友の慧眼には感謝せねばな……」

「……ふん」

 

 シルバーアッシュと対になるように配置されたエンカクは、戦士の技がコピーとして利用されることが不快なようで、先程から不満げだ。

 

「『勝てれば良い』……あいつの考えそうなことだ」

 

 一人言を呟きながらも、重装オペレーターを抜けてきた敵を颯爽(さっそう)と処理する。

 

「俺は、気に食わんな……!」

 

 その目はピッピではなく、後方に居るであろうドクターを据えていた――

 

 

 

 ロドスの闇。誰も訪れないであろう倉庫。その物陰。

 ファントムはそこに居る。

 

 ゲンガー、サマヨール、ジュペッタ――ゴーストタイプの憩いの場と化していた。

 医療オペレーターからは、ファントムの居場所が以前より分かりやすくなったと一部、好評である。

 

「ふむ、私の影が濃くなってしまったな……」

 

 それらを羨ましげに眺める一匹。

 

「……おいで」

 

 ファントムに招かれ、姿を見せたミミッキュが弾みながら近寄ってくる。

 黒猫のミス・クリスティーンは闇の囁きが騒々しいと、迷惑そうに二つの尾を揺らして背を向けた。

 

 

 

「ドクター、どーっちだ?」

 

 目には見えない何かがドクターの頭に被さっている。候補は二つ。

 ドクターが答えてすぐ、重みからは解放された。

 

「ざんねーん。カクレオンでした。じゃ、このお菓子貰ってくな」

 

 迷彩化を解いたイーサンとカクレオンは兄弟のようにはしゃぐと、あっという間に消えて見えなくなる。

 お菓子は実際に消えて無くなってしまったようだ――

 

 

 

「……あ。……ん。あら。ありがとうサーナイト。察しが良くて助かるわ」

 

 事務室で黙々と作業するオーキッドに差し伸べられる救いの手。先を読み、オーキッドにペンや付箋を手渡し献身する姿は実にエスパータイプらしい。

 

「俺のやることがなくなったけどね?」

 

 サーナイトへのお礼に反論するのは、仲間の様子を見に来たミッドナイトだ。勿論、冗談である。

 

「俺からもありがとね、お嬢さん」

 

 照れる仕草をしたサーナイトから神秘的な鳴き声が漏れる。白いスカートが揺れ、嬉しそうだ。

 

「……ポケモンも範囲内なの? さすがの私も引いたわ。邪魔するなら帰って頂戴」

「つれないねぇ。え……その、ストライクって訳じゃ……いや、女性扱いしてない訳ではなく――」

 

 必死に弁明するミッドナイトを無視して仕事を続けるオーキッド。

 二人の様子をサーナイトはクスクスと笑っていた。

 

 

 

 ポケモンがロドスの一部になるまで当然、一悶着あった。

 ポケモンを作戦に組み込む計画を押し進められたのは、シルバーアッシュのおかげであり、彼の相棒――テンジンがポケモンの有用性を示した。

 一度、『シルバーアッシュのテンジンはポケモン』説が流れた程である。

 ポケモンの遺伝子構造を知り尽くしているライン生命には、回りくどい文章で徹底的に否定されたが。

 

 ポケモンを戦いの道具とすることを最後まで断固反対していたのは、サリアであった。

 しかし、鉱石病に罹らない特性。

 次々と人間たちの都合で処分されるポケモン。

 

 諸々の事情が重なって彼女はポケモンを保護しただけであり、決して意見を変えた訳ではないことは、忘れないように。

 

「バンギラス。岩雪崩でルートを封鎖しろ」

 

 怪獣の如き咆哮をあげて、何処からともなく岩の雪崩が敵に降り注ぎ、憎悪も悲哀をも呑み込んだ。

 

「ハッサム、ドローンにシザークロスだ」

 

 サリアの指示で高く舞い、ハッサムは自慢の鋏をドローンへ伸ばす。墜落したドローンの部品が無残にも地面へ散らばった。

 

「よし。作戦通りだ。よくやった」

 

 盾の構えを維持したまま、淡々と礼を告げるサリア。強面の二匹は――頼もしい主の背中に微笑んだ。

 

 

 それらの光景を映像で見ていたサイレンス。

 ポケモンと人間の見事な連携に感動さえ覚える。

 

「ホー?」

「……私は大丈夫。私よりも……いえ、貴方には関係のないこと。でも、貴方たちの――鉱石病に罹らない特性さえ、読み解ければ――」

 

 暗い顔をしていたサイレンスの様子を伺うホーホー。

 

「イフリータは今、何をしているんだろう……」

 

 過去は暗く、どこまでも。

 

 

 その頃、イフリータは――

 猛火の使い手であるイフリータは、炎タイプのポケモンにリーダーとして認められていた。否、微笑ましい者を見るその眼差しは保護者のようでもある。

 

「よーし! オレサマの所に全員、急いで集合!」

 

 ギャロップにキュウコン、威厳ある炎ポケモンが少女の周囲に集い始める。

 その様子を楽しそうに眺めるロコンとスズラン。

 

「楽しそうです。ロコンも行ってきたらどうですか?」

「コンッ!」

 

 つぶらな瞳は主人のスズランを見つめた。喜びの声で鳴くと、仲間の元へ大はしゃぎで駆けていく。

 

「へへっ、くすぐったいぜ」

 

 様々なポケモンに頬ずりされて、イフリータは満更でもない。

 和やかな光景に影が差した。

 

「あー! いいなー! 私も混ぜてよー!」

 

 それらに気付いたブレイズが駆け寄ってくる。エリートオペレーターである彼女の実力を本能で感じ取ったのか、ポケモンたちは名残惜しみながらもイフリータとブレイズから距離を取る。

 

「おい! こわがってるじゃねーか! 無駄にビビらせんなっつーの!」

「えー!? 私、何もしてないよ! まだ!」

 

 ポケモンたちが一気に居なくなったことで、イフリータの機嫌は急降下して、最悪だ。

 

「……ふん!」

「ごめーん、って! 機嫌直して! お願い!」

 

 その()、イフリータが『彼女の奢り』に釣られるのは言うまでもない。

 

 

 

 レユニオン側に強力なサルカズの傭兵が現れ、ロドス一行は苦戦していた。

 

 その流れを変えたのは――メタモン。

 姿を変え、強敵そっくりの姿に変身する。能力も何もかもが一緒だ。

 

 ただ一つ違うのは、頭脳。

 ドクターの指示通りに戦う姿は、猛威を振るった――

 

 

 

 小さく可愛らしい物真似(マイム)ポケモン、マネネがフロストノヴァの前に立ち塞がる。

 

「こんな生き物で何が――」

「マネネ!」

「――できる?」

 

 氷アーツの第一波を耐え凌いだマネネが果敢(かかん)に、フロストノヴァのアーツを真似る。

 

「――くっ! ポケモンにこんな力が……!?」

 

 寒波の中、戦いは続く――

 

 

 

「お前のポケモン大きくなったな」

 

 珍しくソーンズの関心が、エリジウムのトゲキッスに向けられた。飼い主に似たのか、破顔したトゲキッスが羽ばたいてソーンズに突進していく。

 

「……おっと」

「――えー、やっと気付いた? そうなんだよ。この前進化してね。何で進化したかは知らないけど、ソーンズなら分かる? でね――」

 

 避けた先にはエリジウムが待ち構えていた。

 話しかけたのは失敗だったかと、エリジウムの話を聞き流しながら後悔するソーンズ。

 

「トゲピー、トゲチックと来てトゲキッス。一体誰がこういう名前をつけてるんだろうね――ん?」

 

 甘えてきたトゲキッスをソーンズが穏やかな表情で撫で回していた。

 

「なんだ。ポケモン好きなんじゃん」

「何故か、俺にだけ許可が下りないんだ」

「え――?」

 

 ソーンズが果たしてポケモンの面倒を見れるのか。今も物議を醸している。

 

 

 

「ジガルデってポケモンが僕に似ているらしいけど、本当かな……」

 

 端末を操作してアレーンは自身に似たポケモンを探す。

 ジガルデ――秩序ポケモン。ドラゴンと地面タイプ。

 

「え……色んな姿があるんだけど。どれが僕と似てるって?」

 

 論文を読み込むのも苦ではないが、今はそのような気分ではない。

 適当に読み流したアレーンはこう結論付ける。

 

「僕に似ているっていうより、僕の服? アーツが多少似通っているってところだね」

 

 先程よりも興味を無くしていたが、別の興味が湧いてきた。

 

「ふーん。どうすれば飼えるんだろう……。センセーなら、なんとかできるよね。きっと」

 

「その『センセー』がドクターのことを指すのであれば、ドクターに負担をかけるような『お願い』は到底、見逃せませんね」

 

 アレーンの背後から、イグゼキュターが顔を出す。

 

「うわっ、出た。あんたはポケモンとか飼わないの? まあ、飼えないよね」

「分かっているのであれば、何故質問したのですか? いえ……」

 

 イグゼキュターがポケモンを飼わない理由は分かりきっている。その優しさ故だろう。今も意地の悪い質問をしてきたアレーンに、素っ気なく接してしまったと少々、後悔している。

 ただ、切り替えは早い。

 

「ジガルデは伝説の部類に入るポケモンだと、私でさえ知っています。他のポケモンをドクターに頼むのはいかがでしょうか?」

「……分かってるよ。それぐらい」

「分かっているなら、何故――」

 

 理知的な瞳に見つめられ、アレーンは居心地が悪い。イグゼキュターの返事を待つことなく去っていく。

 

「行ってしまいましたか。……任務の途中で拾ったポケモンについて、相談したかったのですが……」

 

 イグゼキュターの懐で小さいポケモンが鳴き声を上げた。

 

「……はい。今すぐあなたの飼い主を見つけてみせます……」

 

 

 

「ポケモンって、バカねぇ。あたしのために『死ね』って命令しても、なつくんだから」

 

 転がってきたニヤケ顔のマルマインがWに擦り寄る。Wは玩具のようにコロコロと転がし、マルマインは目を回した。

 

「それは――! ドクター様のように! W様もお分かりに――!!」

 

 小節(こぶし)を利かせた情熱的で暑苦しいボイス――の持ち主サーマル―EXがWの横を通り過ぎた。

 それは最早、一種のつむじ風。Wの髪とスカートを揺らす。

 

「何今の」

 

 ()の後を追いかけるメイヤー、クロージャの必死な形相を見る限り、改造が失敗したのかサーマル―EXの機動力が暴走しているようである。

 

 非常に短い言葉であったが、サーマル―EXが何を伝えたかったのか――察しの悪いWではない。

 

 揃いも揃って高尚な精神と目的を持つロドスのオペレーターにWが含まれるのは不本意ではあるが――

 

 我々オペレーターは覚悟を持って戦地に赴く。後方に待機するドクターに命を預けて。

 感染者も非感染者も所詮は同じ()()だ。信頼、期待、悲願に応え続けるドクターに嫌悪を向け続けるのは難しい。

 

 忘れてはいけないというのに。

 未練も因縁も無い存在が妬ましい。

 もし無かったら――

 

 あの()に入れただろうか。

 

 それこそ――

 

「馬鹿馬鹿しい……」

 

 今にもWの憎悪は爆発しそうだった。彼女は放つ。

 後悔という感情を。

 

 

 

 ポケモンと人の営みから離れ、ドクターとアーミヤは向かい合っていた。

 

「ドクターはポケモンについて、どう思っていますか?」

 

 アーミヤの質問は不明瞭で、その瞳は何の感情も映さない。

 

「責めている訳じゃありません。ドクターの考えが知りたくて――」

「アーミヤさん! 緊急です! クルビアの研究所が――」

 

 会話を遮ったのは飛び込んできたオペレーター。ミュウツーを名乗るポケモンがクルビアを襲撃しているという。

 

 アーミヤはオペレーターの報告を聞くと、ドクターの方へ振り返る。

 

 

「どうしますか?」

 

 Dr(ドクター)――――――――。




 最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。機会があれば、またよろしくお願いします。


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