【Caligula-カリギュラ- RE:covered】 部員ルートRTA 8:02:57 【完全犯罪チャート】 作:佐渡ヶシマシマ
初めまして。お手紙を拝見しました。
まずは、ご心配してもらってありがとうございます。まさか誰かに拾われるだなんて、思ってもいませんでした。次から気を付けたいと思います。
重ねて失礼ですが、今私は訳あって、この手紙を直接お渡しすることができません。とても失礼ですが、あなたに倣ってこうして置き手紙にさせていただきます。ごめんなさい。
今回折り返しのお手紙を書かせていただいたのは、文通のお誘いについてお話しするためです。
正直に言うと、私は不安です。
私には、悩みや迷うことが多くあります。
多くの失敗をしたし、多くの間違いを犯しました。
それに、私は多くのものを嫌い、憎んでいます。
だから私は、私がまた間違ってしまうのではないかと不安で仕方がない。
ですから、こんな私とやりとりをして、親切なあなたを傷付けるようなことがあったら怖いのです。
ですが、こんな私とでもやりとりをしていただけるというのでしたら。
また、ここに手紙を置いていただけると、嬉しいです。
□ □ □
謹復
五月も下旬に入り薫風に初夏の気配が混ざりはじめたこの日、お変わりなくお過ごしでいらっしゃいますか。私は変わりなき日々を過ごしております。
先ず、こうしてお返事いただけたこと。
そして、このように姿も見せぬ身相手でありながら、差し出がましいお願いを真剣に考えてくださいましたこと。どちらも、感謝の念に堪えません。
お手紙を拝見する中で、何か大変に悲痛な想いを感じました。
土足でそのお心に踏み込む真似をしたこと、大変申し訳ございません。
しかし。
懺悔を致します。
私は、あなたが仰るような慈悲深い善人などではありません。
親不孝者の臆病者であり、何より無能者なのです。
己の愚劣や無知浅学に幾度となく苦しみ、そして繰り返し過ち、深く世界を憎んでおりました。
お恥ずかしながら、その傷は未だ癒えてはおりません。
もしあなたもまた苦しんでいるというのであれば、どうか救いがあってほしい。
傷口に澱を流し込まれるようなこの苦痛を味わうのは、私だけでよいのです。
自分の言葉が相手を傷付けるのが不安なのは、私も同じ思いです。
しかし私が傷付けられることはありません。辛く、苦しい人の嘆きを、罵倒とは思いません。
私の浅慮な言葉や思惑でお心を煩わせることがありましたら、その時点で手紙は破り捨てていただいても構いません。
ですがもし、何か辛く苦しく、そして他に打ち明ける宛のない澱がありましたら。
私の事を木霊と思い、存分に吐きかけてくだされば幸いです。
長々とお目汚し失礼いたしました。
六月ともなれば気温の変化もあるかと思われます。何卒ご自愛専一にお過ごしくださいませ。
――――敬答
□ □ □
部長と一緒に戻ってきた部室。
昨日見つけた手紙の返答を読みながら、私は胸が締め付けられるようだった。
親不孝者。臆病者。
手紙の先の人物が語るそれは、まるで自分の事を言い当てられているのではないだろうかと思うほどに、その境遇には近しいものがあったから。
ボールペンで書かれた丁寧な文字。けど、確かに少し形が崩れて、力の入った文字。前回と今回、どちらも通して精緻な文字は機械的で平静なのに、この言葉だけが唯一といっていいくらい感情的で。
その後悔の重さが、切ない程に伝わって。
「ん~? 彩声、なに読んでるの?」
「わっ、見ちゃダメ!」
後ろから覗き込んでいたアリアにも、気付かなかった。
「なになに、もしかしてラブレター?」
こういう話にアリアは無邪気に踏み込んでくる。それを鼓太郎先輩とかは鬱陶しがっているみたいだけど、私は愛嬌と好奇心を余り嫌いになれない。
というか鼓太郎先輩はいちいちカリカリしすぎなんだ。助けてやるとか偉そうなことを言うくせに自分から手を出すような真似を頻繁にするし、言葉と行動が噛み合ってない。ほんと男ってどうしてすぐに力を誇示するような真似をするんだろ、ほんとバカみたい。
「ひぇ! あ、彩声ごめん! そんなに怒るなんて思ってなかったんだよー!」
「え? ……あっ、違う違う! アリアに怒ったわけじゃないよ!」
いけない。つい脇道にそれた思考。
また、やってしまった。
「アリア、彩声、大丈夫?」
そんなやり取りの中で自己嫌悪に陥った私に、すっと話しかけてくれる部長。
私の怒りの表情で委縮してしまったアリアにも気遣いをしながら、私にも気を向けてくれる視野の広さと心の深さに、この帰宅部に入ってから何度も救われている。
だから、彼女たちにも話をすることにした。
私が飛ばした紙飛行機の事は伏せて、ただ偶然落とし物を拾ってくれた顔の知らない相手と、奇妙な縁で手紙をやり取りし始めたのだ、と。
するとアリアは渋い顔をする。
「ねえ、それ本当に大丈夫なん? 向こうがどんな相手かわかんないんでしょ? 男とかだったらどうする?」
確かに。そうかもしれない。
そう考えると、怖いけど。
「……でも、多分いい機会なんだと思う」
きっと、それでも。いや、それなら余計に。
私はこの手紙のやり取りを続けてみるべきなんだ。
私が現実に向き合うためにも、きっと。
「今の彩声、すごく素敵な顔をしてる」
面と向かって。部長は、私にそう言った。
「ふぇ、ええっ!?」
「キャー! you突然大胆過ぎー!!」
「?」
思わず素っ頓狂な声が出る私。黄色い悲鳴を上げるアリア。首を傾げる部長。
「ぶ、ぶぶぶぶ部長、今のそれどういう意味で」
「前を向いて決意したみたいな、澄んだ綺麗な顔をしてた。その手紙の事はわからないけど、でも彩声が考えがあって選択したことだってわかったから。質問するより、応援したいなって」
何か、変なことを言ったかな、と。困ったように微笑する彼女に、アリアと私は顔を見合わせて頷く。
部長は、きっと純粋だ。
きっとこういう勘違いしそうなセリフを、誰にでもすっと言ってしまいかねない。
特に部長にやたら距離の近い棹人とかに。
私は部長に、何度も何度も助けてもらってる。たったいまの言葉も、私の事を応援してくれるって言葉は心の支えになった。
だから、その代わりと言っては何だけど。彼女の事は、私が守ってあげなくちゃ。
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