【Caligula-カリギュラ- RE:covered】 部員ルートRTA 8:02:57 【完全犯罪チャート】   作:佐渡ヶシマシマ

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Another:Ⅻ 謎解き

 シーパライソのテーマパーク。これまで来ていた図書館とか、温泉とかとはまた雰囲気の違う場所だ。純粋に、楽しそうだという気持ちが先に立つ。

 テンションが上がって、副部長とかを引っ張って記念写真を撮ったり。美笛ちゃんにチュロスを分けてもらったり。鼓太郎先輩と彩声ちゃんのバトルの様子を収めて、また副部長に心配されたり。そして本当に鼓太郎先輩と彩声ちゃんの喧嘩が始まりそうなのを棹人くんが慌てて抑えに行って。

 

 ――今回のイベントのためのアトラクションだというピラミッドも、ネットやgossiperで見る写真よりも遥かに迫力があってびっくりした。入場にスタンプを押されたりするのも、みんなで並んでいる間に話したりしたことも、本当に楽しくて。

 ああ、青春してるーっていうか。

 本当に、ドラマとかアニメとかのワンシーンみたいで、すごくワクワクした。

 

 でも、副部長は。棹人くんは、まるでそうじゃないみたいなのが気掛かりだった。

 楽士の梔子、って名前が出たときから、なんだか何かをずっと気にしてるみたいで。

 部長もそう思ってたのか、棹人君に話しかけてたけど、そしたらすぐにいつもみたいに笑ってたけど、どうしても心配で。

 

 今回あたしは、できる限り棹人くんの近くにいることに決めた。

 

 

 イベントが始まってすぐに、棹人くんが皆の足を止める。

「皆さん、さっきの額のスタンプの事ですが……」

 彼曰く、先程のマークは恐らく邪神の印だ。設定として語られた邪神というのは、触手のタコやイカみたいな姿で現されることが多く、予想が当たっているのだとしたら自分たちの存在は既に楽士に露見している、と。

 

「これまでみたいにドンパチやる羽目になるかも、ってことか。うまく潜入したつもりだったんだが……」

 笙悟先輩はやれやれ、といった様子でそう口にする。

 なんとなくみんな楽しめる感じではなくなってしまった、のかと思ったけど鼓太郎先輩は未だにテンションが高い。でもそれにつられて、みんなの空気も元に戻った。

「それにしても、詳しいのね。ちょっと意外かも?」

 話題を変えるように琴乃さんがそう口にする。確かに、普段の棹人くんからはあんまり想像できない。ムー大陸とか、そういうのにロマンを感じるのだろうか?

 

「子供のころにやったボードゲームに、こういう設定があったのを思い出しただけです。今回、謎解きじゃ役に立てそうもないので」

 そう言って、棹人くんは肩を竦めた。

 

 

  〇 - 〇  〇 - 〇  〇 - 〇

 

 

 

 SNSをやっている時間が少なくなったけど、でもスマホは触ってないと落ち着かないあたしが、部長のすすめで初めてみた自作小説の投稿。

 

 キャラクターの言葉を考えるなんて楽勝だと思ってたけど、全然違った。

 言わせてるだけの台詞は、自分で見てもつまらない。

 だから帰宅部をモチーフにしたノンフィクション風な話に舵を切った。帰宅部として多くの時間を過ごしたみんなの物語は、面白い程に筆が進んだ。

 

 その中には当然、棹人くんをモチーフにしたキャラクターも出す。

 けど棹人くんが合流してくるシーンの手前で、私のお話は止まっている。

 

 書きたくない、わけじゃない。

 書けないんだ。

 

 

 ぶっちゃけ、彼は帰宅部に入る前からクラスの有名人だった。

 高校生である以上、誰々がイケメンだとか、誰々と誰々が付き合ったとか、そういう話題は女子の中では鉄板にウケがよかったし、私もバズるためにリサーチをした。彼はその中でよく話題に上がったんだ。

 

 2年7組、斑鳩棹人。スポーティーな黒髪のアップバング。甘めだけど掘りがしっかりした顔立ちの、ミステリアスな雰囲気があるイケメン。特に目元がハッキリしてるから余計にミステリアスさというか影というか、雰囲気がスゴい。それが笑って細まった時なんかもう、ヤバい。頻繁に喋ってるあたしもたまにヤバい。

 体つきはスラっとしてるんだけど、近くで見ると結構筋肉がある。でも、体育の授業はいつも欠席してたのも噂になってた。――今となっては、納得するほかないけど。

 

 色々手伝ってもらったり、困ってる時に助けてもらったって子が多くて、その度に「私の事気になってるんじゃないか」って言う子が多くて、その度にちょっとした火花が飛び散ったりして。

 棹人くんのことを知らないときは罪作りな奴だなぁ、とは思ったけど、今はその子たちの気持ちがわからないこともない。

 そりゃあの容姿で微笑まれながら「大丈夫?」なんて言われたら勘違いもするわ! って。

 

 でも。

 

 多分、彼は善意でやってる。下心なんて一切ない。

 だから、私は間違えちゃいけない。そう思えている。

 

 

 ……思えば、あの時。

 温泉での待ち伏せ作戦。一人で、二条院静華と覗き楽士を倒した時も、そうだった。

 知らない間に一人で戦って、知らない間にボロボロになって。

 

 心配する私たちが無事か気にするような彼に、下心なんてあるわけない。

 

 

 けどあたしは、彼について何も知らない。ネットで調べたことで、彼の生い立ちなんかについては知ることができた。彼がどんな事情を抱えていて、どんな人生を送ってきたのかも。

 でも、あたしは、彼自身の事は全然知らない。

 彼の好きな食べ物も知らないし、苦手なものも知らないし、誕生日だって知らない。

 

 どんなことを考えて、どんなことを感じているのか。あたしは、全然知らない。

 

「棹人くん、色々インタビューさせてよ~」

 私がそうお願いしても、彼は困ったように同じ台詞を繰り返した。

 

「時間ができたときに、改めて付き合いますよ」

 

 時間ができたとき。それはいつになるんだろう。

 帰宅部は皆言外に、すぐに現実に帰ることを目的にしている。それはみんながきっと抱えている事情によるものなのだろう。アストラルシンドロームの事もあるし、命の危険があるんだから当然だ。

 こうしてμの元へ行って。そこで仮に現実に帰してもらったとして。

 

 あたしたち、帰宅部の縁はそこで終わってしまうんだろうか。

 そうしたら、あたしは、またひとりぼっちになってしまうんだろうか。

 楽士の人たちも、そういう風に思って、私たちと戦っているのだろうか。

 

 ――胸が痛い。人の気持ちを考えるようになってから、こういうことが増えた。

 いいことなのか悪い事なのかはわからないけど、痛いのは嫌い。みんなもきっとそう。

 でも。この痛みから逃げたら、いけない気がする。

 

 あたしは作品のためだけじゃなく、この痛みの正体を知るためにも彼のことが知りたい。

 彼があたしのことを助けてくれたあの時にも。

 彼が温泉の待ち伏せ作戦の時に一人きりで倒れたときにも。

 彼の近くで起きる、この胸の痛みを知るために。

 

 

 〇 - 〇  〇 - 〇  〇 - 〇

 

 

 琵琶坂先輩がカタルシスエフェクトに覚醒した時、彼が浮かべた表情を見た。

 

 比較的表情豊かな彼の顔が、何の表情も浮かべない。

 でも目だけは殺気立って、怖いくらいで。

 それで、えっと。

 

 ああ、もう! なんて言ったらいいんだろう!

 

 鈴奈ちゃんに本を勧められたけど、こういうことだったのかもしれない。

 

 彼の事を言い表す言葉が見つからない。

 きっと彼は、あたしのこの胸の痛み以上に、何かを抱いてる。

 けどあたしは何も言えなくて。

 

 すぐに皆に最初に押されたスタンプが罠だって気付いた事を褒められて、いつも通り困ったようにはにかんでいる彼に戻る。だから、きっと彼のあの表情を見たのはあたしだけだ。

 

「守田さん?」

 

 なのに心配されるのは、またあたしの方。

 

 

 その後、クイズが変なものに変わった時も、彼は苦々し気にする。

 そしてその答えを部長の代わりに琵琶坂先輩が解いた時も、彼はまた複雑な表情を浮かべた。

 

「――棹人、くん」

 

 あたしが、そう声を掛けられたのはもっと先に進んだ後。あの悪趣味なクイズの二問目を、彼が自分の手で正解した時。

 名前を呼んで。そこであたしは、頭が真っ白になった。

 

 だってそうだよ。彼が遭ったことをあたしは知ってる。彼が今、琵琶坂先輩の力を見て彼がどんな風に感じているのかも推理できる。

 でも、それを言ってしまったら。あたしは、彼が前に言った、推論や感情で面白おかしく他人を貶すような連中になってしまう。ううん、違う。()()()()()()

 

 そうなったあたしを、彼はどんなふうに見るのだろう。

 あの表情のない眼差しがやってくるのかな。それとも、無視されるのかな。

 いやだ。それは、いやだ。

 

「心配をかけてすいません。でも、俺は大丈夫です」

 言葉を選んでいるうちに、また彼に言われてしまう。

 

 穏やかな表情とその言葉で納得してしまわなければ。

 彼が、あんなことにならなくても、よかったかもしれないのに。

 

 

 

「何をしている、μを壊すチャンスだっただろうがァ!」

 

 ぼたぼたと、滴る重い水滴。鼻の奥に入ってくる、焦げちゃったときの焼き肉の匂いと、それを包み込む生臭い鉄の匂い。

 

 叫び声より、悲鳴より、まず吐き気を感じてしまったのが悔しい。

 何もできなかったことが悔しい。

 あたしは駆け寄ることも、助け起こすこともできなかった。

 

「棹人ッ!」

 部長の叫び声。その名前に、顔を伏せていた楽士の梔子って女の子が、顔を上げた。

 目を見開いて、何かを言おうとしたように見えた。

 

 そこから先の事は、よく覚えていない。

 

 部長の号令で戦いが始まり、苦戦したけど部長たちが勝って。

 

 倒れた梔子ちゃんに琵琶坂先輩が何かしようとしていて。

 それを止めた棹人くんが、倒れて。

 彩声ちゃんと琵琶坂先輩がやり取りをして、

 

 もう、頭がこんがらがって、何が何だか。

 

 全部が終わってアトラクションから出るころには、最初の楽しい空気なんてどこにもなくて。気が滅入るような重々しい空気が満ち満ちていた。

 まるで、今日限りで帰宅部が解散すると言われてもおかしくないようなこの空気に、あたしはキリキリするお腹と変なリズムでどくどく言う心臓の音を抑えるので精一杯で。

 

「……あー、琵琶坂先輩」

 

 そんなときも口を真っ先に開いたのは、棹人くんだった。

 鼓太郎先輩に肩を借りてた棹人くんが、脇腹を庇いながら琵琶坂先輩に近づく。そして彼は突拍子もないことを口にした。

 

「さっき部長にいくらか前髪持ってかれてましたよね。それと俺のこの持ってかれた脇腹で、痛み分けってことにしませんか」

「――それは、どういうことだい?」

 訝し気な琵琶坂先輩に対して、どこまでも楽観的。いや、なんというか、わざとらしくヘラヘラしてる棹人くん。なんか、いつもの棹人くんっぽくない。

 

「生傷作るのなんて別に今に始まったことじゃないですし、それに楽士と今後もやりあえばコレで済まないこともあるかもしれない。ってかこの最悪な空気じゃ帰宅部として活動できるかも怪しいでしょう? ここは円満に解決して、次に目を向けようじゃありませんか」

 それに、彩声さんが異を唱える。

 

「あんた、自分が何されたかわかって言ってるの?! 正気?!」

 ……棹人くんは、見てわかるくらいの傷を負ってる。

 カタルシスエフェクトでは命を奪うことはできないと、アリアは言っていた。けど彼の傷は戦いが終わった後も消える様子がない。理由はわからないけど、ともかく変だ。

 何より、傷付けたのは、楽士じゃない。琵琶坂先輩だ。

「被害を受けた本人がこれでいい、って言ってるんですから大丈夫ですよ」

 

 柔らかい笑みで言う彼の額には、まだ脂汗が浮かんでる。まだ、相当痛いはずだ。

 

「だぁああああああああああああ!!」

 そんな中で、鼓太郎先輩が叫び声をあげた。

 気まずすぎる。全員水に流せ。こいつがこう言ってるんだらこれで全部チャラにしろ。

 それはそれとして琵琶坂はこいつに謝れ。それで終わり。

 

 鼓太郎先輩の圧によって、その場はまとまった。結局、みんなも棹人くんの提案はみんなとしてもさっさと頷いてしまいたかったんだろう。

 けど。彩声ちゃんと、何より部長の手前素直に受け入れられなかった。だから、鼓太郎先輩の鶴の一声がみんなを後押ししたんだと思う。

 

「……私は棹人を病院まで送る。とりあえず、彼の回復まではいったん解散。各自でμの情報を集める。それでいい?」

 

 鼓太郎先輩の言葉に頷くことはなかったが、今後の指示を出して場を〆ようとする部長。というか、部長自身も自分が冷静じゃないことがわかってたから、そういう風に申し出たんだと思う。

 反対する人はいなかったけど、あたしも病院についていく、って言ったら次々にみんなが手を上げて、結局みんなで向かうことになった。

「そんな大げさですよ、もうこの通り……ッってぇ!」

 棹人くんが万歳しようとして、それでまた倒れかかる。

 それを部長と鼓太郎先輩が助けて、みんながまたまとまった。

 

 その場では空中分解は起きずに済む。これもきっと棹人くんのお陰。

 

 でも。

 

 これは、彼らしい行動とは、言えない。

 彼は、何かを隠している。

 

 梔子って楽士。

 あの意味深なクイズ。

 琵琶坂先輩。

 

 ……棹人くんには、私の知らない何かがある。

 

 一週間の入院。

 時間はできたんだ。存分に、インタビューさせてもらおう。

 

 

 




8/16 00:00にアンケートの結果を確定したいと思います。
同票の場合の処理を考えましたが、こちらでランダムに決定させていただこうかと考えております。

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次々回・another アンケートキャラ視点
次々々回・RTAパート

以上の更新を予定しています。
今しばらくお待ち下さい。
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