【Caligula-カリギュラ- RE:covered】 部員ルートRTA 8:02:57 【完全犯罪チャート】   作:佐渡ヶシマシマ

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Another:XⅧ 嘘のよしあし

 帰宅部に入ったことで、僕は戦う力を手に入れた。

 それさえ手に入ったのならまた一人になりたかったのだがそういうわけにもいかないらしく、僕は結局成り行きにまかせたまま、この帰宅部の面々と行動を共にしている。

 

 今回ゲリラライブをやるというイケPという楽士の下へと向かったが、イケPとは小池の事だった。

 彼に話を聞いてみるが、彼はなぜか怒っていた。帰宅部の面々は僕が相当恨まれていると言っていたが、僕には小池が僕に対して怒る理由に見当がつかない。

 おそらくは、それがわかっていたのならもっとスムーズに話が進んだのだろう。

 やはり、僕は壊れたロボットらしい。

 

 ●  ●  ●

 

 その後、僕らはフラワープリンセスという女子生徒たちに追いかけられることになった。

 どうやら彼女たちは、小池とは別の楽士の仲間だったらしく、一度相手にしたことがあるらしい。

 

 すごく大きかった。何を食べたらああなるのだろう。そう思ったが、口に出す余裕はなかった。

 

 あちらこちらと逃げ回っては隠れ、ドタバタとするのは確かに危機感を感じたが、同時に不思議な感覚も抱いた。

 思い返せば、子供の頃から友達付き合いも母に厳しく制限されていた僕は、鬼ごっこやかくれんぼといった、年相応の遊びなど殆ど経験してこなかった。現実に帰るために小池に話を聞く必要があり、同時にフラワープリンセスたちに捕まってしまえば大変なことになる。そんな状況だというのに、僕はどうやら楽しんでいるらしい。

 不謹慎な話だろう。だが僕が素直にそう口に出せば、帰宅部の皆は肯定したり、否定したり、さまざまに反応する。とても賑やかなその様子を、僕は不快にはあまり感じなかった。

 

 もし、友人というものがいたのならこんな感覚だったのだろうか?

 ――いや、そんなことを考えるなんて都合が良すぎる話だろう。

 

「維弦」

 

 ふと、声を掛けられる。声の主は、帰宅部の中で部長と呼ばれている式島だった。ついこの間、他人のラブレターを渡されたとき以来、彼女はアリアと共に僕に交流をはかってくる。

 一度、帰宅部の副部長だという斑鳩からも似たようなことがあった、と言ってからさらに彼女は一層僕に注意を払っているように感じる。なんなら、アリアが計画した僕にいろいろさせる話に、斑鳩も関わってきたりもした。

 

 式島も、斑鳩も。正直、これまで会ってきた人間とは大きく違う。

 よくわからない人物だ。

 

「なんだ?」

「何か問題はない? 賑やかだから、どうしても気になって」

「いや。それより早く小池を追いかけなくては」

 

 色々と関係のない事を考えてしまったが、思い直せば今はそれが大切だ。

 それ以外の事は、今はどうでもいいはず。

 

 僕の言葉に、それならいいと短く告げて彼女は会話を打ち切る。繰り返し話しかけられてもさほど不快にならないのは、こうして短く終わらせられるからだろう。

 しかし、どうも。

 何か、焦っているのだろうか?

 

 まあ、僕には関係のない事だが。

 

 

 ●  ●  ●

 

 

 何度かフラワープリンセスたちに追いかけられていたら、女子生徒に声を掛けられた。

 キンキンした声で、僕の容姿を褒めちぎる。僕の苦手なタイプだ。

 だが、僕の様子を見て間に入ってくる人物がいる。

 

「すまない、今は少し急いでいるんだ。もし大事な用件なら後から連絡をしてもらってもいいかな? 確か君は4組の……」

 帰宅部では副部長と呼ばれている男。そう、斑鳩だ。

 どうやら彼も女子にきゃーきゃー言われている人間らしい。そういう意味では、ほんの少しだけ親近感がある。しかし彼が少しの問答の後、話しかけてきた女子生徒はすぐにどこかへ行ってしまった。

 

 その様子に、色々と言葉を投げかけている帰宅部。

 鋭い眼差しを向けるもの、皮肉っぽく褒めているもの。彼はそれらをも自然に受け流しているように見えた。

 だから僕は彼に話しかけてみる。どうやったら、そんな風に人と話せるのかと。

 

「特に相手に合わせること、だと思います。本心でなくとも、相手が望む言葉を言えばそれだけで満足することも多いですし」

 なるほど、と思ったが、同時に僕はこうも思う。

 

「嘘をつくのは、いけないことではないだろうか」

 

 僕のその言葉に、斑鳩は言葉に詰まる。どうやら驚いたようだった。

 だがすぐに表情を繕い、苦笑いを浮かべながら答えを返す。

「確かに、嘘は悪いことです。ですが、時に真実が人を傷つけることもあるんですよ。自分で言ったことながら、なかなか区別は難しい所なんですが」

 そう言って、自分は失敗してばかりだと自嘲気味な言葉を漏らす。

 しかし、僕にしてみれば斑鳩ははるかにうまくやっていると思う。斑鳩のいう通り、僕は正直に思ったことを口にしては、無視をされたり机に落書きをされたりを繰り返しているのだから。

 とはいえ、だ。

「僕もそんな風に、うまくやり過ごしながら生きていきたいものだ」

 

 正直なことと、彼のような適度な嘘。二つが使えれば、僕の目指す一人で生きるという目標に近づけるかもしれない。――いや、しかし、斑鳩は多くの人に囲まれている。

 やはり、人に頼らずに生きるというのは難しいものなのだろう。だが、僕はそうしなければならない。

 

「と、思ってるんじゃないですか」

 そろそろ話を終わろうとしたところで、突然僕が考えていたことを言い当ててくる斑鳩。

 

「誰も、一人でなんて生きてはいけませんよ」

 鈍い僕でも薄っすらと感じるくらいに。

 それは、何か彼の心の底から出たような言葉に感じた。

 

 けれど。

 

「確かにそうかもしれない。でも、僕はそうするしかないんだ」

 

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