【Caligula-カリギュラ- RE:covered】 部員ルートRTA 8:02:57 【完全犯罪チャート】   作:佐渡ヶシマシマ

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戻ってまいりました。(nヵ月振りn回目)


Another:XⅨ 『勝利』という運命は俺の頭上で輝き続けている

 

 予めスイートPとかからは聞いちゃいたが、まさかマジで透明人間だとは思わねぇよなぁ。

 その上、その横にいる新人もいつの間にやら大出世。気付けばルーキーどころか副社長かソーンの秘書かってレベルになっていやがる。嫌になるぜ、まったくよ。

 

 とはいえ、俺はわかってるぜ。

 顔どころか全身を透かしている透明人間のLucid。

 フルフェイスヘルメットにライダースジャケットで完全防備の韋駄天。

 どっちももれなく、見た目に相当なコンプレックスを抱えてるってな!

 

 同じ(ソウル)を持つ者は、言葉を持たずとも通じ合うものだ。俺はそういう気配をビンビンに感じたぜ!

 

 本当ならば楽士の『先輩』として、そして仲間として色々と語らいたいことも山々だが……今はそれより重要なことがある。帰宅部の連中が、デジヘッド狩りを行ってメビウスにダメージを与えようとしているらしい。俺ら楽士に挑戦状をたたきつけるような内容だ、失敗するだなんて微塵も思っちゃいねえ。

 

 楽士の中でも人気もセンスも実力も、ソーンを抜けばトップと言って過言じゃない俺が弱体化した瞬間を見計らった計画性は素直に褒めてやってもいい。

 だが俺は一度の敗北で屈するようなヤワな男じゃないぜ、見通しが甘かったな。

 

 ――帰宅部、特に峯沢。

 あいつの現実の顔を見た時、そんでそいつを持ったまま現実に帰ろうとするってところには、色々と思う所があった。だがあいつがメビウスをぶっ壊すつもりなら話は別だ。

 

 俺たちの正義(ジャスティス)を、あいつらに見せつけてやるぜ! 峯沢、そして帰宅部――!!

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 つーわけでシーパライソに来た。子猫ちゃんたちが色々話題に上げてたが、やっぱすげーなこのデカさ。

 どうやら梔子がイベントを開いてた名残らしい。中々盛り上がったって話だ。

 

 実際、中のアトラクションの完成度は相当高かった。こんなことならそれこそ子猫ちゃんたちと遊びに来ても良かったかもしれないが――駄目だな、俺が来てしまうと俺のBIGさでイベントの方が霞んじまう。流石にそれじゃ企画をした梔子や関わってたって言う韋駄天に悪いよな。

 

 しかし不思議なのは、中を歩いたがそこまでラガードの数が多くないことだ。

 俺の活躍の機会が少ないってのは不服だが、とはいえ楽なのに違いはない。度々見かけるラガードだって、俺たちが戦うまでもない木っ端だ。帰宅部を倒して再びこの領域を制圧しちまえば遅かれ早かれデジヘッドに戻るくらいのレベルときてる。

 

 ――正直な話、マインドホンの洗脳って見てて辛そうだからあんまやりたくねぇし。

 峯沢を追い詰めるために必死になったとはいえ、フラワープリンセスの三人にはちと無茶をさせちまった。埋め合わせに、俺のライブの最前列チケットを用意しておかないとな。

 

 

 しっかしまあ、なんつーか。

 Lucidのヤツも韋駄天も、ほんとにすげぇのな。

 

 Lucidは梔子が道中で用意したイベント用のなぞなぞを一回ミレイがミスってはじめからになった時も動じない懐のデカさに、『一回経験したみたいに』落とし穴から落とされても完璧な着地をしてみせた。先導するのもキビキビしてるしよ。今流れてる楽曲も、音楽やってる俺でもわかるクオリティの高さ。ヒットチャートをうなぎのぼりってのも伊達じゃねえ。

 

 一方の韋駄天は、出世欲の権化みたいなやつかと思いきや、あのミレイをうまーく宥めたりおだてたりで操縦してるし、梔子の体調やら、帰宅部に土付けられた直後だからって心配しながら俺にも話しかけてくる。相当世渡りに慣れてるみてぇだ。自分のプライドを曲げたりとかして生き抜いてきたんだと思うと考えるだけでつれぇよ。

 

 どっちも相当に切れるやつらだ。

 だが、そんなやつでさえ、現実がキツくてメビウスに来てる。そして、必死になって顔を隠してる。

 どんな姿にだってなれる世界でまで顔を隠すなんざ、苦労の重さも伺えるってもんだ。

 

 こういう奴らのためにも、俺は負けられねぇ。

 一瞬絆されかけたが、やっぱりメビウスこそが俺の居場所だ。

 

 あいつらが壊そうとしているメビウスがどんなものか、もう一度考えさせてやらなきゃならねぇ。

 この世界を求める俺とμのファンの為に、俺は内なる(ソウル)を燃やし続けるだけさ。

 

 しっかし、なーんか不穏なんだよな。空気っつーの、気配っつーの?

 梔子はなんだか妙にピリついてるし、韋駄天は四方八方に気を回してるし、Lucidは殆ど喋らねぇし、ミレイはミレイだし。

 

 上手くいってるんだけど、なんか妙な感じだ。そわそわするっつーか。

 簡単すぎる仕事の後に、罠があったりとかさ。

 それこそたまに遊ぶガンシューティングとかでもあるんだよな、ステージの奥まで歩いていったら、急に敵がわんさか出てきて、『騙して悪いが』とか言われて死に物狂いで逃げるみたいなやつ。

 メチャクチャ順調に仕事が進んだと思ったら、営業成績が低かったペナルティで倉庫整理やらされたりとか……やーべ、イヤな事思い出しちまった……。

 

 ま、まあどんなトラップがあろうと、俺がいれば万事解決さ!

 峯沢の仕掛けた卑劣な罠なんて、この俺が覆してやるぜ!

 

 

 とか、思ってたんだが。

 

 最後の最後、そろそろ帰宅部のいるところに辿り着きそうだ、ってところで出てきたのは何の変哲もないエゴヘッドだ。しかも別に帰宅部が用意したわけじゃない。

 

 エゴヘッド。負の感情をじゃんじゃか吐き出すからメビウスの維持には役立つが、現実でも我儘放題で好き勝手な人間なんかがさらにμの楽曲で暴走したような連中だ。俺たち楽士の制御も効かねえめんどくさい自称『お客サマ』のクレーマー。

 

 しかも自分の為だけにライブをしろだの抜かしやがる。

 そんでもって、手近な梔子に手を上げようとまでしやがった。

 

 だがそれを横から防いだのが、韋駄天だった。

 

「失礼ながら、過度なファンサービスの要求にはお応えできかねます」

 

 口調は丁寧だけど思いっきり野郎の顔面蹴り飛ばす、映画みたいな一幕だ。

 しかし――蹴り技、そういうのもアリか。

 

 いや、それはそうと、だ。

 手を上げようとしたあのバカはもし韋駄天がやらなかったら、傍に居たLucidがとっちめてたに違いない。

 そして、そのどっちもやらねぇようなら、俺がやってた。

 

「男の癖に女に手出してんじゃねえよ、クズが」

 

 峯沢と戦う時には万全の状態でいたかったが。こんな奴を見逃すようじゃ、イケメンどうこうじゃなく楽士として、人間として失格だ。

 Lucidも、既に武器を呼び出してる。言葉なんて、いらないよな。

 どうやら怒りのベクトルは違うが、ミレイも身を震わせている。

 オーケー、セッションの準備は完璧だ。

 

 ご希望通りに見せてやるとしようぜ、俺たちの『ライブ』を。

 千の言葉より残酷な、『俺』という説得力でな!!

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「くそ、覚えてやがれ!」

「μに言いつけて、クビにしてやる!」

 

 負け犬の遠吠えをしながら、連中は逃げていった。

 鼻で笑いながら、俺はμに冗談を言った……んだが。

 

「み、みんなをクビにするなんて嫌だよ! で、でも、それがあの人たちの願いなの……? ど、どうすればいいの、私、どうしたら……!」

「お、おい冗談だよ、気にすんなって」

 

 めちゃめちゃ本気にされてしまって、俺は戸惑う。

 そんなμを、一緒に宥めるのは、案の定Lucidと韋駄天だった。

 

 やっぱあいつら、とんでもないぜ。クソ……もうちょい敵がいれば、俺だってもっと活躍できるってのに。

 

 と、思っていると。韋駄天が俺に声を掛けた。

 

「すいません、私は先程の連中を追跡してきます。苛立ちのままに余計な騒動を起こされては困りますので」

 

 そう言って、申し訳なさそうな顔文字がヘルメットに電光掲示板みたいに出てくる。

 なんつーか。マジで見てて大丈夫か心配になるレベルだな、こいつの気の遣いっぷりは。

 

「あいつらの相手はしんどいからな、ガツンとやってやれよ。ま、言うまでもないかもしれないけどな」

「はは、いやお恥かしい」

 

 バツが悪そうにしてるが、兎も角だ。

 俺にこの話をしてきたってことはつまり、俺がこの場を任されたってことになるだろう。まあ、考えなくても当然だったがな。

 

「安心して行ってきな。峯沢の野郎には、お前の分まで俺が『想い』を叩き込んでやるからよ」

 

 決まったぜ――。

 

 俺の決め台詞に言葉を失っていた韋駄天は、深く一例をしてさっきの連中を追いかけていった。

 フ、俺から学べよ後輩。今度会ったらステーキでも奢りながら、ファッションについても教えてやってもいいかもしれない。黒いライダースジャケットとか、センスもあるしな。

 

 

 

「イケP! 出発するよー!」

 

 μの声が聞こえる。さて、そろそろ本番らしい。

 さて、それならもう一人の後輩には、背中で語るとするか。

 

 

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