【Caligula-カリギュラ- RE:covered】 部員ルートRTA 8:02:57 【完全犯罪チャート】   作:佐渡ヶシマシマ

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Another:XX Singularity Four 後編

 

「一体どういうつもりだったのか、興味があるな」

 

 いつになく刺々しい口調。

 なのに、彼の表情はひどく空虚……というよりも。感情は押し殺され、淡々とした薄い表情のままに私に問いかける。

 無理もないだろうとは、わかっている。

 

 

 シーパライソのテーマパークで行われた待ち伏せ作戦が終了し、例のごとく帰宅部の部室に集まって『つつがなく』失敗の報告が終わった。その後、鳴子が楽士の控室で韋駄天、もとい棹人が語っていた学園祭の情報とランドマークタワーが閉鎖されるという情報を得た。

 帰宅部の方針は早期の帰宅を望む琵琶坂とランドマークタワーに近付くことを嫌う笙悟とで割れたが、結局タワーの状況を確認するため現地へ向かう。

 結局鳴子の情報通り、ランドマークタワーへの侵入は不可能。学園祭が始まるまでは各自情報を探すという方針が固まり、その場で解散。

 

 棹人はその道中、一切私に話しかけてこなかった。

 

 

 だが。

 

 帰宅部の皆がいなくなって漸く呼び止められた私は。

 彼に向けられたその問いに、答えられずにいる。

 

 

 テーマパークの中で起きたこと。

 待ち伏せを行っていた笙悟と維弦の前に居た、エゴヘッド。傍若無人な厄介なファン。楽士であるはずの梔子や私たち相手にも攻撃的な態度を崩さずにいた。

 奴の捕縛を行うという建前で、楽士の面々から離れた棹人は、そのすぐ後に帰宅部として私たちの前に現れた。本来なら、待ち伏せ作戦への参加率が悪いイメージ払拭のため、私が花を持たせるべきだった。

 

 そのはず、だった。

 だが思ってしまった。

 今、彼と刃を交えることができれば。また一層、彼の深い部分を知れるのではないか、と。

 

 図書館で、仕込みがあるとはいえ戦いを行った時のことが思い起こされた。

 カタルシスエフェクト。困難に立ち向かうために誰しもが持つ、心の武器。

 それをぶつけ合う戦いの場は、それは剥き出しの心をぶつけ合うようなものだ。

 

 ゆえに、思想、主義の異なる楽士との戦いでは白熱する。

 そして折れない芯を持つ楽士たちは強力だ。

 一度それを折られれば……彼らはひどく弱体化する。逆に言えば凝り固まった思考はは柔軟になるので、良し悪しではあるのだが。

 

 だが、楽士としても帰宅部としても戦いながらそのどちらとしても有能。

 強固な支柱を持つ彼の根幹、それはなんだ?

 

 もし、敗北という形でそれを折り砕けたら。

 そうでなくとも、窮地という状況が彼の深部を覗く鍵となるのではないか?

 

 今考えれば、帰宅部の重要な戦力である中心人物の彼を失いかねないこんな選択は愚の骨頂といえるだろう。なのに、その瞬間はそれこそが最適だと。そして、絶好の機会だと、感じてしまった。

 

 

 知っているはずだ。知っていたはずだ。

 楽士として戦っているとき、自分の中の欲望が肥大化する。それは顔を隠しているからかもしれないし、楽士として振るう武器が、アリアによって精神を調律されたものではなく、μによって精神を増強されたがゆえに使えるものであり、その危険性を最初の最初に理解していたはずなのに。

 

 なのに、私は。

 

 

「別に答えるつもりがないならいい。それよりも、今後の事が重要だ」

 

 くる、と。彼は背を向ける。

 どこへ向かうのか、私がついていこうとすると。

 

「今は『手分けをする』、そういう話だったはずだが?」

 

 一瞥。ただそれだけで、私の動きはまた止まる。

 

 

 結局。私は棹人が歩み去るまで、一言も答えを返すことはできず、そして呼び止めることも、動くことさえも出来なかった。

 

 

 

「私は……」

 

 心臓が、縮こまる。息苦しさと、心音が脳内で反響するような感覚。

 

 事態は動き続けている。帰宅部の皆との関係の進展も、楽士の内情に踏み込むのも、時間の問題だ。

 なのに、私は何も進めていない。

 

 いつまで、私はこうしているつもりなのだろう。

 仮面を被り、立ち位置を選び、台本や名文から抜き出した台詞のような会話を繰り返す。

 

 苦痛や苦悩に、寄り添うようなふうでいて。私はただの観劇者のままだ。

 そして、私は、また何かになろうとしているまま。

 

 いつになったら、私は――。

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