さよならカミハマ   作:ryanzi

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前回のあらすじ

転生しても哲学的SFを執筆しようとしていたオラフ・ステープルドン。
しかし、腹が減ってはなんとやら。バイトをすることを決意した。
とりあえず夏目書房に雇ってもらおうとした矢先、スタンガンで気絶させられた。
薄れゆく意識の中、彼が最後に見たのは幼馴染の胡桃まなか(ハイライトオフ)だった・・・。


風邪かなと思ったら早めのソーマ?

和仁は風邪をひいてしまった。

理由は言わなくてもわかるであろう。

わからないというのなら、前話を参照すればいい。

 

「くそ・・・39度かよ・・・あー・・・頭くらくらする」

 

体温計を放り投げて、自分の身もベッドに放り投げる。

きれいというわけではないが、散らかってるわけでもない。

そんな中途半端な状態が和仁の部屋であった。

部屋は使っている人の心を表しているといえる。

つまりは中途半端な人間なのだ。良く言えば中庸だが。

中庸、それはこのマギレコで最も不足している要素であるのだ。

不足している、といってもそれは魔法少女の世界に限るのだが。

突然、インターフォンが鳴る。

身体をなんとか引きずって玄関を開けると、そこにはアメリカ人青年が立っていた。

彼はラテン語でこんなことを言ってきた。

 

「我汝ヲ解キハナタシ」

 

「俺、神道信じてるんで・・・」

 

だが、青年は構わず入ってきた。

仕方ないので、自分の部屋にも入れてやった。

 

「パンと葡萄ジュースを持ってきました。

その様子だと、かなりきついでしょう?」

 

「・・・確かにな」

 

青年の名はウォルター・ミラー。

南凪自由学園に通うカトリック教徒である。

敬虔でありながら、それを周りに押し付けないので友人は多い。

こういった態度もまたマギレコ世界で不足しているものだ。

彼は偉大なるものの前では常に誠実であろうとする。

白パンはやわらかく、そしておいしかった。

 

「あと、レムくんからのお詫びのゼリーもありますので、どうぞ。

ぼくはいったん帰ることにしますよ。それでは養生してください」

 

ゼリーの入った箱には「przepraszam(ごめんなさい)」というメモが貼られていた。

そして、ミラーは帰って行った。彼は実に礼儀正しい人間だ。

いや、オーウェルも教養があって礼儀正しい部類なのだが・・・。

 

「・・・このゼリー、原形質じゃないよな?」

 

ゼリーをいったん冷蔵庫に入れる。

やはり微妙に信用はならないのだ。

ぶどうジュースを飲み干して、ベッドにまた身を投げる。

ミラーのような人間は来てくれるだけでありがたい。

そう思っていると、携帯の着信音が鳴り響く。

それはさっき帰っていったはずのミラーからだった。

 

「もしもし、どうした?」

 

「急いで隠れてください。彼がきます」

 

「彼って・・・ハクスリー?」

 

「ええ、そうです。さっきすれ違いました」

 

だが、オルダス・ハクスリーは意外にも早くやってきた。

玄関ドアを放水銃で吹き飛ばした音が家中に響き渡る。

クローゼットに隠れる暇もなく、イギリス人青年がやってきてしまった。

 

「風邪をひいたって聞いたよ」

 

「うん、そうだね。帰ってほしいな」

 

「私のソーマを飲めば、たちまち辛くなくなるよ。

半グラムで半休分、一グラムで・・・」

 

彼は緑色の錠剤を差し出した。

 

「お前、それ使ったディストピア小説書いてたはずだよね???」

 

「おや、私のユートピア小説の方は読んでないんだね?」

 

「そうだったよちくしょう」

 

ハクスリーは前世で『島』というユートピア小説を書いていた。

それに描かれた社会は、ほとんど『すばらしい新世界』であった。

つまり、ハクスリーはヤク中だったのだ。

 

「呪うより服もう、早めの・・・」

 

「早めのバファリンじゃねえんだよこの野郎」

 

それから取っ組み合いのけんかが始まった。

 

「ほら、飲めば幸せだぞ!」

 

「やめろお(建前)!やめろお(本音)!」

 

「そうか!ソーマだけじゃ不満だって言うんだな!

ストロベリーアイスも付けてやるぞ!それで不満はないだろ!」

 

「そんな問題じゃねえ!!!ヤク中になってたまるか!!!」

 

「どうして私の善意を受け取ってくれないんだ!」

 

「最期までヤクやってた奴の善意なんて受け取りたくねえよおおお!!!」

 

だが、病人が勝てるという道理はどこの世界にもない。

それは、このマギレコの世界でも同じであった。

あっという間に組み伏せられてしまう。

 

「ほら、楽になるぞ」

 

「そりゃそうだけどさ!!!大麻飲んでも風邪は治らねえんだぞ!!!」

 

「ソーマ二グラムでいやなことも幻」

 

「嘘だぞ、それ絶対先延ばしにしてるだけだぞ」

 

ソーマが口に入れられそうになった瞬間、誰かがハクスリーの肩を叩いた。

仰向けになっていた和仁はハクスリーが振り向くよりも先に誰なのかをわかっていた。

同級生の志伸あきらだ。彼女は背負い投げでハクスリーを窓から放り投げてくれた。

 

「大丈夫かい、和仁くん?心配になったから来てみたら・・・」

 

「ありがと・・・」

 

「うわっ、ひどい鼻声じゃないか・・・」

 

彼女は和仁をお姫様抱っこしながら心配した。

そして、ベッドにそのまま移すと手を額に当ててきた。

 

「うーん、ちょっと高熱かな?おかゆ作るから待ってて」

 

彼女はとたとたと台所の方に向かった。

和仁はすべてを悟った。彼女が女子にモテる理由のすべてを。

そして、和仁も今では心が女子になってしまっていた。

彼の顔はいっそう赤くなっていた。

 

「あいあむあぷりんせす・・・」

 

それが彼の最後の言葉であった・・・。




余談

宮尾時雨と安積はぐむは和仁の家の前に立っていた。
ねむがどういうわけか和仁暗殺命令を出したのだ。
とりあえず一般人には勝てる二人が選ばれたのだ。
あと、灯花の反対もあったからだ。

「そんな一般人に戦力割くなんてありえないよー」

(・・・その判断、いつか後悔することになるだろうね)

(和仁・・・あのホラーボーイの友人?)

そういうわけで家の前にやってきた二人であった。
だが、ハクスリーが窓から投げ出されたのだ。
ちなみに、二人はあきらが家にいることを知らない。

「・・・ねえ、帰ろう?私たちじゃ勝てないよ」

「そうだね。ぼくもカレルくんの劇のために小道具作りたいし・・・」
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