さよならカミハマ   作:ryanzi

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前回のあらすじ

ウォールナッツでウェイターとして日々を送るオラフ・ステープルドン。
微妙に納得はいかないが、暇なときはSFを書けるのでよかった。
余暇さえあれば、彼は執筆作業に取り掛かるようになった。
だが、構ってもらえないまなか(ハイライトオフ)の様子が・・・?


合コン幹事になってほしい・・・?

「俺は嫌だって言ったさ。でも、従う以外に道があったか?」

 

「まあ、しょうがない・・・だがな、君が結局管理に手を貸したのは変わらない」

 

「保護せよ、しかし管理するなって言いたいのか?スミスさんよ?」

 

二人の外国人青年が中華飯店万々歳で食事をとっていた。

味は50点だが、西洋人の彼らにはその点数にとくに意味はない。

ただ、エキゾチックを体験できるだけでも満足だったのだ。

 

「その名前で呼ばないでくれ。私はラインバーガーと言ってるだろ?」

 

「そうだったな・・・バーガーさん。大東はすっかり軍国主義だ

どれもこれも、ハインラインの奴が生徒会長になったのが運の尽きだよ。

教員どもはすっかり101とルドヴィコで生徒会のいいなりだ」

 

「その噂は私も聞いてるよ。私の通っている学校も参考にしようとしてるらしい」

 

一方の英国人・・・アンソニー・バージェスはあやうくむせそうになった。

 

「・・・正気か⁉」

 

「正気も何も、彼らは結果しか見ていないんだ。

品行方正で力強く行進する学生という結果だけをね。

101号室や君のルドヴィコ療法という過程は当然知っているはずもない」

 

スミスと呼ばれた本名ラインバーガーの英国人青年は落ち着き払って答えた。

 

「私の調べた限りでは、参京と未来アカデミーと栄を除いて、どこも見習おうと考えている」

 

「はっ!逆に言えば、参京や未来のインテリども、それと芸術家気取りは正気ってことか!」

 

「まあ、それには和仁の助言もあったそうだがな。

彼が何と言ったかわかるか?ハインラインはクソ野郎と言ったそうだ。

それで参京の教員たちはもう少し状況を静観することを決定した」

 

「あのジャップくんはだいぶ信頼されてるようで!

ミタキハラから転校してきたばっかだというのに」

 

「彼は実に注意深く振る舞っているからね。

今までの一般転生者と違い、良識だってある。

少なくとも、私たちの作品を知っているくらいの教養まである」

 

「そりゃ教養というよりかは欠点じゃねえのか?」

 

「そうともいえる・・・ところで、オーウェルは?」

 

「あいつは思考警察とブラザー同盟を上手く両立してるよ」

 

「そうか・・・彼らしいな」

 

バージェスは金を机の上に置いて、万々歳から出て行った。

 

「とにかく、油断だけはすんなよ。ハインラインは手強い」

 

「わかってるさ。そっちも上手くやってくれよ」

 

 

 

同地区の同時刻、風邪が完治した和仁は水徳商店街を訪れていた。

衣美里から急にSNSで呼び出されたのだ。

どうせくだらない理由に違いないだろうとは思っていた。

嫌々ながらも、相談室に入っていった。

相変わらず嫌な華美さが目に痛みを走らせる。

 

「かっずん、いらっしゃーい!

立ち話はなんだから座ってよ!」

 

彼女のノリだって、少し前は嫌だっただろう。

しかし、変人たちが友人になったおかげで寛容になったのだ。

というよりも、相対的に衣美里がまともに思えたのだ。

 

「今日はどういった用事なんだ?

今のところ、俺には大東を除いて相談事はないんだがな」

 

「大東って何かあったっけ?」

 

「俺の友人が大東を軍国主義化しやがったんだ。

おかげで、どこの学校も感化されつつあるからな?

お前の学校にだって、影響受けた奴いるんじゃないか?」

 

「いるねー・・・あーし、ああいうのは窮屈そうで嫌なんだけど・・・」

 

「だろ?でも、ここで相談したって、あのクソ野郎はどうにもならん。

とりあえず、本題に入ろうか。用事を教えてくれ」

 

「合コンの男子側の幹事お願い」

 

「帰らせてもらう」

 

「待って!!話聞いてちょうだい!!」

 

「やだよ!俺絶対雑用係みたいにされるんだ!!僕知ってるもん!!!」

 

抵抗虚しくも、椅子に無理矢理座らされた。

 

「・・・そうだな、腰を据えて冷静に話をしよう。

そうだな・・・よう、これからどうする?」

 

「冷静になってないよね?」

 

「失われた幻肢痛が帰ってこないことについてよく考えてみるんだ」

 

「どこの国の大使館員?」

 

数分もすると、ようやく冷静さを取り戻す。

 

「それで、どうして俺なんだ?」

 

「だってまともな男友達が多そうだし」

 

そう言われて、記憶を振り返ってみる。

まとも・・・まとも・・・まとも?

教養はあれど、奴らがまともだと?

いや、まともなのもいるにはいるのだが。

 

「わかった。とりあえず、やれる範囲でやってみるよ」

 

 

 

バージェスは水徳商店街を訪れていた。

夏目書房に寄る前に、オリエンタルを体感したかったのだ。

『日本の商店街』というのは何度訪れても飽きない。

まるでテーマパークに来たかのような心地がする。

相談室の前を通りかかると、和仁に遭遇した。

 

「やあ、ジャッ・・・親愛なる兄弟よ」

 

「うっせえブリカス。それはそうと、合コンに興味はないか?」

 

「合コン?マルチックとデボーチカが理性を取っ払ってポルするあれか?」

 

「ナッドサットで会話するのやめてもらえる???」

 

「悪いが俺はパスだ。最近、厳しいもんでな。

生徒会の俺が風紀を乱したら・・・わかるよな?」

 

「すげえわかる。101とルドヴィコのダブルは辛いよな」

 

「だからまあ、無理だ。他の奴に勧めたらどうだ?

例えば、ダグラスだったらジョークは面白いしいいだろ?」

 

「いや、あいつは今、合コンに誘わないほうがいいと思うよ。

仲のいい女の子と絵本作ってるし・・・」

 

「そうか・・・スミスはどうだ?」

 

「スミス・・・ああ、コードウェイナー?いいかもな」

 

 

 

「これで上手くいくのー?」

 

衣美里が相談室の奥に向かって話しかける。

出てきたのは、常盤ななかであった。

 

「ええ、これでコードウェイナー・スミスを見つけられるかもしれません」

 

「コードウェイナー・スミスってそんなに見つけなくちゃいけない人なの?」

 

ななかはそれに答えようとしたが、すぐに口を噤んだ。

 

「・・・今はそれを言うことはできませんが、いつかはわかります。

ところで、今回の合コンにはひなのさんを参加させなくていいのですか?」

 

「みゃーこ先輩はようやく殿方を捕まえられたからねー。

あーしも会ってみたけど、すごく純粋な人だったよ?」




余談(人はそれを悲劇という)

ミラー「しかし、ぼくたちは神のために苦しみに耐えるべきなのでは?」

ハクスリー「だがな、今の時代じゃ神は不在という形で現れる」

レム「救うことも奉仕することもしない。それが私の信じる神なんだ」

都ひなのの恋人「これが化学部・・・今の僕には彼らと語る資格さえない・・・」

ひなの「ちょっと待ってくれ。これは違うんだ」

恋人「先輩、僕は修行してきます!神の何たるかを知らなくてはいけないんだ!」

ひなの「行かないでくれええええ!」

ミラー&ハクスリー&レム「「「・・・今のは何?」」」

ひなの「・・・お前ら退部しろ」

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