「まもりがみさまー、おはよー!」
こちらの方は我がご主人様のマツリお嬢様です。
俺がスヤスヤぐっすり眠ってる間にモンスターボールで捕らえられた後なのか、昨日まではあったはずの反抗心が全く、綺麗サッパリ無くなったのだ。
なので今はこうして従順な
いや、違うね。すぐそこに御婆様、キミコさんがいらっしゃるからだ。うん。
昨日までは全然思わなかったけど、今日になって俺の持ち味、『れいせい』を発揮してちゃんと考えたところ、
『やっぱり再封印されるのは困る』
と結果が残った。
そりゃそうじゃ。
俺だって『ふういんポケモン』とはいえ、今の状態が『かなめいし』さんに封印されてるだけであって、年がら年中『みたまのとう』に封印されてる『ふういんポケモン(笑)』じゃねえんだよ。
俺は自由なんだ!
あの塔は確かに落ち着くけど、自分の意志で動けないのは真っ平だ!
I can hurai(←スペルわかんない涙)!
俺は自由に飛べるんだ(飛べない)!
なので、俺は...!!
「それじゃあ、『かなめいし』さん。今日からマツリの特訓のお手伝い、お願いしますね」
おう、任せろだぜ!
「おんみょ~ん」
従順なフリをすることにした。
あ、Fly だっけ?
原作よりも広く、多くの家やお店が立ち並ぶズイタウンの一角、具体的に言うと『ズイのいせき』より少し奥にある祈祷師一家の住まう由緒ある祈祷師本家。苗字は忘れた。
家と敷地を囲む門から、俺の住んでた日本ではまず見かけることのなさそうな大の付く大豪邸お屋敷、その間に生じる健康そうな芝がたんまりと生えたお庭にはこれまた大きなお池とそこの主にしてわが友、コイキングさんがコチラに顔を向け、大口を開けている。
うん、今日もこの鯉、何考えてんのか全然分かんねえ。
そんなテニスができてしまうほどの大きなお庭には今現在、1人の少女と1匹のポケモンが向かい合わせに座っていた。
昨日のような一張羅の巫女袴とは違いながらも、この家の決まりなのだろうか、若干巫女を思わせるような見た目の和服に変わりはなかった。
俺、和服とか浴衣とか好きなんで、寧ろありがた
「それじゃ、まもりがみさま、はじめるよ」
目の前に佇んだ少女が気合の入った眼差しを向けてくる。
何やら始まるようです。
...何が始まんの?
昔は良かった。妖や悪霊と言った類の『いきもの』が多かったため、祈祷師やイタコと言った職業の者は大層儲かっていた。
だが今となってはどうだろうか。
ほとんどの妖や悪霊の正体がポケモンであると判明し、誰でも気軽にボール1つで対処できるようになった。
それによって落ちる対霊を生業とする人たちの出番と収入。
街や地方から絶えなかった依頼の電話は鳴ることの方が珍しくなっていた。
一昔前までは一族の血や結婚云々、商談で揉めることの多かったこの家も、今ではそう言った話が舞い込んでくることも無くなってきたのは喜ぶべきなのだろうか。
知名度と共に祈祷師としての才能と血が薄れてきている、この祈祷師一家。
キミコさんが現役だが、継手がいなかった。
キミコさんの子であるも父も、その嫁である母も才能や霊力、最もやる気が無かった。
諦めようか、自分で途絶える血なのかと考えた矢先に生まれたこの子、マツリちゃんは違った。
才能も霊力も申し分なし、寧ろキミコさんの子供時代よりも高いと来た。
更にはやる気もあった。
父と母にはそんな存在しないような職なんて、折角なら旅に出なさい。と反対されてはいるがまだ子供。やり直せるチャンスでも幾らでもある。
そう思い、両親は許した。
それから月日は流れ、その少女、マツリちゃんはグングン成長し、キミコさんもビックリの成長スピードを見せた。
そして迎えた試験日。
丁度良く近場で有名なミカルゲと言うポケモンの封印が解かれた反応を見せた。
この子が封印も、成仏もできないことは知っていた。
だから少しの目撃証言、少しでも挑んだと言うこの子の熱意を見たかった。
しかし想像の上を行く結果を残した。
この子は主悪の根源、ミカルゲそのものを持ち帰り、完全勝利と言わんばかりの笑顔を浮かべた。
これにはキミコさんも驚いた。
やはりこの子には才能がある、伸びしろがあると。
最も
そんな彼女、次期祈祷師のマツリは俺の前に立ち、霊力を纏った。
俺にも感じられる極僅かな霊力、俺たちが当たったら明らかにやばそうな謎の力。それを手に集結させ、眼前の
「えーい!」
パッと手が光ったように見えたが、それも一瞬で消え、その光が俺に届くことなく不発に終わった。
......あっぶね~~~~~!!?
おいなんだ今の!?
俺っち聞いてねえぞ!?
今の絶対当たったらヤバいやつっしょ!
なんだよこの子未熟なんじゃないのかよ!
成熟じゃん! 才能の塊じゃん! チートじゃん!
...あれ、俺異世界転生したのにチート能力貰えてなくない?
難易度:ハードなの?
「あれ~?」
なんて俺の考えと妄想を気にせず、暢気にガッカリしてる見習い祈祷師(大嘘)。
なんだよ、この子でも十分俺の事対処可能じゃないか。
その後も何度か挑戦し、失敗。
お昼休憩も入れ再挑戦、失敗。
溢れそうな涙を堪えながら御婆様にご教授した後の挑戦、これも失敗。
「今日はもう、これまでにしましょうか」
そんな声を夕焼けを見ながら聞いた。
少女は何度目かの悔しそうな顔を見せたが大人しく従い、
「まもりがみさま、きょうはありがとうございました。
あしたもよろしくおねがいします!」
そう言って俺を所定の位置、池の中が見えるように置き、家の中と入って行った。
いや、
マジ危なかったーーーーー!!
なんだよあの子!?
もう少し近づいて撃ったら俺もう消えちゃうよ!
何が試験だよ! 何が見習いだよ! 殺す気満々マツリちゃんじゃん!
なんなんだよ、もう!
もうやるならとっとと封印しろよ!
いいよ、もう!
......なんて、言うと思ったか。
いや、ダメだろ。
思い出せ。
思い出せよ、
感じろ。
感じるんだ、俺が為すべきこと。
さあ、気を取り直せ、俺氏、ミカルゲ人生。
ミカルゲとして本能のあるがままに、後悔の残らないように、精一杯(俺が満足するくらい)暴れてこの世に求められた役割を果たしてやろうじゃないか。
ああ、そうだ...!
俺はこの世界で、せいぜい楽しんでやるさ!
思い出したぞ、この世界の楽しみ方!
感じたぜ、俺のやるべきこと!
ポケモンに成れるなんて都合の良い世界、遊ばなきゃ勿体ないもんな!
なら! やってやろうじゃねえか!
なんってたって、俺は...!
___
「ああ、『かなめいし』さん? ちょっと良いかしら」
あ、はい。なんでしょう?
「おんみょ~ん」
......一部、