聖女に救われた少年は、聖女にゾッコンな様ですが、どうやら聖女様も同じようです   作:へたくそ

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光と闇

魔法という概念をどういう捉え方をしているだろうか。

 

 

奇跡の力?人外の力?神にも届きうる力?世界の事象に干渉しうる力?

 

 

きっとこれのどれもが正しい。時には人としての希望の光となり、絶望の闇にもなる。そして魔法とは闇になる事の方が多い。無数にある闇という概念が先にあるが故に、たった一つの希望という概念が生まれる。最初から希望になり得るものは存在しない。なんとも悲しい事である。闇から光が生まれるという事は、光の本質は闇と同じものであるからだ。

 

 

 

光を欲するならその者に絶望を。

 

闇という希望を生み出した者に、光という名の絶望を。

 

 

 

その小さな体に、この世の理を刻まれる少年よ。その絶望から光を見出す事ができるか。それともそのまま、絶望の闇に体を蝕まれただ朽ちていくだけか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成功した。成功したぞ」

 

「あぁ、これで我らが(あるじ)の存在が証明できる」

 

「ついに我らが悲願を果たす事が出来た」

 

「人がこの力を授かり早4000年。これで我らも(あるじ)の元へ・・・」

 

 

 

 

白いローブに身を包み、顔を隠した男が30人ほど。円を作りながら石台を囲んでいた。その台の上には一人の少年の姿があった。少年の体には複数の赤い線、そして魔法陣が刻まれている。そしてその少年の目に光は宿ってはおらず、呼吸も浅い。

 

 

 

「さぁ、神の子よ。我らを主人の元へ。我らが母、我らが父のお膝元に」

 

「神の耳に、我らの言葉を。この世は汚れ、犯され、枯れ果て、崩れ落ちた今でなお貴方を信じた!その恩恵を!加護を!慈悲をお与えくださいませ!」

 

 

 

 

ローブの男の一人、唯一杖をもった男が言葉を発する。するとその言葉に応じるように、少年に刻まれた線と魔法陣が赤く光り始める。それと同時に少年の目に光が戻っていく。だが少年はその口からは年に似つかわしく無い叫び声をあげ始めた。台に固定されている少年は暴れ回る。しかし拘束を解く事はできない。暴れる少年の力は凄まじく、石台にヒビが入る程の力があった。石台にもいくつもの魔法陣が刻まれており、恐らくは強化の魔法を刻んでいる者であると思われた。

 

 

 

 

「さぁ!今ここに!我らの魂をっ・・・・!?」

 

 

 

 

男はその先の言葉を綴る事はなかった。否、出来なかった。何故なら赤い光の槍が男の喉を貫いていたからだ。そしてその槍を作り出したのは他の誰でもない、縛られてた少年だった。いつの間にか少年の叫びは消えており、高速も解かれている。そしてその少年は宙に浮いていた。その左目は蒼く光、その右目は紅く光っていた。

 

 

 

「痛い・・・。何も、見えない・・・」

 

 

 

少年のその姿にローブの集団は驚きを隠せず、中には体の震えに立つ事すらままならない者もいた。この男達は魔法使い、そしてその中でも神に最も近いと言われる賢者。それはすなわち、神の存在を感じる事が出来るという事だ。そして今、この少年にはその神と同じ力をその身に宿していた。苦痛を与えられ、視覚を奪われる事でのみその資格を持つ事が出来る。

 

 

 

「愚かである。ここまで愚かであるとは、人はあの頃より何も変わってなどおらぬか。これは、余の間違いだったようだ」

 

 

 

その少年の口調はあまりにも無垢であり、単調。感情が一切籠っていない。だがその言葉には力があった。人を征服し畏怖させる力が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつけばそこにあったのは、暗闇、痛み。その次にあったのは憎しみ、憎悪、殺意。そしてその最後に見たのは人だったモノと、真っ赤に血塗られた一室。だが、その後に膨大な量の情報が脳に叩き込まれた。その中には、この人たちを惨殺している光景もあった。感触も、叫び声も、何もかも。

 

 

 

「あぁ、ぁぁあ、ああああ!ああぁぁあああぁあああぁっ・・・!」

 

 

 

つい先日まで無垢な心を持っていた。しかしその少年が自らの手で人を殺めたと知れば、この心は最も簡単に崩壊し、精神は死んでしまうだろう。だが、その半歩手前で止まれているのは、いや、止まってしまった理由はその行為自体が擬神が憑依して行った事だからだ。だがそれも時間の問題。今は興奮状態であり、自分のした事を実感できているが、完璧に理解しているわけではない。それが冷静になるにつれて状況を理解してしまうだろう。そうなればその半歩を踏み出し、奈落の淵に落ちてしまうだろう。誰かの助けを無くしてその未来は避けられない。

 

 

 

だがこの世界は必然で出来ている。絶望を与えれた者には、その絶望に見合うだけの希望を等しく与えられる。

 

そう、この少年の目の前に現れた聖女のように。

 

 

 

「よく生き延びてくれました。そして、遅くなり申し訳ありませんでした」

 

「・・・あ、なた、は?」

 

「私はエレナ。貴方を助ける為にここに赴きました。ですが私は貴方を救うことが出来なかった。その罪、お許しください。そして今一度、私に貴方を救うチャンスを」

 

 

 

少年はこの少女が言っている事が分からなかった。少年はこのエレナという少女の事を知らない。そのエレナがなぜ自分を助けようとするのか。だが今そんな事はどうでもいい。誰でもいい、その手に縋りたい。たとえ悪魔の手であったとしても、その差し出された手を取らなければ壊れてしまうから。

 

 

 

 

僕はその手を、希望に手を伸ばした。

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