遊戯王・ミソロジーテイル〈一章終了・一時更新停止〉 作:黒霧春也
3番手の風見颯汰VS赤城歌恋のデュエルは引き分けになり、周りの人達は驚きを通り越してよくわからない表情になっていた。
「あのモブが歌恋様と引き分けたなんて……」
「しかも熱いデュエルだったぞ」
「あぁ! ここまでドキドキしたデュエルは久しぶりだな」
1組の生徒は明るい顔でデュエルコートの方を見た。対する3組の生徒は倒れている風見の方を見ながらいろんな感情が篭った視線を送っていた。
「なんであんな陰キャが目立つんだよ」
「しかも相手は学年トップのデュエリストだぞ」
「イライラするわね」
「……お前ら、嫉妬心が凄すぎるだろ」
ドン引きしている生徒もいるが半分以上は風見に嫉妬や妬みの言葉を言う奴らが多く見える。
なので、その光景を横目で見ていた松永先生と大岩先生は2人ともため息を吐いた。
「3組の生徒達は問題児が多いな」
「はい……そうですよ」
「さっきはすまなかった。松永先生もかなり苦労しているんだな」
もはやクラス対抗戦の事を忘れて謝罪する大岩先生と俯いている松永先生。この2人を側から見れば関係性がいい先輩と後輩の姿だ。
ーー
〈レッド・スカンク〉の効果でデュエルの結果が引き分け(ドロー)になり、俺はフラフラになりながら立ち上がる。
「ここまで本気でデュエルをしたのはいつぶりだ?」
最後の切り札は使わなかったが、それでも楽しいと思えたデュエル。俺は確かな満足感を得ながら天井を見る。
(シンクロ召喚の使い手で学年トップのデュエリスト。この肩書きを見るとアドバンス召喚しか使ってない俺はよく引き分けられたな)
相手の手札にあった〈レッドスカンク〉がもう少し早いタイミングで使われていたら負けていた可能性もある。
(あー、いろんな可能性が浮かんでしまう)
頭に浮かぶ可能性を考えた後、髪の毛をガシカジ掻いて首を横に振る。
「ただ、楽しかったな」
「えぇ、アタシも楽しかったわ」
「それは……って!?」
視線を天井から赤城の方に戻すと目の前に本人が笑顔で立っていた。それを見た俺は思わず後ろに倒れてしまう。
「いたた」
「あら、大丈夫?」
尻餅をついた俺に向かって手を差し伸べてくる赤城。しかし、俺は恥ずかしくなって手を握らず立ち上がる。
「いきなり目の前に現れるのやめてくれ」
「あぁ、ごめんなさいね」
クスクスと笑っている赤城を見て俺はよくわからない気持ちになるが、周りからの嫉妬の視線が刺さり眉を顰める。
「しかし赤城「歌恋でいいわよ」……む、はい」
無理と言いかけたが、赤城……いや歌恋の威圧で名前呼びになった。
「あ、改めて歌恋は人気だな」
「そうかしら?」
「俺から見てもそう思うぞ」
今の俺とは正反対だと思いながら言葉を口にすると歌恋は少しムッと頬を膨らました。
「颯汰から見ればそう思うかもしれないけど、人気者はやっかみもあるから面倒よ」
「なるほど、それはら俺は空気の方がいいな」
(面倒なのはごめんだ)
ここまできたら目立つのは仕方ないとして、面倒な事は出来る限り避けたい。なのでこれ以上話すと生徒達の嫉妬がヤバいと思うので話を切る。
「さてと、そろそろ離れるよ」
「あ、それなら貴方の連絡先を聞いてもいいかしら?」
「あ、あぁ」
俺は自分の懐からスマホを取り出し歌恋に連絡先を教える。そして向こうも登録が終わったみたいでLINEでメッセージが送られてくる。
〈LINE〉〈颯汰視点〉
〈カレン(赤城歌恋)〉よろしく!(スタンプ)
〈ソウタ(風見颯汰)〉あ、はい(既読)
〈ソウタ〉よろしく!(スタンプ)(既読)
LINEをする為にスマホを見ているとある人物に声をかけられる。
「お前ら、ここでラインをするのはやめてくれ」
「青春しているのはいいが、独身の私には辛いぞ」
声をかけてきたのは大岩先生と松永先生。2人は渋い表情をしながら苦言を言う。それを聞いた俺と歌恋は周りを見渡す。
「……嫉妬どころか妬みの視線がエグいな」
「なんか怖いわね」
(ここまで来たらクラスで浮くどころかタコ殴りにされそうだ)
特に3組の生徒達の視線が怖すぎる。なので、俺は歌恋に向かって一礼をした後にデュエルリンクから離れる。
ーー
5限目の授業は対抗デュエルで潰れてしまったが、6限目は生徒達が各々のデッキを使ってデュエルを観客席で見ている俺はあくびを噛み締める。
「1組の生徒は狙いが比較的纏まっているな」
水上の〈海皇〉や黒川の〈暗黒界〉を筆頭にデッキコンセプトをしっかり決めて回している姿をよく見る。対する3組の生徒達は……。
「どうだ! おれの〈偉大魔獣ガーゼット〉の攻撃力は4000だぞ!」
「おお! すごいな」
〈偉大魔獣ガーゼット〉の攻撃力が4000になって、相手にダイレクトアタックをしたら〈魔法の筒〉で攻撃を反射されていた。他には〈カラテマン〉の効果で自滅してフィールドがガラ空きになって一斉攻撃を受けたりしている生徒も存在した。
(ガチ勢の1組とエンジョイ勢の3組か)
一応3組の生徒もガチで勝ちに行っているみたいだが、1組と比べると戦略性が低いといいざるを得ない。
「難しいな」
「何か難しいんだ?」
「あ、松永先生」
俺の隣に来た松永先生は椅子にドカッと座りコチラを見た。
「お前が1人で寂しくしているところを見て来てやったぞ」
「別に寂しくしてないですよ」
昔から仲間と呼べる人が少なく1人で過ごしていた俺は、この程度は苦にはならない。
そう思って言葉を返そうと思ったが松永先生が続きの言葉を話してくる。
「確かにお前は孤独に耐性がありそうだな。ただ、本当の意味で孤独に耐えられる者はこの世界には存在しないぞ」
「?」
「今はこの言葉の意味が分からなくてもいいさ」
よくわからない内容なので疑問符を浮かべる俺。すると松永先生は笑って天井を見た。
「さてと、お前はデュエルをしないのか?」
「えぇ、見ているだけでいいですよ」
「そうか……ただ、見ているだけは無理だと思うぞ」
「はい?」
松永先生の言葉に嫌な予感がして振り向くとある人物が仁王立ちでコチラを見ていた。
「……大岩先生がめっちゃコッチを見てないですか?」
「あぁ、見ているな」
(見ているな、じゃない!?)
ただでさえ厳つい大岩先生の真顔の威圧感。それを見た俺は体から冷や汗が出てきた。
「あの、帰っていいですか?」
「それ無理だ」
いつのまにか俺の肩を掴んでいた松永先生は立ち上がって俺を大岩先生の元に引っ張っていく。そして俺は1組の生徒達に混ざって無理矢理、デュエルをやる羽目になった。