遊戯王・ミソロジーテイル〈一章終了・一時更新停止〉 作:黒霧春也
午後の授業(デュエル)と帰りのHRが終わり、俺は足早に鞄を持って大月学園から出る。
「ハァ、めっちゃ疲れた」
あの後、大岩先生や生徒達に囲まれてデュエルを進めた。しかし、歌恋事が影響して最終的には1(俺)対5(1組の生徒)になってボロ負けした。
(流石に複数人を相手するのはキツイな)
街の歩道を歩きながら考えていると、ビルに取り付けられているモニターから興味深い音が聞こえた。
『クロガネ社が開発した最新式のDホイール(QA2000)は安定性と加速性を両立させた構成のマシンだ! さぁ、君もこのQA2000でライディングデュエルを楽しもう』
「ライディングデュエルか」
スピードワールドと呼ばれるフィールド魔法が発動されて特別ルールが追加されるデュエル。だが、俺はDホイールの免許を持ってないのでやる事ができない。
「あのDホイールが有れば通学も楽になりそうだな」
そう思って俺はモニターから目を離して自宅であるアパートの方に向かって歩き始める。
ーー
自宅に帰る途中、通りかかった公園で子供が泣いている姿を見つける。
(……)
その子供は10歳くらいの水色髪の可愛い少年。見る人によっては少女に見えるかもしれない。その彼がベンチに座って泣いていた。
(ここは無視するのか1番だよな)
小さい子供に声をかけるだけで誘拐犯にされる可能性があるので、無視して通り過ぎようとしたが少年と目があった。
「あ、あの黒髪のお兄ちゃん!」
「黒髪のお兄ちゃんって俺の事か?」
「う、うん」
服の袖で涙を拭いた少年はベンチから立ち上がってコチラに駆け寄ってくる。俺はその姿を見て何か巻き込まれたと直感的に思う。
(誘拐犯と思われないといいが)
周りに通りかかっている人達は興味深そうにコチラを見ている。その光景を見て逃げたくなるが我慢して少年の方に向く。
「あー、それで何かあったのか?」
「実は、ボクとボクのお姉ちゃんが不良にデュエルで負けてデッキを取られちゃったんだ」
「……はい?」
いきなり話がぶっ飛んだ気がするが、内容的には気になったので続きを聞く。
「それで取り返す手段が無くて泣いていたらお兄ちゃんと出会ったんだよ」
「それって……」
(俺は巻き込まれただけじゃん)
不良にデッキを取られたのはともかく、他人を巻き込んでいるこの少年も少年だと思った。
「お兄ちゃん! ボクとお姉ちゃんのデッキを取り返して!」
「そんなの無理に決まっているだろ!」
「そんな事を言わないでよ」
この話は警察案件なので交番に連れて行こうと思ったが、ガチ泣きして俺に抱きついてくる少年を無視できない。
なのでどうするか迷っていると後ろから耳障りな声が聞こえた。
「おい、クソガキ! お前はまた他人に泣きついているのか」
「!? あ、あぁ……」
この声に反応した少年が俺から離れてペタンと尻餅をついた。それを見た俺は声がした方に振り向く。
「……」
耳障りな声を発した本人の服装は、ボタンの付いてない学ランに黒いダボダボのズボン。手には木刀を持っており一昔前の不良に見える。
(まさかの本人が来たのかよ)
学ランの下には黒いシャツを着ており、胸の部分が盛り上がっているので女性。次に服から顔に視線を移すとオレンジ髪のウルフカットで、凶暴そうな見た目の少女だった。
「この辺の奴らは倒したはずだがまだ残っていたとはな!」
「倒した? もしかしてこの辺のデュエリストからデッキを奪っていたのか?」
「奪っていたなんて人聞き悪いな! オレは正当な対価としてデッキを貰っていただけだ」
(なるほどな)
だからこの辺には人が少なかったのか。俺はその言い分を聞きながら冷静に答える。
「なら俺のデッキも奪うつもりか?」
「それはオレが勝った時だ! お前が勝ったらオレが出来る事ならなんでも言う事を聞いてやる」
「まさか、その言葉で他のデュエリストを釣ったのか?」
「あぁ、下心がある奴や強欲な奴はこの言葉ですぐに釣れたぞ」
(でしょうね)
ワイルドな見た目をしている少女だが、顔立ちは整っているので引っかかる奴は多いはずだ。
「ただ、何故かオッサンが多い気がするのは気のせいか?」
「……」
(衝撃の真実!)
まさかの事実を知った俺は何も言えなくなった。しかも、相手は疑問符を浮かべているだけでオッサンが多い理由が分かってない。
(ロリコンが多いのか)
変態達の集まりみたいになっているコイツ。流石にこの状況は絵面的にまずいと思ったので辞めさせる方向を考える。
「このセリフを俺が言えるじゃないが、カツアゲはやめた方がいいぞ」
「はっ? いきなり味気ついたのか?」
「そうじゃなくてお前の身を案じているんだよ……」
「は? さっき会った奴が勝手にオレの身を案じてんじゃねーよ!!」
ぐうの音も出ない正論を吐かれたが、ここまで来たら引き下がれないので言い返す。ただこの時、水色髪の子供は黙って震えている事に俺は気づかなかった。
「お前はデュエルした相手の事を覚えているのかよ!」
「そんなの知るか! オレは強くなる為にデュエルをしているだけだ!」
「そうか、ならここで止めてやる」
「ふん! このオレ、村山蓮を止めれるものなら止めてみろ!!」
俺は懐から取り出したデュエルディスクにデッキを差し込みプレートを出現させる。相手の少女も同じ行動を取った後、俺達は一定の距離をとって掛け声を言う。
「「デュエル!!」」
『ARビジョン、リンク完了』
風見LP4000VS村山LP4000
先行は俺からなので最初に5枚引いた時の手札を確認して回し始める。
〈ターン1〉
「俺は手札の〈光刃・メルナ〉を通常召喚! そして自身の効果でフィールド魔法〈光刃・天空の城塞〉を手札に加える」
「光属性デッキか!」
「そうだ! 更にフィールド魔法〈光刃・天空の城塞〉を発動! このカードの効果処理でデッキから〈光刃・ムーン〉を手札に加える。そしてカードを1枚伏せてターンエンド」
光刃・メルナ(効果モンスター)オリカ
レベル4、光属性、戦士族
ATK1600→1900、DFF1200→1500
光刃・天空の城塞(フィールド魔法)オリカ
風見LP4000手札4枚
フィールド
光刃・メルナ
魔法・罠
光刃・天空の城塞(フィールド魔法)
伏せカード×1
正直手札が悪かったのでデッキ回りが良くないが、なんとか相手の攻撃を防げる盤面にはなった。
〈ターン2〉
「その程度のモンスターでオレは止められないぜ!」
「そうかな?」
村山がデッキトップに手を置き思いっきりカードを引いた。
「オレのターン、ドロー! オレは〈鉄鬼・イエロー〉を召喚して効果発動! レベル4以下の〈鉄鬼〉モンスターである〈鉄鬼・ブラウン〉を手札から特殊召喚する!」
鉄鬼・イエロー(効果モンスター)オリカ
レベル4、獣戦士族、地属性
ATK1800、DFF500(攻撃表示)
効果、このカード名の②の効果は1ターンに一度しか発動できない。①このカードが召喚に成功した時、手札のレベル4以下の〈鉄鬼〉モンスター1体を特殊召喚できる。②このカードがフィールドから墓地に送られた場合、デッキから〈鉄鬼〉カード1枚を手札に加える。
鉄鬼・ブラウン(効果モンスター)オリカ
レベル4、獣戦士族、地属性
ATK1600、DFF500(攻撃表示)
効果、このカード名の②の効果は1ターンに一度しか発動できない。①このモンスターが相手モンスターを破壊した時、相手に500ポイントのダメージを与える。②このカードがフィールドから墓地に送られた場合、デッキから〈鉄鬼〉カード1枚を手札に加える。
村山のフィールドに現れたのは、鍛えられた茶色い皮膚に名前の色と同じ鎧と棍棒を装備した鬼モンスター。その見た目は昔話に出てくる鬼だ。
「なんか強そうな見た目をしているな」
「おいおい、強そうなのは見た目だけじゃないぞ!」
名前が適当に見えるのはカード製作者のインプット不足なのかとツッコミたくなるが、無視して相手の動きを見る。
「オレはフィールドにいる〈鉄鬼・ブラウン〉をリリースして手札の〈鉄鬼・ブラック〉を特殊召喚!」
「ぐっ、いきなり上級モンスターの召喚か!」
「驚くのはまだ早いぜ! オレはフィールドから墓地に送られた〈鉄鬼・ブラウン〉の効果発動! デッキから〈鉄鬼〉カードである〈鉄鬼・鍛錬〉を手札に加える」
鉄鬼・ブラック(効果モンスター)
レベル6、獣戦士族、地属性
ATK2300、DFF500
効果、このカード名の①、②の効果はそれぞれ1ターンに一度しか発動できない。①自分フィールドの〈鉄鬼〉モンスター1体をリリースして送り、このカード特殊召喚できる。②このカードが相手モンスターを破壊した場合、もう一度攻撃ができる。
さっき召喚された〈鉄鬼〉モンスターよりも一回り大きな体格のモンスターである〈鉄鬼・ブラック〉に驚く。
(なんか不味そうだな)
俺は自分の身を案じる為に伏せカードを確認しつつ相手を見る。