遊戯王・ミソロジーテイル〈一章終了・一時更新停止〉 作:黒霧春也
デュエルリンクに到着して相手を見ると昼休みにデュエルをしていた赤髪の少女だった。
「あら? 貴方、少しはやりそうね」
「そうか?」
「アタシの予想だけどウチのクラスでも通用する強さがありそうよ」
俺のデュエルを見てないのに評価してくれる赤城に対して少し嬉しくなる。
「まぁ、それは置いておいて自己紹介しましょう」
「そうだな」
「まずはアタシの名前は赤城歌恋。1年1組のトップデュエリストよ!」
この自己紹介で1組の生徒達、特に女子生徒達が立ち上がって手を振った。
「歌恋様! 今日もカッコいいですよ」
「そんな奴、さっさと倒してください」
女子生徒の反応に隣で座っている男子生徒達も顔を赤くしていた。
「ヤッパリ歌恋様な美しいな」
「だな! オレが告白したら受け入れてくれるかな?」
「お前は無理だろ」
明るい歓声と黄色い声が消えてくる。対する3組の生徒達はお通夜ムードでコチラを見ていた。
「あんなボッチが勝てるわけないな」
「せいぜい馬鹿にしようぜ」
「……」
(温度差がすごくないか?)
片方はアイドルばりの応援で片方はお通夜ムード+批判。俺は悲しくなってため息を吐く。
「さてとアタシは簡単な自己紹介をしたから次は貴方の番ね」
「あぁ、俺の名前は風見颯汰だ。デュエルの腕前はそこそこだと思うぞ」
「ふーん、颯汰ね……。決めた! 貴方、アタシの取り巻きになりなさい」
「はい?」
なんかいきなり意味不明な事を言われたので唖然とする。
「アタシの取り巻きになったらボッチと馬鹿にされずに入れるわよ」
「いえ、お断りします」
「そう、うけ……え? 今断るって言った?」
「はい、言いましたよ」
俺に断られるとは思ってなかったみたいで赤城は驚いていた。でも少しした後に復活して口を開く。
「何故断るの?」
「もし入ったらパシリになるのが目に見えているからですよ」
(アイツらの性格的に恐ろしく感じる)
1組の生徒達を見るとマウントを取る気満々なのが嫌な程感じられる。なので断ると赤城は首を横に振ってコチラを睨む。
「まさか断られるなんてね……。まぁ、いいわ! 実力の違いを見せてやるわよ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
なんか微妙な状況になってしまったが、デュエルディスクを展開して俺は青色のプレートを出す。相手のディスクの色は赤色+オレンジのプレート。それを展開してオートシャッフル機能でデッキをシャッフルした後にスタート宣言をする。
「「デュエル!」」
『ARビジョン、リンク完了』
風見LP4000VS赤城LP4000
フィールドがARに変化してデュエルが開始。先行は赤城みたいで手札のカードを見てその中からカードを選んだ。
「アタシは魔法カード〈レッド・ワン〉を発動! デッキからレベル4以下の炎属性モンスター1体を手札に加える。アタシは〈レッド・ドッグ〉を手札に加える」
レッド・ワン〈通常魔法〉〈オリカ〉
このカードは1ターンに一度しか発動できない。①デッキからレベル4以下の炎属性モンスター1体を手札に加える。
最初はサーチカードで動いてきたので予想通りと思いながら相手の展開を見る。
「そして、手札に加えた〈レッド・ドッグ〉を通常召喚して効果発動! デッキから〈レッド〉カード1枚を手札に加える。アタシは〈レッド・シンクロン〉を手札に加える」
「シンクロン……つまりはシンクロ召喚ができるのですね」
「貴方、勘がいいわね」
レッド・ドッグ(効果モンスター)〈オリカ〉
レベル4、獣族、炎属性(攻撃表示)
ATK1800、DFF500
このカード名の①効果は1ターンに一度しか使用できない。①このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから〈レッド〉カード1枚を手札に加える。
この世界ではエクストラデッキから特殊召喚するには高度な技術が必要。でも、赤城は普通にできる発言をしている。
(なるほど、この世界では厄介だな)
デッキも見た事のないカードで組まれているので先が読めない。俺は自分の手札と相手を交互に観察する。
「まぁ、わかっても意味がないけどね。アタシは手札にあるチューナーモンスター〈レッド・スワロウ〉を特殊召喚! このカードは自分フィールドに炎属性モンスターが存在する場合、手札から特殊召喚できる」
「ぐっ、ここでチューナーモンスターを特殊召喚ですか」
レッド・スワロウ(効果モンスター+チューナー)〈オリカ〉
レベル2、鳥獣族、炎属性(攻撃表示)
ATK800、DFF500
このカード名の①の効果は1ターンに一度しか発動できない。①フィールドに炎属性モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる。
相手フィールには、赤い毛皮に口元に炎を溜めているモンスター〈レッド・ドッグ〉と口から火の粉を吐いている小さな鳥が飛んでいる。
「おっ! ここで歌恋様のシンクロ召喚が見れるぞ!」
「3組の生徒に見せるのはもったいなく感じるわね」
1組の生徒は笑いながら言葉を発し、3組の生徒達も興味があるようでコチラをガン見していた。
「シンクロ召喚なんてテレビでしか見た事ないぞ」
「はっ! オレは本物を見た事があるぞ!」
「テレビでしか見た事がないなんて遅れているわね」
もはや醜いマウント争いをしているクラスメイト達に、ため息も出ない俺は観客席から対戦相手である赤城に視線を戻す。
「貴方のクラスメイトは可哀想に見えてくるわ」
「同情するのはやめてください」
「あら? なら、さっさと叩き潰して終わりにしてあげるわ」
赤城はコチラをひと睨みした後、フィールドにいるモンスター2体の方に視線を戻して手を空に上げる。
「アタシはレベル4〈レッド・ドッグ〉にレベル2〈レッド・スワロウ〉をチューニング! 火口に存在する赤い竜よ! その紅蓮の炎を纏い現れろ! シンクロ召喚! レベル6〈レッドソード・ワイバーン〉!」
レベル4+レベル2=レベル6
〈レッド・ドッグ〉の体が緑色の星に変わり、隣にいた〈レッド・スワロウ〉の体が緑色のリンクに変化。星がリンクの間に入り、ピカッと光ったと思ったら相手のフィールドに赤い体をして火を吐いている大きなドラゴンが召喚された。
レッドソード・ワイバーン(シンクロモンスター)〈オリカ〉
レベル6、ドラゴン族、炎属性(攻撃表示)
召喚条件・チューナー1体+チューナー以外のモンスター1体以上
ATK2400、DFF1800
効果、このカード名の①、②の効果はそれぞれ1ターンに一度しか発動できない。①このカード以下の攻撃力を持つモンスター1体を破壊できる。②このカードが戦闘・効果で破壊された場合、墓地のレベル4以下の炎属性モンスター1体を特殊召喚できる。
(……強くないか?)
コイツの①の効果に目がいくが、本当に怖いのは②の効果だ。理由は戦闘・効果で破壊された場合、墓地のレベル4以下の炎属性モンスターを効果を無効にせずに特殊召喚されるからだ。もしこの効果で〈レッド・ドッグ〉が墓地から特殊召喚された場合、また〈レッド〉カードをサーチされる。
「なるほど、その目を見るにこのカードの強さに気づいたのかしら?」
「えぇ、①の効果に目が行きますが②の蘇生効果も強いですね」
ここで勝ちを拾いにいくにはワンショットキルを狙うしかない。俺は自分の手札を見て動きを考える。
(手札は悪くないし一気に回すか)
俺は頭の中でプレイングを考えた後、赤城をしっかり見る。
「ふふっ、次のターンが楽しみね。アタシはカードを1枚伏せてターンエンド!」
赤城LP4000手札3枚
フィールド
レッドソード・ワイバーン
魔法・罠
伏せカード1枚