魔法な先生ネギま!-火星軍諜報部報告書ー   作:白白明け

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全話を見直して誤字の多さに驚きました。やっぱり、寝起きで投稿はだめですね。
今後は夜投稿にしていきます。しばらくは毎晩投稿、できるといいなあ。


第終章ー大団円の先で編ーその3

-1-別に無問題ですよね?

 

 

某県某所に存在する麻帆良学園。数多くの教育機関が集まるその場所には、そこで暮す学生が健全な生活を営むために必要なものが都市の中に組み込まれている。

生活用品を買い揃えるための商業施設もまた当然、存在する。

そんな麻帆良に広がる商店街を一人歩く青年がいた。

身長も体重もごく平均的なものでありながら、人目を集めてしまう特徴を全身に刻んだその青年は青く澄み渡る空を見上げながら呟く。

 

「ようやく暖かくなってきたな」

 

暦は三月を数え、冬の寒さが遠のき始めたことを喜ぶように羅漢狂気は小さく笑った。

彼の他に商店街に居る人はまばら。これもまた当然のこと。

今日は平日であり時刻はもうじき13時。授業が行われている時間であるのだから、この場で暮す人々の多くが生徒なり教師なりの学校関係者である此処麻帆良でこの時間に出歩いている者。

つまり授業をさぼっている羅漢狂気のような者以外、出歩いている者は少ない。

あと数時間もすれば賑わいをみせる商店街には今、彼以外に誰もいなかった。

だというのに、羅漢狂気が独り言のように呟いた言葉に返事が返ってきた

 

「ドーデモイイケドヨ、あんま首曲げんじゃねーよ。落ちるだろうが」

 

それは返事というにはあまりにぞんざいな声色だったが、羅漢狂気は気にすることもなく謝って前をみた。

返事をした彼女は、落ちかけた姿勢を直すためいそいそと羅漢狂気の頭の上で動き出す。

 

羅漢狂気の頭に乗るもの。

それは緑の髪と瞳が特徴的な身長70㎝ほどの少女の形をした人形だった。

 

彼女の名はチャチャゼロ。麻帆良の地に封じられている伝説の吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)の従者である殺人人形(キル・ドール)だったりするのだが、彼女は何故だか今は羅漢狂気の頭にしがみつき楽しげに会話をしていた。

 

「ソォイヤ、もうすぐテストってのがあるって妹から聞いたけどよ、テストってなんだ?」

 

「拷問の類だよ。一日中机の前に居ることを強いるんだ。正直、あれは苦手だ」

 

「拷問。面白そうじゃねぇか。今度、俺も連れてけよ」

 

「まあ、別にいいいけど、自ら進んであれに参加したいなんて正気の沙汰じゃないな。それはそうとチャチャゼロ、身体の調子はどうだ?前よりは動けるようになってきたか?」

 

自分の頭の上を動き回る彼女に、彼としては珍しく優しい声色で心配する言葉をかける。

自他共に認める天邪鬼であり不良でもある彼が心配していると、こうして誰かのことを気遣う言葉を素直に言うのは珍しいことで、彼の弟子でありながらも素直に心配されることの少ない綾瀬夕映が今の羅漢狂気を見たのなら目を見開き「天然記念物です」と呟いたに違いない。

 

そして、彼と同じく主に似て天邪鬼であるはずのチャチャゼロもまた―――

 

「ケケケ、マーナ。お前がご主人に血を与えてるおかげで俺も別荘の外でもある程度動けるぜ」

 

羅漢狂気の前では素直になっていた。

 

「マアヨー。そこん所は感謝してるけどよー、狂気よー、ご主人ばっかズルいんじゃねーのかなー。俺にもお前の血、飲ませろよ」

 

羅漢狂気とチャチャゼロの関係性。

二人の周りにいる多くの人々はその関係がどんなものなのかとよく疑問に思うが、それは自分の主が麻帆良の地に封じられ、本来の力を封印されているために『別荘』と呼ばれる麻帆良にありながら封印の力が及ばない場所でしか動くことのできないチャチャゼロを外の世界でも動けるようにするために彼女の主に自らの血を与え、魔力を与えている羅漢狂気の彼らしからぬ優しすぎる行動を思えば至極わかりやすいものだった。

 

「なんだ、妬いてるのか?」

 

「ケケケ、コロスゾ」

 

その関係性をわかりにくくしていることはただ一つ。

彼が人間で彼女が人形であること。

 

ただ、それだけのことだった。

 

羅漢狂気は頭にチャチャゼロを乗せ、チャチャゼロは羅漢狂気の頭にしがみつき、二人はこぢんまりとした店内にアンティーク調の家具が並ぶ静かな喫茶店へと入っていく。

この店のマスターは羅漢狂気が人形を向かいの椅子に座らせケーキとコーヒーを2人分注文しても一切顔を曇らせないよくできた初老の男性だった。

 

 

-2-彼女の親と妹と

 

 

場所は変わり、チャチャゼロが羅漢狂気と共に楽しくお喋りをしている頃、彼女の主であり、この麻帆良の地に封じられた伝説の吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)であり、同時に先月麻帆良学園女子中等部に臨時講師として転任してきたネギ・スプリングフィールドの生徒であるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは校舎の屋上にパラソルと椅子を持ち込こみ、羅漢狂気と同じように授業をさぼりくつろいでいた。

 

「最近、日差しが強くなってきたな。私は冬の寒さの方が好きだというのに、まったく。茶々丸、紅茶おかわりだ。アイスでな」

 

「はい、マスター」

 

そんな彼女に寄り添い紅茶を注いでいる緑髪に緑の目が特徴的な美少女―――のように見える女性型ロボット(ガイノイド)、絡繰茶々丸はふと思い出したように顔を上げた。

 

「そう言えばマスター、先ほど学園長より連絡がありました。いい加減、屋上にテーブルや椅子を持ち込むのを止めてほしいとのことでしたが―――

 

「無視しろ」

 

―――了解です。それともう一つ、マスターに頼みたいことがあるので時間をつくれないかということでした。タイミング的にネギ先生に関することだと思うのですが、どういたしましょう」

 

「ふん、ジジイの頼むごとなんてどうせ面倒なことなんだろうが、まあ、話位は聞いてやるか。放課後にでも会いに行くと連絡しておけ」

 

「了解です。マスター」

 

エヴァンジェリンは椅子から立ち上がり、屋上の端に歩いて行き麻帆良学園女子中等部の校庭全体が見渡せる位置で立ち止まった。絡繰茶々丸から差し出されたグラスを受け取って、一息に飲み干すと氷をかみ砕きながら微笑する。

 

「それにしても、ネギ・スプリングフィールドか。私にこんな封印を施した奴の息子にようやく会えた。そして、思い出すな。あいつと初めて会った日のことを」

 

「マスター、あいつというのはネギ先生の父親であるナギ・スプリングフィールドのことですか。それとも、狂気兄さんのことでしょうか」

 

「ふふ、2年前のあの満月の夜のことさ」

 

 

2年前のあの満月の夜。

童姿の闇の魔王は英雄と出会った。

 

 

一目見て理解ができた。目の前の相手が自分を殺しうる存在だということを。

そして、力の大半を封印された今の自分はおろか全盛期であったあの頃の力をもってしても、勝てるかどうかわからないほどの力を有していることを。

 

その力の源は魔力ではないとエヴァンジェリンは膨大な経験から無意識下で感じ取る。

その英雄が秘めた力が魔法ではなく、どちらかといえば最近従者に加えた絡繰茶々丸と同じく科学の産物だと気づいた彼女はやはり伝説と称されるほどの吸血鬼であり、魔法使いだった。

 

そして、そんな彼女だからこそ、英雄を前に自らの圧倒的不利を知りながらも尊大に笑って見せた。

 

「貴様は誰だ。麻帆良関係者ではないな。賞金稼ぎか?それともメガロメセンブリアの犬か?どちらにせよ真っ当な人間ではないな。貴様からは血の匂いがするぞ。それも百や千では足りぬほどの濃い臭いがな」

 

「………」

 

「ちっ、なんとか言ったらどうだ。貴様は私に会いに来たのだろう。『英雄』」

 

苛立ちを募らすエヴァンジェリンの言葉に、英雄と呼ばれた青年はようやく反応をみせた。

それは意外にも見た目の年相応に悪戯心を感じさせる普通の笑みだった。

 

「俺を『英雄』と呼ぶか。親父から聞いていた通りだ。やっぱり、お前には正体を隠すことは難しそうだ。こうして挨拶をしに来てよかった。初めまして、これからよろしく。俺は今日から麻帆良学園にある上坂高校という学校に転校してきた」

 

想像していたのとは違う、殺伐とした空気からは程遠い自己紹介を受けてエヴァンジェリンは戸惑いながらも警戒を緩める。

 

「貴様、誰だ?名前を言え」

 

「俺の名前は羅漢狂気」

 

「ラカン?貴様、まさかジャックの関係者か」

 

「ああ、紅い翼(アラルブラ)の英雄ジャック・ラカンは俺の親父だ。お前の話は親父から良く聞かされた。伝説の吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)、闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。できれば、俺と友達になってくれると嬉しい」

 

羅漢狂気が最後に言った言葉をエヴァンジェリンはしばらくの間、理解することが出来なかった。

耳を疑い。その発音の意味をよく吟味し解釈に解釈を加え。

いやいやそんな筈がないと否定しながら、にこにこと笑う羅漢狂気の顔を見てその意味を否定する材料が終ぞ見つからないことが解ると、らしくもなく動揺しながら聞き返した。

 

「お、お前、今、私に友達になってくれと頼んだのか?」

 

友達になってください。

そんな言葉、登校地獄の呪いをかけられ15年間もの長い間、麻帆良学園女子中等部の生徒として封印されている彼女からすれば聞き飽きた言葉でもあった。

しかし、自分の正体を知ってもなお、そんなことを言ってくる奴に出会ったのは

 

「ああ、だって俺、ここに来たばかりで友達いないから」

 

初めてのことだった。

 

そんな懐かしい過去を回想しながら、エヴァンジェリンはため息をついた。

 

「あの頃の狂気は可愛かった。毎日のように私に会いに来てはまるで子供の様に学校であったことを話してきたというのに、今のあいつときたら私の家に来る頻度が減ったどころか一部では麻帆良最強の不良なんてレッテルを張られている。二年の間にあんなにも変わるとは、やはり人間は変な生き物だ」

 

「そうですね。男性ですし喧嘩をするのは元気で良いと思いますが、姉さんというものがありながら女性関係も派手になっている様子で、高音さんや、この間もクラスメイトの女子二人を侍らせて歩いている姿を買い物中にお見かけしました」

 

「まったく、あいつときたら本当にどうしようもない奴だな。いつか刺されても知らんぞ」

 

エヴァンジェリンはそう言って、心配そうに遠くを見た。

羅漢狂気と麻帆良の地に封じられている伝説の吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。

そしてチャチャゼロの妹である絡繰茶々丸の関係性。

それは姉と弟と妹と兄の家族関係に少しだけ似ていた。

 

 

 

-3-三人寄れば姦しい。三十人なら姦姦姦姦姦姦姦姦姦姦。

 

 

羅漢狂気とチャチャゼロが喫茶店で逢引きをし、屋上でエヴァンジェリンと絡繰茶々丸が過去の懐かしさに浸っている頃、麻穂良学園女子中等部2年A組の教室ではある噂がまことしやかに囁かれていた。

 

「報道部突撃リポーター朝倉和美は見た!最強の不良高校生!!今週のまほら新聞の一面はこれで決定ね~!」

 

授業と授業の間の休み時間。授業中に書き上げた原稿を自慢げに掲げながら麻帆良報道部所属の女子中学生、朝倉(あさくら)和美(かずみ)は机に上がりそう叫んだ。クラスのほとんどの視線が朝倉和美へと向けられる。机に上がっているせいでスカートの防御力がきわどいことになっているのだが、そこは周りが全て女の子で囲まれた環境故のガードの甘さだった。

 

朝倉和美の隣の席に座る雪広(ゆきひろ)あやせはそんな彼女を――

 

「はしたないですわよ。下りなさい」

 

―――と窘めてから、眉をひそめてため息をついた。

 

「朝倉さん。貴女またしょうもない捏造記事を書きましたの?人の趣味をとやかく言うつもりはありませんけれど、真実かわからない曖昧なことをさも本当のことであるかのように報道するのはよくありませんわよ」

 

自分の書いた記事を最初から捏造だという雪広あやせの言動に朝倉和美は慌てたが、そう決めつけられても仕方がないことを彼女は再三にわたり繰り返していたというのも、事実だった。

最近のもので言えば彼女達のクラスメイトであり、この麻帆良の学園長の孫でもある近衛(このえ)木乃香(このか)のお見合い騒動。近衛木乃香が中学生でありながら家庭の事情でお見合いをしていたというのは事実であったが、このクラスの副担任であるネギ・スプリングフィールドがその相手であるとか、果ては彼が異国の王子様であるというのは、まったくの出鱈目であった。

そんなこともありこのクラスにおいて朝倉和美の報道の信用度は猫が顔を洗ったら雨が降る程度である。

 

「ややや、いいんちょ。今回の記事はマジなんだって。私は確かにこの目で見たんだから」

 

朝倉和美の自分の右手で右目を指さしながら息を荒くし、言う。

 

「授業中抜けは当たり前、学校をサボって街を徘徊。ゲームセンターでの目撃情報多し。女の子にも不自由してない様子でね~。あのお堅いことで有名な聖ウルスラ女子高等学校の制服を着た金髪の綺麗なお姉さんやクラスメイトと思しき二人の美少女、私が見かけただけでも三人いたわ!」

 

クラス中の注目を集めながら朝倉和美は断言した。

今回こそは真実だぞと。

 

「こんな絵に描いたような不良でありながら、時にはナンパされている女生徒を救い、時にはお年寄りの荷物持ちをする。そんな最強の不良高校生を報道部突撃リポーター朝倉は確かに見たんだから!写真だってあるのよ!」

 

そういって教室にばら撒かれる写真とここまで言い切る朝倉和美を見ては、雪広あやせも納得しないわけにはいかなかった。

雪広あやせは先ほどとは違い、申し訳なさそうに眉を寄せ朝倉和美に素直に謝罪する。

 

「そうですか………申し訳ありませんわ。私ったらまたしょうもない捏造記事だと思いまして、今回は本当だったのですね。早とちりしてしまいましたわ」

 

「ううん。わかってくれればいーよ」

 

屈託のない笑顔で朝倉和美は笑う。きっとこの笑顔が、たまに捏造記事を書いて周りに迷惑をかけることもある朝倉和美がクラスで嫌われない理由の一つだった。

 

さて、今、クラスにいる人の多くが朝倉和美の話を聞き、そしてばら撒かれた写真を拾い、あるいは不可抗力の内に写真を見たのだが、その反応を三つの視点で見てみよう。

 

 

いち早くその写真を拾った女生徒、麻帆良女子中等部の成績の悪い生徒を集めたスーパー戦隊バカレンジャー所属、バカピンクこと佐々木まき絵はそのピンクの髪を揺らしながら首を傾げた。

 

「う~ん、私はあんまり好みじゃないかな。もっとかわいい子が好きかも。それでさ、朝倉さん。どうしてこの不良さんがスクープなの?ただの心優しい不良さんなんじゃないかな?普通じゃん」

 

「ふふふ、よく聞いてくれたわ。流石はまき絵!この不良はただの不良じゃないのよ。言ったでしょう、麻帆良『最強』の不良なのよ!」

 

最強。

 

その二文字に反応する女生徒が約2名。

 

「最強アルか」

 

褐色の肌に色素の抜けた明るいクリーム色の髪が特徴的な留学生。

スーパー戦隊バカレンジャー、バカイエローこと古菲(くーふぇい)。

 

「最強でござるか」

 

緑色の髪と糸目、そして中学生とは思えない抜群のプロポーションをした少女。

スーパー戦隊バカレンジャー、バカブルーこと長瀬(ながせ)楓(かえで)。

 

2人は最強という言葉に、花に吸い寄せられる蝶のようにふらふらと朝倉和美と佐々木まき絵の傍へと近づいて行った。

 

「まき絵も知っているでしょう。この麻帆良には武道四天王と呼ばれる猛者たちがいることを」

 

「え?あ、まあ、知っているって言うか全員クラスメイトだしね」

 

バカイエローとバカブルーは共に武道四天王の一角を担っていた。

運動は出来るが勉強はできない。とても分かりやすいキャラクター像だった。

 

「けど、彼らがこの麻帆良最強ってわけじゃない。まあ、くーふぇは麻帆良大格闘大会(ウルティマホラ)の昨年の覇者だし、最強って言えば最強なんだけど、それでも暫定最強よ。あの大会に出てない猛者だっているし、一年前のことだから去年より強くなっている人たちも多い筈だもの。今現在、この麻帆良最強は誰なのか?今、麻帆良はその話題で持ちきりなのよ!」

 

佐々木まき絵はそんな話題、一度だって聞いたことがなかったけれど報道部に所属するクラスメイトがそう言うのだからそうなのだろうと納得して熱心に頷いた。

ここに朝倉和美による過大広告があったことを彼女は知らない。

 

「それでね、もちろん真っ先に名前が挙がったのは武道四天王なんだけど、それ以外に上がった名前もあるのよ。それが麻帆良の高等科にいる四人。東正高校の中村達也。西聖高校の大豪院ポチ。南制高校の山下慶一。北生高校の豪徳寺薫からなる麻帆良不良四天王なのよ。けどね、取材にいった私達報道部に対して彼らは口をそろえてこう言ったわ。『麻帆良最強の不良は奴だ』って」

 

「………奴」

 

朝倉和美の卓越した話術によって、なぜだか周囲に緊迫した空気が流れた。

佐々木まき絵、古菲、長瀬楓、そして周りに集まっていたクラスメイト達がみな、唾を呑み写真に写った人物を見つめる。

 

「麻帆良上坂高校2年生。羅漢狂気。またの名を、暴力機工(バイオレンスドール)!!!」

 

 

「「「「暴力機工(バイオレンスドール!!!)」」」」

 

 

誰もがその名に戦慄した。

 

 

 

教室の一角を戦慄が支配する中で先日より現実の裏側である空想の世界の秘密。魔法の存在を知った故にこのクラスの副担任であり魔法使いでもあるネギ・スプリングフィールドの協力者となった神楽坂明日菜もまた落ちていた写真を拾いそこに映る人物へと思いをはせていた。

 

―――こいつ、じゃなかった。この人、ネギが魔法使いだって分かった時に一緒にいた人よね。一ヶ月くらい全然見かけなかったけど、本当に麻帆良の生徒だったんだ―――

 

神楽坂明日菜と羅漢狂気が出会わないのは無理もない。

彼らは学校も違えば年も違う。中学生と高校生では麻帆良全体で行われる学園祭などの大きな行事でもない限り、行事が重なりたまたま会うこともない。

どこかに出会おうという意志、出会わそうという意志が働かない限りは女子中学生と男子高校生はそうそう出会えるものではないのだ。

 

それにしてもと神楽坂明日菜は思う。

 

―――不良、ねえ。まっ、確かに見た目は不良よね。顔に刺青なんて入れてるし、おっかないもん。でも、けっこう優しかったわよね。魔法の露見なんていう結構な問題があったのに大人の対応してたし。誤解されやすい奴なのかも―――

 

そんなことを考えている神楽坂明日菜の元に

 

「明日菜~。うちにも不良さんの写真みせて~」

 

長い黒髪とほんわかした笑顔がチャームポイントのルームメイト、近衛木乃香

 

「あらあら、この方、そう言えばこの前に保育園の傍で見かけたわ」

 

クラス一の巨乳と左目下の泣き黒子が中学生とは思えない母性を感じさせるクラスメイト、那波(なば)千鶴(ちづる)

 

「どれどれ、我が親友くーふぇのライバルになるかもしれない男はどんな顔をしているネ」

 

中国人っぽい喋り方と中国人っぽい髪飾りが中国人っぽさを醸し出す留学生のクラスメイト、超(ちゃお)鈴音(りんめい)

 

「わー、すっごい刺青だねー。大人って感じで結構カッコいいかもー。ね!史伽!」

 

「そ、そうかな。少し怖そうだけど………って、あれ?お姉ちゃん。この人、前に会ったことないかな?」

 

クラスの中でも群を抜き低い身長と幼い体つきの所為で可愛らしい小学生にしか見えない双子のクラスメイト、鳴滝姉妹。姉の鳴滝(なるたき)風香(ふうか)と妹の鳴滝(なるたき)史伽(ふみか)が近づき写真を覗きこんでくる。

 

普段はあまり見られない6人の組み合わせ。彼女たちが自然と神楽坂明日菜の周りに集まってきたのは、彼女のその性格と彼女自身もあまり自覚していないカリスマ性が有ったからこそだった。

6人の会話は意外と弾む。

そして、普段はあまりない組み合わせでの会話を楽しんでいた神楽坂明日菜は気づくことが出来なかった。

 

彼女たちの一人が、写真に写る彼の姿を見て不敵に微笑んでいたことに。

 

 

 

教室を戦慄が支配し、教室の一角で伏線が張られる中、くだんの写真の君の弟子である綾瀬夕映は机で頭を抱えながら視界に映ってしまった写真を見ていた。

 

―――やはりとは思いましたが、やはり師匠でしたか。朝倉さんに目をつけられるとは面倒なことになったのです。師匠のことですからネギ先生のように魔法露見させてしまうことは無いでしょうが、気を使ってイライラはするでしょうし。八つ当たりされることになるのは多分、私なのですね―――

 

「はぁ」

 

綾瀬夕映は思わずため息をついた。

 

「ゆえゆえ~、駄目だよ。ため息をついたら幸せが逃げちゃうんだよ」

 

そんな彼女に話しかけてきたのは、前髪で顔を隠し本を抱えた少女、宮崎(みやざき)のどかだった。

綾瀬夕映は親友のそんな発言に癒されながら、一ヶ月ほど前の出来事。このクラスに副担任としてやってきた魔法使い、ネギ・スプリングフィールドが転任初日に神楽坂明日菜に魔法使いであることを知られてしまったということを師匠から聞かされた時のことを思いだした。

 

―――初日で魔法使いであることがばれたと聞いた時には、思わずネギ先生に馬鹿なのですねと言ってしまいそうになりましたが、師匠からのどかを助ける為だったと経緯が聞けて良かったのです。おかげでネギ先生に「馬鹿なのですね」と言わずに済みました。それにしても師匠はネギ先生に随分と優しいように思えるのです。やはり、思うところがあるのでしょうか。同じ、『英雄』の息子として―――

 

綾瀬夕映は聞いている。

師である羅漢狂気の魔法界での特殊な立ち位置を他ならぬ羅漢狂気から聞いている。

彼女はそれを知ったうえで羅漢狂気の弟子であることを選んだ。

 

それは全て、あの日、彼と出会い初めてかけられた言葉を聞いて、この人の弟子になりたいと思ったからだ。

 

 

―――お前は、

 

 

「―――ぇ、ゆえゆえ、聞いてる?大丈夫?」

 

過去の記憶に沈んでいた綾瀬夕映の思考が宮崎のどかでは無い、もう一人の親友の声によって呼び戻される。

 

「―――っと、すいませんです。考え事をしていました。何の話でしたっけ?」

 

綾瀬夕映のもう一人の親友。そして宮崎のどかの親友でもある眼鏡をかけた中学生とは思えないプロポーションの少女、早乙女ハルナはしっかりしなさいよと綾瀬夕映を窘めながらニヤリと絵本にでてくるシャシャ猫のような笑みを浮かべ小声で言った。

 

「のどかの恋の話よ。恋バナよ、恋バナ。くーっ、まさかの男を怖がっていたのどかに好きな人ができるなんてねー。パルさんは嬉しいよ」

 

「なんと、のどか、それは本当なのですか?そのお相手よかったら教えてほしいのです。できる限り協力しますですよ」

 

「え、えっとねー。その、ね。ゆえゆえ、パル、絶対に内緒だよ。実はね、私、ネギ先生のことが」

 

親友の恋のお相手を聞いて、色んな意味でいやいやそれは止めておけと思った綾瀬夕映だったが、あれ、人の子とは言えない私がいますですと悟り、赤くなり、何も言うのを止めた。

 

 

このクラスと羅漢狂気の関係性。それはこれから築かれていくこととなるのだろう。

 




お気に入り登録3人!やったね!末広がりの数字だよ!

・・・誰かそれを言うなら8だろ!とか言ってみたり。
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