ある決闘者の理想郷   作:ラムダエル

11 / 24
いよいよデュエルパートです。そういえば、スキルやテーマ縛り以外にも、この作品ではデュエルのルールを少し変えています。

・『除外』の概念がない。今のところ。【馬頭鬼】みたいな墓地効果はみんな【E・HERO ネクロダークマン】みたいになります。
・ダメージステップ中の発動制限などが一部なくなります。例えば、【人食い虫】踏んでも【スキルドレイン】をチェーンして無効にできる、といった感じです。
・リミットレギュレーションがテーマデッキごとに違います。例えば、継承名デッキでは【サンダーボルト】禁止、的な。イメージはデュエルリンクスのリミットに近いです。

追記:『除外』の概念は一部のカード効果にはあることになりました。その方が便利なので。


TURN5 試練-手- Aパート

 

 シェルタープラネットは半径30キロメートルの超巨大ドームだが、天井部分はほとんどホログラムであり、日光や雨風は入ってくる。内部にはちゃんと天井付きの小型シェルターが多数存在し、民間人が避難した際にはその小型シェルターの中で過ごすのが基本だ。では何のためにその広大な敷地が設けられたのか。

「森じゃん……」

「草原だあ……」

「海かよ……」

 各ゲートからシェルタープラネット内に入ったデュエリストたちは、デュエル会場と呼ぶにはあまりにも自然環境過ぎる光景に面食らった。

「「この私も初めて見ましたが、なんという大自然でしょう!!」」

 実況のリドラー吉本も驚きの声を上げている。

「「人知れず育まれた大自然、未開の僻地に魔王は潜んでいる……並の勇者では魔王の塔へたどり着くことすら困難を極めるだろう……」」

 香蘭もプラネット内は初見のはずだが、彼女は語り手のプロなので、さも既知の設定であるかのようなコメントだ。

 もちろん、実際にはこの20年間プラネット内の自然は整備され続けてきた。域内の植物はすべて食用の果実や木の実を生産し、人工の海は漁業資源の養殖場となっている。エンドレスシティの人類文明が何らかの破たんを迎えた時、このプラネット内で最低限の生活ができるようにという、いわば『種の保険』なのだ。もっとも、人類を脅かすような自然災害や病原体といった脅威はすべて克服されているため、近年はこの施設の存在意義を問う声が増えていた。そこでチェスは、この施設を大規模デュエルイベントに利用する発想に至ったのだ。

「私たちここで七日も過ごすの……」

「やば、マジのサバイバルしなきゃじゃん!」

「うおおこのために俺は火起こし機持ってきたぜ!」

 一応、域内に点在する小型シェルターで夜を過ごせることは説明されているのだが、大半の参加者はお祭りムードに飲まれて忘れてしまっていた。さらに、『魔王の傀儡』がすぐに現れたことで、プレイヤーたちの頭は完全にそれどころではなくなってしまった。

「ヒャッハー!!! 人間が来たぜぇ!!!」

「勇者気取りの命知らずどもが!!」

「八つ裂き! 八つ裂きぃ!!!」

 ゲートをくぐったばかりのプレイヤーたちの前に、【タートルタイガー】、【ドレイク】、【バーサーカー】といった『魔王の傀儡』達が立ちふさがった。このモンスターたちに扮しているのが、シティ中から集められたショーデュエリストなのだ。

「デュエルだ!」

「デュエルっ!」

「デュエルゥ!」

 無数のドローンが宙を舞い、プレイヤーたちの戦いを生中継する。ドームの壁に写されている映像と同じものが、ホログラムデータとして実況二人の周囲に浮いている。リドラー吉本と香蘭マルムスティーンは、その中から盛り上がっているデュエルをピックアップして紹介するのだ。リドラーがホログラムを次々とスワイプしながら言った。

「「まだ序盤なので、強力な『傀儡』は出てこないわけですが……変則ルールや特殊スキルを使う敵に、戸惑うプレイヤーは多いみたいですね……」」

「「魔王の力は人の子にとって未知の領域……そこに踏み込み凌駕することこそ勇者の本懐……既に力を示したものがほら、そこに……」」

 香蘭が手元にホログラムデータの一つを手繰り寄せ、リドラーに見せた。

「「あっ、このプレイヤーは! 【華麗なる潜入工作員】の衣装を着ていますが、ボロミア・ボークス選手じゃありませんか! パワーとスピードを兼ね備えた【モリンフェン】デッキは健在のようですね……」」

「「名高いデュエリストたちから漂う、とりわけ強い闘志……あの者たちは純粋に、強者を求めてここへ来たのでしょう……」」

「「ええ、なんたって、この『デステニー・クロスロード』には、あの求道奏音も一般プレイヤーとして参加していますからねえ、プレイヤー同士の対戦も認められていますし、レジェンドを倒すことを目的とした参加者は少なからずいるでしょう……しかし……」」

 リドラーはしゃべりながらもずっと、器用にホログラムデータを探し回っていた。

「「【継承名】デッキを使ったデュエルが見つかりませんね……狙われるのをわかってあえて姿を隠しているのでしょうか……」」

 その求道奏音が、いまだゲートを潜れてすらいないなどとは、誰も想像すらしなかった。

 

「ね? いいでしょ奏音ちゃん? 私の手も、毎日手入れしてるから触り心地には自信があるの」

 手フェチのマンジュ・ゴッド、もといディーピカ手島は奏音の魚の手と自分の手を絡め始めた。

「いやーっ!」

 奏音はようやく声を出し、ディーピカから飛びのいた。抗わねば何をされるかわからないという危機感が恐怖を克服したのだ。

「あ、ごめんね、いきなりでびっくりさせちゃったよね? ちゃんと少しずつ慣らしていくから安心して?」

「いやそういうことじゃないわ! 私は! 手を触られるのも! 君とデュエルする気も! ないから! 早く魔王の塔に行くんだから!」

「その格好で?」

「うっ……」

 正直、魚ギョ戦士の姿で魔王と対峙する自分を思い浮かべると悲しくなる。

「私、いい情報持ってるよ?」

「え?」

 ディーピカはマンジュ・ゴッドの見た目でやけに可愛いポーズをしていた。おそらく交渉を持ちかけられているのだと奏音は思った。

「お助けキャラは知ってるでしょ?」

 奏音は首をひねった……結構前にチェスからイベントのルールを説明されたときに、その単語は出てきていたような気がする。

「奏音ちゃんは強いから気にしてないかもしれないけどね、このRPGには、プレイヤーの窮地を助けてくれるお助けキャラが存在してるの」

「そ、それくらい知ってるし……」

 ディーピカはくすくす笑い、言葉をつづける。

「お助けキャラはショーデュエル界の腕利きスタッフの人が務めてるんだけど、その中にあの『マッスル剛力』がいるらしいの」

「え?! あのマッスルが!? なんで?」

 マッスル剛力はショーデュエル界の衣装担当で、今回のイベント衣装も一部手掛けているという。さすがに魚ギョ戦士のような下級勇者の衣装は違うだろうが。

「詳しくは知らないけど、『マッスル剛力』がお助けしてくれるってことはやっぱり、衣装関連なんじゃないかしら?」

 奏音はごくりと喉を鳴らした。

「このプラネット内じゃゲームに有利なアイテムやスキルが隠されているっていうし、新たな衣装や装備の入手もひょっとしたら……」

 今度は奏音が、ディーピカに詰め寄った。

「マッスル剛力が! 替えの衣装をくれるかもしれないってこと?!」

 ディーピカはまたもくすくす笑った。

「確証はないけどね」

「うおおおおやる! 私やるよ! マッスル剛力に会って、ロイヤルガードかゲートキーパーの衣装にしてもらう!!! 教えてくれてありがとう!」

 奏音はそういうとゲートに向かって走りだ……せなかった。奏音の魚の手はマンジュ・ゴッドの太い腕に掴まれていた。

「奏音ちゃん……私、マッスル剛力の居場所には心あたりがあるんだけど……」

 奏音の背筋に冷たいものが走った。

(こいつまさか! 最初からそれが狙いかっ!)

「私にデュエルに勝ったら教えてあげてもいいよ?」

 顔までマンジュ・ゴッドの衣装に包まれており表情は見えないが、さぞかし下卑た顔をしているに違いないと奏音は思った。彼女の下心と強かさには眩暈すら覚えるほどだったが……ここで奏音は急に、ディーピカの腕を掴み返した。

「ひゃっ」

 さすがのディーピカもたじろいだ。

「あのさ……ディーピカちゃん」

 奏音の心は今、恐怖でも危機感でも嫌悪感でもないものに染まりつつあった。

「私、なめられるのが一番嫌いなんだよね」

 それは、闘争心だった。

「『デュエルに勝ったら教えてあげてもいいよ』とかさ、上から目線過ぎでしょ。私を誰だと思ってるの?」

 ディーピカは身震いした。それは畏怖ではなく、興奮によるものだった。

「嬉しい……交渉成立ね?」

 

 イベント基本ルールその②

《勇者同士での決闘も可能》

《その際、傀儡から奪ったスキル・アイテム・カードや、イベントの攻略情報などを賭けることができる》

《また、上記のほかに自身の行動決定権も賭けることができる。例えば、勝者は敗者を自分の勇者パーティーの一員に加えたり、『デステニー・クロスロード』をリタイアさせたりすることもできる》

《なお、賭けの条件はデュエル前に提示し、双方の合意のもとに成り立つ》

 

 第18番ゲートの外で、人知れず勇者プレイヤー二人のデュエルが始まった。腕のデバイスでデュエルアプリを起動し、先攻はディーピカ手島が取った。

 

《ディーピカ手島 LP8000》VS《求道奏音 LP8000》

 

「私のターンね。ドロー」

「ちょっと待てぇ!」

 奏音は思わず突っ込んだ。

「先攻はドローできないから!」

「あ、そうだった、今はできないんだよね……久しぶりだから間違えちゃった……」

「久しぶりって……君、日常生活でデュエルしないの?」

「私、見てばっかりだから……」

 マンジュ・ゴッドがその多くの手で一斉に頭をかいた。手の動きの設定は変えられないのかと奏音は思ったが、同時にもう一つ疑問が湧いた。

(先攻にドローって、昔はできたんだっけ……)

 エンドレスシティはチェスが『構築』してから二十年しかたっていないが、150年ほどの歴史がある設定だ。災害や疫病、文明の発達の歴史は奏音も簡単に学んだが、デュエルルール変遷の歴史はあまり知らなかった。この世界ではほとんど変わっていない、みたいなことをチェスは言っていた気もするが、奏音は詳しく思い出せなかった。

(おっと、集中しないと……ディーピカ手島は多分アマチュアだけど、トーナメントに出ない腕利きデュエリストなんて腐るほどいるからね……)

 ディーピカは自分の手札を見て何を出そうか悩んでいる。スキル初動のデッキじゃないらしい。一方、奏音の手札は、

【継承名 ワン・ステップ・クローサー】

【継承名 バーニング・イン・ザ・スカイ】

【継承名 ウィズ・ユー】

【継承秘術 ヴィクティマイズド】

【継承名 インビジブル】

(あ、これ勝ったな……)

 自分でも驚くほど引きが良かった。妨害に対応しつつ8000ダメージを狙える。

「じゃあ、私はこのカードを使うね。【手札抹殺】!」

 

《手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする》

 

(うそぉぉぉぉぉ!!!!)

 もちろん、奏音はレジェンドなので心の叫びも顔には出ない。

(よりにもよって【手札抹殺】かあ……墓地で使える効果もないし、痛すぎ……)

 粛々と手札を捨て、新たなカードを引き直していると、

「きゃー! 奏音ちゃんの手がカードをドローしてるぅぅぅ!」

 ディーピカが興奮していた。

「生の奏音ちゃんのドローだなんて……やだ、鼻血でそう……」

「早くしなよ! ターンには時間制限あるからね!」

 むしろ興奮させてプレイングミスを狙うのもありかもしれないと思ったが、そういう戦い方は奏音の好みではない。特に、このディーピカ手島は全力でこてんぱんにしたかった。

「私はこのカードを召喚、【なぞの手】!」

 空間がゆがみ、次元の狭間から細い緑の腕が現れた。

 

《ATK500》《闇属性・悪魔族・通常・✪2》

 

「きれいな手でしょ……この手になら直接攻撃されても嬉しくなると思うの」

「ならないから。早くして」

「もう奏音ちゃんったらせっかちね……じゃあ私は魔法カード発動、【黙する死者】!」

 

《自分の墓地の通常モンスター1体を対象、特殊召喚》

 

「【死者の腕】を復活させるね」

 赤黒い混沌とした沼が現れ、そこから腕が何本か伸びてきた。

 

《DFF600》《闇属性・アンデット族・通常・✪2》

 

「手ばっかじゃん……」

 奏音は呆れた。【モリンフェン】やら【マグネッツ】などのようなテーマデッキではなく、ただの趣味デッキだ。奏音に勝てるとは思えない。

「ここでフィールドに、✪2の【手】が揃ったから、私はエクシーズ召喚するね」

(ん???)

「手と手を重ねてオーバーレイ!」

 言いながらマンジュ・ゴッドのたくさんの手が一斉に合掌した。

「ランク2! 【生者の腕】!!!」

 輝く泉から、綺麗になった元・死者の腕がにょきにょき伸びてきた。混沌も死も感じさせない、健康的な腕だ。ピースしている。

 

《ATK1200》《光属性・アンデット族・ランク2》

 

「私は永続魔法、【ハンディキャップ・ハンド】を発動!」

 

《永続:相手がドローフェイズ以外でカードをドローした場合に発動する。相手は手札を一枚デッキに戻し、自分はカードを一枚ドローする》

 

「最後に一枚カードを伏せてターン終了……どう、私の【手】デッキは?」

「えーと……手ってテーマカテゴリーなの?」

「ううん、違うよ。でも、デュエル事務局に掛け合って、【手】のカードを指定するスキルは作ってもらったの」

「えぇ……なにその行動力……」

 テーマカテゴリーのデッキが極端にパワー不足の場合、事務局に相談するとテーマのサポートカードや新規スキルを増やしてもらえることがあるが、手のイラストが共通しているからという理由でスキルを獲得したなんて聞いたことがない。

 ディーピカはくすくす笑いながら言う。

「【なぞの手】も【死者の腕】も本来はそれぞれが独立したテーマカテゴリーなんだけどね、各テーマから二種類までしかデッキに入れちゃいけないっていう条件で、スキルを認めてもらったの」

「各テーマ二種類って……じゃあ【死者の腕】テーマからは、死者の腕と生者の腕の二種類だけってこと?!」

「そういうこと。まあ、同じカードを複数枚積むことはできるけどね」

(そんなめちゃくちゃデッキでどうやって戦うつもりなんだ……)

 

     

     

     

    

   

 

 

「私のターン!」

 奏音が勢いよくカードを引くと、向こう側から『本物だぁ』というつぶやきが聞こえてきたが無視することにした。改めて手札を確認する。

(いろいろ捨てられたけど、この手札も悪くない!)

「まずはこれだっ! 【継承名 イリデセントを召喚!】」

 光学迷彩で姿を隠したリザード型の戦士だ。

 

《ATK1600》《闇属性・爬虫類族・効果・✪4》

 

「あ、それ知ってる! 【継承名】デッキの初動カードの一つだよね!」

「話が早くて助かるよ! 効果発動! リメンバー・オール!」

 

《デッキから【継承名】モンスター1体を墓地へ送り発動。このターン、コストにした【継承名】の効果のうち一つをこのカードの効果として発動できる》

 

 奏音がデッキから一枚選び、墓地へ送った。ディーピカがすかさず言う、

「奏音ちゃんが自分のデッキを探ってる……じゃなかった、チェーンなし」

「ならこのまま、捨てたモンスターから受け継いだ、【イリデセント】の効果を発動! スティール・トゥ・ラスト!」

 イリデセントの体が虹色に輝き、その見た目が一瞬、白骨化した子供の姿を模した。

 

《フィールドのモンスター1体を対象、破壊する》

 

「スキン・トゥ・ボーンの破壊効果は本来、フィールドから墓地に送られた場合に発動するけど、イリデセントのコピー能力は発動条件を踏み倒すことができる! 対象はもちろん、【生者の腕】だ!」

 生者の腕は攻撃力がたった1200なので、イリデセントで攻撃しても倒せるが、奏音はマイナーカードである【生者の腕】の効果を知らなかったので、様子見に破壊効果を使ったのだ。

「ふーん。コピーしたのはその子だったの……じゃあイリデセントを対象にして、場の【生者の腕】の効果発動!」

 

《エクシーズ素材を1つ取り除き、効果モンスター1体を対象。その効果をこのターン中無効にし、相手はカードを1枚ドローする》

 

(やはり妨害効果か!)

 攻撃力の低いランク2のエクシーズモンスターを先攻1ターン目に立てたなら、面倒な効果を持っているに違いないという奏音の読みは正しかった。

「こちらにチェーンはないから、大人しく無効にされるよ」

 生者の腕の泉からORU(オーバーレイユニット)が一つ飛び出し、イリデセントの体に吸い込まれると、イリデセントの虹色の輝きが消えた。

「奏音ちゃん、カードを一枚引いてね」

 奏音がドローするのをディーピカは食い入るように見つめている。衣装越しでもここまで視線を感じるとやりづらいことこの上ない。

 

《永続魔法 効果発動》

 

「えっ」

 奏音は一瞬、何のことか分からなかった。

「ハンディキャップ・ハンドの効果で、奏音ちゃんは手札を一枚デッキに戻さなきゃいけないんだよ」

(あぁぁぁ忘れてた!)

「わ、わかってるし……」

「それと、私もカードを一枚引くね」

 ディーピカはまたくすくす笑っている。奏音は少し焦りながら、手札をデッキに戻した。すっかりペースを乱されていた。何しろこんなに不真面目なデュエルをする相手は初めてなのだ。

(落ち着け私……でもこれで、彼女のデッキの方向性は見えてきた……コントロール系の戦術だ……)

「私はこのままバトルフェイズ! イリデセント《ATK1600》で生者の腕《ATK1200》を攻撃!」

「え、もう攻撃してくるんだ……」

「そうだよ。何かある?」

「じゃあトラップカード発動! 【ロケットハンド】」

 

《自分フィールドの攻撃力800以上の攻撃表示モンスター1体を対象、このカードを攻撃力800アップの装備カードとして装備する》

 

 生者の腕のうちの一本が、機械の腕に変わった。

 

《ATK2000》

 

「返り討ちね!」

 奏音は内心ほくそ笑んだ。計算通りだ。

「甘いよ! 手札から速攻魔法発動! 【継承秘術 ザ・サモニング】!」

 

《デッキから✪4以下の【継承名】を特殊召喚》

 

「【継承名 シャープ・エッジズ】!」

 

《ATK1600》《闇属性・昆虫族・効果・✪4》

 

 きらきらと輝くカッターの刃が集まり、銀色のカマキリを形作った。

「さらにシャープ・エッジズの召喚時誘発効果! 対象は【生者の腕】だ!」

 

《誘発効果:カード1枚を対象、破壊する》

 

(よし、これでディーピカのフィールドはがら空きになる!)

 しかし、ディーピカは笑っていた。今度は声を立てて、楽しそうに。

「読んでたよー、奏音ちゃん」

(なに?!)

「実は【生者の腕】は1ターンに2度効果を使えるの。【シャープ・エッジズ】も無効にするね」

 

《エクシーズ素材を1つ取り除き、効果モンスター1体を対象。その効果をこのターン中無効にし、相手はカードを1枚ドローする》

 

 再び生者の腕のORUが飛び出し、シャープ・エッジズの体に吸い込まれた。

(しまった! デメリット持ちの妨害効果だから、使用条件が緩いのか!)

「じゃあ奏音ちゃん、1枚ドローして。それから永続魔法【ハンディキャップ・ハンド】の効果も発動するから、手札を1枚デッキに戻してね」

 奏音は1枚引いた。

(あ、このカードは……)

 奏音がデッキに戻すカードを選ぶ間、ディーピカは得意げに話し続ける。

「私も含めて、奏音ちゃんのファンはこの『世界』にたくさんいるの……みんな、奏音ちゃんの戦術は知り尽くしてるよ……例えば【ザ・サモニング】と【シャープ・エッジズ】のコンボをバトルフェイズ中に使うパターン7はよく見るから、私もそれなりに考えたの」

 奏音のデッキはこの20年間、全くと言っていいほど変わっていない。それはレジェンドに課せられた縛りでもあった。手の内を晒し過ぎないように戦えば、おのずと戦術の幅は狭まる。今までは他のデッキより高いカードパワーで押し切っていたが、近年、先日のボークス戦のようなレジェンド対策をしてくる敵は増えていた。

「デッキに戻すカードは決まった?」

「うん……これにするよ」

 奏音が戻したカードは【継承名 バトル・シンフォニー】だった。数々の挑戦者を倒した、奏音の一番の相棒とも呼ぶべきモンスターだが、

(この子は、今じゃない……)

「じゃあハンディキャップ・ハンドの効果で私も1枚ドローして……戦闘続行だね」

 既に攻撃命令を受けているリザード戦士のイリデセントが、生者の腕に切りかかった。しかしロケットハンドで弾き飛ばされ、そのまま消滅した。

 

 求道奏音《LP8000→7600》

 

「私はこれでバトルフェイズを終了。メインフェイズ2で、カードを2枚伏せ、ターン終了」

 ディーピカがはしゃぎだした。

「やった! 私、奏音ちゃんのターンを凌いじゃった!」

 奏音は気を引き締めた。まだイベント初日だが、このデュエルで、新たな戦術を使うことになると感じていた。

 

   

    

     

    

   

 

※S……【継承名 Sharp Edges】の略

 

 Bパートに続く。

 




~新コーナー!オリジナルテーマデッキ解説~

【死者の腕】編

【生者の腕】をはじめとする、強力(?)なランク2エクシーズを出して戦うデッキだ!【亡者の腕】【死者の腕 1】【死者の腕 2】【死者の腕 3】といった関連モンスターを並べて、エクシーズ召喚に繋げていくぞ!展開力は高いがテーマ内の除去手段がフィールド魔法の【混沌の沼】しかないので、汎用カードで補おう!

サンプルデッキリスト
メインデッキ:40枚
【死者の腕】3
【亡者の腕】3
【死者の腕 1】3
【死者の腕 2】3
【死者の腕 3】3
【増殖する死者の腕】3
【混沌の沼】3
【死者の腕相撲】3
【死者蘇生】1
【死者転生】3
【死者への手向け】3
【死の床よりの目覚め】2
【ハンディキャップ・ハンド】3
【リビングデッドの呼び声】3
【血の沼地】1
エクストラデッキ:15枚
【生者の腕】3
【開闢の死者の腕】3
【終焉の死者の腕】3
【平和の死者の腕】3
【和睦の死者の腕】3
【ガチガチガンテツ】3
スキル:【カー召喚】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。