エンドレスシティ第1地区 高級マンション『キャッスル』最上階(通称レジェンドフロア)17時10分
「……報告は以上になります。このような結果となり、たいへん申し訳―」
「謝るな。時間の無駄だ」
ロバート・J・常盤の謝罪はチェスによりあっけなく遮られた。ブラッディ・ホイールが『ちょっと冷たくない?』と言いたげな目で不死鳥院静香を見ると、『ああいう人なのよ』という目線が返ってきた。
「そもそも『特異点』の一斉蜂起は『校正機能』のキャパシティを超えている。ブラッディ・ホイールやロバート・J・常盤の敗北は私にとって驚きではない」
チェスの声は冷静どころか冷徹であった。
「手に入れた『特異点』達の情報を聞きたい。奏音とマッスル剛力の居所に繋がる情報はあるか?」
再び、ブラッディと不死鳥院の目があった。どれだけ冷徹に見えても奏音を心配してやまないのだと二人は気付いていた。
「はい。ゲシルと名乗る『特異点』を使いレジェンド・カノンを偵察する計画がありました。その計画内では、偵察行為を察知された場合はゲシル自身が相手を『疑似空間』に引き込み、『停滞』の固有スキルで長期間の拘束を試みる、と。『停滞』は時間の流れが周囲より遅くなるもので、デュエルで数ターン経過する間に実際は少なくとも数時間、最大で数日が経過する効果です」
「アクセルシンクロの逆だね」
思わずつぶやいたブラッディを不死鳥院が『しーっ!』と指を立てたしなめるが、チェスは聞こえていないかのように口を開いた。
「いや、数日どころではすまないだろう。『疑似空間』と併用したなら数年以上経過してもおかしくない」
「数年?!」
今度は不死鳥院が驚きのあまり声を出してしまったが、チェスはやはりそれには反応しなかった。
「奏音とマッスル剛力が最後に居た場所は第29地区のどこだ?」
常盤が答える。
「リオール大河の記憶によれば、ゲシルの最後の通信は宿泊用シェルターのVIPルームからです」
「そこだな。奏音は数日以内にそこに帰還する」
「よく分かるねぇ?」
とうとうブラッディが我慢できずにチェスに尋ねた。意外にもチェスは表情一つ変えずに即答した。
「『校正機能』であれば『疑似空間』内でも異常な時間経過に気付く。さらにマッスル剛力ならば時間遡行を試みるはずだ」
「時間、そこう……?」
「だが同時に帰還は『特異点』たちにとっても予想の範囲内。奏音と私の『約束』が敵に知られた今、確実に奏音を狙った妨害工作か待ち伏せが行われる。私はそれらを取り除き、奏音の保護に向かう」
チェスは右手を三人に向かってかざした。すると掌から光の糸のようなものが飛び出し、三人それぞれの眉間に結ばれた。
「簡易的だが『特異点』の使う固有スキル『接続』を模倣したものだ。これで君たちの知覚したものすべてが自動的に私へ送られる。このままロバート・J・常盤の得た情報を共有しろ。そして各自に与えた任務は変わらず続行だ」
チェスは一方的にそう告げると、三人の返事も待たずに姿を消した。
◇◆◇◆
「「長年、我々『特異点』の間では、なんのためにこの『世界』が築かれたのか、という疑問が絶えませんでした。しかしついに、ロバート・J・常盤から得た記憶から、『創造者』の目的が判明したのです!!」」
第46地区のエリアボス、スパイラルドラゴンはすでに倒した。16人のリオールとアイシャ・ベルタスは海(を模した遊水地)を渡り切り、魔王城のある第50地区に到達。現在は洋館風の宿泊用シェルターの中にいる。第50地区だけはイベントスタッフが常駐しておらず、無人の施設を自由に使える。
「なるほど。ここならアバターを解いても誰かに見られることがない、というわけですか」
「うん。いくらレイチェルの『順化』でも、16人の僕は誤魔化し切れない。イベントスタッフに迷惑行為と勘違いされたら休息どころじゃなくなる」
リオールはアイシャと話しながらも、『接続』により常盤から得た情報を残った『特異点』たちへ共有していた。なお、リオール自身の休息も兼ねて、『接続』で話す役目を今は『第2030番』に代わってもらっている。
「「つまり、『創造者』か『求道奏音』を倒すことが我らの勝利条件なのです!」」
『特異点』たちが興奮を抑えきれないのが『接続』により伝わってくる。リオールを経由する形で他の『特異点』同士も『接続』状態のため、互いの興奮は波紋のように干渉しあい大きくなっていく。リオールのすぐ近くにいるアイシャからもわずかに興奮は感じられるが、ほとんど平静を保てている。
(連れてきたのがアイシャさんで正解だった……レイチェルだったら修学旅行の夜みたいなはしゃぎ方しただろうな……)
「「―『校正機能』は全部で四人。一人目はブラッディ・ホイール。相手にギャンブル戦術をしかけ、それに乗せられた者はデュエルの結果に関係なく精神エネルギーの暴発を引き起こします。かつてシティへ実体化を試みた『特異点』の同胞が瞬時に消されたのはあれの仕業……ここまでは皆も知るところでしょう。ブラッディ・ホイールの本来の役目は異分子の除去ですが、昨日の戦いではシセ遼太郎を引き付け、求道奏音の護衛をしつつ、さらに『フィールドバリア』の構築を担っていました」」
「「『フィールドバリア』?!」」
レイチェル光尊の声だ。やはり食いついてきた。
「「シェルタープラネットを包み込むように形成された精神エネルギーの膜、とでもいいましょうか。肉体を得ていない状態の『特異点』はこのバリアを通過できず、バリア越しの『接続』も遮断されます」」
「「弱めの『疑似空間』ってとこだね……完全隔離しない代わりに容積が大きい」」
「「その通り。現在の我々は肉体を得たため通過できますが、シティの各地に潜伏している同胞や協力者たちとは今なお『接続』ができません。メッセンジャーとして癒清水キュアをプラネットから退場させシティに送りましたが、その成果が我々の側に伝わる可能性は低いでしょう。保険のようなものと考えてください」」
リオールは常盤を倒した後、癒清水に『接続』し、いくつかの“仕込み”を行った。彼女が再び常盤に『救助』されたり『創造者』の粛清を受けたりする場合に備えての“仕込み”である。
「「二人目の『校正機能』はマッスル剛力。元デュエルインスタラクターであり、現在はショーデュエルなどの衣装デザイナーであることは公になっています。彼女とブラッディ・ホイールは後天的な『校正機能』であり、能力を買われて『創造者』に起用されました」」
「「つまりは裏切り者か!!」」
『特異点』の何人かが怒りの声を上げた。
「「その通り。特にマッスル剛力は自ら『創造者』へ接近し、『校正機能』への起用を受け入れたといいます。我々とは分かり合えない存在と言っていいでしょう。ブラッディ・ホイールから護衛任務を引き継いだようですが、現在は求道奏音ともどもゲシルの『疑似空間』に幽閉中と思われます」」
◇◆◇◆
チェスに丸聞こえであることもお構いなしに、ブラッディは不死鳥院に尋ねた。
「あたしゃ面識ないんだけど、マッスル剛力って何者だい?あたしより後に『校正機能』入りしたんだろ?」
「私もよく知らないのよねえ。予備の『校正機能』だったらしいけど」
二人は自然な流れで常盤を見る。
「一応話しておきましょうか。剛力さんは自力でエンドレスシティの仕組みに気づいた方です」
不死鳥院が目を丸くした。
「自力?それって『特異点』ってこと?」
「いえ、『旧世界』の存在は知らなかったようで、本人曰く『鍛えているうちに悟った』と」
「スピリチュアル~!!」
不死鳥院はそう声を上げると同意を求めるかのようにブラッディを見たが、彼女は神妙な顔をしていた。
「……道の果てを見たんだね」
「やだ、ちょっと分かる感じ?」
やや引いている不死鳥院を無視して常盤が話し出す。
「『特異点』が“負のバグ”なら彼女は“正のバグ”といったところでしょう。シティの理を超越した能力も得ていたらしく、チェスはすぐさま『校正機能』として迎えましたよ」
「実際あたしの穴埋めで奏音ちゃんの護衛任されたわけだし、相当信頼されたんだろうねぇ」
「常盤隊長は悔しくないの?あたしら古株なのよ?」
「適材適所かと。私と不死鳥院局長はデュエルの実力では他のお二方に及びませんし」
「それは……そうだけど」
◇◆◇◆
「「三人目の『校正機能』はデュエル事務局の局長、不死鳥院静香です」」
この情報も『特異点』たちの多くは初耳であり、反応は驚きや納得など、様々だった。
「「主にシティのデュエルシステムやスキル・カードパワーのバランスを司る『校正機能』で、デュエルの実力は一般人並です。おそらく戦線に送り込まれることはなく、こちらの脅威にはならないでしょう」」
レイチェルが疑問をはさんだ。
「「仮に不死鳥院を倒したらどうなるんだい?バランスを司ってるなら、チートスキル作り放題になったり?」」
「「可能性はありますが、その場合は『創造者』側もチート戦術が解禁されるでしょうから、我々に不利な状況になりかねません」」
「「今まで通りルールの穴をつくぐらいが賢明か……」」
ルブランの『暴圧』スキルを使えばある程度の無理筋でも通すことはできるが、暴力的手段が選択肢に入り込んだ人間は社会にとって危険因子である。『第2030番』は無頼漢だらけの『旧世界』を作りたいわけではない。そのためリオールは『暴圧』スキルが自らの中に『保持』されて残っていることを『特異点』たちに伏せている。レイチェルもそれを理解しているため、この場で言及することはなかった。
「「そして四人目は、すでに戦った者もいる、ロバート・J・常盤です。ブラッディ・ホイールと違い、デュエルを介することなく、相手の肉体を乗っとり自身と“同化”させることができます。『疑似空間』に入れない『校正機能』であることが逆に厄介といえるでしょう。こちらから【強制デュエル】を仕掛け、接触を避けてください。勝てば『校正機能』は一時的に機能不全となります」」
この『世界』では、デュエル中に対戦相手になんらかの妨害行為をすることはできない。これは慣習・文化・道徳・価値観などとして市民に浸透しているが、実は制約でもあり、これによりブラッディ・ホイールはギャンブルによる対戦相手の精神エネルギー暴発という回りくどい方法しかとれず、ロバート・J・常盤も一度始めたデュエルを『救助』で中断することができない。第46地区ではアイシャ・ベルタスを始めとする精鋭たちが【強制デュエル】を同時多発的にしかけ、常盤が『救助』も【乱入】もできない状況を作ることができた。
「「ただし、今後はロバート・J・常盤が不意打ちの様な形で『特異点』を『救助』しようとはしないでしょう。まずデュエルを挑み、その勝利報酬として『救助』されるよう要求してくるはずです」」
「「なんで分かるの?」」
またレイチェルが疑問をはさむ。若干うっとうしいのだが、『第2030番』を信仰するあまりに教えを疑わない『特異点』たちは、彼らは伝えたことを深く考えなかったり曲解したりすることがあるため、理解を促す存在としてレイチェルは有用である。
「「昼間の戦いで、『救助』された癒清水を足がかりに、『上書き』によるカウンターを成功させました。今はロバート・J・常盤にとって『特異点』の『救助』はリスクになる状況です」」
『特異点』たちから感嘆の声が上がる。リオールは『接続』を通し、今連れている15人のリオールのアバター姿を視覚的に共有した。
「「この15人の、いわば“分身”たちには、魔王城の占拠に協力してもらう予定ですが、何人かは皆さんのサポート戦力として向かわせましょう」」
◇◆◇◆
不死鳥院とブラッディは、常盤が送ったホログラムの資料に目を通していた。そこには肉体を取り戻したとされる『特異点』11名の情報がリストアップされている。
・リオール大河/『第2030番』(【マグネッツ】『保持』『接続』)(【緑樹の霊王】)
・大河美咲(【誕生/翼をおりなす者】『模造?』)(【オアシスの使者】)
・兵頭ダグワドルジ(【魂喰らい】)(【エンゼル・イヤーズ】)
・アイシャ・ベルタス(【火炎鳥】)(【灼岩魔獣】)
・アンドラ・コナー(【レオ・ウィザード】)(【キラー・ザ・クロー】)
・誠司バリドゥーラ(【神竜】)(【チェイン・スラッシャー】)
・キム・ウォルター(【ゾーン・イーター】『誤認』)(【蜘蛛男】)
・キルスティン・パラロス(【エレメント・ソルジャー】)(【闇の芸術家】)
・レイチェル光尊(【本の精霊】『順化』)(【ブークー】)
・ゲシル(【ネズミ】『停滞』)(【ダーク・プリズナー】)
・癒清水キュア(【ツインテール/グロス】)(【氷岩魔獣】)
「すべての元凶は『第2030番』です。やつがシティの人間に『旧世界』の記憶を与え、『特異点』化させています。何人かの『特異点』は固有スキルに目覚め、そのうちの一人リオール大河は、『第2030番』と同化しています」
ブラッディが尋ねる。
「この『保持』ってのはどんな固有スキルなんだい?」
「精神エネルギーを上限なしで『保持』でき、かつそれが失われることを防ぎます。精神エネルギーに変換可能なものはすべて保持対象であり、記憶や自我といったものすら強固に保持されます。チェスによる記憶の書き換えや、私の『救助』にも対抗できるようです」
さらに常盤が、リオールと『第2030番』が同化した記憶の話をすると、不死鳥院とブラッディは露骨に不快感を示した。
「17歳と同化は変態だわ……」
「17歳相手は変態だね……」
未成年を一度ならず『救助』した常盤にも刺さる批判なのだが、彼はまるで気にせず話を続けた。
「幽霊同然であった『特異点』は『第2030番』が『保持』を得たことによって急激に成長しました。デュエルによって生み出した精神エネルギーは通常、周囲の環境へと発散していきますが、やつはそれを肉体を持たない状態でも『保持』できる上、さらに『接続』によって他の『特異点』に分け与えられます。一度精神エネルギーに変換された肉体情報も再現するのは簡単でしょう」
今度は不死鳥院が疑問を口にした。
「でも『特異点』の復活ってこれまでブラッディが『校正』できたわよね?」
「あたしは元々、シティに“存在しないはずの”人間が現れたときだけ働く『校正機能』さ。連中の『上書き』は私の管轄外になっちまう」
常盤が頷く。
「まさにその通りです。シティに“存在している”人間と『接続』し、『特異点』の自我や記憶を再現できるだけの精神エネルギーを送り込み、強制的に『保持』させる……ただ、『接続』の強さは個人差が大きく、誰でも『上書き』出来るわけではありません」
「あっ、それで『潜在的な特異点』を選んだのね。ディーピカ手嶋ちゃんを……」
「はい。『潜在的な特異点』はチェスも我々も感知できません。しかし『接続』には成功している相手なので、最初の実験台として都合がよかったのでしょう」
不死鳥院とブラッディは資料のページを進めた。
・第一の実験『潜在的な特異点』への『上書き』
ディーピカ手嶋→ジャン・ルブラン(『暴圧』持ち)
感知や妨害を防ぐためデュエル中、及び『疑似空間』内で行う。
同時にレジェンド・カノンへの奇襲を試みる。
ブラッディがつぶやく。
「そして次の実験台がシセくんってわけか……かわいそうに……」
・第二の実験『潜在的な特異点』を経由した一般人への『上書き』
シセ遼太郎及び取り込んだ10人→『特異点』11人
事前に大量の精神エネルギーを注入。取り込んだ人間は一時的に精神エネルギーへ変換。
『接続』により『暴圧』『保持』『順化』を付与し、高エネルギー状態を安定化。
「第三実験は同一人物の『特異点』を複製すること。これはリオール大河が私とのデュエル中に行ったようですが、かなり特殊な条件下だったため、彼らも単純な成功とは判断しないでしょう。第四実験は『潜在的な特異点』を介さない一般人への『上書き』、第五実験は非生物への『上書き』の予定となっています」
不死鳥院もブラッディも息をのんだ。事態の深刻さを実感し始めたのだ。
「つまり……エンドレスシティを『特異点』で埋め尽くす計画ってことなのね?」
「ヒッヒッ……怪談は夏だけにしてもらいたいねぇ……」
「今プラネットの中で戦ってるのは常盤さんだけでしょ?大丈夫なの?」
「……分かりません」
常盤は伏し目がちに答えた。
「私の任務は、第二の実験の時のような被害を未然に防ぐこと。イベント参加者及びスタッフの六割はすでに『救助』済みで、今夜中には全員が完了するでしょう……しかし『特異点』の無力化は私が数千人で束になっても難しいと考えます」
常盤はホログラム資料を操作し、さらなるページを見せた。『特異点』のうち四人の名前が記されている。
・リオール大河
・アイシャ・ベルタス
・兵頭ダグワドルジ
・キルスティン・パラロス
「現状でプロデュエリスト並の実力があるとされる四人です。私が一度掌握した第46地区を、下の三人はたった数時間で解放しました」
「【エンプティ継承名】ってロック系戦術よね?そんなサクサクやられちゃうのかしら?」
「あたしの【マスカレード継承名】もそうだけど、初見殺しが強味の戦術は対策されると脆いのさ」
「『特異点』を『救助』すると先刻のように一般人を『上書き』されるおそれがあります。彼らもそれに気付いているのでしょうね。今は堂々と宿泊用シェルターで過ごしていますよ」
常盤が憎々しげに言った。彼に自責の隙を与えないようブラッディが素早く話を繋いだ。
「たしかに昨晩と違って『特異点』の位置が丸わかりだねぇ、連中は『接続』使ってリモート祝勝会でもやってんのかい?」
「それ私らなめられてるってコトじゃない?!」
「そうでもないさ。アガってる魂は二人組が42地区、三人組が49地区、魔王城には17人の大所帯……単独にならずに分散してるってことは、瞬間移動が使えるチェスを警戒してるね、こりゃ」
それを聞いて、不死鳥院は何か考え込むような顔をした。
「待って……二人足りなくない?『特異点』は二人減って今は9人よね?魔王城にいる複製15人を引いても7人しか居ないわよ?」
常盤も思い出したように言う。
「そういえば、リオール大河は私とデュエルを始めた時点から『特異点』達と一斉に『接続』していたようでしたが……私に『上書き』をしかける直前まで、プラネット内に感知できる『特異点』はずっと7つでした」
常盤は話しながらホログラム資料に何やら追記し、二人に分かるように見せた。
・リオール大河……46→魔王城
・アイシャ・ベルタス……46→魔王城?
・兵頭ダグワドルジ……43→46→42?
・レイチェル光尊……43→42
・キルスティン・パラロス……41→46→49?
・アンドラ・コナー……41→49
・キム・ウォルター……37→49
「私が最初に感知した『特異点』はこの7人、アイシャ・ベルタスは最初から同地区内で潜伏していましたが、リオール大河の呼びかけで新たに2人増え、その後付近の小型シェルターに宿泊したのなら、現在地はおおむねこのように予想されます」
記憶が流れ込んだ時、リオールは他の『特異点』と『接続』中だったため、常盤はどの『特異点』がどの地区に居たのかを把握していた。
「初日の『上書き』直後、リオール大河の指示で、『特異点』は大きく二つの役目に別れました。我々『校正機能』を引き付ける囮の役と、強力なカードやスキルの調達を担うイベント攻略の役。前者は密偵のゲシルおよび、使用アバターがこちらに割れていた兵頭ダグワドルジ、キムウォルター、アイシャベルタス、癒清水キュアの四人。彼らはプラネット内の各地に散らばりました。一方後者は三組に別れて行動を開始しましたが、リオール大河はゲシルとの『接続』リスクを考慮し単独行動、アンドラ・コナーは情緒不安定なキルスティン・パラロスの補佐、残ったのがレイチェル光尊、誠司バリドゥーラ、大河美咲」
常盤が情報を整理したことでブラッディはあることに気付いた。
「最も自由に動けたであろう三人組が、なぜか解散したことになるねぇ……二日目には誠司バリドゥーラと大河美咲が居なかったんだろう?」
そこへ不死鳥院が新たな情報を追加した。
「その三人組は二日目の朝、一緒に第25地区の小型シェルターを出発してるわね……でもすぐに【ブークー】のアバターが単独行動を始めたみたい」
不死鳥院静香の脳内はデュエル事務局のデュエルデータ管理サーバーと繋がっているため、デステニー・クロスロードにおけるアバターベルト位置情報も(地区単位ではあるが)瞬時に把握できる。
「【ブークー】のアバターならレイチェル光尊ですね。彼女は『特異点』の中で一番の変わり者で、好奇心に任せて奇行に走る傾向があります」
「単独行動はそういう理由だとしても、一緒に居たはずの【チェイン・スラッシャー】と【オアシスの使者】は位置情報が途絶えてるのよねえ……ベルトの故障くらいでしか起こらないわよこんなの」
それを聞いた途端、常盤とブラッディは同時に息をのんだ。
「何寝ぼけたこと言ってんだいしずちゃん……『特異点』が消える一番シンプルな方法があるだろうに!」
常盤がすぐさま答えを口にした。
「『疑似空間』……私は今、チェスが先ほど述べた『確実に妨害工作か待ち伏せが行われる』という言葉も思い出しました」
さすがに不死鳥院も青ざめた。
◇◆◇◆
応接室から届いていた『校正機能』たちの話は聞こえなくなっていた。第29地区の宿泊用小型シェルターのVIPルームにはまだ昨晩の格闘の跡が残っているが、奏音の消えた直後にチェスが来た時には感じていた、マッスル剛力の『校正機能』の反応が感じられなくなっている。エンドレスシティの一部である『校正機能』が完全に消えることはありえない。機能不全なら『機能不全』の反応になる仕組みなのだ。
「よもやここは……『疑似空間』か?」
チェスはどこかにいるであろう仕掛け人に向かって言い放った。答えはすぐに返ってきた。
「『創造者』すら欺くこの出来栄え、我らの優位性の証と言えるな」
愉悦に浸った口ぶりだった。声の主、誠司バリドゥーラはすでにチェスの背後に立っていた。
TURN16へ続く
~オリカ紹介~
【無限鉄芯マカロニアス】《光・戦士・エクシーズ・ランク12》《ATK3000/DEF3000》
レベル12モンスター×5
自分を一度墓地からEXデッキに戻し、さらに墓地の【カルボナーラ戦士】ら5種類のEXモンスターをエクシーズ素材とするマカロニ・カオス・リニューアルを行い、現れる。墓地に送られたターンにはリニューアルできないので注意しよう。【ジェノベーゼ戦士】で墓地に待機させておくといいぞ。さらに隠された恐ろしい効果があるとか……
【融合武器スパゲッティブレード】
①装備した【マグネッツ】や【カルボナーラ戦士】の攻撃力を1500アップ!②装備モンスターが倒されるとそのターンのエンドフェイズに墓地から【マグネッツ】を蘇生させることができるぞ!
~解説~
リオール大河のデッキは複数あります。【マグネッツ】は普段使い、【混合レオ・ウィザード】は趣味デッキです。ガチ用のデッキは今調整中です。