《バリドゥーラ LP3000》手札3→2
バテ
リ
炎魚メ
《受け継がれなかった命たち LP1900》手札3枚
「【光の天穿バハルティヤ】は効果モンスター1体のリリースでアドバンス召喚でき、デッキからのサーチ効果に反応して相手ターンでもA召喚ができる。俺は【ミラドーラ】をリリースした」
効果の説明をしている間に、バリドゥーラの体に入った光の亀裂が治っていった。
(精神エネルギーが補充され、肉体を再構成している……なるほど、もともと大きすぎる『旧世界』の力を、『疑似空間』のデザインや肉体強化のコストへ変換しているのか)
「さらに【バハルティヤ】は召喚時に、相手の手札を入れ替える効果を持つ!」
《相手は自身の手札の数だけデッキの上からカードを裏側で除外する。その後相手は手札をすべてデッキに戻し、この効果で除外したカードを手札に加える》
チェスは自身のデッキの上から3枚を裏側で除外し、手札にあった【継承秘術 バーン・イット・ダウン】を含む3枚をデッキへ戻した。最後に、裏側で除外した3枚を新たな手札として加えた。
「デッキに戻したカードを再度引く事ができない、『旧世界』でも珍しい手札入れ替え効果だが……とても暗示的じゃないか?お前や『校正機能』、求道奏音は消え去り戻らない。代わりに我ら『特異点』が『旧世界』を担う新たな“手札”になる……とな!」
チェスは引いたカードを確認した後、宣言した。
「私はこのまま【バーニング・イン・ザ・スカイ】の効果を発動する」
《相手に1600ポイントのダメージを与え、このカードを破壊》
浮遊していた火の玉達が一直線に放たれ、バリドゥーラの体に直撃した。全身が火に包まれたが、バリドゥーラはまるでたかってきた羽虫であるかのように、たやすく火を払いきった。
《誠司バリドゥーラ LP3000→1400》
「クハハッ、どれもこれも、弱者の戦術だな」
いまやバリドゥーラの体の亀裂は完全に塞がっているばかりか、精神エネルギーを光のオーラのように纏っている。
「前から【継承名】の戦術は気に入らなかった!効果ダメージや除去効果の手数で短期決戦をしかけ、追い詰められたら秘匿していた初見殺しのパワーカードで切り抜ける……弱い奴ほどそういうチートに走るものだ。強者らしい志が少しも感じられない!」
「貴様はよほど“弱者”が嫌いと見える」
「ああ嫌いだね!憎んですらいる!たいした努力もしないくせに不満ばかりで!不都合があればすぐ被害者面だ!問い詰めれば自己正当化や責任転嫁を繰り返し、優しくすればつけあがる!お前のようにたまたま力をもっただけの弱者は独裁に走って最悪だ!」
チェスは一瞬、何かを迷うようなそぶりを見せたが、頭に血が上り始めたバリドゥーラはそれには気が付かなかった。
「……私はカードを1枚セットし、ターンを終了する」
《バリドゥーラ LP1400》手札2
バテ
リ
魚メ
伏
《受け継がれなかった命たち LP1900》手札2
「クハッ、それだけか?ならこのエンドフェイズに、【神竜ティタノマキア】の誘発効果発動!」
《自分フィールドのドラゴン族モンスターの数だけ、デッキの上からカードを墓地へ送る》
場には【神竜ティタノマキア】と【光の天穿バハルティヤ】がいるため、バリドゥーラはデッキの上から2枚を墓地へ送った。
「俺のターンだ!ドロー!さらにスキル発動!」
【神竜の宝札】
《手札の【神竜】カードを任意の枚数見せて発動出来る。見せた数+1枚ドローし、その後見せた数のカードを捨てる》
「手札の【神竜ラグナロク】、【神竜ティタノマキア】を見せ、3枚ドロー!そして2枚を捨てる!これで準備は整った……神罰の時間だ」
ティタノマキアの三つの首が、天井の闇に向かって轟くような鳴き声を上げた。
「……揃っていたか」
チェスが呟くと同時に、頭上から鳴き声が返ってくる。木霊ではない。共鳴している。
「やはり『旧世界』のカード効果は知っているか……だがもう遅い。墓地にいる同名2体と、場の【ティタノマキア】の合計3枚を除外し、起動効果発動!」
《相手フィールドのカードをすべて破壊する》
「私はそれにチェーンし、場の【継承名 クロウリング】の誘発即時効果を発動!」
《墓地または場のこのカードを手札に戻す》
「クハハハッ!主を置いて逃げ出すとは情けないしもべだな!」
ピラニア顔の人魚が床に水面を作り逃げ込んだ直後、暴風雨のごとく雷撃が降り注いだ。チェスのセットしたカード、【メテオラ】、【リアニメーション】が次々撃たれ、消滅していった。
「お前のライフは残り1900……クハハハッ、このままバハルティヤで攻撃すれば俺の勝ちだ」
◇◆◇◆◇
シェルタープラネット第50地区、魔王城南門前、午前11時52分
《アイシャ・ベルタス LP8000》手札2
伏
鳥 領
《ボロミア・ボークス LP6000》手札6(ドロー後)
「スキル発動!《カー召喚【モリンフェン】》!」
ボークスの代名詞とも呼べる、長い腕とかぎづめが特徴の奇妙な姿をした悪魔だ。
《闇・悪魔・通常・✪5》《ATK1550》
「手札から【パープル・モリンフェン】を特殊召喚!そして起動効果を発動!ユニオン合体!」
紫のモリンフェンがモリンフェンに吸収される。
《装備したモリンフェンは攻撃力が1550アップし、他の罠カードの効果を受けず、貫通能力を得る》
《ATK1550→3100》
「続けて【ブルー・モリンフェン】を特殊召喚!その起動効果を発動!ユニオン―」
「罠をチェーン発動!【デッドバードアタック】!」
アイシャが鋭く宣言した。
《墓地の鳥獣族か通常モンスターを1体対象、それを特殊召喚する。その後、そのモンスターと場のカード1枚を破壊する。特殊召喚したモンスターが鳥獣族かつ通常モンスターの場合、さらにもう1枚破壊できる》
ボークスは早くも二度目の驚きを見せた。
「おいおいおい、“完璧なタイミング”じゃねえか……!」
「対象は墓地の【冠を戴く蒼き翼】だ。つまり、お前の場のモリンフェンは全滅する」
蘇った蒼い鳥は爆炎に身を包みながらモリンフェンに突進していく。【パープル・モリンフェン】【モリンフェン】、そして最後に【ブルー・モリンフェン】が消滅していく。さらに場の鳥獣族が破壊されたことで、【火炎鳥(バーニングバード)】の攻撃力がさらに上がる。
《ATK3500→4000》
周囲で観戦している勇者たちは何が起こったか理解できずざわめいている。
「トラップ効かないのに破壊されたぞ?」
「しかも3枚破壊された!どうなってるんだ……?」
隠れて観戦しているリオールの分身達も、興奮を抑えきれない様子で囁きあっていた。
「さすがはアイシャさん、ボークスさんのデッキの弱点をすぐ見抜いたね」
「【デッドバードアタック】の破壊効果は二段階で処理される。最初の破壊で罠に耐性のあるモリンフェン本体ではなく装備されている【パープル・モリンフェン】を狙い、次の破壊で耐性を失ったモリンフェンを破壊した」
「最後に、装備の対象を失った【ブルー・モリンフェン】が墓地へ送られた。ユニオン効果にチェーンする形で【デッドバードアタック】を使うことで最大限のアドバンテージを得られたね」
一気に不利な状況になったにも関わらず、ボークスは高笑いした。
「別に疑っていたわけじゃあないが、実力は間違いないようだな!いいぜ、倒し甲斐がある!永続魔法発動!」
【モリンフェンの呼び声】
《1ターンに一度、墓地の【モリンフェン】モンスター1体を対象、それを特殊召喚できる》
ボークスの場にモリンフェンが復活すると同時に、アイシャも【火炎鳥の領域】の効果を発動しモンスターを呼び出した。蝶にも見える、赤黒く燃える翼だ。
【邪炎の翼】《炎属性・通常・✪2》《炎族→鳥獣族》《DEF600→0》
邪鳥 領
モ
呼
ボークスはニヤリと笑うだけで、モンスターの展開を続ける。
「俺は手札の【レッド・モリンフェン】を特殊召喚!」
「ならば私も手札から【爆炎鳥(エクプロージョンバード)】の効果を発動!対象の【邪炎の翼】を破壊し特殊召喚!」
蝶のような赤黒い炎の翼が爆ぜた。その炎の中から、新たな赤い鳥が現れる。翼の炎が燻っている。
《火炎鳥 ATK4000→4500》(誘発効果)
「【爆炎鳥】の特殊召喚が手札から、または相手ターンに行われた場合、自身および対象の相手モンスター1体を破壊することができる」
爆炎鳥が舞い、レッド・モリンフェンの肩に止まり……そのまま大爆発した。
「やるな……こちらの動きを徹底的に破壊し尽くしてきやがる」
《火炎鳥 ATK4500→5000》(誘発効果)
「だがまだ俺の手札は残ってるぜ!【死者蘇生】発動!破壊された【レッド・モリンフェン】を復活!そして起動効果でユニオン合体だ!」
《攻撃力が1550アップし、【モリンフェン】カードを除くモンスター効果を受けず、相手に与える戦闘ダメージが二倍になる》
《モリンフェン ATK1550→3100》
「このままバトルフェイズだ!モリンフェンで火炎鳥を攻撃!」
勇者たちが恐怖の声をあげる。
「そんな!攻撃力が全然足りてない!」
だがボークスは血迷ったわけではない。
「この攻撃時、手札の【ホワイト・モリンフェン】を捨てて効果を発動!」
《モリンフェン ATK3100→6200》
モリンフェンの攻撃力が急激に上昇し、火炎鳥は粉砕された。アイシャが顔をしかめる。
「ぐっ……!」
《LP8000→5600》(ダメージ二倍)
勇者たちの悲鳴は一転、歓声へと変わった。
「すごいぜボロミア・ボークス!敵の攻撃力5000もあったのに!!!」
ボークスは勝ち誇った顔ではあったが、気を抜いてはいなかった。
「【ホワイト・モリンフェン】のさらなる効果!対象にしたモリンフェンが戦闘でモンスターを破壊した場合、墓地の【モリンフェン】カード1枚を手札に戻す!」
自身の効果コストで捨てられた【ホワイト・モリンフェン】がボークスの手札に戻っていく。
「そして永続魔法【モリンフェンの呼び声】のもう一つの効果!」
《相手に与えた戦闘ダメージ1000ポイントにつき1体、墓地の【モリンフェン】モンスターを特殊召喚できる》
アイシャの受けたダメージは2400ポイントのため、墓地から復活するのは2体。【パープル・モリンフェン】と【ブルー・モリンフェン】が現れる。
「バトルフェイズ中の特殊召喚だ、こいつらで追撃できるぜ」
紫と青、二体のモリンフェンが鉤爪で襲い掛かり、アイシャのライフがみるみる減っていく。
《LP5600→4050→2500》
「メインフェイズ2へ移行し、復活した2体を【モリンフェン】にユニオン合体!俺はこれでターンエンド!」
《アイシャ》手札1枚
領
モ
呼赤紫青
《ボークス LP6000》手札1枚(ホワイト・モリンフェン)
【ホワイト・モリンフェン】の攻撃力倍増効果が終了したが、新たに2体がユニオン合体したことで、【モリンフェン】の攻撃力は6200のままである。さらに強固な耐性が付与されている。
《【モリンフェン】カード以外の効果を受けない》
《与える戦闘ダメージが二倍になる》《貫通能力》《魔法・トラップゾーンのカードは相手効果の対象にならず、相手の効果で破壊されない》《戦闘・効果で破壊される場合ユニオン装備カードを身代わりにできる》
観戦中の分身リオール達はこの状況を冷静に分析していた。
「あの二人はデッキタイプが似てるね」
「スキルで呼び出したエースモンスターをとことん強化して相手を圧倒する戦術。安定感と引き換えにエースへの依存度が高いから、【火炎鳥】を破壊されたアイシャさんが今は劣勢に見えるけど……」
「場にはフィールド魔法、墓地には自己蘇生持ちが2体残っていて、次のドローでアイシャさんの手札は2枚ある。巻き返しは可能だね」
「そして【火炎鳥】デッキは【モリンフェン】に負けず劣らず“高火力”」
「この勝負、長くて残り2ターンってところか」
◇◆◇◆◇
第29地区?『擬似空間』?神殿内部、処刑場
「……このままバハルティヤで攻撃すれば俺の勝ちだ……が、お前の手札に【継承戦術 イン・マイ・リメインズ】があれば話は変わってくる。そこで……魔法カード【龍の鏡】!」
《場・墓地の素材モンスターを素材として除外し、ドラゴン族を融合召喚する》
「直前のターンに【ティタノマキア】の効果で【ロード・オブ・ドラゴン】のカードが墓地に落ちている!これと【神竜ラグナロク】を融合!現れろ【竜魔人キングドラグーン】!」
上半身は角笛を手にしたドラゴンの支配者の男、下半身は神竜ラグナロクのものだ。
《闇・ドラゴン・融合・✪7》《ATK2400》
《バリドゥーラ LP1400》手札2枚
バ
キ
《受け継がれなかった命たち LP1900》手札3枚
「その起動効果発動!俺の手札からドラゴン族1体を特殊召喚できる!」
「では再びチェーン発動だ。私は墓地の罠カード【継承戦術 ロスト・イン・ジ・エコー】を発動!」
「何?!墓地から?!」
《自分の場にモンスターが存在しない場合、手札を1枚捨てて発動できる。相手の特殊召喚または特殊召喚を行う効果を無効にし破壊する》
「【ロスト・イン・ジ・エコー】はデュエル中に一度だけ、発動時と同じ効果を墓地からも発動できる」
「くっ……ティタノマキアに破壊されるのを見越して伏せていたな」
「私は先ほど戻した【クロウリング】を捨て、【竜魔人キングドラグーン】の効果を無効にし破壊する」
角笛を吹こうとしていたキングドラグーンが消滅していった。バリドゥーラは素早く思考を巡らせる。
(対策を匂わせた途端に【キングドラグーン】での特殊召喚を邪魔してきたということは、やはり【イン・マイ・リメインズ】を持っているな!そもそも【ロスト・イン・ジ・エコー】は攻撃を防ぐ罠ではない。それをセットしたのは【ティタノマキア】の効果を誘う餌だとしても、場ががら空きになる状況をやつは十分予想できた……つまり他に防御策があるということ!)
「特殊召喚が阻まれたなら、通常召喚するまでだ!」
ゆらめく蜃気楼のような光沢を放つ、金の鎧を纏った竜が現れた。
【ミラージュ・ドラゴン】
《光・ドラゴン・効果・✪4》《ATK1600》
「こいつの永続効果により、バトルフェイズ中に罠カードは発動できなくなった!さあどうする?」
チェスは小さくため息をついた。
「見え透いた誘導だが……手間を省いてやるとしよう」
そう言って手札のカードを発動した。
【継承戦術 イン・マイ・リメインズ】
《自分のモンスターが相手によって破壊されたターン、手札からも発動できる。》
《デッキから【継承名】を1体特殊召喚する》
場に白い毛玉のような生き物が現れた。頭部はないが、大きく長い耳と短いしっぽ、手足の形はウサギに似ている。
「私は【継承名 ラナウェイ】を特殊召喚する」
毛玉はどこに生えていたのか、牙を剥いて威嚇している。
《闇・獣・効果・✪4》《ATK1600》
《永続効果:このカードは戦闘・効果で破壊されず、相手の効果の対象にもならない》
手札2
バ ミ
兎
手札1
「こっ、攻撃表示……?」
バリドゥーラが面食らうのも当然だった。【イン・マイ・リメインズ】で【ラナウェイ】を特殊召喚する戦術はレジェンド・カノンが窮地を凌ぐためによく使うもので、守備表示で特殊召喚したことしかないのだ。
「“さあどうする?”メインフェイズ中の発動を強いたからには、鉄壁効果の【ラナウェイ】を想定した、“貫通効果を持つカード”などを持っているのだろう?」
一瞬の沈黙……バリドゥーラの頬の筋肉がピクリと動く。チェスの読みは当たっていたようだった……が、バリドゥーラは笑い出した。
(そういうことか!やはりお前の発想はどこまでいっても弱者のそれだ!)
「クハハハッ、舐められたものだ!魔法カード発動!」
【ティタノマキアの遺跡】《永続魔法》
《①1ターンに一度、デッキ・手札・墓地・除外状態の【神竜ティタノマキア】を1体特殊召喚できる》
「攻撃表示ならライフが残るとでも考えたか?」
チェスが険しい表情になった。『旧世界』にもエンドレスシティにもそんなカードは存在しない。加えて、この【神竜】を特殊召喚する効果は、あるカードの効果によく似ていたのだ。
「まさか……【アクアバザルの遺跡】を改造したのか」
バリドゥーラが得意げに笑った。
「その通り!【神竜】にはそれぞれ対応する【遺跡】のカードがあるが、すべてを3枚ずつ採用するわけではないだろ?余ったカードを『改造』したのだ。特に【神竜アクアバザル】とその【遺跡】はドラゴン族シナジーがない欠陥品だからな」
激しい雷鳴と地鳴り。去ったはずの三つ首の神竜が、頭上の闇から戻ってくる。
「その改造とやらは貴様のいう“チート”には当たらないのか?」
バリドゥーラはこの問いが癇に障ったようだった。
「これは“進歩”というのだ!我らの目指すところは『旧世界』における人類の進歩や発展!余分なカードを作り変える行為は進歩的な行為といえるだろうが!これだから弱者は!理解が浅くて困る!【ティタノマキアの遺跡】の第二の効果発動!」
《②手札・フィールドのドラゴン族1体を墓地へ送り、墓地・除外状態のカード1枚を手札に加える》
チェスはこの効果にも覚えがあった。
(【アポカリプスの遺跡】の第二の効果と酷似している……どうやら、やつの言う『改造』は大河美咲の持つ固有スキル『模造』の応用や発展系といったところか。部分的に『模造』したカード同士を組み合わせ『改造』を行うのだな……また無秩序に強力な効果へと『改造』しないことで、デュエルシステムの『校正機能』にも探知されない、いわば“誤魔化し”が効くようだ)
「手札のドラゴン族と引き換えに、墓地から【禁じられた聖杯】を手札に戻す……そして、【ティタノマキアの遺跡】にはあと一つ効果があるが、予想はつくだろう?」
「……【ラグナロクの遺跡】の第三の効果か」
「クハハッ!覚悟するがいい!【ティタノマキアの遺跡】自身を墓地に送り効果発動!」
《③このターンに墓地へ送られたドラゴン族を可能な限り特殊召喚し、その後自分フィールドのドラゴン族すべての攻撃力を、この効果で特殊召喚した数×300アップする》
「先ほど墓地へ送った【いたずら風のフィードラン】と【竜魔人キングドラグーン】を特殊召喚する!」
キングドラグーンと共に、妖精のような見た目をした小型の竜が蘇った。
【いたずら風のフィードラン】
《風・ドラゴン・効果・✪3》《ATK1700→2300》
《竜魔人キングドラグーン ATK2400→3000》
《神竜ティタノマキア ATK3000→3600》
《光の天穿バハルティヤ ATK2000→2600》
《ミラージュ・ドラゴン ATK1600→2200》
《バリドゥーラ LP1400》手札1
キバテフミ
兎
《受け継がれなかった命たち LP1900》手札1
「そして【フィードラン】の誘発効果!対象の【ティタノマキア】に貫通能力を付与する!これでお前が何らかの効果で【ラナウェイ】を守備表示に変えたとしてもライフを削りきれる!わかったか?表示形式は関係ないんだ、お前が【ラナウェイ】を出した時点で俺の勝ちは決まっていた!」
「そういうセリフは勝ってから吐くものだ」
チェスは表情を変えることなく言ったが、バリドゥーラはこの時、チェスの真の狙いに気付いていた。
(やはり“誘ってきた”な!!!)
「最後まで懺悔の言葉すらないとは呆れるな。では最後の神罰を下してやる!バトルフェイズ!【神竜ティタノマキア】で、【ラナウェイ】を攻撃する!」
黄金、瑠璃、紫紺の三つ首それぞれが開口する。電撃が蓄積されていき、今にも放たれようとしている中、チェスが静かに告げる。
「この攻撃を待っていた」
対するバリドゥーラの返しも冷静だった。
「だろうな」
チェスはバリドゥーラの場に発動されたカードを見て驚きのあまり声を上げた。
「バカな……」
【禁じられた聖典】《速攻魔法》
《この戦闘中、場の他のすべてのカードの効果は無効化され、ダメージ計算は元々の攻撃力・守備力で行う》
「その手札は【禁じられた聖杯】だったはず……まさか『改造』か?!」
「クハハッ、やはり浅いな!【聖杯】のカードは始めから“ほぼ『改造』されていた状態”だったのだ!わずかな精神エネルギーを注ぐだけでいつでも【聖典】へと変えられるようにな!」
バリドゥーラの纏う精神エネルギーのオーラは今までにないほど輝きを増していた。【禁じられた聖典】の効果が適用され、【神竜ティタノマキア】の攻撃力が元に戻った。
《ATK3600→3000》
チェスが目を伏せる。
「貴様らは……手段を選ばないことにしたわけだ」
「お前も何か発動しようとしていたようだが、当ててやろうか?【継承名 パワーレス】だろ?」
「……」
【継承名 パワーレス】
《場に【継承名】が存在する場合、ライフを半分払い発動できる。手札のこのカードを墓地へ送り、相手モンスターすべての攻撃力はエンドフェイズまで0になる》
もし【聖典】を使わずにティタノマキアが攻撃していた場合、【パワーレス】を発動されれば残りライフ1400のバリドゥーラは敗北していた。しかし【聖典】の《ダメージ計算は元々の攻撃力・守備力で行う》効果により【パワーレス】の弱体化を受けることなく戦闘できた場合、【パワーレス】発動コストによりチェスの残りライフが950まで減るため、【ティタノマキア】の攻撃力が3000に下がってもバリドゥーラの勝利が確定する。【パワーレス】を【聖典】より先に発動した場合でも結果は同様である。
(当然お前は【パワーレス】を発動できなくなるが、その場合は【聖典】で効果が無効になった【ラナウェイ】が破壊され、【パワーレス】の発動条件を満たせなくなり、後続のドラゴン達の攻撃が通る!お前が【ラナウェイ】を攻撃表示で出した時から、【パワーレス】でのカウンター狙いなのは気付いていたんだよ!)
バリドゥーラは【イン・マイ・リメインズ】や【ラナウェイ】を意識しすぎるあまり【パワーレス】の存在を見落としていた……フリをして、この状況を完成させたのだった。
ティタノマキアの電撃が放たれた。ラナウェイは閃光に飲まれ、跡形もなく消失した。
《誠司バリドゥーラ LP1400→0》
「……は?」
バリドゥーラは何が起きたのか分からなかった。自分のライフが0になるはずがなかった。何度か確認したが、デュエル終了の表示も出ている。
《受け継がれなかった命たち LP1900》
「なぜ、俺のライフが……」
ようやくバリドゥーラは気付いた。チェスの場に、黒い帽子と、黒いコートを纏ったペストマスクの人型モンスターが現れていることに。
「な、なんだそれは……」
「【継承名 ブラックバーズ】だ。レジェンド・カノンは使用したことがない、鳥獣族の【継承名】だが……その様子では『特異点』相手に私が使ったこともないようだな」
《手札のこのカードを次の自分のスタンバイフェイズまで除外し発動できる。受ける戦闘・効果ダメージを1度だけ、代わりに相手に受けさせる》
「ペイン・ゲットバック……貴様が【パワーレス】を回避しようと効果ダメージでの勝利を狙うという予想は外れたが、結果はたいして変わらなかったな」
バリドゥーラはあることに気付いた。
「ま、待て……ダメージ反射効果があるなら、最初から【イン・マイ・リメインズ】で【ラナウェイ】を出す必要はなかったはずだ……【ロスト・イン・ジ・エコー】を伏せる必要だって……」
「“感謝する”。『特異点』がカードをどのように『改造』するのか、よく理解できた」
バリドゥーラは青ざめた。
(まさか、泳がされていた……!)
バリドゥーラの次の判断は早かった。右腕を天にかざすと、それが合図だったかのように、チェスを拘束していた鎖が解かれ、主の元へと戻っていく。同時に処刑場全体の崩壊が始まり、散った精神エネルギーの光の粒が、視界を遮る濃霧のように立ち込めていく。彼が逃走を図っているのは明らかだった。
「バカな?!?!」
驚いて叫んだのはバリドゥーラの方だった。それもそのはず、処刑場が消えて現れた風景が、最初に居た宿泊用シェルターのVIPルームの中ではなく、見覚えのある宇宙空間を模したものへ変わっていたのだ。
「ぎ、『疑似空間』だと……」
「貴様の用意した処刑場は、正確には『疑似空間』ではなかった」
チェスが冷たい声で言った。
「だがそこはエンドレスシティでもない。その中間や隙間のような空間で、どちらにも染まりうる『不定(ふてい)空間』といったところか」
「くっ……!」
この瞬間のバリドゥーラには、焦りとは異なる驚きがあった。偶然なのか、『不定空間』という呼称は『第2030番』も使っている。
チェスは暴露を続ける。
「シティからの隔離が完全ではない代わりに個別の機能をデザインしやすく、出入りも容易だが精神エネルギーによる干渉は遮断できるため、中に隠れて私や『校正機能』の探知を免れていたというわけだ……貴様はそうやってVIPルームに来る私を待ち伏せ、『不定空間』を展開して私を『疑似空間』に幽閉したかのように見せかけた」
今や、バリドゥーラは冷汗をかいていた。
「『疑似空間』から出るにはデュエルで勝つしかないと思わせ、デュエルに持ち込む。これで勝敗が付くまでは確実に私の足止めができると考えたのだろうが、出入りの容易さが裏目に出たといえる」
急に『受け継がれなかった命たち』の、幼い少女としての姿が、レジェンド・カノンのマネージャーの姿に変わった。その手には一本のボールペンが握られている。バリドゥーラはそのボールペンに見覚えがあった。
「貴様の狼藉により落ちたボールペンだ。『不定空間』を処刑場にデザインし直した際、この“私の一部”が『不定空間』から追い出されていた」
ボールペンがチェスの手から離れて浮き上がり、その場でくるくる回転しだした。
「私は元来、“個”ではない。“私の一部”であれば、ある程度私の意思を反映した自律行動ができるのだ。デュエルの間にこれを処刑場とVIPルーム、そして奏音を捉えている大河美咲の『不定空間』で行き来させ、大体の状況は把握できた。精神エネルギーの干渉ができず手間取ったがな」
ここでようやく、バリドゥーラの思考が動き出した。
(美咲さんの戦況が把握されていただと?それじゃあ、やつが俺を泳がせたのは、レジェンド・カノンに加勢するまでもないと判断したからか?それほど美咲さんは劣勢なのか?いや、だとしてもあの人なら……)
バリドゥーラは再び、深紅のデュエルディスクを構えた。
「撤退できないなら戦うまでだ!手の内を知られたとはいえ、“俺”もお前の【クロウリング】や【リアニメーション】、【ブラックバーズ】の情報を得た!」
だがチェスは、デュエルディスクやデバイスを構えるそぶりは見せなかった。
「どうした盗人!『疑似空間』を発動したからには戦うつもりなんだろ?!」
チェスはバリドゥーラの挑戦を無視するかのようにこう返した。
「やはり貴様は、先のデュエル中『特異点』と『接続』できなかったのだな」
「っ!!!」
「最後にそれを確認したかった」
チェスが言い終わった途端、バリドゥーラの肉体が光の粒子となり崩れ始めた。
「バ、バカなっ!!」
「勘違いをしているようだが、この『疑似空間』は貴様を逃がさないためのものではない。先のデュエル中に私が『不定空間』ごと覆うように発動しておいた、貴様を葬るための『疑似空間』だ」
既に発動していた『疑似空間』内で敗北したことで、バリドゥーラの肉体は精神エネルギーに変換されることが確定していた。チェスはバリドゥーラの発言や反応から、さらに情報を引き出そうとして変換を停止させていたに過ぎなかった。
「この、卑怯者がぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「どの口が言う」
バリドゥーラの断末魔は光の粒子と共に消え、『疑似空間』も解除された。チェスは第29地区の宿泊用小型シェルターVIPルームへと戻っていた。彼女は大きく息を吐くと、床に膝をついた。
(リンクモンスターを2体も使う羽目になるとは……幸い、肉体を得た後の『特異点』は『疑似空間』および『不定空間』内では『接続』できず、私の使ったカードや戦術を共有される恐れがないのが救いか……)
チェスのボールペンが再び浮き上がり、今にも飛び出しそうにひょこひょこしている。
「ああ、奏音の出迎えは任せる……マッスル剛力が余計な世話を焼いたようだが、その判断は正しかったといえる……」
チェスはそう言い残し、音もなく消失した。消えずに残ったボールペンだけが床に落ちる……ように思われたが、そのまま水面に沈んでいくかのように、こちらも無音で床に吸い込まれていった。
Bパートに続く
追加予定