現代遊戯王はメインモンスタゾーン5か所の上に2か所、エクストラモンスターゾーンがあります。この2か所は相手との共用で、基本的には1か所ずつ分け合って使います。
次に、今回から登場するリンク召喚についておおざっぱに解説します。
①チューナーもいらない、レベルも合わせないシンクロ召喚、みたいなノリでエクストラデッキから出てきます。素材1体とかで出てくる奴もいます。融合シンクロエクシーズ同様に、素材が多かったり条件が厳しい奴の方が強いです。カードの色は紺色です。
②最初は上述のエクストラモンスターゾーンにしかおけないです。条件次第ではメインモンスターゾーンにも出てきます。
③マーカーと呼ばれる△の矢印がカードに書かれています。この矢印が他のモンスターゾーンを指し示して(リンク先)色々するんですが、割愛します。
総合すると、エクストラデッキからやってくる、置くゾーンが決まってる、マーカー付き、この程度の理解で結構です。
風景が溶けた。市街地の建物が消え、アスファルトの地面も晴れた空も失せ、無限に広がる暗黒の空間にリオールはいた。暗黒は無ではなく、夜空の様に小さな煌めきで溢れていた。
「ここは……宇宙空間か?」
「正確には模しているだけだが……普通はここが『宇宙』だと分からないものだ、リオール大河」
白髪の少女も、宇宙に来ていた。というより……
「君の仕業、だね?」
「冷静だな」
「まさか。パニックになる一歩手前だよ」
自分の心理や状況を客観的に把握することで冷静さを取り戻し、解決策を練る。これはリオールの習慣だ。既にこの少女が何らかの超常現象を起こしているのだと、推測していた。そして彼女との交渉の可能性を探っていた。
「ではリオール大河、貴様のターンからだ」
言われて初めてリオールは気付いた。ブレスレット型デバイスのデュエルアプリが起動しており、ホログラムの手札が現れていた。
「なんで今、デュエルを?」
「この宇宙空間から出るためのエネルギー源はデュエルでしか賄えない」
「じゃあ、僕がデュエルを放棄したらどうなる? この擬似宇宙だって、何らかの精神エネルギーで形成されてるはずでしょ? いつまでも維持できないよね?」
「その読みは正しいが、この空間が自然消滅するには30年ほどかかるぞ。帰りたければ私にデュエルに勝つことだ」
「勝つこと? 負けたらどうなる?」
「貴様の存在が、精神エネルギーに変換される」
『存在』という言葉にリオールは引っかかった。
「もしかして……レイチェル・光尊を消したのは君?」
少女が初めて表情を変えた。驚愕だ。
「他の『特異点』を覚えているのか?」
(彼女はさっきも僕のことを『特異点』と呼んだ……レイチェル光尊と僕の共通点は不思議な夢を見ていたこと、そして今僕の存在が消されそうになっていること……これらから総合すると……)
「君はあの夢の世界と何か関わりがあって、僕や光尊にそれを知って欲しくなかった。このデュエルは、『口封じ』ってところかな?」
少女は無表情に戻った。
「貴様は『特異点』なだけではなく、頭も切れるようだな」
「じゃあ、僕の両親も、消されたの……?」
「アンドラ・コナーと大河美咲のことか」
リオールの心臓が早鐘を打っている。叫びだしそうになるのを必死にこらえた。
「まあ真実を知ったところで、貴様に選択肢はない」
リオールは深呼吸をした。
(確かに……このデュエルをする以外に今できることはない……だけど)
状況が飲み込めたことでデュエルに集中できる、とリオールは考えた。トーナメントに出たことはないが、腕には自信がある。
「僕のターン! スキル発動! 【カー召喚】! 出でよ! 【レオ・ウィザード】!」
《魔法使い族 通常》《ATK1350》
黒いマントをはおったシシが現れた。
「このスキルの追加効果により、デッキから、【レオ・ウィザード】魔法を1枚手札に加える、そしてそのまま発動! 【レオ・ウィザードの変化術】!」
《デッキからレベル3モンスターを特殊召喚》
少女、『受け継がれなかった命たち』は微笑んだ。彼女はこの世界のカード全てを把握している。【レオ・ウィザード】デッキは、多彩な魔法カードによる盤面コントロールを得意とするが、その反面攻撃力が低く、下級モンスターの単純な攻撃でも攻略できてしまうのだ。
【レオ・ウィザード】の姿が魔法の光に包まれる。
「変化! 【暗黒プテラ】!」
《恐竜族》《誘発効果》《DEF500》
黒い小型のプテラノドンが現れた。
「何?!」
(【祈祷するレオ・ウィザード】じゃないのか? それでは先攻展開できなくなるはず……)
少女の微かな表情の変化をリオールは見逃さなかった。
「【レオ・ウィザード】デッキの本来の動きじゃなくて驚いた?」
「?!」
「続いてこの【暗黒プテラ】をリンクマーカーにセット! 召喚条件は【攻撃力1350以下のモンスター1体】! リンク召喚! 【予言するレオ・ウィザード】!」
《魔法使い族》《LINK-1 ↓》《ATK1350》
▷ △ ◁
◁ ▷
▷ ▼ ◁
新たなレオ・ウィザードは白いマントを羽織っている。
(【レオ・ウィザード】デッキの動きに戻った……?)
「墓地の『暗黒プテラ』と場の『予言するレオ・ウィザード』の効果が発動! デッキから魔法カード1枚を手札に加え、プテラは手札に戻る!」
「だが、【予言するレオ・ウィザード】は墓地の【レオ・ウィザード】カードが2枚以下の場合、自然消滅するはずだ」
【予言するレオ・ウィザード】が消えていく。
「それでいいんだよ。おかげで、今加えたこのカードが使える。【予想GUY】発動!」
《自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する》
(また【レオ・ウィザード】カードじゃない! それに、あの効果で特殊召喚できる【レオ・ウィザード】カードは存在しない)
「【本の精霊 ホーク・ビショップ】を特殊召喚!」
ローブを纏った人型の鷹、手には本を持っている。
《鳥獣族》《ATK1400》
少女は理解できなかった。リオール大河は明らかに、カードを本来のデザインとは違う形で使おうとしている。
(何が狙いなんだ?)
「僕は暗黒プテラを通常召喚し、そのままホーク・ビショップとプテラをリンクマーカーにセット。召喚条件は【風属性モンスター2体】!」
サーキットに吸い込まれていくモンスター達。
「【本の精霊 ドルフィン・ビショップ】をリンク召喚!」
人型のイルカ。ローブに身を包み、手には書物。
《獣族》《LINK-2 ↑ ↓》《ATK1900》
▷ ▲ ◁
◁ ▷
▷ ▼ ◁
「暗黒プテラは再び手札に戻る。そして【ドルフィン・ビショップ】の起動効果発動! デッキから、レベル5以上のモンスター二種類を手札に加え、手札2枚をデッキに戻す」
(何度も墓地と場を行き来する暗黒プテラ……嫌な予感がする)
「場に【レオ・ウィザード】モンスターが居ないことで、手札から【招来するレオ・ウィザード】を特殊召喚!」
黄色のマントのレオ・ウィザードが飛び出す。
《魔法使い族》《レベル5》《ATK1350》
※フィールド略図
ド
招
(先程加えたカード……もう1枚は、手札誘発効果を持つ、【激昂するレオ・ウィザード】か?)
「加えたのは【激昂するレオ・ウィザード】じゃないよ」
リオールは見透かしたように言った。
「【招来するレオ・ウィザード】の効果発動! 自信をリリースし―」
少女はリオールの次の一手を予測しようとしていた。
(手札又は墓地のモンスターを特殊召喚、墓地の通常【レオ・ウィザード】を出せば、LINK-1の【休眠するレオ・ウィザード】を出せるが……)
「手札から、【翼を織りなす者】を特殊召喚!」
6枚の翼を持つハイエンジェルが現れた。
《天使族》《ATK2750》
ド
翼
「【翼を織りなす者】だと……まさか貴様っ!」
「気づいたようだね。翼を織りなす者とLINK-2のドルフィン・ビショップをリンクマーカーにセット! 召喚条件は【【翼を織りなす者】を含む、モンスター2体以上】! リンク召喚! 【翼を織りなす熾天使】」
炎に包まれた、6枚の翼を持つハイエンジェルが舞い降りた。
《天使族》《LINK-3 ↑ ↙ ↘》《ATK2750》
▷ ▲ ◁
◁ ▷
▶ ▽ ◀
「ここで墓地に送られたドルフィン・ビショップの第2の効果! デッキから【本の精霊】モンスター1体を特殊召喚!」
ローブを纏った人型の象、【本の精霊 エレファント・ビショップ】が現れた。
《獣族》《DEF1200》《誘発効果・永続効果》
「【エレファント・ビショップ】の召喚時誘発効果!」
《手札の風属性モンスター1体を特殊召喚》
三度、黒い小型のプテラノドンが現れた。
少女は初めて、恐怖に近い感情を覚えていた。この世界のカードプールは『旧世界』のものより遥かに広大だ。それゆえ凶悪なコンボも時として生まれる。そこで、その可能性を潰すために、トーナメントでは複数テーマを組み合わせたデッキは使用できない決まりにしたのだ。決闘者はレジェンドの座を目指しトーナメントに挑むため、必然的にテーマ縛りの戦術を研究する……はずなのだが、リオール大河は、多くの人間が見向きもしない、複数テーマ【レオ・ウィザード】【本の精霊 ホーク・ビショップ】【翼を織りなす者】を組み合わせた。完全に想定外だった。
翼
プ象
「僕は純粋に、デュエルの可能性を探求するのが好きなんだ。いつかトーナメントのルールが変わった時は、僕の研究成果を世に披露しようと思ってた……いくよ! 【翼を織りなす熾天使】の効果発動! ジャスティス・メテオ!」
熾天使の翼が一枚、火球となり暗黒プテラを包み込んだ。燃え上がったプテラは暴れだし、少女に飛びかかった。
「うあっ!」
プテラが爆散し、少女の手札が1枚焼かれる。
《リンク先のモンスター1体を対象、それを破壊し、相手の手札を1枚ランダムに破壊》
「暗黒プテラは戦闘破壊以外で墓地に行く時、手札に戻る……でもここでエレファント・ビショップの第二の効果! 手札・デッキに戻るモンスターはフィールドに特殊召喚される!」
暗黒プテラが戻ってくる。
「【翼を織りなす熾天使】は効果を6回まで使用出来る! 行け! ジャスティス・メテオ!」
再び、少女の手札が焼かれる。
(先攻で手札破壊ループコンボだと? しかもこの流れ、最初のスキル発動だけで全ての流れが成立する! こんな凶悪なコンボが発明されていたとは!)
手札破壊攻撃が合わせて五回繰り返され、少女の手札は全て失われた。
「僕はカードを1枚伏せてターン終了……僕としては、無傷で日常生活に帰してくれるなら、ここでデュエルを中断してもいいんだけど、どうする?」
少女は無表情だった。
「残念だが……このデュエルに中断も、サレンダーもない。どちらかが消える以外の決着はないのだ」
(どちらかが、消える?)
「僕が勝ったら、君が消えるの?」
「そうだ、負けた方が精神エネルギーに変換される。決闘とは本来、人生を賭けるものだからな」
「待って、どうしてそこまでするの? 夢の世界の事を知られたくないってなら僕は黙るよ? それじゃダメなのか?」
「君は勘違いしているな。『特異点』が問題なのは、『旧世界』の夢を見るからではない」
(『旧世界』……??)
「じゃあ何が問題なのさ。レイチェル光尊や僕は何を間違えた?」
「『特異点』は存在そのものがこの『世界』を崩壊させる。だから存在した事実ごと、抹消しなくてはならないのだ」
「『世界』を崩壊させる? どういう意味だよ、それ。説明してくれ!」
「別に構わないが……その前に私のターンだ。ドローフェイズ」
少女がカードを引く。
「スタンバイフェイズだ。どうする?」
リオールは少女の余裕が気になったが、
「【翼を織りなす熾天使】は相手ターンでも効果を発動できる! 最後の一発だ! 暗黒プテラを対象にジャスティス―」
リオールは気付いた。宇宙空間がいつの間にか、万華鏡の内側の様な空間に変わっている。
「このエフェクトって……」
「昨日見たばかりで記憶に新しいだろう。キープ・インサイド・トリックだ」
熾天使の羽から放たれた炎が、鏡像のプテラに向かっていく。炎が触れる直前に万華鏡は消え、そこにはプテラではなくエレファント・ビショップがいる。
「そっちじゃない!」
リオールは思わず叫んだが、エレファント・ビショップは既に炎に包まれていた。
「私は手札から【継承名 ウィズ・ユー】の効果を発動した」
《自身をリリースし、対象を強制変更》
「さらにジャスティス・メテオは私の使った効果として処理されるため、リオール大河、貴様の手札が破壊される」
「【継承名】って……そのカードはレジェンド・カノンしか持ってないはず……君は一体、何者なんだ?」
今度はリオールが驚愕する番だった。
「私は『旧世界』をベースにこの『世界』を造った者……このデッキはレジェンド・カノンに与えた【継承名】デッキの、オリジナルだ」
にわかに信じ難い二つの事実だったが、リオールは瞬時に理解出来た。そして、その深刻さも。
TURN3へ続く。
二話まで読んでいただきありがとうございます。
リンク召喚についてですが、これは歴代OCGの召喚方法より簡単で便利なせいで、ソリティア戦術がだいぶ発展してしまいました(筆者は好きですが)。この世界では実はそこまで多用されていないのですが、リオール君はデュエリストとしては頭がおかしい部類なので、それを表現するために、リンク召喚デッキを使わせました。今後は他の召喚方法も登場しますが、ペンデュラムはちょっと検討中です。
フィールド略図ですが、カードの色はお使いのブラウザ次第で見えなかったりするかもしれません、あしからず。同様にリンクモンスターのマーカーも表示されないかもしれません。わかりづらいと思った方はどうか教えてください……なお、リンクマーカーの△の表現方法は同じハーメルン作家の【葛城 準】先生のものを参考にさせてもらいました。感謝しております。
あとは、気づいた方もいるかもしれませんが、【継承名 ウィズ・ユー】のちょっとOCGらしからぬ効果は、原作遊戯王の【精霊の鏡】のオマージュです。今後も、アニメや原作効果のオマージュは使うつもりなので、探してみてください。
次回の三話は激戦です。それでは、デュエル・スタンバイ!