ある決闘者の理想郷   作:ラムダエル

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解説遅れましたが、アニメ同様に、デュエル中は相手のカードを確認できません。墓地や手札に加えるカードが公開情報ではないのです。このため、あらかじめカードの知識を多く持っている方が有利になるわけですが、【継承名】シリーズに関しては、カードデータが一切公開されていないため、一話の【ハンズ・ヘルド・ハイ】のように「そんな効果あったのか!」みたいな現象が起きます。


TURN3 魂の変換 Aパート

 

 

 

『受け継がれなかった命たち』《ライフ8000》

手札0枚

フィールド:なし

墓地:【継承名 ウィズ・ユー】及び未確認カード5枚

     

     

    

    

    

リオール大河《ライフ8000》

手札1枚

フィールド:【暗黒プテラ】《DEF500》、【翼を織りなす熾天使】《ATK2750》、伏せカード1枚

墓地:【レオ・ウィザード】【レオ・ウィザードの変化術】【予言するレオ・ウィザード】【予想GUY】【本の精霊 ホーク・ビショップ】【招来するレオ・ウィザード】【本の精霊 ドルフィン・ビショップ】【翼を織りなす者】【本の精霊 エレファント・ビショップ】及び未確認カード1枚

 

 

 エンドレスシティの教育では、創造論は扱わない。禁止されている訳ではなく、ユニークなアイデアの1つとしてしか認識されておらず、大半の人間は創造論を忘れ去ってしまう。だがリオールは夢の世界で、創造論を本気で信仰する文化が存在する事を知っている。つまり、『この『世界』を造った』という少女の言葉の意味が理解出来たのだ。そして、そのいわば『創造者』が自分のことを、『世界』を崩壊させる『特異点』と認識していることと、この『世界』最強とされる【継承名】デッキを使ってきたこと、この二点から、限りなく自分の生存の可能性が薄いと理解出来た。

 

「私のメインフェイズだ。墓地の【継承名 スキン・トゥ・ボーン】の効果を発動!」

 

《墓地から、自身を含む【継承名】2体の特殊召喚》

 

「甦れ! 【スキン・トゥ・ボーン】! 【ワン・ステップ・クローサー】!」

 白骨化した子供と、メカマスクの侍が現れる。

 

《アンデット族》《DEF800》 《戦士族》《DEF800》

 

「【継承名 ワン・ステップ・クローサー】の効果!」

 

《デッキからレベル4以下の【継承名】を特殊召喚》

 

「来い! 【バトル・シンフォニー】!」

 目を閉じ、祈るように銃を構えた天使。《ATK1600》

     

  

    

    

    

「【バトル・シンフォニー】の効果発動! アイズ・ワイド・アウェイク!」

 

《全ての守備表示モンスターの攻撃力の合計分、攻撃力上昇》

 

【バトル・シンフォニー】が目を開く。武器がバズーカ砲へと変わる。

「守備表示モンスターは【スキン・トゥ・ボーン】《ATK1600》【ワン・ステップ・クローサー】《ATK1600》【暗黒プテラ】《ATK1000》の3体。よって」

 

《ATK5800》

 

「このままバトルフェイズだ。まずはコンボのエンジンである【暗黒プテラ】を倒しておこうか。ノー・サレンダー・バレット!」

【バトル・シンフォニー】がバズーカ砲を撃つ。【暗黒プテラ】が木っ端微塵に吹き飛んだ。

「うわっ!」

 

 リオール大河《ライフ8000→2700》

 

(くっ……! 【バトル・シンフォニー】は守備表示モンスターを攻撃してもダメージを与える貫通能力がある……ステータスが軒並み低いこのデッキではライフがあっという間に持っていかれる……!)

「貴様の先攻手札破壊コンボは見事だったが、コンボが突破されるとデッキとしては脆い……【カー召喚・『レオ・ウィザード』】のスキル発動条件で貴様はデッキ内にトラップカードを入れられず、そのリバースカードもブラフだと簡単に見破られてしまう……」

 リオールは表情には出さなかったが、内心焦っていた。彼女は明らかに、この『世界』のカードプールや戦術を知り尽くしている。それに対しこちらは、【継承名】カードの総数すら知らない。レジェンド・カノンはデッキデータの秘匿が認められているのだ。

「さて、メインフェイズ2だ」

「メインフェイズ2? まだ何か出来るのか?」

 リオールは考えた。公式戦で確認された【継承名】カードのうち、墓地から効果を発動するものは【スキン・トゥ・ボーン】、【ロボット・ボーイ】、【ブリード・イット・アウト】の3枚のみ。この状況で発動できるものは【ロボット・ボーイ】くらいだが、手札0枚では意味がない効果だ。

「レジェンド・カノンは立場上、隠している戦術がある。例えば……貴様も得意なリンク召喚だ」

「何?!」

(ちょっと待て、【継承名】デッキに、エクストラモンスターがあるのか?! まずい!)

「現れろ、命を束ねるサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は【【継承名】モンスター2体】! スキン・トゥ・ボーンとワン・ステップ・クローサーの2体をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-2! 【継承名 メテオラ】!」

 宇宙空間の中に、巨大な隕石が現れた。その隕石の表面には、荒れ果てた寺院が何十と残っている。

 

《岩石族》《LINK-2 ← →》《ATK3200》《永続効果 エクストラモンスターゾーンに存在するこのカードは攻撃不可》

 ▷ △ ◁

 ◀   ▶

 ▷ ▽ ◁

「LINK-2で攻撃力3200も……?!」

「ここで今、リンク素材として墓地に行った【スキン・トゥ・ボーン】の効果が発動! スティール・トゥ・ラスト!」

 

《場のモンスター1体を対象、破壊》

 

 翼を織りなす熾天使が灰になっていった。

「くっ、でも【熾天使】にも墓地に行った時の効果がある!」

 

《リンク素材にしたモンスターを特殊召喚》

 

「戻ってこい、【翼を織りなす者】《ATK2750》、【ドルフィン・ビショップ】《ATK1900》《LINK-2 ↑ ↓》!」

 ハイエンジェルと人型のイルカが現れる。

     

    

    

   

    

「私はこれでエンドフェイズに入るが……貴様は知りたがっていたな、『世界』の『崩壊』について」

 人間は不運や苦難には納得を求める。エンドレスシティには不運も苦難もほとんどないが、リオールは夢の中で多くの人間が納得を求める様を見ている。そして今、当事者になってその心理を体験していた。

「この『世界』が私の創造物である、というのは既に理解したな?」

「うん」

「夢で貴様が見ていたのが『旧世界』。私が『構築』し直す前の世界だ。色々と不完全だろう?」

「確かに」

「私は『旧世界』の人間たちの魂を精神エネルギーに変換し、それを使ってこのエンドレスシティを作り上げた。総人口50億人分の魂を、500万人までに減らした」

「人類の99.9%を……たった一人で?」

「そうだ。そもそも私という存在が、『旧世界』での『特異点』だった。人間の魂の残滓が、偶発的に集まって生まれたのが私。他にも多くの偶然が重なり、私は世界を『構築』し直すほどの力を得た。そして同じことが、こちらの『世界』でも起ころうとしている」

「僕やレイチェル光尊のような『特異点』達も、人間の魂の残滓ってこと?」

「由来は知らない。ただ、力を持っているのは確かだ。現に、『旧世界』の記憶と繋がっているのだからな」

 リオールは声を荒げた。

「待ってよ! 仮に『特異点』にこの『世界』を揺るがす力があるなら、説得や教育で『世界』を保つ側として利用すればいいじゃないか!」

「それはできない。力のある人間が必ずしも私の支配に従ってくれるとは限らない。夢と現実を行き来するうちに、『旧世界』の危険思想に染まる者もいるのだ」

 考えてみれば、リオール自身、『旧世界』での経験でシティでは知りえない価値観を多く知っている。しかし、だからこそ、このエンドレスシティでの文明が尊く感じてもいるのだ。

「僕は『旧世界』の思想は好きになれない! それでも僕は粛清対象になるの?! 君に協力すると言ってもダメ?!」

「交渉する気はない。私は人間というものをそこまで信用していないのだ」

 リオールはその言葉に、絶望や恐怖ではなく、寂しさを感じた。『人間を信用しない』と言い切るほどに、彼女は辛い思いをしてきたのだろうか? 

「さあ、制限時間いっぱいだ。私はこれでターンを終了する。貴様の場には手札入れ替え効果を持つドルフィン・ビショップがいるので、まだ戦えるだろうが……どうする?」

「僕は……」

(この『世界』が『崩壊』するのは、僕だって嫌だ……)

 リオールの脳裏に、ナーシャの顔が浮かんだ。急に、彼女に会いたくなった。

 そしてリオールは、ドローを構えた。

「悪いけど……いくら『世界』の創造者の意思だからって、簡単に死んであげないからね」

「足掻くのは自由だ」

「僕のターン!」

(これで手札が2枚になった……ドルフィン・ビショップの効果から展開できるけど……【継承名 メテオラ】の効果が分からない……このタイミングで出したってことは防御や妨害の効果か? 攻撃不能なのとリンクマーカーの向き(←と→)を考えると、本来は他のリンクモンスターと組むなりしてメインモンスターゾーンに出すカード……だとしたらどうしてバトル・シンフォニーを残した? LINK-1の【継承名】はいないのか?)

 リオールは頭を振った。未知のモンスター効果なんていくらでも想像できるのだ。

(落ち着け……分からないなら、使わせてみればいい!)

「僕はドルフィン・ビショップの効果を発動! ドルフィン・ウィズダム!」

「こちらにチェーンはない」

 

《レベル5以上モンスター2体をデッキから手札に加え、手札2枚をデッキに戻す》

 

「そして場に【レオ・ウィザード】モンスターが居ないため、手札から【招来するレオ・ウィザード】を特殊召喚!」

 このデュエル2体目の、黄色のマントのレオ・ウィザードが飛び出した。

 

《魔法使い族》《ATK1350》

 

「そのまま効果発動!」

 

《自身をリリースし、墓地又は手札から通常モンスター1体を特殊召喚》

 

 黒いマントのレオ・ウィザードが現れた。

「この【レオ・ウィザード】をリンクマーカーにセット! 召喚条件は【通常モンスター1体】! LINK-1! 【休眠するレオ・ウィザード】!」

 レオ・ウィザードが赤いカーテンに覆われた。

 

《魔法使い族》《LINK-1 ↙》《ATK0》

 ▷ △ ◁

 ◁   ▷

 ▶ ▽ ◁

     

    

   

   

    

「このまま、休眠するレオ・ウィザード1体でリンク召喚! LINK-1! 【予言するレオ・ウィザード】!」

 2体目の、白マントのレオ・ウィザード。

 

《魔法使い族》《ATK1350》

 

「墓地に行った【休眠】、場の【予言】の効果発動!」

 

《デッキから魔法カードを手札に加える》

 

《デッキから【レオ・ウィザード】カードを手札に加える》

 

 少女はこの連続リンク召喚を静かに眺めている。表情からは何も読み取れなかった。

 

「ここで、場の『予言するレオ・ウィザード』、『翼を織りなす者』、LINK-2『本の精霊 ドルフィン・ビショップ』の3体をリンクマーカーにセット! 召喚条件は【翼を織りなす者】を含むモンスター2体以上! 現れろLINK-4! 【翼を織りなす堕天使】!」

 

《天使族》《LINK-4 ↑ ↖ ↗ ↓》《ATK2750》

 ▶ ▲ ◀

 ◁   ▷

 ▷ ▼ ◁

 黒い翼に闇を纏ったダークエンジェルが現れた。

「まだだ! 墓地に置かれた、【ドルフィン・ビショップ】の効果!」

 

《デッキから【本の精霊】モンスター1体を特殊召喚》

 

「2体目の【エレファント・ビショップ】!」

 

《DEF1200》《誘発効果・永続効果》

 

「誘発効果により、手札から【祈祷するレオ・ウィザード】を特殊召喚!」

 今度のレオ・ウィザードは水色のマントだ。

 

《魔法使い族》《レベル3》《ATK1350》

     

    

   

   

    

「【翼を織りなす堕天使】の効果発動! イービル・パニッシュ!」

 

《リンク先のモンスターを全て破壊し、その攻撃力の合計分ダメージ、さらにその数値分攻撃力上昇》

 

「リンク先に居るのは君の【バトル・シンフォニー】と僕の【祈祷するレオ・ウィザード】の2体! これで君は合計2950ポイントのダメージを受け、【堕天使】の攻撃力は5700まで上昇する! そろそろ【メテオラ】の効果を使わないとまずいんじゃない?!」

(展開を止めてこないところを見ると、単純な耐性能力? 最悪、僕のライフに2700ポイント以上の直接ダメージを与える効果だったとしても、僕のリバースカードは【痛魂の呪術】だから、負けることはない!)

「そうだな、そろそろ頃合いだろう。【継承名 メテオラ】効果発動! ブレイキング・ザ・ハビット!」

 メテオラの巨体がひび割れ始めた。

 

《場の全カードを破壊。次のターンに自身と墓地の【継承名】2体を特殊召喚》

 

「全カードを?! なら、手札から【激昂するレオ・ウィザード】の効果を」

 

《チェーン不可》

 

「そんな!」

「【メテオラ】はいかなる時代をも超越する、雄大な意思の象徴。何者にも止めることは出来ない」

 砕け散ったメテオラの残骸が降り注ぎ、全てのモンスターとリバースカードが破壊された。

「でも分かってるよね、墓地に行った【祈祷するレオ・ウィザード】と【翼を織りなす堕天使】にはそれぞれモンスターを特殊召喚する効果が―」

 

《発動不可》

 

《発動不可》

 

「何?! これもダメなのか?!」

「【メテオラ】による破壊を受けたカード、およびその同名カードはこのターン、効果の発動を封じられるのだ。ただし、この強力なフィールドリセット効果と引き換えに、私は4000ポイントのダメージを受ける」

 

 少女《ライフ8000→4000》

 

「貴様の手札は2枚、1枚は【激昂するレオ・ウィザード】で、この状況では役に立たない……もう1枚は魔法カードだったな……おそらく、【レオ・ウィザードの洗脳術】だろう?」

(くっ、読まれている……!)

 リオールは確かに【レオ・ウィザードの洗脳術】を加えていた。もし戦闘破壊に失敗した時は、効果を使い終わった【メテオラ】を奪い取る算段だったのだ。だが、メテオラ自身が墓地に行ってしまうとは。

「なんでもお見通しか……創造者を名乗るだけはあるね……」

 リオールは笑った。

「次のターン、君の【メテオラ】は墓地の【継承名】と一緒に戻ってくる……今度はメインモンスターゾーンに出るから攻撃可能になるし、絶体絶命ってやつか……」

「その通りだ」

「じゃあ……もう……」

 少女は気づいた。

「このターンで決めるしかないね」

 リオールの目はまだ死んでいないことに。

 

 Bパートへ続く。

 




【痛魂の呪術】は原作・アニメで闇マリクが使った、ダメージを跳ね返す速攻魔法です。懐かしいですね。エンドレスシティではバーンデッキも割とあるんですよ、きっと。

おまけ
リオール(エクストラモンスターがあるのか?まずい!)
少女「なにがまずい、言ってみろ。」
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