「納得いかない納得いかない納得いかなーーい!!!!」
芝の上でジタバタと手足をばたつかせながら大声で叫ぶ将来有望なウマ娘は傍目から見てとてもみっともなかった。
「どーして普通の人の君が僕に勝てるのさ!!それに何なのさあの走り方とスピード!!ぜーったいおかしいよ!!」
「おい」
「何さ!」
パタリロはツンツンと地面を指さすが一体何をしているのか分からず何?と聞き返し、先程より大袈裟に地面を指さす。
「なに?」
「だーー!!何故わからんのだ貴様ー!!さっきから僕はわかりやすくジェスチャーしているだろう!!」
「だから何をさ!!」
「いいか!よく見ていろ!こうやって地面に手をついて頭をだなー!」
「うんうん」
「申し訳ありませんでしたってアホかーーー!!!!!!!なんで僕が謝る側になってるんだ!!!」
いいから早く謝罪せんかと捲し立て、がなり立て、手足をばたつかせ、次第に空中に浮き始めるその姿に周りから悲鳴が上がるが構わずパタリロは浮き続ける。
「わかった!わかったから!謝るから!ソレもうやめてよぉ!!」
「本当に申し訳ありませんでした…」
「うむ、まぁいいだろう」
すっかり大人しくなったトウカイテイオーは耳を垂れさせビクビクしながら謝罪をする。
「いいか?これからは先ず相手に礼節を持って行動するんだ。でないと…」
脅すようにそう呟くと背筋を伸ばしはいっ!と返事をする。
フハハと笑いぐにぐに曲がるマジックハンドでトウカイテイオーの肩を叩きこれでもかと優越感に浸る。
そうして暫くトウカイテイオーを揶揄っているとルドルフがお疲れ様ですと言いながらターフへとやってきた。
「お手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした、殿下」
頭を下げようとするルドルフに対し僕自身もいい運動になったから気にしないでいいと下げるのをやめさせる。
ほっと胸を撫で下ろし一息つくと遠慮しつつも少しソワソワするルドルフに何かと聞くととある事を聞いてきた。
「殿下、先程のスピードと走法は一体…」
あぁなるほど、彼女もいちウマ娘。
ただの人間の僕があのスピードで走れた事への理由と興味が出たのかと理解する。
「ああ、あれですか。あれは僕が発明した『ゴキブリ走法』ですよ」
「ゴキ…」
その名前に少し身構えるルドルフだが直ぐにどうやっているのだとか私にもできますかとか色々聞いてきたので説明しようとするが
「そんなの覚えないで!!!!」
と大泣きしながらトウカイテイオーが止めるものだから渋々諦めていた。
「パタリロは王様?なのにどうして日本にきたの?アメリカとかイギリスの方が有名校いっぱいあるのに」
「ウチのやつらが日本のレースをテレビに齧り付いて見ていたからだな。他にもあるが、まぁ日本の方が前に来た事があったしな」
それから場所を移し、生徒会室のソファーに腰掛けお互いバリバリとお茶請けを食べながら僕はテイオーと駄弁っている。
最初は失礼なやつだと思ったがお灸を据えてから話をしてみると、これが普通なんだなと案外気にはならなかった。
口を開けばルドルフの事ばかりで少し飽きてきてはいたが、こうして歯に衣着せぬ物言いをしてくるので気が楽にはなる。
そんな僕とテイオーの軟化した姿をルドルフはまるで弟や妹、いやむしろ父性ならぬ母性のある目でこちらを見守っていた。
「さて、今日はもう遅いですし僕もそろそろお暇させてもらいましょうか」
時計を見やるともうすぐ6時を超えそうになっている上に気づくとバンコランも見当たらない。
流石の奴もいきなり連れてこられて用意も何も出来とらんだろうが、宿ぐらいそこらへんの美少年を引っ掛けてなんとかするだろうと安直な考えをしているとルドルフが席を立ち
「殿下宜しいでしょうか」と伺いを立ててきた。
「再度お礼を申し上げます。この度はトレセン学園においでくださって誠にありがとうございます。殿下の知識の広さと深さ、それに素晴らしい身体能力に私は非常に感動しました。」
やけに仰々しく僕を持ち上げる言葉は悪い気はしないが、あまりにもルドルフは僕を持ち上げすぎる気概があるようなので僕はお礼と共にやんわりともっと肩の力を抜いて友人の様に接してくれると有難いと口にするがどうもルドルフには難しいらしい。
「出来れば私が帰国までの間、殿下とご一緒したいのですが少々予定が詰まっておりまして十分な対応ができないかもしれません…申し訳ありません」
続ける様に深々と頭を下げ陳謝した。
それはまぁ仕方のない事だ。
最初の紹介でルドルフのスケジュールは過密で、突然来た上にただの視察目的できている僕に割く時間が出来るとは元々思っていなかった。
なので気にしないでいいしそれより無茶な事をさせてしまい申し訳ないとこちらこら謝るとルドルフはあせり、テイオーは
「カイチョーを困らせないでよ!」と的外れな事を言っていたが無視した。
「カイチョー、パタリロの事を案内してくれる人がいればいいの?そしたら僕いい人知ってるよ!」
そう言ってテイオーはどこかに電話をかけはじめ、あーだこーだ話をし了承を得たのか
「来てくれるって!ちょっと待ってて!」
とパチンとウインクした。
はてと首を捻る僕とは逆に、ああそういえばと納得する様に頷くルドルフ
それから他愛もない雑談をしているとコンコンと控えめにドアを叩く音が響く。
どうぞと促され「失礼します」と聞こえた声に何故か安心感を覚えた。
そうして開かれた扉から現れた彼女は
美しかった。