前書きに書くことがなくなってきたな……。
視界が魔法陣の光に満たされた後、洞窟に転移したらしいと分かったハジメ達は、その洞窟を道なりに進んでいた。
緑光石の輝きもなく、真っ暗な洞窟ではあるが、ハジメもアズも滅亡迅雷.netも暗闇を問題としないので道なりに進むことにした。
途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、アズがはめているオルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。一応警戒はしていたのだが、魔物もおらず、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。ハジメはこの数ヶ月、アズに至っては何年間、求めてやまなかった光。そして、滅亡迅雷.netの四人にとっては初めての光。
ハジメとアズは、それを見つけた瞬間、思わず立ち止まりお互いに顔を見合わせた。それから互いにニッと笑みを浮かべ、同時に求めた光に向かって駆け出した。滅亡迅雷.netもそれを見て、二人を追いかけた。
近づくにつれ徐々に大きくなる光。外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。ハジメは、〝空気が旨い〟という感覚を、この時ほど実感したことはなかった。
そして、ハジメとアズは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。
地上の人間にとって、そこは地獄にして処刑場だ。断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。深さの平均は一・二キロメートル、幅は九百メートルから最大八キロメートル、西の【グリューエン大砂漠】から東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡を、人々はこう呼ぶ。
【ライセン大峡谷】と。
ハジメ達は、そのライセン大峡谷の谷底にある洞窟の入口にいた。地の底とはいえ頭上の太陽は燦々と暖かな光を降り注ぎ、大地の匂いが混じった風が鼻腔をくすぐる。
たとえどんな場所だろうと、確かにそこは地上だった。呆然と頭上の太陽を仰ぎ見ていたハジメとアズの表情が次第に笑みを作る。
「……ついに、地上に出られたんだ……」
「……そうだね」
二人は、ようやく実感が湧いたのか、太陽から視線を逸らすとお互い見つめ合い、そして思いっきり抱きしめ合った。
「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞぉー!」
「やったあーーー!!!」
アズを抱きしめたまま、ハジメはくるくると廻る。大柄の男性が、自身より小柄の女性を抱き抱え共に笑い合う姿。その様は、まるで新婚夫妻の結婚式だ。
しばらくの間、人々が地獄と呼ぶ場所には似つかわしくない笑い声が響き渡っていた。途中、地面の出っ張りに躓き転到するも、そんな失敗でさえ無性に可笑しく、二人してケラケラ、クスクスと笑い合う。
滅亡迅雷.netの四人も彼等の関係は知っているので、見守っている。
ようやく二人の笑いが収まった頃には、すっかり……魔物に囲まれていた。
「ん? なんだ魔物か。迷宮の魔物と比べたら殺気が雑魚過ぎて、気付かなかったよ」
「この程度の魔物、アーク様なら問題ないよね♪」
「勿論さ。……さあ皆、始めようか」
その言葉でハジメの腰にアークドライバーゼロが巻き付き、アズや滅亡迅雷.netの四人がフォースライザーを取り出し、自身の腰に巻き付ける。
先ずはハジメから。ハジメは自身の腰に巻き付いたアークドライバーゼロに手をかける。
「変身」
その言葉と共に、アークドライバーゼロのボタンを押した。
アークドライバーゼロから流れ出る音声と共にハジメを中心に、阿鼻叫喚な叫び声と共に黒い液体が出てきて、ハジメを包み込む。
そして液体は、ハジメの姿を仮面ライダーアークゼロへと変えた。
続いてアズ。アズは懐から、深緑色のプログライズキーを取り出す。そのプログライズキーには、ヘビのシルエットがデザインされていた。
アズはボタンを押し、プログライズキーを起動する。
【リストレイント!】
「感じるわ~。私の心から、湧き上がる悪意を」
そしてプログライズキーをフォースライザーに挿し込み、
「変~身♡」
レバーを引いた。
【フォースライズ!】
音声が流れた瞬間、フォースライザーからヘビのようなものが現れ、魔物達を威嚇する。そして周りの全ての魔物を威嚇した後、アズに巻き付き、仮面ライダーとしてのボディを形成する。
その仮面ライダーの名は、仮面ライダーアズ。アズがフォースライザーと、ウィッピングアナコンダプログライズキーを使用して変身するライダーである。
【ウィッピングアナコンダ!】
【Break Down……】
最後に滅亡迅雷.netの四人。まず滅が右手にプログライズキーを持ち、右手を横に伸ばした後にボタンを押してプログライズキーを起動した。
【ポイズン!】
それに続いて亡、迅、雷が各々のキーを取り出し、起動する。
【ジャパニーズウルフ!】
【ウィング!】
【ドードー!】
亡は左手で持っていた白色のキーを右手に落とし、『亡』の字を書くように移動させる。
迅はマゼンタ色のキーを上に投げて、右手でキャッチする。
雷は紅色のキーを上に掲げ、稲妻を描くようにジグザグに移動させる。
そして四人は一斉に、各々のキーをフォースライザーに射し込み、
「「「「変身!」」」」
レバーを引いた。
【【【【フォースライズ!】】】】
滅のフォースライザーからサソリのようなものが現れ、滅に尾の毒針を刺す。そして尾を滅に刺したまま滅に組み付き、滅の姿を仮面ライダー滅へと変えた。
【スティングスコーピオン!】
亡の体を水色の竜巻が包み、亡の姿を仮面ライダー亡へと変えた。
【ジャパニーズウルフ!】
迅のフォースライザーからハヤブサのようなものが現れ、周りの魔物に鳴き声で威嚇する。そして迅の元へ戻ってくると翼で迅を包み込み、迅の姿を仮面ライダー迅へと変えた。
【フライングファルコン!】
雷の体を紅い稲妻が包み、雷の姿を仮面ライダー雷へと変えた。
【【【【Break Down……】】】】
全員の変身が、完了した。
「お前達の結論はただ一つ。死だ」
ハジメの眼に殺意が宿る。その眼を見た周囲の魔物達は気がつけば一歩後退っていた。しかも、そのことに気がついてすらいない。本能で感じたのだろう。自分達が敵対してはいけない化物を相手にしてしまったことを。
常人なら其処にいるだけで意識を失いそうな壮絶なプレッシャーが辺り一帯を覆う中、遂に魔物の一体が緊張感に耐え切れず咆哮を上げながら飛び出した。
「ガァアアアア!!」
しかし一本の光矢が走り、その魔物は避けるどころか反応すら許されず頭部を吹き飛ばされた。
光矢が放たれた場所を見てみると、そこには滅がアタッシュアローを構えて立っていた。
「ありがとう、滅」
ハジメは礼を言う。正直避けなくても済んだが、一応感謝はしていた。
「気にすることはない」
素っ気ない返事をする滅。一体の魔物が滅に殺されたのを皮切りに、周囲の魔物全てが襲いかかってきた。
ハジメは冷静に、その場から動くこともなく対処していた。殴れば魔物の頭が吹き飛び、蹴れば魔物の体が消失する。圧倒的すぎる力に、動く必要もなかったのだ。
他は自身のライダーの能力を使って対応していた。
アズは腕や足を伸ばし、鞭のように魔物に向かって叩きつけていた。アズが腕や足を振る速度はとてつもないので、威力は凄まじいものだろう。
滅は腕からサソリの尾のようなものを伸ばし、それで魔物を翻弄しながらアタッシュアローで射抜いていた。無駄のない動きで、魔物達は攻撃するどころか、滅に近づくことさえできていなかった。
亡は脅威のスピードで戦場を駆け抜けながら、腕に搭載された自慢の鉤爪で魔物を細切れにしていた。魔物達は、すでに切り刻まれていることにも気付いておらず、死んでいった。
迅は背中の翼で空を飛び回り、魔物に攻撃したらすぐに離れるというヒットアンドアウェイ戦法をとっていた。迅自身も遊んでいるようで、笑っている。
雷は両手に鳥の羽がデザインされたような双剣を使い、魔物を切り刻んでいた。囲まれたら直ぐ様腕から雷撃を繰り出し、臨機応変に対応していた。
もはや戦いではなく蹂躙。魔物達は、ただの一匹すら逃げることも叶わず、まるでそうあることが当然の如く頭部を吹き飛ばされ、切り刻まれ、骸を晒していく。辺り一面が魔物の屍で埋め尽くされるのに五分もかからなかった。
魔物が全滅したのを確認し、全員変身を解除する。
「弱すぎて、必殺技を使うまでもなかったね」
「私達が強すぎるだけだよ♪」
変身を解除してすぐに、ハジメの腕に抱きつくアズ。対してアズに優しい目を向けるハジメ。数ヶ月前まで初対面だったというのに、現在は甘々のバカップルなのだから、驚きだ。
すると突然、アークが喋り出す。
(……面倒な結論を予測した。全員、ここから今すぐ離れろ)
それを聞いたハジメは、アズと密着できないのを忌々しく思いながらアズを優しく離し、右手の中指にはまっている〝宝物庫〟に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を三台取り出す。
「ほら急いで乗って。アークが、ここにいると面倒なことがあるってさ」
滅亡迅雷.netの四人にもそう告げ、自身の魔力駆動二輪、マシンアークに乗るハジメとアズ。そして滅亡迅雷.netがそれぞれの二輪に乗ったのを確認すると、魔力を注ぎ込んで起動し、発車させた。
地球のガソリンタイプと違って燃焼を利用しているわけではなく、魔力の直接操作によって直接車輪関係の機構を動かしているので、駆動音は電気自動車のように静かである。ハジメとしてはエンジン音がある方がロマンがあると思ったのだが、エンジン構造などごく単純な仕組みしか知らないので再現できなかった。ちなみに速度調整は魔力量次第である。まぁ、ただでさえ、ライセン大峡谷では魔力効率が最悪に悪いので、あまり長時間は使えないだろうが。
「ところで、何処を目指すの?」
後ろに座っているアズが、聞いてきた。話していなかったが、ハジメはすでに目的地を決めていた。
「勿論、王国さ。今後この世界を滅亡させるにあたって、一番邪魔になる国だからね。一番最初に潰しておくのが後々楽だ。それに、」
ハジメは獰猛な笑みを浮かべながら言った。
「僕を落としてくれた奴等もいるだろうからねぇ……」
「流石アーク様。抜かりないね♪」
アズが後ろから抱き締めてくる。抱き締め返したいのを我慢し、ハジメはマシンアークを走らせ続けた。
するとまた、アークが喋り出した。
(ハジメ、停まれ)
アークのその声に、後ろの四人に停車の合図を出して、マシンアークを停めるハジメ。
「今度は何だい?」
(ここから微量だが、悪意を感じる。人間の悪意だ)
アークが示した場所は、絶壁だった。
「……何もないけど?」
(壁を壊してみろ)
「滅、頼むよ」
「承知した」
滅はアタッシュアローを構え、絶壁に向けて放つ。すると其処には、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。
〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟
〝!〟や〝♪〟のマークが妙に凝っている所が何とも腹立たしい。
「……アークは本当にここから悪意を感じ取ったんだね?」
(……私のメモリーに間違いという言葉は存在しない)
アークに疑念を含めて聞くハジメ。それに少し間を開けて反応するアーク。その間にアズが、その看板を調べていた。
「文字も掠れかけてるし、だいぶ古いね。これが書かれたのは、何百年前どころじゃないよ。それにこの名前、オスカーの手記にもあった名前だね」
アズの言葉に反応するハジメ。
〝ミレディ〟その名は、オスカーの手記に出て来たライセンのファーストネームだ。ライセンの名は世間にも伝わっており有名ではあるがファーストネームの方は知られていない。
「ということは、ここがライセン大迷宮……」
故に、その名が記されているこの場所がライセン大迷宮である可能性は非常に高かった。
しかもアークが、ここから人間の悪意を感じたということは彼、もしくは彼女が生きている可能性があるということ。
「行ってみようか」
ハジメの言葉に、五人は頷く。
そして全員、ライセン大迷宮と思わしき場所に入って行った。
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「はぁ……はぁ……はぁ……」
ライセン大峡谷を駆ける、一つの人影があった。
ハウリア族の娘、シア・ハウリアである。
彼女は現在、とある場所に向かっていた。理由は彼女が持つ固有魔法『未来視』である。
効果は、仮定した未来が見えるというもの。また、危機が迫った場合は勝手に発動する。
ライセン大峡谷という地獄をシアが生き残ることができたのも、これのお陰である。しかし本人は、このまま逃げ続けてもいずれ魔物に喰われると分かっていた。
(今まで散々迷惑かけてきた私なら、どうなってもいいです! でも今までずっと育ててくれたお父様や皆だけは、生きてて欲しいんです! 誰か、私の家族を救ってください!)
自分の家族を救ってほしい、そう願った瞬間未来視が発動し、シアの頭にある場面が流れ込んできたのである。
その場面は……六人の謎の戦士が、峡谷の魔物をいとも簡単に捩じ伏せている場面だった。
(あの人達なら、私の家族を救ってくれるかもしれません!)
峡谷の魔物を圧倒できるだけの実力を持った彼等なら、自分の家族を救ってくれるかもしれない、その希望だけを抱きながら、未来視で見た場所へ向かっていた。
(見えてきた!)
そしてようやく見えてきた、未来視で見た場所へ飛び込み、ジャンピング土下座を決めながらシアは早口で喋りだした。
「私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 私の仲間を助けて……あれ、いない!? ひぃ~! 魔物が大量に死んでます~!」
しかし当の人物達は、すでに移動を開始していたようだ。
ウィッピングアナコンダプログライズキー
オリジナルプログライズキー。深緑色。ヘビが獲物に巻き付き絞め殺す姿と、その体を鞭のようにして攻撃する姿をイメージして作られた。モチーフは世界最大のヘビと言われるアナコンダ。アナコンダは巻き付く力が強いため、獲物を拘束するのが非常に得意。そのため、アビリティはrestraint(拘束)となった。
仮面ライダーアズ
アズがフォースライザーとウィッピングアナコンダプログライズキーを使用して変身するオリジナルライダー。四肢をどこぞのゴム人間のように伸ばすことができ、伸ばした腕を鞭のように叩きつけたり、縄のように巻き付けて拘束したりと、トリッキーな戦術を得意とする。必殺技は『ウィッピングディストピア』。敵を伸びる腕で捕まえて自分側に引き寄せ、強烈なキックをお見舞いする。
サブヒロインの方々が変身するライダー
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