テラ転生者掲示板へようこそ!   作:テキサス仮面

10 / 36
今回は有機栽培茶様の『脇役になりたくないTS転生者』とのコラボ回、その後編です。
大陸版情報、独自設定などを含みます。ご注意ください。

アルハイムちゃんに辛い目にあって欲しくない!ので、罪も過去も家族も全部取り上げるね…。


【コラボ】ご都合主義の夢物語【後編】

8369:ボリバルルートビアクソマズ ID:sJHiuT

牧獣の胃袋に肉を詰めた食べ物を食う奴らと一緒に戦いたくないんだけど

 

8370:烈火のドラコ ID:NigWPs8G

マーマイトたりてないなお前

 

8371:ボリバルルートビアクソマズ ID:sJHiuT

ヴィクトリアの人間は難聴気味っていいますが文字もまともに読めないんですね

 

8372:錆鎚 ID:3bGuGm5K

紅茶キメるな

 

8373:烈火のドラコ ID:NigWPs8G

ボイラーとか工場とかが滅茶苦茶多いからなー耳が悪くなるのは仕方がないんだよなー覇権国家だから!!あー、ただっぴろい荒野しかないクルビアはさぞかし静かなんだろうな!!!

 

8374:モルモットォ! ID:a552TSw

もん!

 

8375:ボリバルルートビアクソマズ ID:sJHiuT

水蒸気とか古風で味わいがありますねw

 

8376:元レユニオン ID:XZSQJ2i

やめろやめろ

 

8377:烈火のドラコ ID:NigWPs8G

裏切り者のハゲワシが!

 

8378:ボリバルルートビアクソマズ ID:sJHiuT

奴隷主気取りの猫ちゃん(笑)

 

8379:やらない夫 ID:edAPZLS

まーたヴィクトリア語クルビア語論争はーじまったよ…

 

8380:医療従事者 ID:wZbpREr

どんぐりの背比べやめろ!!!あと両国サルゴンにちょっかい出すなよでやれ

 

8381:コルシカ114514世 ID:574wawt

この不毛な戦いを終わらせる良い方法があります!ガリアを復活させましょう!

 

8382:ロック ID:DG2khRp

これはダリアちゃん。最近入院した子なんだけど四歳で水操るアーツ使えるんだよすごくない?

[画像]

 

8383:ツノニキ ID:niUnMrP

>>8381

おはガリアニキ

 

8384:寒災ネキ ID:yEQwQnw

キャワワワワ

 

 

後ろのイケメン誰ぞ?

 

8385:徘徊者 ID:Fut3zUww

>>8381

仲裁になってねーぞガリアニキ

 

8386:電子音楽技術同盟推し ID:Gi4rDJC

熊耳カワユス

 

8387:医療従事者 ID:wZbpREr

>>8382

四歳ってことは母子感染か?水操作ってのはかなり危険なアーツだぞ大丈夫か??

 

8388:おおかみもふもふ ID:d6aWdLiP

イッチ、女の子の友達多くない?多くない?

 

8389:ボリバルルートビアクソマズ ID:sJHiuT

ブリキ臭い簒奪者の国よかマシそう>>ガリア

 

8390:烈火のドラコ ID:NigWPs8G

>>8381

ガリアは復活しねえよwwwwwwwww

 

>>8382

kawaii

 

8391:ロック ID:DG2khRp

>>8387

大丈夫.

観測所ニキのおかげで鉱石病抑制装置がアップグレードして活性化も抑えられるようになったからアーツユニット無しにアーツは使えないってー

>>8384

Logos先生

 

8392:蛍光灯 ID:SCMmXHW

ガリアが復活するならカズデルが団結して宣戦布告するぐらいのことないと無理じゃね?

 

8393:狩人 ID:9kv8xiyi

イベリア復興とどっちの方が難易度高いの?教えて俺もいるぞニキ!

 

8394:寒災ネキ ID:yEQwQnw

Logos先生ってショタって聞いてたけど全然ショタじゃないじゃん!!!!!!!!!!!!!!訴訟!!!!!!!!!!!!

 

8395:俺も居るぞ! ID:dBEvDFvt

>>8393

イベリア

イベリア復興はテラがカズデルって呼ばれてた頃に戻すぐらいの難易度

 

8396:名無しの先民 ID:bSw2Lwk

>>8382

この顔でスツール滑走大会優勝したって伝説マ?

 

8397:ソールズベリーステーキ求む ID:bCXYh7k

観測所ニキすげえ

 

8398:ロック ID:DG2khRp

>>8394

呪い撒くなってLogos先生怒ってるからやめて

 

 

ところで蛍光灯ニキのベッドの下に缶あるけどあれなに?

 

8399:元レユニオン ID:XZSQJ2i

Logos先生初めて見た

 

8400:蛍光灯 ID:SCMmXHW

>>8395

詳しく

>>8398

個人的な治療用アーツユニットなんでベッドの下見た?

 

8401:チベスナ顔 ID:Ue8eOaP

ベッド下に缶?

 

8402:錆鎚 ID:3bGuGm5K

エロ本じゃないのか?

 

8403:ツノニキ ID:niUnMrP

貯金箱?

 

8404:狩人 ID:9kv8xiyi

ウス=イ=ホンか

 

8405:あなたはそこにいますか ID:cb9un3sz

中身アスファルトじゃないのかね

 

8406:俺も居るぞ! ID:dBEvDFvt

>>8400

詳しくは漁れてないけど、元々テラはカズデルって呼ばれててティカズ人、要するにサルカズが覇権を取ってたんだけど先民と神民に追いやられたうえにサンクタに裏切られたとか

 

8407:ロック ID:DG2khRp

>>8400

ダリアちゃんとイフリータお姉さんと遊んでたら見つけた

 

8408:明日のウォッカ ID:2C26esX

箱ってコトリバコ ?

 

8409:医療従事者 ID:wZbpREr

あ そ ぶ な

 

8410:やらない夫 ID:edAPZLS

俺もいるぞ!ニキまたやばい情報リークしてない?大丈夫?

 

8411:蛍光灯 ID:SCMmXHW

>>8406

サンクスサルカズを差別する方が都合がいいってか?ねぇわ

>>8407

なんで開くんだよロドスのセキュリティはザルなのか???

 

8412:観測所ニキ ID:hfEVA7nx

やぁ

身元不明の子、拾ったんだけど、だれか知らない?

[画像]

 

8413:俺も居るぞ! ID:dBEvDFvt

>>8411

全部が全部当たるわけじゃないからあんまり当てにしないでね

>>8412

知らないや

 

8414:100ワニ ID:GxUFeSb

ヒンヌー

 

8415:ダイナーゲート ID:hGAh45T 

だれだろ?

 

8416:徘徊者 ID:Fut3zUww

しらねー

 

8417:寒災ネキ ID:yEQwQnw

幸薄系美少女と見た!!!キャワアアアアアアアアア

>>8414

呪い送っといた

 

8418:蛍光灯 ID:SCMmXHW

なんか知り合いに似てる気がするわ

 

8419:100ワニ ID:GxUFeSb

さむいさむいさむいたすけてたすけてたすけてさむいさむいさむいたすけてたすけてたすけて

 

8420:ロック ID:DG2khRp

なんかテキサスさんっぽい?

 

8421:あなたはそこにいますか ID:cb9un3sz

ループス?フェリーン?そこら辺見分けるの苦手

 

8422:医療従事者 ID:wZbpREr

しらん。ワニニキ何が起きてる???

 

8423:名無しの先民 ID:bSw2Lwk

殺しはやめときなよ寒災ネキ

 

8424:蛍光灯 ID:SCMmXHW

>>8420

あー確かにテキサスに似てるかも

 

8425:狩人 ID:9kv8xiyi

ご愁傷様ワニニキ…

 

8426:錆鎚 ID:3bGuGm5K

>>8419

骨は拾ってやるよ

 

8427:観測所ニキ ID:hfEVA7nx

>>8420

>>8424

テキサス、とは?

 

8428:医療従事者 ID:wZbpREr

誰か止めろ!!!!!!!!!!!!!

 

8429:にゅう ID:pKLwpTw

こっちも寒くなってきたからいい加減に止めて寒災ネキ

 

8430:ロック ID:DG2khRp

チェルノボーグ事変のときに龍門であったことある

 

寒災ネキそろそろやめてあげて

 

8431:蛍光灯 ID:SCMmXHW

>>8427

俺の相棒が契約してるペンギン急便ってことの従業員

姉妹はいないって聞いてたけど

 

8432:寒災ネキ ID:yEQwQnw

やめますぅ

 

8433:100ワニ ID:GxUFeSb

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい

 

8434:観測所ニキ ID:hfEVA7nx

>>8431

わかった、とりあえず、本人が知り合いかどうか、聞いてみるね。ありがとう。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「クレアスノダール事変」

 

それは1087年10月24日、ウルサスの移動都市クレアスノダールにて起きた感染者による大規模な暴動のことだ。

これによりクレアスノダールは都市機能を失い、地図から名を失うことになったはずなのだが──―

 

「1087年、クレアスノダール事変?その年はカズデル内戦が起きた年よね?何それアタシ聞いてない!ここの職員だってウルサスに行く時、結構立ち寄る都市だからそんなこと起きてたら記録残ってるはずだし、山脈を隔てているとはいえここから遠くないし。駐屯軍がいるような場所で大きな事件って何よクーデター?…ってそもそもアタシ二か月前にあそこでディナーしたばかりなんだけど」

 

クレアスノダールはその規模に対し貿易が活発だった。ウルサス国内の都市で言えばかなり珍しい傾向で、外国諸国からの来訪者も決して少なくない。人の出入りが多いということはそれに比例して情報の行き来も多くなるということ。いくらウルサスが改変・隠蔽しようとも、彼の言う「チェルノボーグ事変」のように必ずどこかしらから情報が漏れ出るものだ。

 

あの街はない。私が壊した。

 

何もかも滅茶苦茶にされて、もう存在しない。そこにあったはずの命も、思い出も、生活も、全て消え失せてしまった。

 

そう、消えた。そのはずだった。

 

 

「じゃあ、『ドルトン源石加工工場襲撃事件』は?」

 

「知らないわよ。大反乱の後はずっと似たようなデモとか暴動とかばっかだし。他国にまともも戦争吹っ掛けられないレベルまで落ち込んでるし、生活水準の低さとかそういうのから国民の不満をそらすために、感染者差別がエスカレートしたし。何があっても不思議じゃないわ」

 

話を要約すると「チェルノボーグ事変」とは「ウルサス軍の一部が私腹を肥やすために感染者による暴動を演出して炎国と戦争を起こそうとした」事件のことであり、感染者団体、「レユニオン」がかかわったとされる情報は軒並み消されてる、ということだった。感染者が立ち上がったという事実そのもののをもみ消した、…ええ、あの国ならやるでしょう。ですがなぜここでウルサス軍が出てくるのでしょう?

 

「黒幕が死んだと思われていたコシチェイ公爵で、奴のアーツによって傀儡と化していた公爵の娘タルラが手引きしたってわけ」

 

…タルラが公爵の娘、ですか。確かにあの規模の騒動を起こそうと思ったらそれなりの器量と情報網が必要となるでしょう。彼女も結局誰かの人形だったんですね。あの妙な感覚も納得がいきました。

 

「っで、問題はアンタがあの事件を「レユニオン」が起こしたのをなぜ知っているのかってこと。これを今現在知りえるのはリアルタイムで情報をがっつり拾ってた…現地の人間だけ。情報は軒並み改変・すげ替えされちゃって、調べても感染者の団体が救援活動を行ってたことしかわからないようになってるのよ、これが。龍門の対応が良すぎて沈静化と風化が早すぎるのよねぇ」

 

「龍門はなだれ込んできた膨大な避難民の対応を徹底して、その9割はもう解決済み。感染者だって事件直後から専門機関複数呼んで対策さしてたし、龍門の柔軟性と手腕を知らしめてその名声は右肩上がり。なんだかんだ言ってチェルノボーグ事変で得をしたのは間違いないわね。ウルサスだって結論的に現皇帝の権威を強めることにもなったのよねぇ。対立してた軍との関係が深い旧貴族を軒並み処罰できる口実を手にしてやーっと大反乱が収束したんだから」

 

なにがなんのことらや。半年という時間の差だけでは説明できない齟齬。…もしかして致命的な認知のずれがある?まさか二度目の転生?いやそれはないと思いたい。この色々ボロボロな心身そのまま私のよく知るテラ(クソッタレ)と同じような世界に転生だなんて最悪すぎる。だとしたら………

 

外れる気配のない首輪から伝わる金属の冷たさが、首を絞めるようにじわりと広がっているような気がした。

彼は少し目を細め、憐れむような視線を向けため息をつく。

 

「はぁ…。(ガリア語)悪友といるよりは1人でいるほうがいいわ」

 

「ジェレミーくん、年寄り臭いよ」

 

「アンタはさっさと出て行きなさい!」

 

デュヴァルさんに怒鳴られ、ひょこっと部屋をのぞいていたマクシミリアンさんは肩をすくめて出ていった。扉を閉める直前、彼の赤い目と視線が合ってしまった気がして咄嗟に顔を伏せてしまう。なんだろう、この悪寒は。

 

「まったく……」

 

デュヴァルさんはそう呟くと、額に手を当てて深くため息をつく。なにやら小言のようなものを口にしていますが、聞き取ることはできない。リターニアスラングなんでしょうかね?そして視線だけをこちらに向け、こう言った。

 

「あなた家族とか知り合いの連絡先知ってる?職場の方でもいいわ、調べてあげる」

 

「家族」

 

その言葉は私の心を容赦なく揺らす。思わず漏れ出たその単語が自分で発したものとは思えないほど掠れた声だったので驚いた。走馬灯のように浮かぶ人の顔。家族、家族ですか。えぇ、もちろん覚えていますとも。

 

壊して、逃げて、でもだからこそ私は助けたいと──―

 

しかし、頭によぎる最悪の可能性。まだ存在する「クレアスノダール」、ウルサス軍の仕業だと判明している「チェルノボーグ事変」、これらが認知のずれだとすると…

 

調べて本当のことがわかってしまった場合、「そんなもの初めから存在しない」と突き付けられてしまった場合、それは私にとって致命傷となる。知りたくはある。だが、それ以上に知ることが恐ろしい。

 

 

ここが「元居た世界」ではないと。

 

 

 可能性がないわけではない。少なくとも一度体験(転生)しているのだ。否定することができない。私の脳が現実逃避をしているだけならどれだけいいだろう。少なくとも「家族」を置いて遠い場所でたった一人助けられるよりもずっとマシなはずだ。たとえ左腕を失い右手もほとんど機能せず、内臓もアーツの使い過ぎでぐちゃぐちゃで、周りは敵だらけでどんどん事態が悪化していって、助けたい人がまた一人ひとりと死んでいく。そんな状況でも「『君は、天災に巻き込まれ、運良く、私に救出された』」ことよりはるかにマシだ。モスティマとの約束を破って決死の防衛戦に出る方がまだいい。いや、よくないけども。

 

 

そう信じたかった。

 

だが、

 

 

「君、「テキサス」って子、知ってる?」

 

音もなくドアあけ再び部屋にやってきたマクシミリアンさんが口にした単語。

 

「テキ…サス…」

 

どうして、と言いたいのにそれ以上声が出ない。なんであなたがそれを知っているんですか?

 

 

「私の、『知り合い』達に、君の写真を、見せたらね、龍門のペンギン急便、という企業を知ってる子がね、君によく似た「テキサス」という子を知ってるって」

 

 

まって、これ以上聞きたくない。

 

 

「それでね」

 

 

やめて、 お願いだから、 もう、 何も言わないで。

 

 

「その子に、兄弟姉妹はいないらしいけど、もしかして、親戚?」

 

 

私の頭がおかしくなったのでなければ、ここは、 私が生きてきた場所じゃない。

 

 

 

私の生きる場所は、もう、どこにもない。

 

 

 

 

「…君に、どんな過去があろうと、どんなしがらみが、あろうと、私には関係ないし、知る気もない。『君は、天災に巻き込まれ、運良く、私に救出された』。それでいい」

 

眼前のキャプリニーは相も変わらず慈悲深い笑みを浮かべていた。そこに悪意など一つもない、ただ純粋な善意のみ。

 

「そうだ、その首輪。意図はわからないが、アクセサリーでは、ないんだろう?外してあげよう。そうしよう、それがいい。君を縛るものは、もう、必要ない」

 

ゆっくりと左の薬指の欠けた手が私の首に伸ばされる。

 

痛みも、苦しみも、過去も、罪も、罰も、家族とのつながりも、

 

善意が私から全てを取り上げようとしていた。

 

 

やめて。

触らないで。

家族から送られた数少ない贈り物なんだ。

それがなくなったら────-

 

 

本当に一人きりになってしまう。

 

 

 

「やめなさいな」

 

凛とした声と共に伸ばされた手を止めたのは、デュヴァルさんだった。その目は真っ直ぐに、「黒羊」を見据えている。

 

「それは、彼女の問題よ。他人が立ち入るべきではないわ」

 

「デュヴァルくん、私は、彼女を、縛るものから、救おうとしている、だけだ。その邪魔を、しないでくれ」

 

「えぇ、勿論ですとも。そのつもりですよ。でもね、それ本人の意思尊重してる?」

 

デュヴァルの問いかけに、 彼の表情には一切の曇りがない。一切の迷いなくまるでそれが当然であるかのようにまくし立てるように言葉を吐いた。

 

「望まないものを、無理矢理押し付けるのは間違っている。しかしそれ以前に洗脳されているかもしれない。自分で自分の意思がわからなくなるほど洗脳されているかもしれない。だからこれは必要なことだ行動を思考を自由を奪う縛るものは壊すべきだそうだそうすべきだ」

 

彼の態度にデュヴァルさんは顔をしかめる。しかし、 諦めたように息をつくと、 今度は私に問いかけた。

 

「……ねぇ、アナタはどうしたいの?」

 

彼はまっすぐな瞳で私を見る。

 

「私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM5:19 龍門

サンセット通り バー「大地の果て」

 

「この酒場はひどい。地の果てだ」

 

「『大地の果て』だよあーちゃん」

 

 巨大な守護銃を背負ったサンクタとぺッローの女性が軽口を挟みながら引き金を引き続ける。

私たちは銃声響くバーカウンターの裏で身を隠していた。

 

 私がリターニアで保護されてから一年ほど経過した。治療とリターニア語の勉強をしている間にヴィクトリアで大きな騒ぎがあったらしいが、よく知らないし、知りたいとも思わなかった。覚えているのは疲れ切ったデュヴァルさんの顔だけだった。

美しい朝日を何度見たことだろうか。きっとあのまま龍門で戦い続けていたら再び見ることはなかっただろう。だが、心が動かされることはない。時間はいくらでもあったので、体に差し障りがない程度に観測所の仕事を手伝い、好きなものが買えるようにもなった、何も買いたいとは思わない。

 

十分な食事に人並みの仕事。そして温かいベッドで眠る、そんな普通の生活。

全て望んでいたはずのもの。足りないものはただ一つだけ、致命的なものだけが足りない。

 

ここに私の家族はいないのだ。

 

私の衣食住の面倒を見てくれているデュヴァルさんはサルカズながら非常に高い教養とウォルモンド郊外の一部に領地を持っているということには驚いたが、今のリターニアでは別に珍しいことではないと教えてくれた。

 

「感染だなんて活性源石粉塵を吸い込むか活性源石の血液との接触、んで母子感染ぐらいじゃない。リターニアの高等教育じゃ当たり前のことよ。逆に鉱石病が感染るって騒ぐほうが無知よ無知。あーやだやだ」

 

アーツ研究が進んでいるリターニアでは、感染者差別もほとんどない。書類と定期健診の結果提出、許可無しで隔離エリア外に長期対外できないというだけで、決して楽ではないとは言え感染者が暮らしていくことができる。衛兵に捕まることも凍土に放逐されることもない。これこそウルサスでは経験することのできない、まるで別世界のような生活。マクシミリアンさんから贈られたクルビア製の義手にも慣れ、ロドスの新型抑制器により鉱石病の軽減もできている。そんなことどうでもよかった。

 

あれほど死にたくないと思っていたのに、今は生きている実感も充実感もない。何もかも色褪せてしまった。

 

 龍門。再びこの地に踏み入ることとなっても、それは変わらない。

全てのことが懐かしいと同時に、全く馴染みがない。

 

「すまない、あなたをロドスに届けるだけだというのにこんなことに巻き込んでしまって」

 

黒髪のループス、「テキサス」が私の安全を確保しながら謝罪の言葉を口にしました。

他人行儀…、いえ、完全に「他人」です。この世界の私と彼女は何の関係がない。ただの、他人。覚悟していたはずなのに、理解していたはずなのに、その声が一音一音耳に届くたび胸の奥底の何かが欠けていく、そんな気がします。彼女の顔を直視できません。だって、今の彼女は、初対面の人なのですから。無意識に首輪に指が当たり、キンッと小さい金属音が騒音の中でもよく響く。

 

デュヴァルさんの国際社会で通用する人材育成を目的とした活動拡大のために信頼のおける人物を一時的に駐在させたい、とのことで私がロドスに赴くこととなった。そのために距離の都合上龍門でロドス本艦の職員と合流。仕事内容ですらどうでもいいと思っていたらこの始末。説明はきちんと聞いておくべきでしたね。

 

それでも、

 

『アナタ、クレアスノダールが気になるんでしょ?だからそっち出身の子雇ったの』

 

『はじめまして!よろしくお願いしますッス!先輩!』

 

あのままリターニアにいるよりはマシだって本気で思っていた。しかし、逃亡の果てにもっと最悪な現実を突き付けられたのだ。あぁ、まさに自業自得。笑うしかありません。身近な幸せだけ守りたかった?身近な幸せって?今、私の目の前にいるのは何?私の家族は、何処?

 

 

「…彼女、大丈夫なのか?」

 

 首輪のようなものを握りずっと俯くアルハイム。それを背面の敵に注意しつつ見守るテキサス。二人の容姿はよく似ており、傍から見れば姉妹と勘違いしてしまうほどだ。なぜか気になるが、「他人」であることに変わりはない。

 

「うーん、このおねえさん見た目よりすごーく軽いし腕も義手だったし、昔大変なことがあってぴーてーえすでーっていう症状じゃないかなぁ?」

 

ペッローの女性、「パトラッシュ」はハンドガンで大量の敵を戦闘不能に追い込みながら淡々と口にする。この世界では「大変な事」は珍しくないものだ。

 

「ソドムとゴモラとロアナプラしかねぇのか、この世界は」

 

サンクタの男の呟きは硝煙に紛れ消えていった。

 


 

 おそろしいことに私は「時間通り」にロドス本艦に到着しました。さすが龍門のペンギン急便、配達の手段や過程はともかく時間はきっちりしてますね。そんなことよりも、これからどうすればいいのか。私にはもう何もない。家族も、帰る場所も、過去も、未来すらも。デュヴァルさんは必要なら新しい名前と戸籍を用意するから心機一転すればいいといつも言ってくれました。でも罪人にそんな明るい未来は訪れない、人形に元より未来などない。私がいないことで幸せな暮らしを、居なくても何も変わらない暮らしをする「家族」が脳裏にちらつき、吐きそうになる。

 こんなことになるなら、いっそのこと龍門で死んでいればよかったのに。でも、外れる気配のない首輪とマクシミリアンさん…「黒羊」が楽になることを許してくれません。死ぬことも許されない。この生き地獄は私がしたいようにした罰なんでしょうか? 父親らしき男性と楽しそうに談笑するゾーヤさんを見かけました。私に一瞥もくれないモスティマとすれ違いました。武器の使い方を学ぶミーシャとアレックスが目に入りました。メフィストがロドスの医療オペレーターとともに仕事をしていました。ファウストがロドスの職達と狙撃訓練で競っていました。フロストノヴァはドクターの仕事を手伝っており、多忙なドクターに代わって彼女にロドス艦内の案内をしてもらいました。リュドミラやレティシアがいないだけ良心的な悪夢。私が欲してやまなかった光景であるというのに、そこに私の居場所はない。まだマッチ売りの少女が見た温かい幻想のほうが良心的でしょう。なんたって最後は幸せな幻想の中で死んでいけるのですからね。ああ、本当に、どうしてこうなったんでしょう。あの時、あそこで、私は選択を間違えてしまったのだろうか。選んでしまったこと自体が間違いだったのだろうか?

 

 

答えてくれる人はいない。

 

答えられる人もいない。

 

私以外に誰も、私を知らないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

用意された部屋に入る気にもなれずぼんやりとしていると、恐ろしく長身のリーベリの男性とぶつかってしまいました。

 

「おっと、すまないね。大丈夫かい?」

 

「あ…いえ、お気になさらず」

 

ぼうっとしていたのが悪いのに、謝ってくるなんて、悪い人では無いようですね。

 

「お前ら逃げろ!サイレンスとヴァレリアがくるぞ!」

 

「待ってイフリータ!」

 

「ボスー」

 

私たちの横を幼い少年少女達が走り抜けます。可愛いですね、関心はありませんが。

 

「いやはや、あのウルサスの少女の方は体温異常で常に高熱。少年の方は右目に源石結晶が突き刺さっている。サヴラの少女はライン生命による二重の人体実験を受けた上に鉱石病は末期に近い。みんな大変だね」

 

リーベリの男性は先程の少年少女たちの後ろ姿に温かい視線を送っていたが、その中に嗔恚の炎が揺らめいている。サヴラ?先程イフリータと呼ばれた少女はサルカズに見えましたが?まぁ色々あるのでしょう。

 

 

「過去には戻れない、か。その様子、君も大変苦労してるんだろうね」

 

…なんで私に振るんですかね。憐れんでいるわけではなさそうですし、同情しているわけでもない。ただ事実を述べているような声音でした。確かに今の状況に比べれば、昔の方がマシだったかもしれません。家族がいてくれた。友人がいた。そして、目的があった。今はもう、それすらもない。私にはもう、何も無い、空っぽなままだ。選択できたのはこの首輪だけ。そんな私を見て、男性は微笑みます。私とは正反対に、何か満たされたような笑顔でした。

 

「ところで、『掲示板』は使えてるかい?」

 

掲示板、ですか?いったい何のことでしょうか?見当もつかないので首を横に振ります。すると、男性は少し驚いた顔をしましたが、すぐに納得顔になりました。一体なんなのでしょう。

 

「君は呪われていないということか。それは幸い…かな?」

 

「呪い、ですか?」

 

突然意味不明なことを言われて困惑し思わず疑問が口に出てしまいましたが、この人は何を言っているのでしょう。私にかけられているのは呪いではなく首輪だというのに。

 

「ああ、失礼。これは独り言だよ。忘れてくれ」

 

「え、えぇ……」

 

なんだかよくわからない人ですね……。とりあえずこれ以上関わりたくないので、適当に会釈をしてその場を離れました。

 

 

 

 

「人との縁は呪いでもあり祝福でもある、ね」

 




『脇役になりたくないTS転生者』本編完結おめでとうございます。
自己解釈によるアルハイムちゃんの生存IFルートに10章11章に登場予定のキャラ、本編のためのフラグなど詰め込みすぎで非常に読みにくいものになってしまって申し訳ありません。ちなみに「ダリア」ちゃんは中国で公開されている公式のライン生命の漫画に登場する子です。日本語版正式に来て…
今回コラボの許可をくださった有機栽培茶様にこの場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

一周年記念企画をやるとしたら何がいいですか?

  • オリオペorスレ住人募集
  • イッチのイラスト
  • ほのぼの番外編
  • それより本編
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。