大陸版情報及び過去改変捏造設定でできていますご注意ください
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どうして
たった今聞いた話が冗談であればどれだけよかったか、単なる手違いで済めばどれだけマシか。今すぐにでも日光の差し込む温かな布団の上でフェリーンのように惰眠を貪り全てから逃げ出してしまいたい!
だが、現実は逃避している間にも刻一刻と悪化している。耐え難い誘惑を頭から追払い、ちゃんと向き合おうと美味くもない現状を反芻する。あの右目に源石結晶が刺さった少年ロックの姿が見当たらないと、彼と一緒にいた少女ヴァレリアが俺に伝えにきたのがついさっきの出来事。
そしてたった今、「探してきます」と言い残してヴァレリアは突然市内に向かって駆け出していった。あわてて近くにいた同僚が彼女を捕まえようとしたが子供とはいえウルサス人、コータス人の同僚は抵抗も虚しく突き飛ばされる。制止の声も聞かず少女は人の間を素早く掻い潜り、俺たちの視界から姿を消してしまった。
少年を見失い、彼を探しに行った少女も行方知れず。
傲慢なのは俺自身の方だ。
今にも追いかけたい衝動を抑え、手早く慎重に風向きに気温の推移、源石反応を調べ直す。…よし、ここまで来れば学生達が天災に巻き込まれることなく龍門付近へにたどり着ける、そう過去の経験からほぼ断言できる状況だ。後のことは同僚に任せ、俺は黒雲迫る市内に戻った。
俺はヘラヘラ笑うウルサス人の少年にどうしても慣れず、一瞥してはすぐ視線をそらした。ファウストは表情を変えないし、メフィストはいつも眉間にしわを寄せている。アリーナはいつも思いつめたような表情だし、ほかのやつは…仮面を外してくれないからわからない。とにかく身の回りに笑顔が無いせいか、ああいう何も考えてない笑みというものにはどうしても抵抗感を感じてしまう。あと尻尾を引っ張るのをやめてくれ…!
メフィストから彼の視力が失われていないと聞かされた時、それは一種の嫌悪感に変わってしまった。どうして彼はあんな状態で笑えるんだ?状況は理解できてるはずなんだろ?記憶を失い見知らぬ地で世界で疎まれる不治の病に感染しているんだ。鉱石病については俺からもあの少女からも話を聞いているはず。右目に関しては異物が突き刺さっているんだぞ!?
だが彼は笑う、
「生きてるだけでラッキーだし、助けてもらえてる時点でとてつもなく幸運だ」
俺には理解できない、恐ろしい。
逃げ出していたオリジムシの居場所を報告してきたり、彼が助けた少女を気にかけて積極的に話しかけていたりと常軌を逸脱した行動ばかり。視力のこともこちらを案じてかわざと濁していた。(実際に貴族間の暴動の所為で気を張りつめ、余裕はほとんどなかった)
彼は一体なんだ。記憶喪失では片付けられない、まるでリターニアの御伽噺に出てくる別世界からの漂流者、敵なき災に苦しむ人々に等しく手を差し伸べる稀人。感染者もサルカズも分け隔てなく普通に接してくれた恩師や先生のことが頭をよぎる。こんな心も大地も病に侵された世界で生まれ育ったと思えないほどまともだったあの人達。すでに麻痺してしまったはずのこの世界で、一部の恵まれた者しか有していないものを持っていた。だから嫌悪しながらも見捨てることができなかったのだろう。
俺は逃げ惑う市民を避け、崩れるレンガを躱し、原型を留めていないミッドタウンを駆け抜ける。止まる、燃える、割れる、壊れる。これだから戦場は嫌いだ。記憶に残す意味のあるものが生まれない。リターニアに居た時は…いや、やめておこう。後悔しないようにしているはずなのだ。
少年を見失ったのは俺の責任だ。
「歩くという、些細な事でも、一歩ずつ進めば、誰かに会える。結果が、大事だ」
焦燥に思考が焼かれるたび先生の言葉が俺を引き戻してくれてる。民間人を避難させている奴に健常者に暴力を振るう奴を止めている奴も見なくなったので探査型アーツを放つ。すると一見無人に思えた市街近辺に複数の生体反応を感じ取ることができた。索敵型に切り替えてみたが、潜伏している敵というわけではなさそうだ。
「見つけたぞエリオット・グラバー!!」
霧を切り裂いて稲妻のような一撃が術師に降りかかる。
「さあ吐いてもらおうか、裏切り者ケルシーの居場所を!!」
だがその牙は男を貫くことはなく、分厚い盾によって防がれた。俺が到着した時にはすでに戦闘は始まっており、レユニオン幹部のクラウンスレイヤーが謎の小隊と交戦しているではないか。だが聞こえる音からして雲行きが若干危ういように感じた。しかし彼女のアーツにより辺り一面は濃い霧に包まれている。俺のように探査アーツを放つなりしなければまともに状況がわからないはずなのだが…。
相手の重装兵はそのまま勢い良く盾でクラウンスレイヤーを押し倒す。圧倒的な体格差に成す術なくうめき声を漏らす彼女を助けるべきか、
行動は思考より早かった。
「サルカズ術師…!?」
アーツによる敵の拘束は成功し、彼女は素早く距離をとって体勢を立て直す。
「お前は確かメフィストの…助かった」
敵は人数こそ少ないが明らかに何名か戦闘慣れしており、奇襲を最も得意とするクラウンスレイヤーでは分が悪いだろう。すでに術者らしい男がドローンを展開して警戒態勢をとっており、いくら彼女のアーツがあろうと防がれる可能性が高い。それになんらかのアーツにより霧が効いていない可能性もある。そう判断した俺は撤退を促すが、彼女は問題無いと言い切った。
「安心しろ、もうじきタルラがやってくる」
なんだって?思わず聞き返してしまい、怪訝な視線を向けられた。
「奴らは裏切り者を匿っていたんだ!感染者を救うなど綺麗ごとを並べているがその実態はどうだ!?聞けば多脚戦車も使ってるじゃないか!これのどこが製薬会社だ!?既に部下がタルラを呼びに行っている!
倒せずとも時間さえ稼げればいい、そうすればタルラが奴らに天誅を下してくれる!」
俺のぽかんとした表情が癪に障ったのか、彼女は捲し立てる。あまりにも軽率すぎる思考に頭が痛くなる。彼女は感染者である以前に、この都市の被害者だとは当人がよく話していたので知ってはいたが…単にその裏切り者が過去を偽っているだけで感染者団体自体は何も知らないかもしれないだろうに。
というか彼女が語る話も裏付けされたものかどうかすら怪しいもんだ。確かにクラウンスレイヤーが幹部の座にふさわしい戦闘能力と指揮能力を持っているのは確かだ。しかし彼女は若すぎる。熱と勢いだけが先行し、今のタルラにもっともらしい憶測を吹き込まれただけじゃなかろうか。無知のまま振り下ろすナイフほど愚かなものはないと先生も言っていただろう。
確かこの区間はメフィストが受け持っていたはずだ。不穏な動きを見せる感染者団体というのはおそらく対面している彼らのことだろうか?
ファウストもいて見つけられなかったとは思えない。2人のことだ、危険性が低いもしくは手を出さない方が賢明だと判断して報告のみに済ませたのだろう。天災のことを考えれば当然の判断だ。それに加えパトリオットの旦那があれだけ釘を刺していたのにもかかわらず、彼女は持ち場を大きく離れ獲物を追い回していたということか。なんとまぁ激情的というか…やはり若いというか…まぁ俺も歳以外は人のことを言えないが。
とにかくレユニオンの作戦自体は成功しているのだから、後は放置しても構わないだろう。もういつこの都市に天災が起きてもおかしくはない。ここで手を降さなくとも生き延びることはそうそう無いはずだ、そう再度撤退を促すと彼女は俺を睥睨して吐き捨てる。
「鉱石病に罹ってないサルカズに何がわかる」
そこまではよかった、それは単に俺だけに対しての罵声だから。
「これだから穏健派は」
その一言にカチンときた。
なにが、穏健だ
「黙れよ」
アリーナを始めとした憎しみの連鎖を生むだけのテロ行為へ疑問を口にする者は、みな「穏便派」という言葉で括られてしまう。
境遇に不満をもつ感染者を団結させウルサスの厳しい統治に抗議する、それがレユニオンではなかったのか?断じて怒りと暴力で感染者ごと都市を踏み潰す憎しみで動く組織ではなかったはずだ。本来のレユニオンの意思を持つ人間が、あたかも異分子のような扱いを受けている現状に憤懣やるかたない。
感染者が正義で健常者が悪?感染者なら健常者へ攻撃することが正しいことだと?邪魔をするならすべて叩き潰すと?
俺は雑に彼女をアーツで縛り、地面に叩きつける。もちろん相手方の重装兵も拘束したままだ。
「レユニオンはいつから単なる無秩序集団になったんだ?」
不条理に暴力をぶつけた所で何も変わらないし終わらないだろうに、
盲目的な思考ばかりで辟易する。やはり助けなくてもよかったかもしれないと若干後悔したが、さすがにちょっと人でなしすぎるか。彼女の部下達に強い敵意を向けられるが、これから起こることに比べたら大したことはない。クラウンスレイヤーを担ぎ上げ、彼女の部下にも声をかける。
天災が来る、早く撤退を――――――――
俺は初めから彼女を引きずって一目散に撤退するべきだったのだろう。
「お前たちがロドスか」
暴君が軍勢を引き連れ、無慈悲にロドスの人間に刃を向ける。
タルラは変わってしまった。
だが、以前のタルラを知らぬ新顔や世界に報復したいものたちにとってさほど問題ではない。彼女が何者であっても構わない、自分たちの代わりに旗を掲げる存在がいればいいのだから。
だがそれではただ灯に向かって飛ぶ羽虫と同じではないか。
「既に我々の目標は達成された……が、お前たちは過ちを犯した。お前たちは感染者の側に立つべきだった、解放者の素質を持っていたはずだ。しかし同胞を殺めた報いを受けなければならない。そして搾取者である羽蛇をこの大地に踏み入らせた罪には重い罰を――」
タルラの周辺の空間が歪む。急速に加熱された空気が陽炎を形成する。
広場全体が焼け、すべてが灰燼に帰す。今の彼女はまさしく炎。全てを焼き尽くす黒炎だ。
「――滅せよ」
不幸にも怒れる竜の目に止まってしまった人々が消し炭になる様子を眺められるほど俺は今のレユニオンに染まれてはいない。ゴーグル型アーツユニットを起動させ周囲を探ろう、もしかしたらロックとヴァレリアが近くにいるかもしれない。すると起動するなり警告音が鳴り出した。え?故障?素人なり毎日メンテしたはずなんだけど…よく見ると空気中の酸素の値がおかしい、急激に低下していっているではないか。タルラのアーツの炎が空気すら燃やし尽くす火力なのはわかるが、火の海と化した眼下ではなく我々のいる場所で減り続けている。
これは天災の前兆に当てはまらない―――――
人為的な現象、アーツによるものか?
そのことを伝えようと口を開きかけたその時、声が出なくなった。ロドスのフードを深々と被った人間の背に誰かがいる。黄色いリボンと白い髪、その二つはつい最近よく見たものに酷似している。気が付いたときには衝動が俺を満たしていた。
もがくクラウンスレイヤーを彼女の部下に押し付け高台から飛び降り、奪い取るようにして二人を拾い上げ戦線から離脱する。後で何と言われてもかまわない、今は生き延びることだけに集中するんだ。そうがむしゃらに走り続けていると、
「空が落ちてくる」
ぽつりと少年がこぼした。つられて空を見上げて――――
落ちてくる無数の岩を見てしまった。
その時俺の脳裏を過ったのは、走馬灯でも世話になった人の顔でもなく、昔恩師から聞いた古い叙事詩。
「天災は、星からの、警告であり、その力は、人が積み上げてきた、幻想を、容易く、破壊できる」
星は人とは違い惑わない。思いあがった人間達に無慈悲な鉄槌が―――――
咄嗟に二人を俺の陰に隠すなり、激しい音と衝撃とともに意識が暗転した。
――――――――
―――――
――
吸い込んだ空気から血の味がする。がれきの中に埋まっていることを理解するのに時間がかかった。視界の隅に闇が迫り、少しずつ体温が引いていくのがわかる。
「オニーサン大丈夫?」
この時ほどサルカズに生まれたことを感謝したことはないだろう。覆いかぶさった俺の下で二人の息遣いがはっきり聞こえる。白濁としてよく見えないが、目立った怪我もないようで何よりだ。がれきから伝わってくる振動の弱さからして第一波は乗り越えられただろう。だが第二波以降や二次災害のことを懸念すれば一刻も早くここから離れなくては。
何とか力を振り絞り瓦礫を退かし、二人を外へ出す…立っていることができない。安堵ゆえかそのまま地面に倒れてしまった。
もう力が入らない、せめて二人だけはこの死んでしまった都市から生き延びてくれ。そう願いながら意識は薄れ――――――――
気が付いたら自分の半分ほどの背丈しかない子供に軽々と背負われていたのはかなりショックだった。
「オニーサンちょっと重い」
そういえば彼、ウルサス人だったな…体格差故もはや引きずられるような形で、俺も破壊しつくされた都市を後にした。
チェルノボーグの一件から数日経った。俺たちは難民の流れに乗って近隣の移動都市、龍門へとたどり着いた。都市の行政による難民の受け入れが行われていたが、あまりの生存者の多さに検疫所はパンク。とどめに貴族の子供たちがトラブルを起こしているようで、近衛局は気を取られて警備は不気味なほどにガバガバだった。
うまいことスラムに逃げ込み、信用できるレユニオン構成員を見つけ、後方と連絡をつけることができた。近日中に仲間とともに後方にある拠点に行ける手はずを組み、少しだけ肩の荷が軽くなったような気がする。
…あの少年を早く治療しなければ。
彼は皆の前では元気に振る舞っていたが、日に日に気絶する回数が増えている。この場でアーツによる一時的な源石の不活性化で鉱石病の進行は抑えられるかもしれないが、病巣が臓器に隣接している場合、生命維持に問題が起きることがあると聞く。彼の場合源石が目の役割を果たしているため脳神経と融合していると見ていいだろう。素人の俺が無闇に手を出すべきではない。
ほかにも彼が連れてきた難民の少女ミーシャも体表に源石結晶が現れた。源石の拡散傾向から見てこのような場合、薬による抑制が一番安全だと先生は言っていた。
予断を許さない状況であるのは何も変わらないというのに、
ここにきてから不思議と暖かい空気を感じている。
おおよそこの少年のせいだろう。
彼は時折ヴァレリアを連れふらっといなくなったと思ったら、孤立していた難民を連れてきて食料を分け与え屋根のある寝床を提供したりと他人の面倒ばかり見ているではないか。気がつけば彼の行動により多数の難民が身を寄せ合いちょっとしたコミュニティが形成されていた。中には少年に影響を受けたのか、俺がサルカズとわかっていても普通に接してくれるウルサス人まで現れた。その親子は彼がチェルノボーグで手を貸したウルサス人らしく、そのことを非常に感謝していると語ってくれる。多分彼が勝手にいなくなった時の話なんだろう。あの時のことがこうやって巡ってくるとはなんとも不思議な気分だ。
懐かしい、俺たちがまだ寄り集まったばかりの頃を思い出させる。
タルラがいてアリーナがいて先生がいて、苦しかったけどそれでいて楽しい日々だった。行く当ても帰る当てもない人々が寄り添って暮らしていた雪原で、感染者も健常者も種族も関係なしに懸命に生きていたあの日々。だがもう何もかもが変わってしまった、タルラもアリーナもあの場所も。戻れないのかなぁ。
…感傷に浸っている場合じゃない、
俺たちはもう境界線を越えているのだ。龍門に伏在する仲間たちの仕込みはもう終わっている。あとはタルラの出かた次第。状況が動く前に早く後方に向かわねば。
…それに少年は無理をしている。どう見ても自分が一番重篤だというのに、やせ我慢で作る笑みは空っぽで胸が痛くなる。彼が帰ってきたら予定より少し早いが拠点に向かうことにしよう。だから早く帰ってきてくれ。そう願っていると、転がり込むようにしてヴァレリアがミーシャを連れ部屋に飛び込んできた。
「大変なの!ミーシャが何者かに狙われてて、ロックが一人で囮になって戦ってる!!」
??? 「あの羽蛇のことを信じるのか?」
??? 「信じるも信じないも私たちに取れる手段は限られています。やれることをやりましょう」
??? 「アリーナさん…」
??? 「コシチェイのアーツがどんなものであろうと、それを打ち破る方法は必ずある。私たちならきっとできます」
アリーナ 「始めましょう 最後の勝負を」
一周年記念企画をやるとしたら何がいいですか?
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