今回はドクター目線となります。
つたない文章となりますがご了承ください。
本スレ更新はまた近日中に。
a.m.5:57/曇天/視界:17km
龍門外環区画から外部へ4km地点 荒野地帯
空調の駆動音が頭に響く。
…眠い。
レユニオンという暴徒から、天災という災害から逃れ、4日経過した。
無機質なのにやたら人間味のある機械音声に早朝にたたき起こされ、くらくらする。
一体何事なんだ?
『ドクター・ケルシーより「窓を開けて空気を入れ替え、適度にデッキに出て太陽の光に当たってビタミンDを不足させないように」と医学的見地から――――』
ケルシーという人物から提案された健康的プランを実践する気力など無い。
聞かなかったことにしよう。
…これまたケルシーから指示されたという薬を飲み、全身を防護服に身を包む。
目が覚めたときからこの服を着ていたが、不便で仕方がない。
前日通路ですれ違った職員に着用の必要性を問いただしても、
「ケルシー先生から聞いて欲しい」の一点張り。
本当になにも知らないのか、発言の権限がないのか、私にはわからない。
知りたいことは山のようにあるが、またあとにしよう。
前日と比べだいぶ痛みの減った体を無理やり動かし、見知らぬ自室を後にした。
会議室で几帳面そうな女性、ドーベルマンが書類を読み上げる。
「チェルノボーグでの作戦での損害は軽微であり、
君の救出に成功、レユニオンに関する情報も大量に入手することができた。
同時にCADUCEUSから派遣されたオペレーター達によるチェルノボーグ市長ボリス公爵の救出も成功している。作戦としては文句なしの成果だ」
次はレユニオン達が近辺にある「龍門」という都市を狙っている可能性が高く、
その都市と連携して防衛任務を行う予定らしい。
先にケルシーが(また彼女か!)龍門に偶々居合わせた協力企業の代表と共に、
龍門の代表と調整を行っている、とのことだ。
話だけ聞いているとここが製薬会社だとはとても信じられない。
ロドスに到着した後、この会社の行動理念や活動内容は再三説明されたが、
いまだ納得のいかない点が多い。
鉱石病という不治の病と闘いながら、患者に対する差別や偏見、はたまた世界の在り方にすら立ち向かう…。
ロドスというのは「一歩間違えば国をも敵に回しかねない危なっかしい組織」、
というのが第一印象だ。
そして私はその危なっかしいロドスのリーダーの一人であり、
この大地にはびこる不治の病である鉱石病の第一人者と言われてもピンと来ない。
資料をいくら反芻しても、鉱石病の危険性など他人事にしか思えないままだ。
こんな私が果たして皆を指揮する立場にいていいのだろうか…?
なお早朝にたたき起こされたのは、新しい任務に対応するための演習を行うからだそうだ。
予定は前日に教えてくれ!
早朝訓練があると知っていれば、前日夜更けまで私の記憶を失うまでの活動記録や、
鉱石病についての資料を読み漁ったりしなかったのだが…。
仕方あるまい、気分を切り替え演習所へふらつく足を向ける。
そんな姿を見てか、アーミヤは申し訳なさそうな顔で私を見送った。
その表情に見覚えがあるような気がして、彼女が立ち去るまで何度も振り返ってしまった。
目覚める直前、誰かに何かを言われたような気がする。
夢を見たはずなのに目が覚めた途端、輪郭が溶け『夢を見た』ことしかわからない。
何かとても重要なことを言われたはずだ。
必死に空になってしまった記憶を漁り、拾い上げたのはたった一言の言葉。
『私のこと忘れちゃダメよ?』
私は全てを思い出さなくてはならない。
たとえそれが耐え難い過去だとしても、だ。
―――――――――――――――――
―――――――――――――――――
p.m.10:14/晴天/視界:19km
龍門第5区外部検疫所
人、人、人―――
チェルノボーグから逃れてきた人々が列をなし、
けたたましく鳴り響いているはずのアナウンスすら
喧騒にかき消されてしまっていた。
あまりの人の多さに、私はすっかり気圧されてしまった。
噂以上だとアーミヤも驚き、同行したオペレーターたちも動揺している。
龍門の職員との面会は10時からのはずだったが、いまだ誰も出迎えに来ない。
この状況だ、致し方ないだろう。
しばらく待っていると、凛とした雰囲気を纏う女性がやってきた。
彼女は気丈に振舞ってはいるが、疲労を隠せていない。
「すまない、20分もあなた方の時間を無駄にしてしまった」
「チェン隊長!緊急です! 貴族を名乗る子供たちがまた――」
彼女は舌打ちすると、部下に指示を下す。
同じ指示を下す立場となった私からすると、彼女の采配はとても素早く的確だった。
賢くあり、決断力があり、場慣れしている。羨ましい限りだ。
部下たちからも随分慕われているようで、なれるのなら彼女のような指揮官になりたい。
彼女は戻ってくると、ロドスのオペレーターたちに検疫所近辺の警護を任せ、
私とアーミヤのみを連れ、見上げるのも大変なほど高いビルへ向かった。
私たちが到着した時にはすでに話し合いは終わっており、
龍門の代表であるウェイ長官は、上辺だけ落ち着いた声で私とアーミヤとあいさつを交わし、
今後龍門との窓口をチェン隊長が行うことになった、ということだけを告げ退出した。
…なにやら嫌な空気がピリピリと首筋を撫でているような気がする。
「やぁ!愛しの君のご到来!」
突然歓喜の声が室内で反響する。
どこか場違いな挨拶にぎょっとしたが、
その声の主がアーミヤを軽々と持ち上げ、再会を喜ぶ親族のように笑う姿には度肝を抜かされた。
先ほど挨拶を交わしたウェイ長官も中々の長身だったが、
彼もそれに匹敵する長身で、翡翠色の髪と羽が照明を反射しキラキラと光る。
だがその細い瞳孔を持つ瞳は、深い暗闇を覗き込んだ時の何とも言えぬ恐怖を呼び起こす。
「あまりそういった言い回しをするなと言ったはずだぞ モーニングスター」
彼がロドスと提携を結ぶCADUCEUS代表『モーニングスター』
事前に目を通した資料によれば、情報インフラを握る豪商でもあり、本社のあるクルビアの一都市の市長を兼ねている。
近年ではチェルノボーグをはじめとしたウルサスの都市に積極的に出資している。
龍門に商談に訪れていたところ今回の一件があり、ケルシーとともにロドスと龍門の交渉に参加したとは聞いていた。
彼は困り顔のアーミヤをそっと下ろすと、私に手を差し出す。
「貴方がドクターですね、話は聞いています。私はCADUCEUS代表『モーニングスター』。
御社にはかねてより大変お世話になっております。これからどうぞよろしくお願いします」
私は恐る恐るその手を握った。
「では知人のご令嬢が龍門で保護されていると聞いたので、今日はここで」
ビルの入り口で別れる前にモーニングスターは神妙な顔をして私たちに言葉をかけた。
「未来を鋳造する方舟起航に幸多からんことを」
そういうと彼は付き人のメイドを引き連れ夜闇に溶けていった。
奇妙な緊張感が薄れ、思わず私は肩を下す。
アーミヤもほっと息をついた。
「ふぅ…はぁ…。いつお会いしても、あの人とどう接すればいいのかわかりません」
「あれを人間として扱うならオリジムシに市民権と選挙権を与える必要があるな」
ケルシーの冗談なのか本気なのかわからない言葉に私もアーミヤも苦笑いするしかなかった。
一息ついたところで今回の調整の内容を確認する。*1
今回の交渉で龍門とロドスの一時的な協定への条件は、
「レユニオンの脅威を近衛局と協力して全面的に排除すること」
「感染者が独自に動けば市民の恐怖を煽りかねないので、任務の際は近衛局の指示には従ってほしい」
以上二点だけだという。
それだけで物資の支援、および一時滞在が許可されるうえ、
感染者に対する情報の開示は明言されておらず、私たちの判断に任されているらしい。
交渉が容易く済んだことに対しケルシーは、
龍門の豪商らがCADUCEUSから得られる利益が減ることを恐れ、今回の交渉に圧力をかけていたのだろう、と口にする。
ということは、調整の内容は初めからこちら(正確に言うとモーニングスター)が有利になるよう決まっていたのも同然。
今更ながらあの嫌な空気にも察しがついた。
ふと、ケルシーは私に目を向ける。
何か言いたげにしているが、とりあえず初対面の彼女にも挨拶をしておこう。
「初めまして、Dr.ケルシー」
彼女はしばらく黙ると、フッと笑った。
「これまでの犠牲に報いることができればいいがな。
よく戻ってきた。君の帰還を歓迎するよ」
ゲームの初期宣伝スローガンに「重铸未来 方舟起航」という言葉が使われていたらしいのでそれをもじりました
一周年記念企画をやるとしたら何がいいですか?
-
オリオペorスレ住人募集
-
イッチのイラスト
-
ほのぼの番外編
-
それより本編