若干回想秘録ネタバレあります。
龍門スラム深部、レユニオン有する医療拠点。
スラム内にあるとは思えない最新鋭の医療設備を備えた場所であり、何やらあわただしい様子で人が行き交いが絶えない。
そんな中、白髪で右目を布で隠した少年ロックはヴァレリアに連れられ施設内を探索していた。
ミーシャがスカルシュレッダーのふりをして現在龍門で暴れているレユニオン過激派を止めに行ってしばらくたった。その際ロックもミーシャについていく気満々だったが、皆に止められ(特にメフィスト)あまりのショックに肩を落として部屋の隅に縮こまってしまう。
その様子があまりにもかわいそうで、せめて彼の関心を逸らすことができれば、そう思ったヴァレリアは多彩な人々に声をかけ、ロックと共にさまざまな話を聞いて回ることを思いついたのだった。
「穏健派なんて中途半端なもんがここまででかくなったのはな、元々補給部の人間が中心になってるからなんだよ。美味い飯とか鉱石病薬握られてちゃ誰も追い出せないからな」
「よくアイアンハイドの言葉を聞き取れるな。訛りが酷すぎて聞けたもんじゃないぞ」
「源石を弱くするアーツ? のおかげで姐さんの鉱石病を少しでも食い止められるようになって本当によかった」
「マドロック小隊はサルカズ傭兵とは思えないいい人たちが集まってるけど、時々謎のサルカズ女性が紛れ込んでるんだよな」
「この施設内は大丈夫ですが、野外で活動する際はレユニオンの腕章などを外し、こちらの上着を着用してください。守らない場合、暴徒と同様に収容します。ご了承ください。繰り返します、第二作戦へ移行しました。以降は「Mercury」として近衛局及び提携企業と共に避難誘導及び暴徒鎮圧に参加してください」
「なんだ? 何が起きてるんだ?」
「レユニオンが今の姿に、二つに割れてしまった原因は色々あったが、きっかけははっきりしている。あの日彼が死んだあと彼の書記が見つかってしまったことだ。あれさえなければ我々は仲間のままともに大火となり凍土に消えていけたのに。彼は死後、タルラへの不信感を振り撒き、触発されたものたちはあのサーミ人とよく行動を共にしていたエラフィアを神輿に担ぎ上げ「正しいレユニオン」を名乗り出した。そして彼女は彼らを現在「穏健派」と呼ばれるものに変えここまで来た。……タルラとアリーナが共に支え合い続けて行けたのなら、仲間同士が睨み合う今のようなレユニオンにはなっていなかったはずなのに……」
「Age quod agis. Tu fui, ego eris」
「鹿のオネーサン? あぁ、アリーナの姐さんか。あの人は元々後方の教師だったらしいが、何年か前に補給部担当の幹部に名乗り出たんだとよ。あの人になってから物資質が良くなってやりくりも凄いらしいって話だ」
「かわ……いい……? えええ……? わたしの能力が、効かない。どうして……」
「神がどうしたか知らねえが、祈りで幸せになったら、誰も苦労しねぇぜ」
「正直なところ、タルラよりアリーナの方が人気あるんだよな」
「おやおやおや、その目、よく見せてください。……なんと、なんと素晴らしい……! いやはや、羨ましい……。完全に癒着しているのに視力を維持しているとは、実に実に興味深い! よければ私たちと共にテラの夜明けを見ませんか? どこにいくのですか? 待ってください話はまだ終わってません。我々はリターニアに拠点を持つ歴史ある機関であり……待って」
「最近レユニオン内にやたらウルサス訛りが強い奴らがいるんだよな。態度もよくないし絶対俺たちと同じ飯食おうとしないし、何なんだあれ? 同じ感染者じゃないのか? 穏健派にいる非感染者ってわけでもないし……なんかおかしいんだよなここ最近は特に。過激派も大概だけど穏健派だってこんな施設持ってたり何食わぬ顔で近衛局と手組んでるし。何が起きてるんだ?」
「全く、補給部の物資はどこから湧き出てるんだか」
しかし一向にロックの気が休まることはなく、むしろ焦燥感を募らせるだけとなる。
そんな彼は、容体は安定したが未だ目を覚まさないスカルシュレッダーの看病をするイワンと共にため息をついた。
イワンはやっとの思いで救い出したミーシャを止められなかったことを悔やみ、スカルシュレッダーに合わせる顔がないと頭を抱える。
考えていることは違うが、2人の抱える気持ちは同じだ。
そして今、ロックもまたミーシャの身に何かあったのではないかと不安を感じながらベッドの上で横になった。
彼の胸中は穏やかではない。ミーシャは無事なのか。なぜ自分はこんなところで寝ているのか。どうして、どうして……。そんな堂々巡りの自問自答が口からこぼれている。
そんなロックの様子を受け、途方に暮れるヴァレリアは偶々向かいのベッドで療養していた空挺兵のケヴィンに視線を投げるが、俺にどうしろと? と眉を顰めるだけだった。
ただ時間だけがすぎていく。
リェータとゾーヤは穏健派の人間とともに市民の避難誘導に出かけ、アイアンハイドはミーシャらと共に暴徒と化した過激派を止めに向かった。
ヴァレリアもロックとともにこの拠点に残ったとはいえ、あくまでもロックが心配なだけでいつでも出ていくことができるのだ。
しかし、自分はどうだ? 無理に動けば命の保証はないし、また気を失って迷惑をかけるのは明らか。今こうして元気にしていられるのは、この医療拠点で適切な処置を受けているからに過ぎない。ここは自分のためにも周りのためにも、そしてミーシャのためにも、おとなしく待つしかない。ドクターストップは絶対だ。(断じてメフィストが怖いわけではない断じて)
ロックはミーシャの身を案じ、ただひたすらに彼女の無事を願うが、それ以上に何もできない自分に苛立っていた。
方向感覚が鉱石病で狂ってしまい、1人でこっそり出ていくこともできない。
誰か連れ出してくれないものかとぼんやりと考えていると、ロックらのベッドがある部屋に一人の女性が入ってきた。
時折タブレットに目を落とすその人物は清潔な身なりからしておそらく医者か看護師なのだろう。露出した肩に散らばる源石結晶から感染者であることは明らかだ。
その女性はやや左手奥に視線を向けた後、ロックの方へ歩み寄ってくる。
「君がロックだな」
ロックの右目には、謎の女性が視線を向けた先におどおどした種族不明の女性が写っている。だが左目では何も見えない。そこはただのベッドとベッドの間であり、目を引くようなものは何もない。
──―どうしよう?
彼は咄嗟に掲示板にて対処法を相談するため書き込みを始めようとするも、実行されることはなかった。
この女性は自分の望みを叶えてくれるような気がする、なんとなくだがそんな気がする、なんだかいける気がする。と、なんともあいまいな良い予感を感じ取ったのだ。
自分のスレッドにいる寒災を名乗る人物ほどではないが、勘はいい方だとは思っている。でなければここまで生き延びることはできていない、たぶん。
少し冷静になり、そんな曖昧な直感を信じていいのかと慎重に考えた末、ロックは肯定の意味を込めはっきりとした声で返答を返した。その間僅か10秒である。慎重という言葉の意味を辞書で調べることを推奨する。
「オネーサン、誰?」
「それはもっともな質問だろう。私は君と直接的及び間接的に言葉を交わしたことはないし、君も私の存在を認知することは不可能だ。もちろん例外は存在するが、基本的に私は一方的に君たちの言動を観察する不干渉の有象無象のうちの一つでしかない。それを証明するため現在ここで君と私でしか共有し得ない情報を開示しよう。
『ボリバルルートビアクソマズ』
君はこの言葉の意味がわかるはずだ」
ロックはハッと息を呑む。
ここ数日でなじみある言葉となった一言。まさかそれを実際に耳にすることができるとは。彼は喜びと驚嘆の混じった声で叫ぶ。
「まさか……来てくれたんだ、寒災ネキ!」
「……違うとだけ言っておく。私の名はケルシー。君のスレッドの閲覧者の一人だ」
キャラ紹介
・イワン
スカルシュレッダーの部隊にいた人。原作ではメフィストの家畜になってしまったがこの作中では五体満足でスカルシュレッダーの看病をしている。
・ケヴィン
イーサンのレユニオン時代の友人。龍門市街地でジェットパックが故障し、ごみの回収口に落下して負傷した。おそらく殲滅作戦龍門街内でそのまま穴に落下する空挺兵はおそらく彼。この作中ではパッキーとワルツは生存している。
海外のプレイヤーの間では勝手に自滅する空挺兵のことを「Kevin」と呼んでいるらしい。
一周年記念企画をやるとしたら何がいいですか?
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