ありふれた幼馴染が世界最強 作:麦わら
「よおはじめ。一緒に帰ろうぜ」
落ち込んでいる時。いじめられている時。いつも彼は突然現れる。それはさながらヒーローの様で僕はその姿にどうしようもなく
第一話「転移」
終業を知らせるチャイムがなり響き学生たちは部活に行く者、すぐに家に帰宅する者の二通りに分かれていた。
「はじめ‼一緒に帰ろうぜ」
一際大きい声が教室中に響き渡る。だがその場にいた生徒達はそれがまるで日常かのようしながら各々の活動に励んでいる。
「としくん声大きいよ」
はじめはもうこなれたことだというように片耳をふさぎながらとし君と呼ばれた少年を諭した。
「ああ。わりいいわりい。どうも癖でよお」
「あはは。」
はじめはとしくんと呼ばれた少年。十四郎の言動に苦笑いを浮かべる。
でもいつもの事かと割り切ったはじめは自分の家に早く帰りたいという衝動に従い十四郎を連れ校門に急ぐ。
「そういえばさ一のよく読んでる異世界転生?みたいなやつ読んでみたんだけどよ。はじめはああいうのに憧れんのか?」
「ああいうのって?」
「異世界転生ってやつ。俺はやってみたいんだけどよ。未知の世界、未知の文明、そして美少女。ってね」
「ははっ。どうだろね。」
十四郎の思う異世界像に苦笑いし、まあでもその通りかと考える。美少女を侍らせて異世界最高だ‼というのが彼の思っている異世界だろう。
「そういうのに憧れがないわけじゃないけど、僕はこういう平穏な日常がいいかな」
この平穏から離れたことがないが、それこそがきっと幸せなのだろうと思う。家族もいて友人もいて趣味にふけることができるこの生活はきっと異世界ではできないだろう。
「そういうもんか」
「そういうもんだよ」
つまんないなというような顔をしている十四郎。いつ見てもイケメンだなと若干の嫉妬を感じていると家のすぐ近くの場所まで来ていた。
「としくん今日もうちで食べる?」
「ああ、頼むわ」
両親を幼いころに失くしている十四郎は昔から南雲の家でご飯を頂くことが多かった。それは十四郎の生活の負担を少なくするという狙いもあったがここまで続いているのは十四郎がいい反応でご飯を食べてくれるからだと考えている。
「うまいうまい‼やっぱはじめの飯はうめえな」
「としくんうるさい」
母さんが忙しいときいつも作っていたからか料理の腕はこの年の男子高校生にしてはかなり卓越していると自負している。喜んでくれるのはうれしいが流石にうるさすぎる。
「でもうまいもんは上手いし」
「はいはい。でももうちょっと静かに喜んでね」
スプーンでカレーを掬い口に運ぶ。お肉も柔らかく野菜も芯まで火が通っている。だが十四郎用に味付けしてあるからだろうか少し辛かった。
「ふー。ごちそうさんごちそうさん」
「お粗末様でした」
締め切り地獄で修羅場状態の両親を除いた食事が終わると食器を片付け、二人でテレビを見始める。
「としくん家に戻らなくていいの?」
「ああ、忘れてたわ。居心地よすぎて自分の家だと思ってたわ」
急にそんなことを言い出した十四郎に笑い家から追い出す。
「洗濯物とかあるでしょ。ちゃんと洗濯しといてね。じゃまた明日」
「お前は俺の母さんかよ……。まあいいや。じゃあまた明日な」
いつも通りの夜が更けていく。十四郎や家族と共に過ごし家事をし、ゲームをし、読書をし、そして寝る。そんな平凡な日常が一種で消え去るとはこの時のはじめは思ってもいなかった。
☆
「おはよう。南雲君」
朝からまずい人に会った。そう思った。この学校の二大アイドルともいわれる白崎香織はなんの因果かはじめによく話しかけてくる。そのことをどうこう言うつもりははじめにはないが、話しかけられることによって生まれる周りの男子からの嫉妬の視線は非常に遠慮してほしいものでもあった。
「お、おはよう白崎さん」
結果適当に挨拶はしておくが会話は続けない。そしてホームルーム直前に学校に来る。それがはじめの決めた香織に話しかけられた時の対処方法。嫉妬の視線を出来るだけ集めないようにして香織を躱す方法だった。
担任の教師が教室に来てホームルームを始める。いまだに男子からの視線は消えていない憂鬱な一日が始まる予感がした。
「よっ。はじめいるか?」
4時限目が終わり昼休みが始まると同時に教室の扉のあたりから呼ぶ声がする。
「うん。こっちだよとしくん」
「おっ。今日は弁当?分けてくんね?」
「いいよ。どうせ今日もコンビニのパンで来ると思ってたから」
昼休みの時だけは平和だ。
十四郎がいるためクラスの人ははじめにちょっかいかけることもできなければ香織も十四郎と話しているところに入っても来ない。しばらくは平穏に過ごせる。そう思っていると、地面に幾何学模様が浮かび上がる。ふとラノベやゲームの記憶から「魔法陣」という言葉が浮かび上がるがそんなことはないだろうと否定する。だがその数秒後光がだんだん強くなっていく。そして最後にみたのは十四郎がこちらに向かって手を伸ばしている姿だった。
☆
溢れた光が収束する。船酔いのような気持ち悪さを感じながらはじめは周囲を見渡した。
そこにいたのは十四郎とその他のクラスの生徒達。そして4時限目の授業を担当していた畑山愛子という教師だった。
「としくん。大丈夫?」
周りを見渡していた十四郎を探し声を掛ける。きっといつも通りの能天気さで返事をしてくると思って。だが帰ってきたのははじめが全く想定していない言葉だった。
「おっ、心配してくれてありがとな。ところであんた誰だ?」